激ウマ…いや、激マズ日和   作:黒鋼

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感想ありがとうございました。
今後も頑張っていこうと思いますので、よろしくお願いします。


4品目 支部長って暇なんだろうか?

カノンさんと別れた俺は、そのまま廊下を奥へと進み、榊博士の部屋へと向かう。扉の前に到着し、

 

コンコン、コンコン

 

一応ノック。

 

「はい、どうぞ」

 

「失礼します」

 

返事があったので、こちらも入室の時によく使う言葉を言いつつ扉を開き中に入る。

部屋の中にいたのは二人の男性。

一人はモニターとかキーボード類に囲まれた椅子に座っている洋服と和服を合わせたかのような若作りの男性――ペイラー・サカキ博士。

こんな顔でも47歳なんだよな……童顔ってレベルじゃないぞ?改めて見ると、上と下の服の差がすごいことで……なんだよ、このチェック柄の和服みたいな服。派手なのか地味なのか分からんぞ。

というか、細目で開けているかどうかも分からんのに眼鏡してる意味あるのかよ……?

……結論、頭は良いかもしれんが色々な面で疑問の多い人物。

もう一人は白いコートに黒いマフラーという出で立ちに端正な作りの顔を乗せたテレビでよく見る顔――ヨハネス・フォン・シックザール支部長。

45歳、こちらもサカキ博士程ではないけれど若作りだ。この時点だと割とまともな支部長に見えるのだから侮れない。

まぁ、原作通りだ。ひょっとしたら支部長辺りは忙しくて来てくれなかったりしないかと期待したのだが……そりゃ、いるわな。

 

「ふむ……予想より785秒も早い。

よく来たね“新型”くん」

 

「は、はぁ……」

 

原作でも思ったけど、細かいな~と思う。大体、予想する意味が全く分からないのだが。

そんなことするぐらいならサッサと準備しとけ……ああ、予想より早く来たから準備が出来てないのか……

俺が漏らした戸惑いなど無視して、サカキ博士は言葉を進めて行く。

 

「私は“ペイラー・サカキ”。

 アラガミ技術開発の統括責任者だ。

 以後、君とはよく顔を合わせることになると思うけど、よろしく頼むよ」

 

「あ、眞城クウヤです。

 こちらこそ、よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく」

 

自己紹介していただいたので、俺も自己紹介。とっくにプロフィールは送られていると思うけど、一応初対面なわけだし、しっかりしておかないと。

機械を弄りながら軽い調子で言葉を返してきた博士は、そのまま言葉を続ける。

 

「さて、と…見ての通り、まだ準備中なんだ。

 ヨハン、先に君の用事を済ませたらどうだい?」

 

いや、何してるのかなんて分かりませんから。

見てるだけじゃ準備不足かどうかなんて素人の俺には全く分かりません。多分、隣にいる支部長とかリッカさんなら分かるのだろうが、今日初めて配属された新人が分かるはずないでしょうに。

 

とまぁ、そんなことを考えている俺を余所に、話を振られた支部長は億劫そうに博士に言葉を投げかける。

 

「サカキ博士、そろそろ公私のけじめを覚えて頂きたい」

 

が、支部長の言葉になど、まるで反応せず博士はひたすら機械に何かを打ち込み、それをモニターでチェックする作業に没頭していた。

……あんたが振ったんだから反応ぐらいしてやれよ。

そんな博士の様子に溜息を洩らしたものの、それ以上何かいうこともなく、支部長は博士から俺に視線を戻して、これまた自己紹介。

なんか苦労してるんだなー、と支部長に同情。計画はともかく、下にいる技術屋のトップがこれでは大変だろう。

 

「適合テストではご苦労だった。

私は“ヨハネス・フォン・シックザール”。

この地域のフェンリル支部を統括している」

 

「改めまして、眞城クウヤです。

 よろしくお願いします」

 

ラスボスだけれど、一応この支部では最高権力者なのだからしっかり挨拶。明確な行動を示すようになるのはシオが出てきてからだから、それまでは良好な関係を築いていけたらと思う。……最終的には裏切りますけどね。

 

「改めて、適合おめでとう。

君には期待しているよ」

 

「ありがとうございます」

 

