逆行したTSヒカルは頑張ります   作:アキラ天狗

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11.塔矢邸での一幕

ケーキを食べながらヒカルは考えていた。

 

何故自分は塔矢邸にいるのか、と。

 

 

 

佐為に言われるがままアキラと打った。

そうしたら前世と変わらずヒカルに対して一直線で、何故かヒカルと一緒に院生試験まで受けるというアキラ。

唯一違うのが、この世界のアキラはヒカルに対してすごくフレンドリーな事。

それはヒカルが囲碁を馬鹿にしたり素っ気無い態度をとっていないからなのだが。

そのアキラに丸め込まれる形で塔矢邸へ。

 

 

 

「(塔矢んちでこんなにくつろぐとは思わなかったぜ…)」

『塔矢もあかりちゃんも楽しそうですねぇ♪』

「(ああ。何か保護者の気分だ)」

『(ヒカルも楽しそうですけど…)』

 

口に出すと怒られるので何も言わない佐為。

笑顔で子どもたちを見守る。

 

 

 

「ご馳走様でした」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした!とーやくんのおかあさん、おいしかったです!」

「ふふ、喜んでもらえてうれしいわ。緒方さんが買ってきてくれたのよ」

「そうなの?緒方さんありがとう。家まで迎えに来てもらった上ケーキまで」

「気にするな。喜んでもらえてなによりだ」

 

以外にも緒方は子どもが嫌いではないらしい。

アキラに囲碁友達ができたことを緒方なりに喜んでいた。

 

 

オヤツタイムも終了し、行洋に二面打ちしてもらうヒカルとあかり。

ヒカルは4子、あかりは9子を置いて対局が始まった。

盤面を目を輝かせて見ているアキラと、それを珍しそうに見ている緒方。

そしてこっそり子どもたちの写真を撮っている明子。

写真を撮って満足したのか、明子は夕飯作りに台所へ消えていった。

 

 

 

「…ヒカル君も囲碁を始めて2年なのかね?」

「はい。テレビで見て覚えて、今森下師匠(せんせい)の研究会に行かせてもらってます」

「…ふむ」

 

行洋は考え込む。

目の前にいる少年は、息子のアキラより遥かに強く感じる。

今打った感じだとアキラより少し強いだろうか、という程度なのだがそうではない何かを行洋は感じ取っていた。

そしてアキラも少し違和感を覚えていた。

先日打った時とは違った何か。

それがわからなくてヒカルをマジマジと見つめてしまって、ヒカルは慌てる。

 

「(前回がオレで、今回佐為が打ったってバレたかな?)」

『いえ、そんな事はないと思いますが…。先日の対局ではヒカルが私の打ち方をしていましたし…』

 

アキラもよくわからない違和感で、考え込むというよりはキョトンとした顔であった。

そしてヒカルに続き、あかりも終局した。

 

「二人ともすごいな…。ヒカル君は森下九段の研究会で力をどんどんつけて、あかりちゃんは囲碁教室だけなんだろう?才能がある」

「おがたさん、わたし1しゅうかんに6日はヒカルとうってるよ!ヒカルとうつとつよくなっていくのがわかるの!」

「え~…やめろよあかり…。オレは森下師匠(せんせい)のとこで打ってるからだよ。オレの力じゃない。あかりはあかりだけの力じゃん」

「ヒカルのおかげだよ!ヒカルとうってるとわかるもん!」

「…アリガト(まぁ佐為のおかげなんだが)」

『ヒカルもあかりちゃんに教えてるじゃないですか♪』

 

緒方が二人を褒めると、今度は二人がお互いを褒めだした。

なんというバカップルだと思わず緒方は思ってしまう。

 

「院生試験受かれば学校くらいでしかあかりと打つ機会が減っちゃうからなぁ。白川先生に頼んで森下研究会にあかりも来る?」

「えええ…わたしまだよわいから行きづらいよ…。もうちょっと力つけれたら行きたいな」

「だったら(うち)の研究会に来るかい?」

 

