逆行したTSヒカルは頑張ります   作:アキラ天狗

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前提に…。
色々とご意見があるでしょうが、これはあくまで私が考えた内容です。
このキャラがこうなるのはおかしい!となると思います。
今回ちょっと何で?となるシーンがあると思いますが、読んでいただけると幸いです。





14.初めて

季節は流れ、冬になった。

現在ヒカルは2組上位、アキラと冴木は2組10位前後にいる。

この頃になると院生メンバーに慣れ、ヒカルは年長組に甘える事を覚えていた。

 

「よお進藤、塔矢。これやるよ」

「わぁ!ありがとう村上さん!美味しそう!」

「村上さんありがとうございます。えへへ」

 

意外にも一番この二人を甘やかしていたのが前世の若獅子戦でヒカルと対局した村上である。

ヒカルの太陽の様な眩しい笑顔とアキラの照れた笑顔が見たくてちょっとしたお菓子をついつい与えてしまう。

例えるなら向日葵と紫陽花。

対極にいる二人の笑顔は院生メンバーに癒しを与えている事を二人は気付いていなかった。

 

 

「(何か前世と違ってオレら可愛がられてる?)」

『最年少って事も大きいのでしょうが…何より今のヒカルは生意気ではないですからね』

「(う…)」

 

前世を思い出し言葉に詰まるヒカル。

子どもだったからというには子ども過ぎた。

生意気発言をしては周囲を困らせたものだと反省する。

そう、反省したからアキラは友好的なのだ。

 

 

 

 

 

お昼になり、ヒカル繋がりで仲良くなったアキラと冴木も一緒にお弁当を食べる。

他愛もない話で盛り上がり、ヒカルは改めて今の生活がどれだけ恵まれているか実感する。

隣を見ると佐為がいる。

前世を含め、佐為と一緒にいる期間はちょうど5年。

それがとても嬉しく、こっそり二人でお祝いでもしようかと思う。

 

 

飲み物がなくなり、ジュースを買いに行こうとロビーに出るヒカル。

そこに院生ではない誰かがいた。

「(そろそろ院生試験の時期か。誰か受けるのかな?)」

『そうですね…ん?どこかで見た様な…』

 

小学生高学年と思われるその人物を見て考えるヒカルと佐為。

横顔だったからあまり顔が見えない。

そこにいるショートカットの少年に話しかける事にした。

 

「ねぇお兄さん、院生試験受けに来たの?」

「え?」

話しかけてきたヒカルの方に振り向いた少年。

その顔は―――。

 

「(伊角さん…!!?)」

 

前世で散々お世話になった伊角がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

残りの昼休み、伊角と話をしていたヒカル。

伊角も懐いてくるヒカルに心を許して談笑する。

試験は午後からという事で早く着いた伊角はロビーにいたのだが、それまで試験のことを考えすぎていて不安になっていた。

そこに屈託のない笑顔で話しかけてきたヒカルと会話することで緊張もほぐれる。

ヒカルの「伊角さんなら絶対受かるから!」という決定事項発言に戸惑うも、何故か説得力を感じ「頑張るよ」と返事を返す。

 

伊角と別れたヒカルは休憩室に戻り、「遅かったね」とアキラと冴木に言われるが笑顔で誤魔化した。

 

 

午後の対局も終わらせ、対局相手と検討していると背後に気配を感じるヒカル。

振り返るとそこには笑顔の伊角がいた。

 

「伊角さん受かったんだね!」

「うん。進藤君がオレの緊張をほぐしてくれたから、落ち着いて試験を受けれたよ」

「よかった!」

 

二人が仲良く話してるのを皆が「誰?」と尋ねて来てヒカルは説明をする。

ヒカルのおかげで伊角も院生メンバーに気後れせずに話すことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日課の寝る前の対局をしながら今日の事を話す。

 

「伊角さんついに院生になるんだな~!ホント嬉しいぜ!」

『はい♪伊角さんとは…本当に以前のプロ試験以来ですものね…』

「そうだな…。あれから伊角さんどうしたんだろうな…」

 

もう知ることができない前世。

二人は思いふけながらある棋譜の検討をする。

それは名人戦の最終戦の棋譜だった。

 

今年、塔矢行洋は名人戦防衛に敗れた。

そしてなんと新名人になったのが森下である。

森下はヒカルの才能を認めて、ヒカルのやる気に自分も奮い立たせていた。

そこに勢いに任せてなんと塔矢行洋を破り新名人となった。

行洋はこの年名人戦は防衛できなかったものの、現在天元戦を争っている。

 

「は~、何度見ても森下師匠(せんせい)のこの一局しびれるぜ!」

 

