ソウル=生命の魂のことを指す
全ての生き物は、自分だけのソウルを持っており、その形は多種多様。
そして人間のソウルは、ほとんどの形が武器である。
その形を具現化、己の武器として戦う者たちのことを「ソウルアクター」と呼ぶ。
また、ソウルが暴走し他の生命や周りの者に危害を及ぼすようになった存在のことを
「ヘル」と呼ぶ。
ここはそういった人、もの、知識などが存在する世界である。
そんな世界の国の一つ ヴィンガルティア
その中心部にある、ソウルの扱いを学ぶ学園の中でもレベルの高い学園
ウェスタリア学園の敷地内にある建物の一つ、一般的に体育館と呼ばれる建物の中で、あることが行われていた。
「では、ソウル確認テストを始めます。ソウルを具現化してください。」
ここ名門ウェスタリア学園では、月一でソウルの確認テストが行われる。
もちろん名門なので、ほとんどの生徒にとっては休み時間と同じようなものだ。
あ、ほとんどってどういうことかってのはな…
「あ、あの…まだですか?そろそろ20分になるんですけど…」
「ぬぉぉぉぉ……だぁー!できねぇよ!チクショー!!」
偶に居るんだよ、俺みたいに具現化できない落ちこぼれが。
俺の名前は『アキト=アカツカ』十七歳、ここウェスタリア学園二等部二年の学生だ。
そんな俺は今現在…
「うぇぇ…ぃぃぃぁぁ」
自分の席の机に突っ伏していた。
もうこの学園に入ってもう十一年…
俺は、いまだにソウルの具現化に成功していない…
こんだけ成功しないと・・・
「ほんともうなんかやだ」
こんな感想しか出てこないのもしょうがないと思うんだ。
「どうしたのアキト?あ!分かった!またソウルの具現化失敗したんでしょ」
そういって青い髪をサイドテールにした女子生徒が声をかけてくる。
「あぁ、そうだよアイリ…これで通算百二十二回目の失敗だ」
声をかけてきたのは、アイリ=アレクセリア
このクラスの委員長であり、学園のアイドル的存在、去年の二等部ミスコンの第一位
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能(水泳を除く)の優等生だ。
ちなみに、ソウルは剣系統のレイピアだ。
ついでに説明しておくと、俺の幼馴染だったりする。
「ホントなんで具現化だけダメなんだろうね~他の成績私より上なのに」
俺の背中にのしかかり頭の上に顎を乗せながらそんなことを呟く。
「いや知らねぇよ…それに去年はお前のほうが成績よかっただろ、ってか降りろ…ファンクラブの連中の視線が痛い。」
さっきからザクザク刺さるような視線が教室だけじゃなく廊下からも飛んでくるんだよ。
「そんなの知らないもーん、去年の成績はアキトが事故って入院してたからだし、ファンクラブ云々は私ひとかけらも認めてないし、何というか…えーっと…うーん」
「気持ち悪い?」
そんなことはないと思うが、一応聞いてみる。
「そうそれ!気持ち悪いのよ!私はあんなのに慕ってもらっても全くうれしくないの!」
そんな事あったわ。
アイリの気持ち悪い発言により刺すような視線を送っていた奴らが一斉に地に倒れ伏した。
近くの奴を見ると、人生に絶望したような顔をしていた。
対して、アイリを見ると、
「ん?どうかした?」
疑問が解決したのが嬉しいらしく、めっちゃいい笑顔だった。
「いや、お前って案外鬼畜だなって思ってな」
「いきなり酷くない!?私泣いちゃうよ?」
そんな事を言いながら両手で顔を覆うアイリ。
「よく言うぜ…お前の涙なんてここ六,七年見てねぇよ」
ちなみにアイリは滅多に泣くことが無い。最後に泣いたのは確かドキュメンタリーのドラマを見た時だったはずだ。
「あ、バレた?」
「やっぱり嘘泣きだったか・・・・そろそろ終わるか?」
「うん、えーと、あと3.2.1!」
キーンコーンカーンコーン
アイリのカウントと共に学園の中にある時計塔の鐘がなり、
今日一日の授業が終わったことを告げる。
「んん・・あぁ・・・終わったぁ・・・」
両腕を思い切り伸ばして一日の終わりを実感する。
