インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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赤き瞳 Fourth Especial

コンコンッ

 

またか。今度は誰だ。

 

そう思いながら私は丸まっていた体を更に小さく丸める。

 

「ねぇ、ラウラ」

 

シャルロットか。

毎日毎日よくもまぁ飽きずに来るものだ。

 

「聞いて。文化祭でメイド執事喫茶をやる事になったんだ」

 

文化祭?こんな時期によくやる物だ。

いつ敵が襲ってくるか分からないと言うのに。

 

「それとね。バンド演奏もする事になったんだ。

まぁ、提案したのは僕なんだけどね」

 

呆れる。

ステラの居ないそんな行事に私がわざわざ参加するとでも思っているのか?

 

「ねぇ、ラウラ」

 

うるさい。うるさい。

私に構わないでくれ。私に何が出来ると言うんだ。

愛した者の為に何も出来ない私に、一体何を求めているんだ。

 

「……はぁ、仕方ない。お願い箒」

 

「あぁ」

 

なんだ、箒も来ていたのか。

何人来ようが私の考えは………。

 

「はぁ!」

 

ん?なんだ?今の声は。

 

ガタンッ!

 

「っ?!」

 

なんだ、今の音は。

 

まるでドアが外れた様な。

私はベッドから飛び起き、音がした方を見る。

 

「久しぶりかな。ラウラ」

 

そこには、真っ二つに斬られたドアと、ドアがあったはずの場所に立つシャルロットと箒が居た。

 

「何のつもりだ。言っておくが私は、私は文化祭には出ないぞ。お前達と遊んでいる程、私は暇じゃないんだ」

 

「そんな事言わないでよ。友達でしょ?」

 

友だからなんだと言うんだ。最も愛した者を無くした私に、もう何もする力など残っては………。

 

「ステラを連れ戻す。だから手伝ってよ」

 

今、何と言った?ステラを連れ戻す、だと?

 

「ふざけるな!アイツを、ステラをまたこんな辛く苦しい世界に連れ戻す気か!」

 

どうして、ステラばかり苦しまなければならないんだ。

 

「そうだね。連れ戻すよ。こんなにも辛くて、醜い世界に」

 

シャルロットならば分かってくれると、思っていたのに。

 

「けどねラウラ。

 

それだけの世界じゃない事を教えてくれた人がいる。僕にとってそれは数馬。

 

じゃあ、ラウラにとって、それは誰?」

 

私に、辛く醜いだけの世界では無い事を、教えてくれた人……。

 

以前の私なら、迷いなく織斑教官だと答えただろう。

 

だが今はどうだ?

 

確かにあの人に希望を貰った。あの人のおかげで私は、シュヴァルツェ・ハーゼの隊長として恥ずかしくない軍人となれた。

 

だが、私が真に人としての心を持てたのは、紛れもなくステラのおかげだ。

 

いや、ステラだけじゃない。シュヴァルツェ・ハーゼの者達や、目の前にいるシャルロットと箒、そしてここで出会った全ての人間だ。

 

それでも、きっかけをくれたのは、やはりステラなのだろう。

ステラには、人を惹きつける魅力がある。

 

ステラを中心に、多くの絆が生まれた。

かつては対立していたセシリアや、私まで許し、仲間に入れてしまう。

 

私は、そんなステラが、大好きなんだ。

 

この世界は醜く、一人で生きていくには過酷すぎる。

だから私には、ステラが必要だ。そして今のステラに、私は必要であると思ってもらいたい。だから、私は。

 

「いいだろう。私も乗ってやる。だがやるからには、必ず成功させるぞ。今度は私が、救う番だ」

 

私の戦いが、始まる。




今回はラウラの説得だけなので短めです

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