ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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物語というものは読者の感情移入を必須とする以上、その容姿において劣等感を感じさせる部分は最小限に留めるべきである。
怪物と感じさせるほどの容姿ならば現実と剥離している為問題ないが(ゴブリンの王国など)が、生々しく身体的短所が目立つキャラクターは過剰に長所が目立つキャラクターに匹敵するほどの忌避感があると私は考えます。
以上。


第63話【郷愁】

気がつけば地球の片隅で復活していたギニュー特戦隊の面々。

 

なぜ復活したかも分からぬまま、生前付けていたままだったスカウターに入ったコルド大王の召集にも応じず自分達がどのような行動を取るべきか考えあぐねいていた。

 

「よくわかんねえけどよ! とりあえずこの間の続きってことでこの辺の街とかパァーっとぶっ壊しちまえばいいんじゃねえか?」

 

侵略の尖兵であるギニュー特戦隊らしい意見ではあったが、魅力的な提案にも関わらず一同の顔色は優れない。

 

「……馬鹿、もうちょっと考えてモノを言わんか。さっき俺のスカウターが一瞬で壊れたのを見なかったのか? 戦闘力測定不能の化け物がこの星にはうじゃうじゃしてるんだぞ。それも10や20では利かない数がな!」

 

ジースが冷や汗さえ流しながら彼らが迷う原因を告げる。

 

「ジースの言うとおりだぜ。さっきだってわけのわからない化け物が突然空中で爆発したのを見ただろうが」

 

バータがジースの意見に賛同するような形でつい先程目撃した衝撃の光景を思い出させる。

 

見ただけで戦闘力の桁が違うのがわかる化け物が、一瞬で葬り去られた事実。これこそが彼らを悩ませる最も大きい原因だった。

 

「こんなとき、ギニュー隊長がいれば……」

 

思わずといった様子でグルドが口にした言葉に、誰もが彼の顔を見る。

 

「ギニュー隊長か……あの人は変わっちまったからなぁ……」

 

ジースがしみじみと口にする。死後、死者はその意識を現世へと向けることができる。それによって特戦隊の面々は隊長だったギニューが変わっていく姿を目にしていた。

 

「連絡をすりゃあ、あの人のことだ。なんだかんだ言って俺たちのところへ来てくれるんだろうけどよ。最悪敵になっちまうだろうしな。あの人を困らせることはしたくねえしよ」

 

先程まで暴れようとしていたのもつかの間、ギニューに話題がおよび気落ちしたように巨体を縮めるリクーム。

 

「随分しおらしいなリクーム」

 

「当たり前だろうに。お前達もなんだかんだ世話になってきてるんだろうけどよ、俺はあの人にそれ以上に散々世話になってるんだ。ていうかそもそも今のあの人に勝てる気がこれっぽっちも起きねえよ」

 

「そりゃそうだ」

 

バータのつっこみにリクームが滔々と答え、グルドがまとめる。なんだかんだ仲のいい一同だった。

 

「……変わらんな、お前らは」

 

「た、隊長!?」

 

気がつけば、特戦隊が話す後ろにギニューが立っていた。

 

「しかしもう少しまともな判断がくだせると思っていたが、貴様らにはガッカリしたぞ。こんな洞窟に引き込もってメソメソ愚痴を言い合うなど、貴様らそれでも栄えあるギニュー特戦隊の一員か!」

 

「と、とは言いましても隊長。コルドって野郎が誰かもわかりませんし、何より相手は俺達より遥かに強いんですよ。別に俺達が無理して戦わなくても……」

 

「ばかもんっ!!」

 

言い分けをするジースの頬にギニューの熱い拳が突き刺さる。

 

「惨めに言い分けをするくらいならまずは戦ったらどうだ! いいか、俺は貴様らをそんな軟弱者に鍛えた覚えはないぞ!」

 

倒れたジースを立ち上がらせ、口に無理矢理仙豆をねじこみ回復させるギニュー。

 

「どうなんだ貴様ら。それとも、まさかスペシャルファイティングポーズさえも忘れたとは言わんだろうな!!」

 

「そ、そんなことはありませんぜ隊長! おいお前らさっさと立ちやがれ!」

 

