ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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加賀川甲斐さん、hisaoさん、人類に逃げ場なしさん、誤字報告ありがとうございます。

そして日間ランキングランクインありがとうございます!
さりげなく評価に必要な文字数を減らしたら低評価のみ滑り込んでくるという(笑)
でも高評価してる方が多いからめげねえんだぜ(´・ω・`)
いつも感想ありがとうございますm(_ _)m
あ、そういえば感想数でさりげにベスト3に食い込みそうな勢いです。

で、私はちなみに恒例(?)の体調不良がまたもや襲ってます(1月19日時点)
原因は高圧洗浄機により削った店舗周辺の苔が塵となって肺に微量入った模様。咳が止まらねえです( ̄▽ ̄;)
現状病院行って薬をもらい様子見してます……


第66話【闘神】

二回戦第三試合。すでに開始の合図は出されたが、両者は何をするでもなく睨みあっている。

 

武舞台に上がった存在。それを前にしてギニューは冷や汗を隠しきれなかった。

 

“闘いの神”とまで称される宇宙における絶対強者。

 

【破壊神ビルス】。

 

眼前に立つ超存在を前に、己が持つ技が果たして通用するのか。ギニューは思わずにはいられなかった。

 

──が、それはギニューとしての弱音である。()()()()()()()が弱音を吐く姿など、見せていいはずがない。

 

ギニューは静かにサングラスの位置を直すと、改めて構えを取った。

 

「君、確か面白い技持ってたよね。折角だから使わせてあげるよ」

 

そう言ってビルスが無造作に人差し指を振った瞬間──ギニューは横っ飛びに回避していた。

 

ギニューの足スレスレを通りすぎ、カッチン鋼で出来ているはずの武舞台を削っていくエネルギー球。ビルスは人差し指をまるで指揮棒(タクト)のように振るい、詰まらなそうにそれを消してしまう。

 

「おいおい避けるなよ」

 

あっけらかんと言ってのけるビルス。しかしギニューは理解(わか)っていた。

 

()()()()()()と。

 

とはいえホーンライダー・グレートモードにならず目の前の“神”を打ち倒すことは無理に近い──否、そうではない。自分にとって最悪の選択肢はここで折れてしまうことだと、ギニューは一瞬で理解する。

 

ゆえにギニューはビルスへと向かって愚直なまでに突っ込む。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

形振りを構わぬ特攻かと、ビルスは心底興味なさげに()()()()()迎撃しようとし──その頬を熱い拳で撃ち抜かれた。

 

『クリーンヒットォォッォオ!!!』

 

圧倒的な実力者であり、ましてやまだ発展途上とはいえ“身勝手の極意”を使用しているはずのビルスは本来であれば攻撃など受け付けない。あらゆる害意には、身体が勝手に反応して回避ないし防御ができるはずだからだ。

 

だからこそギニューの拳を受けてたたらを踏んだビルスは、腕と拳が砕け膝をついたギニューを見下ろしながらも、攻撃せずに今の事態を分析していた。

 

「……攻撃じゃ、ないのか?」

 

「ぐっ……! お前の言っていることはよくわからんが、私はヒーローだ。ヒーローの拳は、必ずしも相手を打ち倒すだけのモノではない……!!」

 

苦しみ呻きながらも再び立ち上がるギニュー。

 

ビルスはその様子に表情を変える。

 

「……馬鹿にして悪かった。本気でやろう」

 

そう言って向かい合ったビルスの表情から慢心が消えるのを最後に、ギニューは立ったまま意識を失った。

 

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「今のは、一体……!!」

 

向かい合い、立ったまま失神したギニューことホーンライダーがレッドリボン軍の医療班によって運び出され治療を受ける。

 

ラディッツはビルスが何をしたのかを見切ることができず、己の想定する以上に強かった彼の実力に戦慄していた。

 

「全力ではないが、本気にさせたか。ギニューのヤツ、この大会で最もレベルアップしたな」

 

クリムゾンは今の闘いを遠隔視能力で直接見届けていた。ゆえに試合の一連の流れを全て把握していたと言っていい。

 

まずビルスは試合直後にギニューに全力を出させようと、本人からすれば“軽い”エネルギー弾を発射。しかしそれはギニューがチェンジする許容量を上回っていたため、本能的に察したギニューが回避。

 

