激ウマ…いや、激マズ日和   作:黒鋼

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現在、実家に帰省中。
なので、すみませんが、少々投稿が遅くなっております。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。


9品目 初ミッション……なんだけどな~

 

「……はぁ、なんでこんなことになってるのやら……」

 

贖罪の街に流れる乾いた風に吹かれ、俺はビルの間から見える空を眺めながらポツリと呟いた。アラガミに喰い散らかされた街並みは、改めてこの世界が世紀末なのだと思わせてくれる。が、そんな世紀末の光景も今の俺にはどうでもいい。

ゲームでどんな街になっているのかは知っていたわけだし、この世界で十数年生きてきたのだから覚悟も当に出来ている。だから、街の光景が問題なのではない。

 

「お~い、どうした眞城」

 

「……雨宮少尉、俺、何か悪いことしましたっけ……?」

 

「リンドウで良いぞ、名字で呼んだんじゃ姉上と被るだろ」

 

「はい、リンドウさん、じゃあ、俺もクウヤでお願いします。

 ……で、本当になんでこんなことになってるんですか」

 

「さてな~、何にせよ放っておく訳にはいかんだろ、これは」

 

「そうかもしれませんけど……」

 

隣で広場の状況を確認しながら声を掛けてくる討伐班の隊長――雨宮リンドウ少尉―― に返事を返しつつ、更に沈んでいく俺。

 

広場には、本ミッションの討伐対象であるオウガテイルが1体……だけではなく、オウガテイル堕天、ヴァジュラテイル(火)、ヴァジュラテイル(雷)がそれぞれ1体ずつうろついていた。討伐対象はオウガテイル1体だが、リンドウさんの弁通り、こんな状態を放っておく訳にもいかない。全部討伐しないといけないのだろう。

オウガテイル4体なら、まだ新人の任務としても納得いくのだが、ヴァジュラテイルまでいるとなると……少なくとも、新人に割り当てられる任務内容ではないはずだ。

 

……本気で、なんでこんな状況になっているのか分からない。ここに来るまでは、ゲーム通りの展開で順調だったはずだ。

アナグラのロビーでリンドウさんと合流し、サクヤさんとの勝ち組としての姿を見せつけられた後、ヒバリさんからミッションを受託。この街までヘリで移動し、到着した後はリンドウさんから実戦での注意を受け、街の散策を開始。道中、素材を回収しつつ対象となるオウガテイルを捜索。この時までは、まず間違いなくゲーム通りの展開で、広場に広がる光景なんてまるで予想していなかった。

 

……ホントに、どうしてこうなった!?

 

「クウヤ、さっき俺の言っていた事を覚えてるか?」

 

「さっきって、どれですか?」

 

自分に原因があるのかなー、なんて軽く現実逃避をしている俺に、リンドウさんが話しかけてくる。聞かれてもここに来るまでに色々と会話をしていたからどれのことを指しているのか分からない。いや、多分、あの有名な台詞なのだろうけれど。

 

「ミッション開始の前に言った命令だ」

 

「ああ、『死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ。運がよければ不意をついてぶっ殺せ……あ、これじゃ四つか』ってやつですか?」

 

ゲーム通り、ミッション前に言われたあの名言。GOD EATER、もしくはBURSTのプレイヤーとしては、直にあの台詞を聞けたとあって、その時は非常に喜んでいたものだ。なのに、今は広場の状況のこともあり、テンションだだ下がりである。

 

「ああ、それであってるぞ。

 それさえ守っときゃ後は万事どうとでもなる」

 

「分かりました」

 

部隊のリーダーとしては駄目な部類に入るであろう適当さ加減だが、それが数多の死線を潜り抜けて築き上げられたものだと知っている。だから、落ち込みつつも返事はしっかり返す。

俺だって、まだ死にたくはないし……いや、一回死んだけどさ。

 

「俺が前衛でアラガミ共を惹きつける。

 クウヤ、お前は遊撃だ」

 

「え、いいんですか?」

 

「まぁ、新人の実戦指導としてはあまりよろしくないのは確かだが……状況が状況だ。

 旧型なら俺がサポートしながらで良いだろうが、お前は新型だしな……ま、初めての実戦なんだから自由に動きたいように動け。それでお前にあったやり方を見つけられれば、初回としては十分だ」

 

「はい、分かりました!!」

 