ギニューに叱咤激励され、ジースに続いて立ち上がったリクームが残るふたりを立ち上がらせる。

 

「ゆくぞ貴様らぁッッ!!」

 

互いに同じ方向を向き合った五人は、誰に向かうでもなく名乗りを始める。

 

「スゥ……イヤアアォ! リクーム!!!!」

 

屈伸の姿勢のまま掌を突きだした姿勢で両腕で左側を示すような姿勢を取るリクーム。

 

「ケーケッケッケッケ!! バータ!!!!」

 

リクームとは互い違いになるように同じ姿勢を取り、笑いながら名乗りをあげるバータ。

 

「ハアァァァァァ! ジース!!!!」

 

さながら連獅子のように白い長髪を振り乱し、そのまましゃがみこんで手をくの字に曲げるジース。

 

「フォォォォ!! グルド!!」

 

体勢はジースと互い違いになるように膝を立てた姿になるも、まるで空中の何かを招くように構えた後に側頭部の一際大きい眼球を強調するようにして構えるグルド。

 

「ギニュー!!!!!」

 

最後にギニューが全員が向いている方向とは逆方向に前屈をし、その途中姿勢から突如として覗きこむように股の下から顔を出して両掌を頭に添える。

 

「「「「「我ら!! ギニュー特戦隊!!!!!」」」」」

 

最後になぜか各々が全く違うポージングで決めるが、バラバラな姿勢にも拘わらずどこかまとまりがある雰囲気が彼らから漂ってくる。

 

そして途中からそれを目撃してしまったセルシニアの一体がどうしていいか分からず固まっていた。

 

「遅いぜっ!!」

 

本来であればスピードもパワーも圧倒的に上である筈のセルシニアだが、バータの自称宇宙一のスピードによって背後に回り込まれ、スレッジハンマーによって空中から叩き落とされる。

 

「ギッ! 舐めるな!」

 

「リクーム! イレイザーガン!!」

 

即座に反撃せんとしたセルシニアだが、今度は直下からのイレイザーガンによって体勢が崩される。

 

「キエエエッ!!」

 

さらにそこへ畳み掛けるように仕掛けられるグルドの金縛り。時間にして0.1秒ほどの拘束時間だったが、そこにはすでにジースのクラッシャーボールが迫っていた。

 

「グオッ!?」

 

顔面に直撃を受け怯むセルシニア。怒りに支配されろくに方向も定めずエネルギー波を撃つが、それを待ち構えていたのはギニューだった。

 

「チェーンジ!!」

 

セルシニアのエネルギー波を自らに変換しホーンライダー・グレートモードへと変身したギニューが駆ける。

 

「今回は名乗りはなしだ!! ストライクホーン!!」

 

桃白々との修行によって身に付けた見極め力によってセルシニアの核を見抜いたギニューの蹴りが命中する。

 

「「「「「成敗!!」」」」」

 

地上に降り立ったギニューと共にポージングを取る特戦隊。

 

背後では流し込まれた気によってセルシニアが爆散する。

 

驚異的な実力差を連携によって覆したギニュー特戦隊は、その後も事態収集まで戦い続けたそうな。

 

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「グッフッフッフッフ……! なんの因果で蘇ったか知らねえが、この街を破壊すりゃちったぁスッキリするだろうぜ……!!」

 

禿頭に血管を浮かべ、無惨に殺された恨みを募らせてきた男が唸る。

 

彼が抱いている怒りは実に理不尽なものだった。彼は何もかもが許せなかった。

 

自分を蔑ろにしたベジータが家族と安らぎを得ているのが。

 

自分を罠にかけて殺したクリムゾンが自分よりも強くなっているのが。

 

だが本人らを相手取って殺せると思うほどナッパは馬鹿ではなかった。

 

彼が狙ったのはベジータの家族であり、レッドリボン軍においても数々の協力をしてきたブルマの家であるカプセルコーポレーションがある西の都だった。

 

しかし、そんな彼の凶行を止めたのはあまりにも意外な人物だった。

 

「……やめよ、ナッパ」

 

「ベジータ王だぁ……!?」

 