その後ギニューは生身のままでビルスに特攻。本来であれば身勝手の極意によって悪くて手痛いカウンターか回避されてしまうはずのギニューの攻撃はビルスの頬に直撃した。

 

ビルスはこれを“攻撃ではない”から身体が反応しなかったと判断したが、その通りである。

 

ギニューは、あろうことか()()()()()()()()()()()()()()()

 

これが完全な“身勝手の極意”ならばまた話も違っていたのかもしれないが、ビルスのそれは今だ未完成な代物。ゆえにギニューの無茶な行動によって圧倒的格下からの直撃をもらう羽目に陥ったのだ。

 

クリムゾンから一連の流れを説明され、ラディッツは考え込む。

 

「……となると、これ以降の試合でビルスの慢心を突くのは無理だと考えていいかもしれんな。あの目は、さっきまでのボケたものじゃない。歴とした“戦士”の顔だ」

 

「そうかもしれんな。だがまあ、そうでなければ面白くない。あいつ自身も薄々感じているさ、それほど余裕がある戦いじゃないことをな」

 

クリムゾンは一観戦者として試合を楽しみながら、もはや誰が優勝するのか予想の付かなくなったトーナメント表を見て笑うのであった。

 

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破壊神というのは、宇宙における絶対の抑止力である。

 

その存在は広い各個の宇宙において比類なき者として存在し、無限に近い時を過ごすために頻繁な休眠期を繰り返す。

 

付き人である天使はそんな破壊神のお目付け役であり、師であり、従者である。

 

そんな破壊神の仕事とは、宇宙における“害”となった存在の完全なる破壊である。

 

仮に銀河を蝕む可能性があるほどの病原菌が発生したとしよう。その発生源となった星にはまだ生き残りがおり、病原菌への対策を必死で行っていたとしよう。

 

そんな努力を星ごと破壊して無に帰すのが破壊神として求められる役割である。破壊神にはある程度末路を知る能力が与えられる。病原菌への対抗手段など決して作ることはできない。僅かに可能性があるとしても、その僅かに賭けて宇宙を危機に陥れることができないのが破壊神である。猶予はあれど、結末が変わらないのならば破壊せねばならないのが破壊神であるからだ。

 

ゆえに破壊神にはどこか歪んだ内面を抱える者が多い。

 

億年単位で強さを求められ続け、ひたすらに自らの意思に問わず破壊を強要される。

 

だからこそある者は享楽にふけ、ある者は己の高みを美として追求し、ある者は怠惰に過ごすことを至上とする。

 

本来であれば、地球はすでに破壊の対象となっている。クリムゾンの扱う生体ナノマシンン『ヴェノム』や『タナトス』は、一歩間違えば全宇宙を滅ぼしかねない劇薬だからだ。

 

だがビルスは思うのだ。

 

自らの領域に到達するほどの強者を集め、滅びの運命を免れてきたあの男ならば、この星が破壊される運命(さだめ)の軛からさえも逃れることができるのではと。

 

「けど、それが出来ないなら、この大会で僕に勝つことさえできないなら──その時は容赦なくこの星を“破壊”させてもらうからね」

 

ビルスは誰に言うでもなく自らの決意を口にするのだった。

 

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続いての試合は一風変わってコミカルな雰囲気に包まれていた。

 

何を隠そう、ホーンライダーに匹敵する千両役者と化しつつあるミスターサタンの試合であるからだ。

 

『『『『『サーターン!! サーターン!!』』』』』

 

会場を包む大歓声のなか、ミスターサタンは目の前に立つ相手との試合に臨む。

 

悟空は不意にアナウンサーが告げる情報のなかにサタンの情報があるのを聞き取り、その年齢に驚いていた。

 

「オメエクリリンと同い年だったんか!? 老けてんなあ!」

 

「老けっ!? お、おのれぇ、人が気にしていることをぉ!」

 

確かにひげ面の目立つサタンの顔は、毛のない影響もありスッキリとしたクリリンに比べれば老けている。

 

だがそもそも全盛期の肉体を保ち続けるサイヤ人が規格外なのであり、それに寄り添う妻達が地球人としても圧倒的に若々しいのだ。

 

『会場も大盛り上がりの中、それではそろそろ戦っていただきましょう! 開始(はじ)めいッッ!!』

 

アナウンサーの掛け声と共に動き出したのは悟空だった。

 