リンドウさんの指示に力強く頷き返し、神機を強く握り直す。そうだ、ここで落ち込んでても仕方ない。どうせ、今後のミッションでは嫌というほどこいつらと戦うことになるんだ。単に、その時期が早まったと思えば……ああ、ごめん、流石に初陣では早過ぎるわ。

それでもやるしかないことぐらい分かってるけどな。

 

「よし、良い返事だ。

 じゃあ、おっ始めるか」

 

「はい」

 

返事を返すと同時に神機を銃形態へと変形させる。

まだ、あちらはどいつも俺たちに気付いていない。ならば、初撃は俺たちの好きに出来る。

 

「俺の合図と同時に、オウガテイルを狙え。

 そっから先は、お前に任せる」

 

「了解です」

 

返事を返しつつ、しゃがんだ状態で神機を構え、スコープを覗きこむ。照準はオウガテイルに合わせ、物陰から様子を伺う。

スコープ越しに見える敵は、未だ何かを食べており、こちらに気付いた様子はない……問題なのは、オウガテイルと俺たちの間に、ヴァジュラテイル(火)がいること。広場をうろついているだけだが、心なしか周囲を警戒しているようにも見える。

 

「……く」

 

両腕で支えている神機が震える。自分がバレットを放つと同時に、戦闘開始。それが今更ながら分かり、訓練ではまるで感じなかった緊張に包まれる。

とっくに覚悟していたはずの、殺し、殺されるという日常に足を踏み入れるという事実に心が震え、体も震え、神機も揺れる。定まっていた狙いはぶれ始め、発射することすら危うくなっていた。

その震えを、

 

ゴンッ!!

 

自分で自分を殴る事で無理矢理抑え込む。震え、怖がっている自分を分かっていた事だと理性で叩き直し、揺れていた照準を再びオウガテイルに向け直す。

そうして、

 

「3、2、1……ファイア!!」

 

実戦開始の声がリンドウさんの口から発せられた。

合図と同時に俺の神機の銃口が火を噴き、水色のレーザーが尾を引きながらオウガテイルへと突き進む。

狙いはオウガテイルの胴体。

俺とオウガテイル、彼我の距離差は50mぐらいなので、あまり銃撃に慣れていない俺には足などの細かい部位を狙い撃つことは難しいのである。

俺が撃ったレーザーは狙い通りの位置へと進み、

 

「ギャウッ!?」

 

見事にオウガテイルの胴体を貫いた。

 

「よしっ、よくやった!!」

 

俺の射撃を見届けると、リンドウさんが潜んでいた物陰から飛び出す。

彼の向かう先にはヴァジュラテイル(火)が。先程の射撃音で俺たちの存在に気付いていたのか、俺たちに対して唸り声を上げ、威嚇をしてきている。だが、そんな威嚇にまるで怯むことなくリンドウさんはヴァジュラテイル(火)へと突き進み、

 

「おらぁっ!!」

 

威勢の良い掛け声と共に自身の神機を振り下ろしていた。

その一連の流れは、無駄な動きなど一切なく、目の前のアラガミを必ず仕留める、という意志がありありと感じ取れる。

 

≪……と、とと、俺も動かないと≫

 

リンドウさんの動きに一瞬見とれてしまっていたが、一拍遅れて俺も物陰から飛び出す。飛び出しながら、神機に命じて剣形態へと変形させ、周囲の状況を確認、

 

≪オウガテイルは、まだ動けない。

 ヴァジュラテイル(火)はリンドウさんが抑えてくれてる。

 となると、残りの堕天種と、ヴァジュラテイル(雷)は……≫

 

視 線をオウガテイルの後方へと向けると、路地の隙間から顔を出したヴァジュラテイル(雷)を発見。一方の堕天種は、

 

「ギァァーーーッ!!」

 

「っつ!!」

 

雄叫びを上げながら、俺の方に向かってきていた。慌てて振り向いた俺の目は、正確に敵の姿を捉える。向かってくる化け物の顔に一瞬体が硬直しかけるが、無理矢理足を動かして敵の射線から離脱する。一瞬遅れて、さっきまで俺のいた場所を巨大な針が通過していった。

 

「っ?」

 

右腕に僅かな痛みを覚え、視線を向けると、微かな切傷が。先程の針が掠っていたのだろう。

 

「危なかった……」

 

一瞬の気の緩みが即座に死に繋がるとはよく聞いていたけれど、身をもって体験するとは思わなかった。

 