「さて、帰るとするか」
鞄を持ち、教室を出ようと
「とうっ!」
「ぬほぅ!」
したところでアイリが背中に飛びついてきた。
「ええい!降りんか!」
とりあえず無理矢理ひっぺはがして地面に下ろす。
「むぅ~アキトのイジワル~」
頬を膨らましてふて腐れるが知らん。
「で?何だ?」
「うん!えっとね、私今日部活ないからさ・・だから一緒に帰ろ!」
確かに最近一緒に帰ってなかったし・・・たまにはいいか。
「よし、一緒に帰るか」
「!うん!!」
そう告げると、アイリは満面の笑顔をうかべた。
そうしてアイリと一緒に帰ろうと教室を出た。
「~~~くん~~~~」
ん?何か聞こえたような・・・
「~~~あっ~~~くん!~~~」
・・・なんか廊下の端のほうから物凄いスピードでこっちに向かってくる人が見えるんだが・・・
「あっくぅぅぅぅん!!」
「ぬぐはっ!」
スピードを一切落とさずに突っ込んできたのは
「ぬはぁ~数時間ぶりのあっくんの匂い~」
「ちょっと!何やってるの!お姉ちゃん!」
アイリの姉、ラキア・アレクセリア(変人)だ。
「ちょ・・ラキア姉・・・苦しい・・どいてくれ」
ちなみに、今の状態はラキア姉が上に乗って胸元に俺を抱きしめている訳で、正直顔が圧迫されてかなり苦しい。
とにかくアイリに手伝ってもらいラキア姉をひっぺはがす。
「ラキア姉・・・毎回会う度にとびついてくるの止めてくれよ・・・正直身が持たないからさ・・・」
「むぅ~・・・別にいいじゃないのよ~・・別に減る物じゃないでしょ~」
「まぁそりゃそうだが・・・」
ごめんなさい、めっちゃ減ります。主に理性的なものが。
「だったら別にいいじゃないのよ~」
そう言ってまた抱きついてくる。
改めて紹介しておこう。
この人は「ラキア・アレクセリア」アイリの姉で、
ウェスタリア学園一等部2年
学校が終わるとほぼ間違いなく俺とアイリの所に猛スピードでやってくる。
そのせいか、一等部でつけられたあだ名が「猛進ラキア」
が本人はあまり気に入ってないようで。
ちなみにソウルは、槍系統のレア物「パイルバンカー」だ。
あと変態だ。
「あっくん?今何か失礼なこと考えなかったかな?」
「い、いや?何も考えてないけど?」
なんで女性ってこうも勘が鋭いんだろうか・・・。
「ところでさぁ、今日って二等部はソウルの確認テストだったんじゃなかった?二人ともどうだったの?」
ラキア姉がそう聞いてくるが・・・俺は・・・
「わたしは大丈夫だったけど・・・アキトは、」
「言わないでくれ・・・泣けてくる」
「あぁ・・・また駄目だったんだね」
ソウルが出せない。それはソウルの扱い方を学ぶこの学園では、落ちこぼれの扱いを受けるのと同じ。
と、いうか実質落ちこぼれだ。
その為、ソウルが出せない俺は、そこに関する成績は最下位だ。
「なんでアキトはソウルが出せないだろうねぇ。ほんと疑問に思うよ」
「うぐっ」
ラキア姉の地味な一言がこれまた地味に俺の心のライフを削っていく。
「かれこれ11年1回も成功してないどころか出る気配すらないもんねぇ」
「ぬぐっ」
今度はアイリの言葉で俺の心のライフがまた減った。
数字に換算したら17ポイントくらいだろうか。
とにかくそんな感じで削れていく。
「「ねぇ、なんで?」」
姉妹揃って聞いてくる。
「そんなもん、俺にわかるわけないだろ!つーかなんか二人とも俺弄るの楽しんでないか!?」
「そんなことないよ~おもしろがってるんだよ~?」
とラキア姉。
「・・・・そんなこと言うのはこの口か?」
「ひはひ~あっふんひはひお~!」
とりあえず頬をつまんで弄くりまわしておいた。
「そういえばさ~、また出たみたいだね~あのヘル」
「あぁあの事件か」
実は2ヶ月ほど前に、誰か知らんがソウルを暴走させてしまった奴がいる。
そして街から少し離れた所にある森で人が襲われる事件が時々起るようになった。
「ねぇねぇ・・・明日休みだしさ・・・3人で森行こうよ!」
・・・・この変態は何をトチ狂った事を言っているんだ?
