インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~ 作:鉄血のブリュンヒルデ
「ラウラ!」
ステラは走りながら、恋人の名を呼ぶ。呼ばれた少女は、頬を膨らませて、不機嫌そうに振り向く。
「遅いぞステラ。集合に十分も遅れている。これでは、今来たぞ、と言えんでは無いか!」
どうやらラウラの怒りは、遅れたことに対する事ではないらしい。
「いや、だって、千冬さんに、一夏達の試験を頼みたいって言われて…」
「ムッ。お前は恋人である私より、一夏達を優先するのか?」
ラウラは冗談交じりに、意地悪な質問をする。
「そんな訳無いじゃん!だって……」
「だって?」
ラウラが聞き返すと、ステラは少し涙目になりながらも答えた。
「汗掻いたままだったし、メイクもしてなかったし……ラウラとの初デートなんだよ?ちゃんと、準備して行きたかったんだもん…」
「っ?!///」
そう言ったステラが、ラウラにはとても美しく見えた。それ故に、顔を赤らめ、目を逸らした。
「そ、そうか……それなら、許してやらんでも、ないぞ?」
ラウラがそう言うと、ステラの顔は笑顔に染まり、ラウラに抱きついた。
「ありがとう、ラウラ!大好き!」
「んなっ?!///」
いつもは恥ずかしがって、好きなどの言葉を使わないステラが、今耳元で大好きと言った。その言葉を聞いたらラウラは、更に頬を赤らめるのだった。
…………………………
「ねぇラウラ!次はあっち見てみようよ!」
ステラはそう言いながら、ラウラの手を引く。ラウラは驚きながらも、笑顔でそれに従う。
「この服、きっとラウラに似合うよ?」
そう言ってステラは、ショーウィンドウに飾られている一着のワンピースを指した。
「ん、そうか?こういう可愛い系の服はお前の方が似合うのではないか?」
ラウラもその服を見るが、思い浮かべるのは自分ではなく、ステラの姿だ。
ステラはその言葉を聞き、同じ服を着た自分とラウラを思い浮かべる。その時、ステラの視界の端に、商品の説明が入った
「んーっ………あ、そうだ!」
そしてステラは、何かを閃いた様に顔を上げた。
「どうかしたか?」
「二人で一着ずつ買おうよ!ちょうど、色は白と黒、私達の機体カラーと同じで良くない?それに黒なら、ラウラのクールな性格も相まって、カッコカワイイよ!」
ステラの饒舌な説明に、ラウラは少し動揺した。だが、せっかくの機会だと思い、まず試着をしてみる事となった。
「すみませーん。表のショーウィンドウのワンピース試着してみたいんですけど、出来ますか?」
「っ!はい!ございます!どちらの色をご希望ですか?」
ステラが店員に声をかけると、店員は目を輝かせながら答えた。
「えっと、白と黒両方がいいんですけど、試着室で二つ並んでるのとかありますか?」
「お二人でお試しになりますか?それでは、ご一緒に靴や帽子、小物類もどうですか?この店では、衣類など、ファッションブランドを幅広く取り扱いしておりますので!」
商売根性なのか、二人の姿を見たいのか、店員はカタログを見せながらステラに詰め寄る。
「そうだなぁ………あ、このサンダル可愛い!それにこの帽子も……それじゃあこれとこれ、それとこのバッグを、それぞれこのワンピースの合うように色違いで一つずつ、お願いできますか?」
「はい!少々お待ちください!」
ステラの言葉を聞き、店員はすぐに店の裏に行き、在庫を確認し始めた。
「お、おい、ステラ。そんなに買って大丈夫か?」
「大丈夫!私、今日一夏達の試験したじゃん?その時に千冬さんと束さん、蓮さんにお小遣い貰っちゃったから!」
ステラはにこやかに言う。それと同時に、ラウラは冷や汗を流した。
(教官からお小遣い?!や、やはりステラは凄いな…)
ステラはそんなラウラの心情には気が付かず、先程貰ったカタログを眺めていた。
「あ、この髪留めもいいかも。私とラウラで一緒に……いや、何もかも一緒じゃつまらないか………ねぇラウラ。ポニーテールとツインテール。どっちがいい?」
「え?なんだ急に…」
急な質問に驚き、少し戸惑うラウラ。だが、自分がその二つの髪型をしている所を想像し、答えを出した。
「ツインだな。なんかそっちの方がしっくり来る」
「そっか!じゃあラウラは赤の髪留めで、私は青の髪留め。それでいい?」
「あぁ、いいぞ」
その会話を聞いていたのか、近くにいた店員が先程の店員と同じく店の裏へと向った。
それから三分間程経った頃、先程の店員が帰ってきた。
「お待たせいたしました!それでは、こちらでご試着ください!」
店員は、そう言って試着室へと案内し、そこで服を渡した。
「それじゃあラウラ、着替えたら言ってね。同時に出よ?」
「あぁ、分かった」
二人はそう言い、試着室へと入った。そして外では、美少女二人がおそろいの服の試着をしていると言う噂が広まり、多くの女性が、二人の着替えが終わるのを待っていた。
「ラウラぁ、終わった?」
「あぁ、私はいいぞ」
ステラが声をかけると、ラウラは答える。
「じゃあ行くよ?せーの」
ステラの掛け声と共に、二人は同時に外へと出る。
「「っ!」」
二人は、息を呑んだ。周りの人の多さもだが、お互いに、その可愛さに見惚れたからだ。
「「「「「キャアァァァ!」」」」」
ステラ達が飛び出した二秒後。辺りに黄色い歓声が響いた。
「可愛い!お人形さんみたい!」
「天使!まさに天使だわ!」
「あの子達、何処のモデル?!」
「やばい!あれであの二人が付き合ってたら完璧なのに!」
その声で我に返ったのか、二人は急激に頬を赤らめる。そしてラウラは、恥ずかしがるステラの為に、ステラの前に出た。
「わ、私の嫁をジロジロ見るな!」
しかし、それは更なる着火剤となってしまう。辺りの女性達にも、ステラの頬にも。
「嫁?!い、今嫁って!」
「つまり、あの二人は結婚を前提に付き合っているって事?!」
「あぁ、神よ……」
「今死んでも、悔いは無いわ…」
そしてラウラは、どうしていいか分からず、アタフタし始める。
だがそこに、救世主が現れた。
「あれ、二人とも何してるの?」
それは、先日から数馬と付き合いだした、シャルロットだった。
…………………………
「アハハ、それは災難だったね」
三人は、近くの公園に来ていた。そこは、シャルロットが数馬に思いを告げた、あの公園だった。
「けど、仕方ないよ。二人とも凄く可愛いもん」
シャルロットは、そう言いながら二人を見た。
二人は、会計を済ませ、あのままの格好で今ここに居る。
「そうか?ステラは分かるが、私は可愛くないだろ」
「もー、何言ってんの?ラウラの方が可愛いよ」
ラウラの言葉に反対するステラ、その会話を聞いていてムズ痒くなったのか、シャルロットは二人を抱き寄せた。
「もー!二人とも可愛い!」
突然の事に二人は驚いたが、そのまましばらく三人でじゃれていた。
そして日が傾き始めた頃、三人は学園への帰路に付いた。
そして学園に戻り、もう一度同じ騒動が起こったのは、また別のお話。