期待している、と言われても、最終的には裏切るんだからな~

なんだろう、今のうちに「御期待に沿えず申し訳ありませんでした」ぐらい、心の中で言っておいた方が良いのだろうか?ひょっとしたら心変りして支部長側に付くのもありかもしれないが……うん、ないな。

 

「彼も元技術屋なんだよ」

 

パネルを弄る手を止め、唐突に博士が会話に割り込んできた。

 

「ヨハンも“新型”のメディカルチェックに興味津々なんだよね?」

 

「貴方がいるから、技術屋を廃業することにしたんだ……自覚したまえ」

 

「ホントに廃業しちゃったのかい?」

 

「ふっ」

 

新人の前で何やら裏のある会話をする組織のトップと技術屋のトップ。

やめい。

支部長、そこで明らかに含みのある笑みをするのは駄目でしょうが。例え俺が何も知らなかったとしても絶対あんたに何かあると思うぞ。実際、初めてゲームをした時は『あ、こいつ絶対暗躍してる』って思ってたし。

 

止めたいけど、ここでおかしな発言をする方がマズイだろうからひたすら真面目な顔で沈黙。……(個人的に)気まずいったらありゃしねぇ。

 

「……さて、ここからが本題だ。

我々フェンリルの目標を、改めて説明しよう」

 

やたらと含みのある会話と、思わせ振りな間を終え、支部長が俺に向き直って再び説明を始める。二人の間に流れる空気はごく普通のものに戻っているのだが……俺だけ疎外感が半端ねぇ。

 

「君の直接の任務は、ここ極東地域一帯のアラガミの撃退と素材の回収だが……それらは全てここ、前線基地の維持と、来るべき“エイジス計画”を成就するための資源と

 

「この数値は!?」

 

「!?」

 

……ぅんっ!!」

 

説明真最中の支部長の言葉を遮る博士の驚愕の声。

つい、そちらの方を見てしまうが、支部長の咳払いで元に戻す。っと、確かに支部長が説明しているというのに博士の方を向くのは駄目だな。博士が大きい声で言うから反応してしまったじゃないか。

 

「エイジス計画とは、簡単に言うと、この極東支部沖合、旧日本海溝付近に、アラガミの脅威から完全に守られた“楽園”を作るという計画なのだが……

 

「ほほ~っ!?」

 

……」

 

「……………」

 

再び説明を遮る博士の声。

今度は支部長もスルー。

タイミングが良かったこともあるのだろうが、何も言わず黙り込む。よし、今度は博士の方を向かずに済んだ。

 

「この計画が完遂されれば、少なくとも人類は当面の間絶滅の危機を遠ざけることができるはず……

 

「すごい!!これが新型か!!」

 

……ペイラー、説明の邪魔だ」

 

が、いい加減鬱陶しかったのか、ついに支部長が博士に注意をした。

……まぁ、確かに説明を聞いている方としてもうるさかったが。

 

「ああ、ゴメンゴメン。

ちょっと予想以上の数値で舞い上がっちゃったんだ」

 

が、支部長の注意を聞いても全く悪びれる様子はなく笑いながら博士は返事を返す。そんな博士の反応は分かり切っていたのか、支部長は溜息を溢すのみでそれ以上言及することはなかった。

……なんというか、本当にお疲れ様です。

 

「ともあれ、人類の未来のためだ。

尽力してくれ」

 

エイジス計画自体は所詮隠れ蓑でしかないため、その計画について尽力するつもりはないが、俺たち(ゴッドイーター)の人生が人類の未来のためにあるということについて異論はない。

だから、

 

「はい」

 

しっかりと力強く答える。

少なくとも、俺は、ゴッドイーターが人類の未来を背負っているという点に関しては支部長と矛を交えるつもりはない。問題は、その力をどの様に使っていくのかということなのだから。

 

俺の返事に満足したのか、しっかりと支部長も頷き返してくれた。

 

「じゃあ、私は失礼するよ。

ペイラー、あとはよろしく、終わったらデータを送っておいてくれ」

 

そして、用事は終わったのか支部長は博士に声をかけ、部屋を出て行く。支部長の言葉に左手を振って合図とし、支部長を送り出す博士。その間も右手は絶え間なくキーを操作しているから、流石だと思う。