「何言ってるのお姉ちゃん?危ないから駄目に決まってるでしょ」
アイリがそう言ったが、
「え~!行こうよ~!行きたいよ~!」
だだをこねて行きたがるラキア姉。
「ダメ!」
「行きたい~!!」
こうやって見るとどっちが姉か分らんな。
「2人とも決まったら走ってこいよ~ ゆっくり先行ってるからな~」
巻き込まれるのが嫌だったから、そんな言い訳をしつつ逃げる。
数分後、二人が走って追いついてきた。
ラキア姉の数分間の本気の説得の末、アイリが折れたようでどうやら行くことになったらしい。
そして当日・・・
「ゴホッゴホッ!・・・うぅ~頭痛いよ~、寒気がするよ~・・・」
一番行きたがっていたラキア姉が風邪をひいてしまった。
「まったく・・・だから昔から、お風呂からあがったら髪の毛はしっかり乾かしてって言ったのに・・・」
と、溜息をつくアイリ。
「仕方ない・・・二人で行くか・・?」
「えぇ!?結局行くの?」
俺の提案にアイリが驚くが、何故だ?
「だって私はお姉ちゃんが行きたいって言ったから行くって話になっただけで・・・」・
「行ってきてぇ~・・・そしてヘルの写真を一枚でも・・・」
そういやラキア姉・・・一等部でヘル対策の講義受けてたっけ。
「と、本人がこう仰っているため行こうと思うのですが?」
「はぁ・・・わかったわよ・・・」
そう言ってアイリはしぶしぶ折れた。
さてと今俺とアイリは例の森の中にいる。
ちなみに既に3時間ほど森の中を探し回っている。
「ねぇ?もう帰らない?ホントにヘルが出たら洒落じゃすまないしさ」
「確かにそうだけどさぁ・・・何か気になるじゃん?」
「そう言われるとそうだけどさ・・・」
やはりアイリも気にはなっているようだ。
そんな時
ガサガサッ!と近くの茂みが激しく揺れた。
「!?何だ・・・?」
そこから飛び出してきたのは、
「!!・・・ヘル・・・例の事件の奴ね・・・」
真っ黒に染まった人型・・・「ヘル」だった。
両手には、拳系統の爪を装備している。
「!アキト逃げて!」
「グハッ!?」
俺は突然飛びかかってきたヘルに反応できず、突進を食らって吹き飛ばされ木に叩きつけられた。
「クソったれが・・・痛ってぇ・・・」
背中と腹を強打したが耐えられないほどの痛みじゃない。
「アキト!」
ソウルを具現化したアイリがこっちに走ってくるが、
「危ねぇ!アイリ!」
「えっ?きゃぁ!」
横から飛び出してきたヘルに吹き飛ばされ木にぶつかる。
その衝撃で気を失ったらしく、レイピアが霧散したのが見えた。
ヘルはアイリに目標を定めたらしく、爪をすり合わせながらゆっくりとアイリに近づいていく。
俺は・・・アイリを・・・守れないのか?
そんな時声が聞こえた。
『力がほしい?』
?誰だか知らんが欲しいな。
傷つける力じゃなく、守る力を・・・助ける力を寄こせ!