「……よし!!」

 

気合いを入れ直し、神機を握り直す。力一杯握り締めるのではなく、ある程度余力を残した状態で。

針を放った堕天種を視界の端に収めつつ、再度周囲を一度見回す。ヴァジュラテイル(火)は変わらずリンドウさんと交戦中、距離も離れているし大丈夫だろう。基本種は徐々に体勢を立て直しつつあり、ヴァジュラテイル(雷)もこちらに威嚇している。

堕天種は俺が相手取るが……どうやら、あまり時間は掛けていられないようだ。ゲームだと然して問題はないが、実際にこの数を相手取るのは、例えリンドウさんというベテランが付いていようとも、新人の俺には少々骨が折れる。

 

……結論、

 

「手加減無用!!」

 

普段の生活を行う上で意識して掛けていたリミッターを解除する。解除といっても実際に何か大層な薬を投与していたわけではない。

どの程度力を緩めるかという意識的なものにすぎない。その意識的な手加減を完全に無くす。

 

「おおおーーーーーーっ!!」

 

両足に力を込め、勢い良く大地を蹴る。足元から大量の砂埃が巻き上がるが関係ない。俺が起こした砂埃で視界が遮られるのは俺の後ろにいる奴らのみで、前方にいる堕天種には意味が無いのだし……

 

「ギガァーーッ!!」

 

雄叫びを上げ、近付いてきた俺を迎撃しようとする堕天種。尻尾を体の横にまで持って来る体勢は……

 

≪回転攻撃か!!≫

 

ゲームで散々見た体勢を視界に捉えた瞬間、反射したかのように踵を地面に擦りつける形で飛び出していた体にブレーキを掛けていた。土煙りを立てながらも何とか体を止め、状態を反らすと、

 

ブオンッ!!

 

勢い良く振られた氷鬼の尾が鼻先を掠めていった。

 

「っ、ぶねぇなぁ!!」

 

冷や汗が後頭部を伝い落ちていく。今更ながらに、生死のやり取りに動揺しつつも、体は動く。緊張感や恐怖感は訓練の比ではないが、忙しなさならばまず間違いなく訓練の方が上だ。

だから、

 

「そこっ!!」

 

相手が尾を振り切り、体を硬直させている一瞬の隙を逃す様な勿体ない事はしない。反らしていた状態を戻す勢いで前進し、右手に握った神機を堕天種の首目掛けて薙ぎ払う。最終日の訓練の様に弾かれるかと一瞬思ったが、そんなことはなく、しっかりと堕天種の首を斬り飛ばしていた。

 

「っし、次!!」

 

堕天種の身体が地面に沈む音を背後で聞きながら、次の相手を見据える。

 

≪近いのは……ヴァジュラテイル(雷)の方か≫

 

俺の方に尻尾を振り上げ、何やらやろうとしているヴァジュラテイル(雷)を視認すると同時に、俺は急いでその場を離れ、ヴァジュラテイル(雷)に向かって駆け出した。

 

≪さっきの格好がゲーム通りなら、この後に来るのは“落雷”≫

 

オウガテイル基本種、堕天種なら針、ヴァジュラテイル(火)なら火球、そして、ヴァジュラテイル(雷)なら落雷である。ゲーム中で大型のアラガミと一緒にこいつが出てきた時、何度喰らったことか。こっちが、攻撃に移ろうとすると“落雷”が発生するのだから、堪ったものではない。

が、それも大型と組んでいたらの話。

 

≪“落雷”中は隙だらけだろ……?≫

 

ゲーム内とは当然、動きが異なるとはいえ、幾らか被る行動があるのも事実。もしもその通りなら、こいつは“落雷”中は隙ができるはず。ゲームの様なものではないにしろ、付け入る価値は十分にあるはずだ。

 

「ギィィィーーーーーーーーーッ!!」

 

その暗い体毛からは想像しにくい甲高い遠吠えを上げ、前傾姿勢のまま尻尾を振るヴァジュラテイル(雷)。一際高く尻尾が振り上げられたのと同時に、両足に力を込め、飛び出す。後方で激しい音が鳴り響いたが、俺の体にはまるで影響が無い。勢いよく飛び出した俺は、神機の剣先を敵目掛けて構え、さながら砲弾の如く突き進む。

遮るものもなく、相手も隙だらけ、

 

「ギ、ガァァーーーーッ!!」

 