「太陽拳!!」

 

「まぶしーーーーーー!?」

 

開幕太陽拳によってサタンの視界を奪った悟空は距離を取り、そのまま変身を始める。

 

黄金の体毛に、たてがみの如く雄々しき深紅の頭髪。生えた尻尾は存在感を増すように長く太くなり、悟空の後ろを揺蕩っている。目付きは好戦的につり上げられ、その身から放たれるオーラは紛れもなくブロリーさえ凌駕するほどの圧力を放っていた。

 

超サイヤ人ユナイト。悟空最強の形態が早くも披露されていた。

 

『おーーっと孫悟空選手容赦なく全力全開です!!』

 

悟空は目の前のサタンの中に“なにかがいる”ことはクリムゾンに聞かずとも既に察していた。

 

だからこそ中途半端な変身形態で挑むのではなく、最初から全力で挑むことにしたのだ。それに仮に過剰なパワーだとしても、まだ慣れない身体を動かすのには丁度いい機会となる。

 

そう考え獰猛に笑った悟空は、体内にいる魔人ブウによって視力を回復されたミスターサタンへと格闘戦をけしかける。

 

「だだだだだだだっっ!!」

 

「あひゃばべばぎゃだ!!」

 

涙と鼻水を垂れ流しながら、ミスターサタンは悟空の攻撃を受け止める度にへし折れる手足の激痛に泣き叫び戦う。

 

「だあっ!!」

 

だが悟空は容赦しない。一瞬の隙を突きサタンの空いた鳩尾へと深く拳をめり込ませる。

 

「おっ……はあっ……!」

 

「おりゃぁ!」

 

昼に食べたモノが全弾発射される臨界の時点でサタンは右頬にフックをもらい、吐瀉物を撒き散らしながら高速で横回転して地面へと横たわる。

 

サタンは、マークの心は疾うに折れていた。もう闘いたくなんかない。家に帰ってミゲルの膝枕で寝ていたい。ビーデルを抱き締めて癒されたい。

 

そんなサタンの内情を読み取ってか、ブウは彼の身体をあえて回復せず待っている。

 

悟空は油断なく構え、多少の距離を取りながら対峙していた。

 

「……やっぱさすがだな、オメエ」

 

「へ、へへ……!!」

 

歯の抜けた間抜けな顔でサタンは立ち上がる。

 

膝は震え、満足に拳も握れないほどに全身がガタついている。

 

それでもサタンは立っていた。

 

「ミゲルさんが、ビーデルちゃんが見ているんです……!! 父親として、無様に負けるわけにはいきません……!!」

 

「……尊敬するぜ、そういうところよ」

 

ブウによって回復されるサタン。悟空は今度こそきっちり倒そうと突撃し、予想外の方向から来た怪光線をもろに浴びてしまう。

 

「なにっ……!!」

 

「やったーーーー!!!」

 

それは布石。サタンは何もただ殴られていたわけではない。きっちりと自分の仕事を果たしていた。情けなく飛び散った鼻水の中に紛れていた魔人ブウの一部が、横合いから悟空に向かって魔法を放ったのである。

 

悟空は、不意打ちによってあめ玉にされてしまっていた。

 

これで悟空は動けない。そう思ったサタンだったが、予想外のことが起きた。アナウンサーが勝利者宣言を出そうとした瞬間、あめ玉が浮き上がり喋りだしたのである。

 

『まだオラは負けてねえぞっ!!』

 

「いいっ!?」

 

驚愕したのはミスターサタンである。

 

しかし彼の動揺を見逃さない宇宙最強のあめ玉は、そのままミスターサタンを再びボッコボコにしていく。

 

(も、元に戻れ……!!)

 

慌てて中のブウが元に戻すもタイミングが悪かった。接近していた悟空はそのままアッパーカットでサタンの意識を今度こそ奪うと、全身を確認するようにして笑った。

 

「面白かったぜ。またやろうな、サタン!!」

 

朗らかに笑う悟空に後程そう言い直されたサタンは、全力で拒否したとのことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は今回入れられなかったのでちょっぴりサタン過去編やります。

では次回予告。

可能性という言葉がある。
かつて戦場で傷つき五体を失った男は、目の前に立つ少年の可能性に何を思うのか。
次回【王道】。振り返らずに走れ、悟飯。

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