 

「ああ、もう少し掛かるだろうから、適当に腰掛けて待つと良い」

 

「ありがとうございます」

 

やや早めに来ていた事もあるので準備が出来ていないのも仕方ない、か。

特別博士を責め立てるつもりはないので、そのまま入り口横にあるソファーに向かい、座る。

ただ、何も与えられず待っていてくれと言われても暇で仕方ない。これがコウタの部屋であったりすれば適当に何か弄っているんだが、博士の部屋だから勝手に弄る訳にもいかない。なんか、明らかに触ったらマズイであろうものがチラホラ見受けられるし……

 

仕方ない、さっき支部長が言ってた事について考えてみますか。

 

先程支部長が態々直接教えて下さった俺の役割は、『ここ極東地域一帯のアラガミの撃退と素材の回収』とのこと。

つまりは討伐班に回されるわけだ。

まぁ、リンドウさんがいるというのも大きな理由だろうし、立場上はゲームの主人公なのだから分かり切っていた事だ。だから、今更とやかく言うつもりはない。

問題は、前線基地の維持とエイジス計画を達成するために俺の回収した資源がどれほど使われるのか、ということだ。前線基地の維持=アラガミ防壁の強化や人員への支援だろうし、エイジス計画=ノヴァの餌だろう。前者は必須だろうから特に渋るつもりはないが……後者はなぁ~

裏を知っているからあまり協力したくないのが本音である。だが、エイジス計画は極東支部設立の最重要課題となっている以上、表向きは協力しないといけない。

……出来れば質の悪いものを回したい。コアに関しては一神機使いが持っていても仕方ないので幾らでも回すが、石、晶、神酒類や、各アラガミのレア素材は勘弁して欲しい。

ゲームだったら連続パパとかアイテールとか、ウロヴォロスとかやってたけど、リアルでやったら絶対死ねる。……眼石採るために何回あいつとやり合ったか。あれがないと、アンダルが強化できないからシヴァが作れないんだよ……ひょっとして、リアルであれをやらなきゃいけないのか?―――うわー、やりたくねー

つーか、改めて考えると、個人的には、そんな頻繁にパパとかウロヴォロスがうろついてて欲しくない。

と、アラガミはともかく、レア素材はしっかり下にも回して欲しいのだ。

 

……まぁ、その辺りの配分は上が決めてるんだろうけどさ……

 

シクシク、所詮俺は一兵士にすぎないのだ。討伐班だから、幾らか融通してもらえるとは思うけど……

 

「よし、準備は完了だ。

そこのベッドに横になって」

 

俺が改めて現実に打ちひしがれていると、準備が終わった博士が指示を出してきた。

 

「分かりました」

 

ソファーから立ち上がりサッサとベッドまで移動して靴を脱ぎ、寝転がる。ゴッドイーターなら誰もが通る検査だから特に心配はしていないが、ゲームでは描かれていないので、若干不安だったり。

 

「少しの間眠くなると思うが、心配しないで良いよ」

 

「はあ」

 

寝転がった俺に近づいて来て、何やらケーブルとかを取り付け、薬を飲ませたりしながら笑う若作り。和ませてくれてるのかもしれないが、逆に不安が増したぜ。

 

「う……」

 

即効性の薬だったのか、急激に眠気が襲ってきた。

 

「戦士の束の間の休息というやつだね。

予定では10800秒だ、ゆっくりおやすみ」

 

まどろみの中で博士の声だけが、やけにはっきりと響いてきた。

……普通に3時間って言えばいいじゃねえか。

目覚めると、当然博士の部屋。

隣にはアホな面して『……バガラリー』とか寝言呟いている黄色い旧式銃型神機使い。そういや、こいつもメディカルチェックだったか。

 

「やぁ、起きたようだね。

 これ、君の部屋の鍵だ。番号は鍵に書いてあるし、新人区画に行けば案内板も出ているから分かるはずさ」

 

「ああ、ありがとうございます」

 

寝惚た顔で博士から鍵を受け取り、

 

「お疲れさまでした」

 

挨拶をして部屋を出る。

そのまま歩いてエレベーターに乗り込み、新人区画の階のボタンをプッシュ。重低音がエレベーター内に響き、動き始める。

ボタン近くの壁に寄りかかりながら渡された部屋の鍵を見る。カード型、所謂カードキーに書いてある部屋の番号は灰色の文字で『000』。

 

……うぇい?