前世の森下より7年半も前の今の方が勢いがある。

本因坊戦もリーグ入りしているのでまだまだ勢いは止まらないであろう。

前世とは違った方向へ進む。

以前と同じだと佐為が消えてしまうかもしれないと恐れているヒカルには、未来が違う方向へ向かうのは不安ではあるが安心もできる。

 

「塔矢先生も負けたとはいえまだまだ勢いがすごいし、なんだかあこがれるぜ!」

『………』

「…?佐為…?」

『あ…いえ、見ごたえのある棋譜だなと…』

 

佐為は誤魔化したがヒカルは気付いた。

自分もこんな対局がしたい、そう佐為が考えているんだと。

まだ小学生の自分が憎くなる。

しかし、仕方がないのである。

7歳の子どもが高段者顔負けの棋力を見せ付けるわけにはいかない。

ヒカルは佐為に「打とう」と言って二人は対局を始めた。

 

打っていてヒカルは考える。

自分の棋力もすでに高段者。

佐為はタイトル取れるほど。

なのに手加減して打っているのは良いことなのか、と。

 

「なぁ、佐為」

『はい?何でしょうヒカル』

 

「オレ達手加減して打ってるだろ?………それって失礼なのかな?」

 

その問いに佐為は一瞬言葉に詰まった。

ヒカルは「オレ達」と言ったが打っているのは佐為。

徐々にではあるが棋力を上げて打っていっている。

しかし二人の棋力はこんなものではない。

ヒカルも森下・塔矢名人の研究会で勉強をし、佐為と毎日打っている事で棋力を格段に上げトッププロに引けを取らないまでに成長している。

 

「オレ達イカサマみたいなもんなのかな…と思ってさ」

『ヒカル。イカサマなんかではありませんよ。これはあなたが経験して積み上げたものです』

 

そう言って笑顔で佐為は碁盤を指す。

そこには二人で完成させた美しい一局。

佐為とこんなに美しい一局が打てる、その事にヒカルは思わず顔がほころぶ。

 

「そうだよな。最初に言ってたのに。こーんなチビが強すぎたら目立ちまくって大変だ。なんだかアキラに失礼な気がしてたけどオレらチートだからしょうがねーか」

『(ちーと?)そうです。徐々に、そうですねェ…ヒカルが中学を卒業する頃にはトッププロとして活躍しても良いのでは?』

「うん!わかった!やっぱ佐為に聞いてみて良かった。安心できる回答を得られるもんな!」

 

ヒカルはにっこり微笑み、佐為も微笑み返す。

その時階下から美津子の「早く寝なさい」という声が聞こえ慌てて床に着く。

 

 

 

 

『(さっきのヒカルの笑顔は危なかったです…。思わず抱きしめてしまうところでした…)』

「佐為、なにやってんだよ?寝ようぜ?」

『はっ、はい!』

 

一緒に寝るのは毎日のことなのだが、佐為はヒカルになるべく触れない様にしている。

好きだと自覚してからはヒカルを大切にしようと、触れてしまうとキスでもしそうな自分を抑えようとしているためである。

だがそんな佐為の思いもむなしくヒカルが思いっきり抱きついてくる。

特に冬はそれが酷くなり、完全に抱き枕状態だ。

今はまだヒカルが子どもだから良いが、これから成長したら―――そう考えるだけで佐為はため息が出そうになった。

 

「なあ佐為。前から思ってたんだけどさ」

『はい何でしょう?』

「寝るときまで烏帽子かぶって邪魔じゃねーの?」

『え…?いえ特には…。それに私の時代では人前で烏帽子を取るという行為は無礼に当たりましたので』

「え~?マジで?何かそれかぶって布団に入ってると違和感というか…烏帽子が壁に埋まってるというか…とりあえず、ソレ脱げねぇの?」

『だっ、駄目です!元服してからは誰にも見られた事がないんです!』

 

佐為の烏帽子を取ろうとヒカルが手を伸ばす。

だがその手を佐為が掴む。

 

「ダメなの?」

『(う…)』

 

ヒカルの上目遣いに佐為の心も揺れる。

しかし佐為の時代では人前で烏帽子を取るという事は下着姿になるよりも恥ずかしい行為。

それを取る時。

 

それは。

 

 

『そんなに取ってほしいんですか?』

「うん!だって帽子かぶってるなんて寝てる感じじゃねーじゃん!」

『………帽子とは違うんですが…』

「そうなの?でも見てみたいなァ………」

『………ヒカルが望むなら、取ってもいいですよ。ただし…』

「ただし?」

 

『私と寝所を共にできますか?』

 

