激ウマ…いや、激マズ日和   作:黒鋼

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1話目なので、連続投稿。
次からはストックが切れるまで、3日に1回ぐらいのペースで投稿していきたいと思います。


1品目 俺を喰うならアラガミを…!!

さて、そんなこんなでやってきましたGOD EATERの世界。

因みに、現在の俺の肉体年齢は15歳で、精神年齢で言えば30歳を越えており、あのツバキさんより年上ということになるが…うん、考えないようにしよう。

今迄俺が暮らしていたのはこの世界でも、昔で言う日本。現、極東。そのフェンリル支部の外部居住区である。

…まぁ、ゲームの主人公として生きていくことになるのなら当然のことである。

だが、極東は、流石アラガミと人間の死闘の最前線と言うだけあり、結構な頻度でアラガミが居住区内部に侵入してくるのだ。最近では少なくなったが、アラガミ装甲が貧弱だった以前の居住区では大型のアラガミが破壊して侵入してくることもあった。アラガミ装甲が強固になった昨今では大型のアラガミは流石に少ないが、オウガテイルとか、ザイゴートといった小型のアラガミはどこからか侵入してくる。

その時、住民はゴッドイーターが駆け付けてくれるまで逃げ回るのだが、何人か喰われて死んでしまう人もいた。

 

……この世界での俺の両親もそう言った人たちの中の一人だ。

 

あれは、俺が10歳の頃。

生れてからずっと以前の世界での意識があったため、さぞかし不気味な子供だった俺を母親は庇って死んだ。居住区内に侵入したアラガミ――この時は、シユウだった――に襲われそうになっていた俺を突飛ばし、母はシユウの両爪に切り裂かれ、頭と体を二分され、首から噴水の様に鮮やかな血を噴き出して絶命。

今でも、母の体から噴き出す血の生温かい感触ははっきりと思い出すことが出来る。……いや、忘れようとしても忘れられない。

 

父は、それ以前。

俺と母をフェンリル職員に預けたまま、助けを呼びに行って、その途中でヴァジュラに喰われたらしい。“らしい”と言うのは、死体が残っていないのだ。

 

自分でも、世紀末だと、生きていくことが難しい世界なのだとは知っていた。けれど、父の死、母の死、この二つが当たり前のものとして片付けられていく世界を見て、

 

「……死にたくない」

 

より一層、生への執着を覚えた。あんなにも簡単に人の死は片付けて良いものであるはずがないのに、それを当然と捉えている世界に恐怖を覚えたのだ。

それ以来、自分の出来る範囲内でひたすら体を鍛え抜いた。

自身が主人公となることが分かっていたからじゃない。

 

ただ純粋に、死にたくなかったから。

 

おかげで、なんとかアラガミから逃げられるようになったし、今迄無事に生きている。一応外部居住区には学校もあるのだが、あまり行っていない。籍だけはあったし、現代――ここに来る前の日本――でいう小学校まではちゃんと通った。

けれど、中学にはあまり行っていない。

必要なことは以前の世界で大体習っていたというのもあるけれど、働かなければ生きていけなかったからだ。働く、と言ってもしっかりと就職している訳ではなく、日雇いの仕事を当日の朝に見つけて夜までこなす。見つからなければ学校に行く。……大人でも職に困る世界だ。俺みたいなガキがそう簡単に仕事にありつけるわけじゃない。ありつけたとしても、もらえるfcは微々たるもの。早々簡単に生活が改善出来るほどにはなりはしない。一応食料の配給は受けているから飢死することはないだろうが。環境を少しでも良くしようと思えば働くしかない。

そんな日を繰り返し、ある程度資金が貯まれば学校に行く。金がなくなればまた労働へ。

まぁ、俺が特別という訳ではない。

人がよく死ぬ、こんな世界ではよくあることだ。そんな生活がキツイと思ったことはない。

 

ただ、食事が酷いのは流石にキツイ。

 

分かってはいたけれど、ここまで酷いと……

一日でトウモロコシ1本は良い方で、酷い時には1週間配給がストップする時がある。

 

これも原作開始までの我慢だ!!