行洋の言葉に皆が振り返る。

 

「あかりちゃん、君は自身が思っている以上に打てているよ。家で勉強しないかい?」

「え?え?とーや先生のところで?ヒカルは?」

「良かったらヒカル君もどうだい?森下には私からも言っておこう。」

 

突然の塔矢名人研究会へのお誘い。

正直ヒカルは遠慮したかった。

前世も含めて自分は森下門下であって、塔矢門下をライバル視していたから。

仲良く勉強なんてできない…そう考えていた。

 

 

 

が。

 

 

 

『はいっ!!行きます!!ヒカル、行きましょう!!!』

 

 

 

佐為はヒカルの考えている事などには全く気付かず参加したがっていた。

ヒカルも佐為が参加したいのなら…と塔矢名人の研究会へ参加することにした。

月曜と金曜に時間のあるものが研究会へ参加しているとのことで、参加するときはなるべく緒方が車を出してくれることになった。

 

そしてその時のアキラの嬉しがり方がすごかった。

「ほんとうに二人ともウチに来てくれるの?」

「うれしい!こんどからすごくたのしそう!」

「これからもよろしくね!」

などなど、ヒカルとあかりの手を握ってはしゃぐ。

アキラは先ほどの違和感の事などすっかり忘れて喜んでいた。

 

「(佐為…オレ超多忙じゃね?ほとんど休みなくね?)」

『楽しみです♪』

「(…はい。頑張ります)」

 

ヒカルはちょっと自分の体力作りも頑張らないといけないと遠い目をする。

 

「ねぇ、進藤くん。いまからボクと打ってくれないかな?」

「ん。いいぜ。ってかさ、呼び捨てでいいから。なんか”進藤くん”じゃ堅苦しいよ」

「あ、そうだね!わたしのこと下のなまえでよんで!わたしもアキラくんってよぶね!」

「そ…そう?じゃあヒカルとあかりちゃん…で」

「!!!??(違う!!そうじゃねーよ!!ああああ、また塔矢を変な方向に行かせてしまったかも…)」

「ヒカル、どうしたの?」

「…なんでもない。よし、アキラ打つぞ」

「…!うん!」

 

同い年の子からの名前呼びがまた嬉しくてテンションが上がってしまうアキラ。

微笑ましく見守る行洋と緒方。

本日何度この微笑ましい光景があったのか。

佐為もニコニコしながらアキラと打つ。

 

 

 

前世では敵対心があったヒカルとアキラ。

それでお互いが力を高めていった。

だが今世では同じ研究会で仲良くお互いを高めていく事になる。

 

 

 

 

 

何故か明子の強い希望で夕飯までごちそうになったヒカル達。

自宅にはすでに連絡をいれていたらしい。

明子の料理の腕はとても良く、和食から中華洋食なんでもござれと食卓に並んでいる。

子どもたちはすごく喜び、そろって「いただきまーす!」と言った後食べ始めた。

大人数で食卓を囲う事に慣れていたアキラも、ヒカルとあかりがいることでいつも以上に食事が美味しく感じられた。

 

 

 

 

 

「じゃあ院生試験の時会おうな。バイバイ」

「うん!またねヒカル!あかりちゃんもまた来てね!」

「またねアキラくん!らいしゅうまた来るね~!」

 

すごくフレンドリーな別れ。

前世との違いにため息が出てくるヒカル。

 

どうしてこうなった?

自分がアキラに会いにいったせいで?

ヒカルの悩みは尽きない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰宅後。

 

「塔矢から…ヒカルって呼ばれるのか…。前と違いすぎて塔矢が怖い…」

『ヒカル、塔矢じゃなくてアキラでしょ。すぐ慣れますよ♪』

「………うん。頑張る」

 

 




名前呼びです。
呼び方はすごく迷いました。
「進藤!」って言ってこそのアキラ君ですが、前世と区別をつけるためにヒカル呼びになりました。

そして明子さん最強説。
明子さん大好きです。

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