俺の神機はヴァジュラテイル(雷)の胸元に深々と突き刺さった。

が、相手もアラガミ、捕食者としての意地があるのだろう。胸を刺されながらも、近くにある俺の頭に喰らいつこうとする。だが、それより速く、

 

「サービスだ、喰え!!」

 

神機を捕喰形態へと変化させ、ヴァジュラテイル(雷)の体内を思う存分喰らわせる。神機から生じた黒い顎は、遠慮などまるで見せず、ヴァジュラテイル(雷)の体内を思うままに蹂躙する。そして、体を形成するために必要不可欠なコアを捕喰したのだろう、捕食者から被捕食者へと変わったヴァジュラテイル(雷)は呆気無く黒い塵となって消滅した。

それと同時に黒い顎は神機の中へと戻っていき、

 

「むぐぁっ!!」

 

俺の口の中へと神機が味わったアラガミの味が流れ込んでくる。

だけではなく、全身の細胞が熱く煮えたぎるかのように湧きたち、体中に力が漲っていく。

のだけれど……

 

≪す、酸っぱ!!

 いや、しょっぱ!!

 ぐぁ~、苦みまで!!≫

 

そんな充足感以上に、味の衝撃が俺を襲っていた。前回のダミーの味は調和が取れておらず、味が異様に濃かったが、こいつは調和は取れている。

だが、

 

≪ひ、一つ一つの味が……異様に強い!!≫

 

前回の濃さが1なら、今回は5ぐらいの濃さ。味の種類は少ないが、不味さの質が段違いだ。

 

それでも、以前の様に地面を転がる様な真似はせず、すぐさま行動に移る。

……もっとも、顔は凄く歪んでいそうだが……

神機に命じて銃形態へと変化させ、

 

「リンドウさん!!」

 

先程俺が喰らったヴァジュラテイル(雷)のオラクル細胞からなるエネルギー弾をリンドウさんに渡す。

 

「お、なんだこりゃ……?」

 

「リンクバーストです!!

 制限時間があるのでその間に!!」

 

「ほほう、これが姉上の言ってたやつか……了解、ならサッサと仕留めますかね」

 

俺からエネルギー弾を受けたリンドウさんは、先程までの勢いが冗談に思えるぐらいの速さで動き出した。一瞬でヴァジュラテイル(火)を両断し、置き上がり自分に向かってきていたオウガテイルを返す刃で胴体の真ん中を切り捨てた。

……考えてみれば、あの掃討作戦にいたんだから、この程度のアラガミ、リンドウさんなら一瞬で片付けられるはずだ。それなのに、ヴァジュラテイル(火)を抑えていただけってのは……

 

≪俺のため、なのかね……≫

 

今思えば、リンドウさんは、ヴァジュラテイル(火)を相手取りながらも、いつでも俺を援護できる位置にいた。

 

≪……流石≫

 

周囲を見渡し、殺り残しが無いかを確認しているリンドウさんを見ながら、ふとそんな事を思うのだった。自分も大概反則だとは思うけど、リンドウさんには到底敵う気がしない。

 

「よ~し、ミッション終了。

 初陣にしては、十分過ぎるほど動けてたわ。ま、それでも所々不安な部分があるが……それは追々で良い。

 取り合えず、早いとこ背中を任せられるぐらいにはなってくれ」

 

周囲の確認が終わり、ミッション終了の合図をしたリンドウさんの総評に耳を傾ける。

 

「はい、ありがとうございました」

 

「うし、じゃあ、後は素材回収だな。

 初陣記念だ、素材は全部やるよ」

 

「………了解」

 

リンドウさんとしては、気前のいいリーダー振りを見せたつもりなのだろうが、俺としては暗くなるしかない。

広場に倒れ伏しているアラガミの体は計3体。つまりは、先程の様な地獄を3回も味わうということだ。

……拒否したいけど、新人が拒否するのも変な話だし……やるしかない!!

 

周囲を警戒しているリンドウさんに見守られながら、地面に転がるオウガテイルへと近づき、

 

「……イタダキマス」

 

ガブリ、と神機に喰らわせた。

 

……その後に起こった惨劇は皆さんのご想像にお任せします。

 




先日、久々にBURSTを起動したところ、ショートとロングの刀身は大量にあるのに、バスターをほとんど持っていないことが判明。
そのため、現在鋭意作成中。
……まぁ、作っても使うかどうかは別問題なんですが……
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