 

と思って、耐え抜いてきたが…やっぱり、記憶が無い方が良かったんじゃないかと思う。その方が、現在の食糧事情を当然のものとして過ごすことが出来たのだろうし。

 

まぁ、それも今日までだ。

 

先日、フェンリルの極東支部から召集令状が届いた。そう、遂に原作開始、待ちに待ったまともな食事が出来る日だ。

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

アナグラの入り口で、どこかの防衛班班長に口説かれている受付嬢のヒバリさんに挨拶をして、召集令状を見せると、

 

「階段を上がったところにあるエレベーターで訓練所に向かってください」

 

と言われたので、そのままエレベーターに乗り込み、地下の訓練所へ。まだ準備が出来ていなかったのか、扉が開かない。なので、訓練所の前に置いてあったベンチに座り、少々待機。完全防音の扉にでもなっているのか、準備をしているはずの訓練所内の音は全く聞こえない。

 

「…それにしても、いよいよ、か」

 

中々感慨深いものがある。

GOD EATERの主人公と言えば、空気なことで有名だけれども、台詞がないんじゃそりゃあ空気にもなるさ。俺はちゃんと喋れるから、そんなに気にしている訳ではないけど……ソーマに持っていかれるのならそれ以外の所で頑張ればいいだけのこと。

 

「エリック上田氏のこととか、リンドウさんのこととか色々あるけど」

 

取り合えず、この適性試験を無事終えなければ。確か、激痛がするらしいし。

あー、やだやだ。

けれど、この試験を終えなければ食事が、いや食材が手に入らない!!

それなら、

 

「耐えてやる!!」

 

そう、改めて気合を入れるのだった。

自分で気合を入れ直してから更に5分経過し、ようやく、

 

『待たせてすまない。

 準備が終わったので入ってくれたまえ』

 

扉の上から声が掛けられた。スピーカーが扉の上部に付いており、そこから声が聞こえてきたのだ。

 

「お~スピーカー越しとはいえ、こっちの世界でこの声を聞くと身が引き締まるなーー」

 

本来であれば分かるはずのない事を口走りながら立ち上がり、目の前にある扉に手を掛け、大きく息を吸う。

ここから先は、本当に気が抜けない。今迄もそうだったけれど、以前は逃げていればよかった。

だけど、これからは違う。

俺は闘うんだ、人類の敵であるアラガミと。

そう自身を奮い立たせ、抜けていた気を入れ直し、

 

「よし」

 

ガチャ

 

鍵の開いた扉を押し、訓練所に足を踏み入れる。

一歩踏み込んだ先は、

 

「おおう」

 

ゲームの映像と同じく、だだっ広い空間の中央に病院の診察台を二つ重ねた様なものが置かれている部屋。

多分、あの診察台の様な機械の間に俺の相棒となるはずの神機が寝かされているはずだ。

 

≪うわ~…あれで腕輪を取り付けるのか≫

 

そりゃ痛いって。

ゲームじゃ声は出てなかったけど、あれは声を充ててないだけだろうからな。しかも、オラクル細胞なんていう、本来人間には適さない異物を流し込むのだから激痛で済むだけマシなのだろう。

実際、神機に適合していない人間は、神機に喰われて肉片になるらしい。

 

その機械と入口の扉を結ぶ直線の延長線上にある壁の上部に人が数人立っている様子がガラス越しに見える。

あそこの部屋に支部長とかがいるんだろうなー。声も支部長のだったし。

 

どうすればいいのかは分かるけれど、勝手に動く訳にもいかず、俺が黙ったままその場に立って目の前の機械に視線を注いでいると、

 

『長く待たせてすまない』

 

支部長の声が聞こえてきた。

 

「い、いえ」

 

『さて、ようこそ…人類最後の砦「フェンリル」へ』

 

若干緊張しつつ慌てて返事を返すも、向こうは聞こえていないのか淡々と言葉を続けてくる。

そりゃそうか。防音設備があるのなら声が聞こえる訳ないはずだし。あれ?

それならゲームのチュートリアルとかだとツバキさんはどうしてるんだ…?