少し間を置いた佐為の言葉。

人前で烏帽子を取る時は限られている。

もちろん人にもよるが。

佐為は自分がついに言ってしまったと、たった7歳の少女に何を言ってしまったんだろうとドキドキしながらヒカルを見つめる。

そしてヒカルの回答は。

 

「寝所を共にって…いっつも一緒に寝てんじゃん!じゃあ問題ないな!」

 

にっこりと笑顔で答える。

その言葉を聞いて佐為はうな垂れた。

現代風に説明するならば「orz」状態。

そう、ヒカルは性に疎かった。

そして勉強不足でもあった。

 

『(ヒカルのばか…私の気も知らないで)』

「佐~為~?」

『…いえ何でもないです。寝ましょう』

「烏帽子は取らねーの?」

 

ヒカルの言葉に佐為は覚悟し、それに手を伸ばす。

 

『わ…笑わないで下さいね…』

「?別に笑わねえけど…」

 

この時代では被らない方が当たり前なのだと自分に言い聞かせて佐為は烏帽子を取った。

ドキドキしながらヒカルを見る。

そのヒカルはキョトンとした顔だ。

何か自分は変なんだろうかと佐為が頭を隠そうとしたらヒカルがそれを阻止する。

 

『ヒカル?』

「頑なに拒否するからなんかあるんかと思ったら、なんだ、キレイな髪の毛だな」

『!』

 

佐為の髪の毛を撫でる。

ふんわりとした感触を確かめながら「早く寝ようぜ」と佐為をベッドに促す。

こんな初めての行為に佐為は顔を真っ赤にした。

しかし電気を消しているのでその様子をヒカルに知られることはなかった。

 

 

 

『責任…取って下さいよ…』

「なんか言ったか?」

『何でもありません!ほら、ベッド行きましょ!」

「おう!」

 

どこか嬉しそうなヒカル。

そしていつもの様に佐為に抱きつく。

だが今日はいつもと違った。

いつもはされるがままだった佐為がひかるを抱きしめ返したのだ。

 

「佐為…?」

『こっちのほうが温かいでしょ?』

「…うん。あったかい。佐為のぬくもりだ」

 

ヒカルが佐為の胸元に頬を寄せた時、佐為はヒカルの額にキスをした。

 

「!!!?さささささ佐為!?」

 

慌てて飛び退こうとするが、佐為に抱きしめられていてそれは叶わない。

月明かりの下、目がなれてきてヒカルの顔が真っ赤になっているのがわかる。

 

『おやすみなさい』

「………おやすみ」

 

烏帽子を取った姿を見られたのがヒカルが初めてだった佐為は決意をする。

光源氏計画上等、ヒカルを自分の嫁にする、と。

『(可愛いヒカル。愛してます)』

ヒカルを抱きしめる力が強くなる。

 

 

 

ヒカルは佐為に依存しているが、佐為もまたヒカルに依存している。

お互いの気持ちに気付くのはそう遠くない。

 

 

 

 

 

 

そうして夜が更けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ちくしょう…佐為め…からかいやがって…。今に見てろよ、大きくなったら誘惑してやるんだからな!)

 

その思いも虚しく中々成長しないヒカルであった。

 

 







ご意見は色々あると思います。
まず森下九段ですが、原作で冴木が「本因坊・名人戦のリーグにいた」「タイトルの挑戦者に2回なったこともある」と言っています。
それが今回という事で…。
塔矢先生ですが、今回名人戦は落とします。
また名人の位にはつきます。
ネタバレになるので言えませんが、もしかしたらコミックス持っている人は気付くかもしれません。
そしてヒカルは塔矢先生より森下先生を師匠としています。
師匠が勝って嬉しいですが、アキラのケアも忘れていません。
原作では森下門下は塔矢門下をライバル視していましたが、今回は割りと仲が良いです。
全て書き込むと話が全然進まずカットしています。

そして村上さん、可愛い弟ができたみたいでデレデレです。
ヒカル=ひまわりは周知の事実(?)ですが、アキラのイメージフラワーは迷いました。
最初、ユリだったんです。
しかし紫陽花の”土の成分で色が変わる”という事を考えてそちらにしました。
ヒカルの態度でアキラの姿勢も変わる…という。
イメージフラワーが違いましたら別の花へ脳内変換お願いします。

伊角さん登場です。
小学5年の伊角さんです。
イラスト書いてたら誰コレ状態になってしまいました。
一応タイムテーブルみたいなのを作っていて、どのキャラをどこで出すかは決めています。
なるべくオリキャラは出さない様に頑張っています。
唯一出したのが幼稚園の先生…。佐為より先に…。

ついにイチャイチャしだしました。
初キッス…!(おでこですが)
佐為、光源氏計画という言葉を知っていたのか…。
ヒカルが読んでいた漫画のせいです、きっと。

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