『まったく・・・君って結構強欲だね』
何とでも言えよ・・・
『いいよ・・・君の力を・・ソウルを解放しよう』
その言葉を最後に、声は消えた。
誰だか知らんがありがとな・・・。
ふと自分の手を見ると、
両腕に白く輝く炎が纏わりついていた。
まぁそんなことは今はどうでもいい!
アイリの方を見るとヘルが爪を振り上げていた。
それを見た瞬間、俺は自分でも驚くほどのスピードで飛び出していた。
気付いた時にはヘルの目の前だった。
「グオッ!?」
ヘルは、突然目の前に現れた俺に、一瞬驚いた様子だったが、かまわず爪を振りおろしてきた。
そんな中、俺はこんなことを考えていた。
「(これ当たったら無事じゃすまないな・・・だけどせめて・・・せめてアイリだけは傷つけさせねぇ!)」
とっさに右手を前に出す。
その瞬間、両腕に纏わりついていた炎が右手に集まり、盾の形になり・・・弾け飛んだ。
弾け飛んだ炎の半分ほどがヘルに当たりその体を吹き飛ばした。
そして炎の弾けた俺の右手には、
白く輝く少し大きな盾が存在していた。
「これが・・・俺のソウル?」
確かに盾は守る力だ。
「でもこれじゃ盾殴り(シールドバッシュ)ぐらいしかできないぜ?」
そんな事をつぶやくと、
盾は再び炎に姿を変え、今度は刀の形になった。
ふと前を見ると、
「やべっ!」
先ほど吹き飛ばしたヘルがいつの間にか戻ってきており、俺に向かって爪を振りおろしてきていた。
咄嗟(とっさ)に避けようとするが、
それより早くボッ!という音と共に再び炎が弾け、先程と同じ
ようにヘルを吹き飛ばした。
そして右手には白い刀が存在していた。
「持ち主の思いによって姿を変える的な感じか?まぁいいこれで・・・」
三度(みたび)戻ってきて爪を振り下ろすヘルを刀で弾き、
「戦える!」
腹に蹴りを入れて吹き飛ばす!
「さてと・・・ヘルの対策は・・・確か」
そうだ、ラキア姉が昔言ってたな・・・『ヘルはソウルと同じ!気絶させるだけのダメージを与えたら倒せると思うよ!』って。
「でもあの速さだ・・・何発も当てられないよな」
そう言うと、刀は炎に戻りハンマーに姿を変えた。
「うん・・・これならいける!」
ハンマーを軽く一振りし纏わりついていた炎を払う。
「さてと・・・こっちは体痛ぇんだ・・・だから一発で」
ハンマーを肩に担ぎ、猛スピードで突撃してきたヘルに、
「ぶっ倒す!!」
カウンター気味に顔面に、叩きつける!
「グギャァァ!!」
顔面に強烈な一撃を入れられたヘルは数メートル吹き飛び、
その行動を停止した。
「終わった・・・大丈夫か?アイリ?」
俺のソウルらしい炎を消し、気絶したアイリを確認する。
「・・・むにゃ・・・もう無理だよぉ・・・」
・・・寝てた。これほどまでにないぐらいぐっすりと。
「はぁ・・・まったく命の危機だったってのに呑気なもんだぜ」
ふと倒したヘルの方を見ると光の球になってこっちに向かってきた。
「?なんだ?」
光の球はしばらく俺の周りをグルグルと回り、
『ミツケタ』
「?・・・うおっ!?」
そんな声が聞こえたかと思うと、光の球は俺の中に入ってきた。
・・・どうやら先程の爪のソウルが俺に宿ったらしい。
「・・・まぁ、いいか・・・よっと」
未だ寝たままのアイリを背負い森を抜けるために歩き始める。
何はともあれ、これで俺もようやくソウルが使えるようになった。
これでアイリを・・・好きな人を守ることができる。
・・・なぁアイリ・・・これからは何があろうとも・・・俺がお前を守るからな。
そんな事を密かに考えつつ、俺はアイリを背負ったまま街へと戻るのだった・・・。
ちなみにアイリのうちに戻った時に、元気になったラキア姉から、
何があったのかを2時間近く問いただされたのはここだけの話だ。