 

『今から対アラガミ討伐部隊、「ゴッドイーター」としての適性試験を始める』

 

「はい!!」

 

取り合えず聞こえていないとしても返事ぐらいはちゃんとしておこう。ひょっとしたら、初の新型のデータとして録画ぐらいしているかもしれない。

疑問は一先ず措いておいて、気を引き締め直す。

が、

 

『少しリラックスしたまえ。

 その方が良い結果が出やすい』

 

そんな俺の様子が伝わったのか支部長にリラックスするよう促される。

 

「……はぁ」

 

ゲーム通りの言葉だけれど、タイミングが良すぎて気味が悪い。

そもそも、リラックスして良い結果に変わる訳ないでしょうが。人の気の持ちよう次第でゴッドイーターが誕生するのなら、もっと大量にゴッドイーターがいるはずだ。

 

溜息を吐きつつもそんなことを思うけど、口には出さない。出したところで何かが変わる訳でもないのだから。

まぁ、それでも若干肩の力は抜けた。その点だけは感謝だ。

 

『心の準備が出来たら、中央のケースの前に立ってくれ』

 

「Yes , sir」

 

若干ふざけた調子で答えを返しつつ、目の前の機械へと足を進める。本来であれば、ここでそれなりの躊躇いがあるのかもしれないが、心の準備など今更俺には必要ない。この世界に生み出された瞬間から、ここに来ることが決まっていたし、知っていたんだ。ゴッドイーターとして闘い、生きていく覚悟はとうに出来ている。

 

「……」

 

機械に寝かされている神機が目に入る。

刀身はゲームの中では最初に支給されるロングのブレード。装甲部分は支援シールドで、半分に分かけられた装甲の間から50型機関砲の銃身が身を覗かせている。

 

間違いない、新型神機だ。

 

握って下さいとばかりに、柄の部分はこちらを向き、そこから自身に向けて伸びる半円形の溝。赤い腕輪と思わしき物の片割れがその溝の中に埋められている。

 

≪おお、こうして腕輪の内側が見れるのって、改めて考えるとこの時ぐらいしかないよなー≫

 

勿論、ゲームの中ではリンドウさんの腕輪をパパヴァジュラから引き抜いた時とか、あるにはあるけれど、機械の中に埋まっている姿は珍しい。

ゲームでも最初の機械のシーンをマジマジと見てた訳でもなかったし。

 

まぁ、それはいい。

 

今はこの神機を掴む。掴んで…これ以上考えるのは止そう。結果がある程度分かっているとはいえ、嫌な気分になる。

 

「よし!!」

 

声で完全に意志を固め、眺めていただけだった神機へと勢い良く手を伸ばす。伸ばした手は途中で減速することなく、

 

ガッ!!

 

しっかりと目の前にある神機の柄を掴む。

 

……そのまま数秒経過……そろそろか?

 

体感時間としては、1分、或いは1時間ぐらい経ったように感じていたのだが、実際はそんなことなく、

 

ガシャンッ!!

 

勢い良く上から落ちてきた機械に自身の右腕が挟まれ、同時に、

 

ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゅ…

 

腕輪が作動し、偏食因子が体の中へと送り込まれ始め、更に神機が俺のことを捕食しようとする。

 

「ぐ、がぁ゛ぁーーーーっ!!」

 

体内に異物――それも凶悪な――が入り込み、俺の身体を作り変えていきやがる!!

しかも、神機の捕食も同時に始まるもんだから、体から何か大事な物が抜けていく様な喪失感。

くそ、予想以上にキツイ……けどなぁ、

 

「喰われてたまるかぁーっ!!」

 

喰うのは俺だ、お前じゃねぇんだよ。

仮にも、俺の相棒になろうってんなら、

 

「人のモノを喰うんじゃねえ!!」

 

他人の喰い物(からだ)を横取りすんな!!今の俺と神機(お前)は喰うか喰われるかの間柄なのかもしれんが、それが終われば、互いの“食”のために命を預け合う仲になるんだろ!?それなら、今こんな喰い物(俺の身体)で満足せずに、二人?でウマいもんを探してみようじゃねえか!!だから、こんな所で、折角適合者が見つかったって言うのに終わって良い訳ないだろ!!