そこにいたのは、かつてフリーザに反逆を示し一撃で殺された男。ベジータの父親にして、同じ名前を持つサイヤ人の王。ベジータ王だった。

 

「今さらあんたの言うことを聞く理由なんざ、あると思ってるのかよ」

 

侮蔑の視線を隠そうともせず、ナッパはベジータ王に近づいていく。

 

「そういうことではない。我々はもはや過去の遺物よ。ここで何かを為したところで、文字通り何にもならぬ」

 

「えらそうなことをクドクドと……! 黙りやがれ!!」

 

「ぐほぁ!」

 

ナッパの手加減した拳がベジータ王の鳩尾を抉り、彼の口から空気が漏れる。

 

「過去の遺物だあ? アンタと俺を一緒にするんじゃねえよ!!」

 

「ぐああっ!」

 

うずくまったベジータ王を蹴り飛ばすナッパ。たった二発でかつて強者であったベジータ王は立ち上がれないほどにダメージを負っていた。

 

「こちとらイライラしっぱなしなんだ、テメエをなぶり殺しにして憂さを晴らしてやる!!」

 

「ぐぅ……!!」

 

胸ぐらを掴まれたベジータ王が無理矢理引きずりあげられ再び殴り飛ばされる。

 

ベジータ王はなにも善人になったのではない。ただ、何もできなかった息子の為に何かしてやれればと、そう思ったに過ぎなかった。

 

──そして、彼の思いは無駄ではなかった。

 

「汚え(ツラ)を晒したあげく、随分と調子に乗った真似をしてくれているな、ナッパ」

 

「ベ、ベジータ……!!」

 

両腕を組んだ姿勢で、空からゆっくりとベジータが降り立った。

 

──ギンッ──

 

「ぐはあっ!」

 

一睨みで西の都近くから荒野まで吹き飛ばされるナッパ。ベジータはほんの僅かに父親へ視線を向けると、すぐにナッパの元へ飛んでいった。

 

「ちくしょうめ……!! 時間をかけすぎちまった!」

 

吹き飛ばされた荒野で、ナッパはさしたるダメージもなかったとはいえベジータの強さを知っている為現状を打破する手段を模索していた。

 

「終わりだナッパ。貴様に構っている時間などない」

 

再び現れるベジータ。ならばと、ナッパは自身最大範囲の必殺技を仕掛けんと人差し指と中指だけを立てた状態で掌を上に向ける。

 

──クンッ──

 

神聖樹でパワーアップした際にも使ったことのなかったフルパワーでの広範囲エネルギー衝撃波がベジータもろとも離れた西の都を覆い尽くす──ことはなかった。

 

「クギャアアアアアア!?」

 

ナッパの放った広範囲エネルギー衝撃波はベジータによってその範囲を干渉され、ナッパを含めた直径1メートルのみに発動した。

 

自らの攻撃によって焼け焦げたナッパが苦しみながらベジータに手を伸ばすが、それに対してのベジータの返答は手を掴んで空中に放り投げることだった。

 

「ベ、ベジ……!!」

 

「俺の家族に手を出そうとする野郎は、細胞の一片も残さず消し炭にしてやる……!! ファイナルフラーーーーッシュ!!!!」

 

ベジータ最強の必殺技が空中へと向かって放たれ、ナッパを飲み込み消し炭どころか完全に消滅させてしまった。

 

家族を持つことで強さを得た息子を見るベジータ王の視線は、悔恨と慈愛の混じりあった複雑なものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は割りと感想での期待という名のリクエストに答えた感じ。スペシャルファイティングポーズの描写は地味に疲れた。30回くらいループ再生してたら途中からかっこよさの感覚がゲシュタルト崩壊しました(笑)
ちなみにポージングで色々調べてたら仮面ライダーブラックの変身ポーズにたどり着きました。あれ好きだけど、ダイレンジャーどころじゃないんだよな難易度……(なおダイレンジャーは天重星ができない模様=足が上がらない)
では次回予告でさあ。
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闖入者の飛び込みによってかき乱された戦い。
今再び、二大巨頭がぶつかり合う。
次回【再開】。ウォーミングアップは充分かな? では、本番を始めよう。




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