 

そんな俺の心の言葉が通じたのか、徐々に体の中にある異物感と右腕の痛みが退いていく。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……終わった、のか?」

 

痛みは消えていっているとはいえ、機械が全く上に上がる様子を示さないので、終わったのかどうかが分からない。

分からないが、

 

「……ふぅ……」

 

適合が成功したことは何となく分かった。

何故なら、さっきまでの被捕食者としての感覚は消え、右腕の先にある神機との同調感の様なものが感じられるようになったからだ。

 

程なくして機械が開き、右腕が自由になる。

 

改めて視界に入った右腕に付けられた腕輪からは黒い靄の様なものが漏れ出している。

うん、これまたゲーム通り…だけど、やっぱり不安だ。

 

「よ、っと」

 

機械が完全に開かれたのを見届けると、神機を掴んだまま右腕を自身の傍へと引き戻す。顔の近くで神機をしげしげと眺めていると、神機から黒いコード?の様なものが伸び、腕輪に接続される。すると、先程まで感じていた同調感がより一層強まり、身体に力が漲る。

 

「ふむ……」

 

これだけ大きな物なのに、全く重さを感じない。羽毛の様な軽さですごく振りやすそうだし、今なら何でも出来そうだ。

そんな充足感に俺が浸っていると、

 

『……おめでとう、君がこの支部初の新型「ゴッドイーター」だ』

 

支部長が声を掛けてきた。

 

「あ、ありがとうございます。

 って……新型?」

 

支部長たちがいる方向に視線をやり、一応、お礼を言いつつ(何のことか知ってはいるけれど)一応頭を捻り、分からないフリをしておく。普通そんなことを気にする余裕はないかもしれないけど、反応してしまったのだし仕方ない。

 

『適性試験はこれで終了だ。

 次は適合後のメディカルチェックが予定されている』

 

けれど、あちらもこちらの疑問には特に興味もないらしくスルーしてくれた。

……ありがたいっちゃありがたいんだが、全くこちらの言葉に反応がないと少々不安になる。取り合えず、上げていた手を下ろして神機を下に下ろす。軽いとはいえ、適正試験を終えたばかりだから若干体が気だるいのだ。

 

それにしても、メディカルチェックか……実際に何をするのかは分からないんだよなー

ゲームではそのシーンはカットされてるし…いやまぁ、意識の無い主人公が知ってても変な気はするけれど。

ま、ゴッドイーター全員が通る道なんだし、担当はあの榊博士だ。そんなに気にする必要もない。

 

『始まるまでその扉の向こうの部屋で待機してくれたまえ。

 気分が悪いなどの症状がある場合はすぐに申し出るように』

 

言葉につられて指示された方向を見ると、確かに扉がある。

……入口と同じように見えるのは気のせいだと思いたい。

 

「了解しました」

 

了承の意を示し、窓越しの相手に向かって頭を下げる。事件の黒幕だとはいえ、これからお世話になる組織のトップなのだ。挨拶はちゃんとした方が良い。

 

頭を上げ、相棒となった神機を肩に担ぎ、指示された扉から出ていこうとすると、

 

『…期待しているよ、眞城(ましろ)クウヤ』

 

最後の台詞が掛けられた。

ゲームと違うのは、俺――眞城クウヤの名前が入っていること。その言葉に、軽く頭を下げ、神機を挙げることで返事とし、指示された扉を開き訓練所から出ていく。

 

……ヨハネス支部長の狙いがゲーム通りなのかどうか知らないけれど、俺は支部長の狙い通りに動くつもりはない。

 

俺の目的は二つだけ。

 

死なないこと、そして美味い飯、それだけだ!!

 

だ、か、ら

お前もウマいアラガミを喰ってくれよ、神機(あいぼう)……?

 




台詞がゲームとほとんど同じなのは、未のところ主人公がゲームの登場キャラと殆どかかわっていないからです。
段々変えていくつもりですのでご安心を。
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