 

どんな反応をするべきなのか困る。が、新人区画に到着するとこの番号の理由が良く分かった。

 

「え~と、『000』は……」

 

エレベーターから降り、新人区画の案内板を見てると、エントランスから右に伸びる部屋が黒い文字で001~となっており、左に伸びる部屋は白い文字で001~という書き方になっている。

つまり、新人区画で言う部屋の言い方は、多分、「黒の『○○○』」か「白の『○○○』」と言うのが普通なのだろう。

……そんな、太極図じゃあるまいに……

なのに、何故か俺だけ灰色……エレベーターの前から真っ直ぐに伸びる通路を突き当たったところにある部屋だ。ゲーム通りだし、分かりやすくていいのだが……

 

≪なんか、仲間外れにされた気分……ぐすん≫

 

いらんところで特別扱いされてもなー

あ、因みにゲームでのコウタの部屋が『黒の001』、アリサの部屋が『白の001』でした。

取り合えず、部屋の位置を確認した俺はそのまま食堂に直行し、

 

「おばちゃん!!」

 

「お、来たね。

 ほ~ら、あんたの就任祝いだ、た~んと喰いな!!」

 

「お~、美味そう!!

 ありがとうございます!!」

 

「お代は出世払いにしとくから、しっかり働くんだよ!!」

 

「はい!!」

 

昼間に頼んでおいた食堂のおばちゃんの料理を堪能した。

こんな御時勢だから以前の世界の様な御馳走ではないけれど、この世界に来てからの今迄の食事事情を考えると、今回の食事は本当に御馳走に見えた。

 

ふんわりと、更に光すら漂っているように見える炊きたての白米。

生産量も減ったと聞くのに、出汁をふんだんに使い、豆腐やワカメなどの具がたくさん入った味噌汁。

かけられたソースが肉と絶妙に絡み合い、濃厚な味を引き出すハンバーグ。

ごまが振り掛けられ、茶と赤の色彩が豊かなきんぴらごぼう。

こちらの世界ではあまり見かけなかった円筒状の器に蓋が載った料理。

蓋を取れば芳醇な出汁の香りが広がり、黄色の海の中で泳ぐ椎茸や蒲鉾、鳥肉、ギンナン、ユリ根といった具材の上にミツバが乗った茶碗蒸し。

それに、デザートなのだろう、胡麻団子が付いて来ている。

 

……何度も言うが、スゴイ!!

以前の世界では、御馳走というより、家庭料理という感覚かもしれないが、これだけの食事をこの世界で作ろうと思ったらどれだけ金が掛かるか。

 

「いただきますっ!!」

 

逸る心を抑えながら、まずは一口。ナイフで切ったハンバーグを口の中へ。

 

ぬお~!!

 

ソース自体も美味いのに、肉汁と混ざり合って更に味を上の次元に持っていっている!!肉の旨みが消えることなく、尚且つソースの良さも消えていない。互いが互いを支え合っている!!じんわりと噛み締めれば更に肉の旨みが溢れてくるのがまたなんとも!!

 

この世界では、調理法などはデータとして残っているが実際に調理できる人間は限られている。材料の不足もあるし、料理に手間暇かけている余裕が無くなったのだ。

悲しいことだが、時代背景上仕方のない事。

だが、今食べている料理は間違いなく以前の世界でもプロとして通じるそれ。この食堂のおばちゃんはどれほど技術があるというのだ!?

 

ハンバーグだけじゃない。

ご飯も、みそ汁も、きんぴらも、茶碗蒸しも、デザートの胡麻団子も、どれもがハイレベル。

正直、弟子入りしたいぐらいである。

 

気がつけば、ゆっくりと楽しむことなく、全て食べ切ってしまっていた。

……おそろしい。

食器を返却口に持っていく一歩が惜しい。出来ることなら、まだまだ食べていたいのに……!!

 

「ごちそうさまでした!!」

 

「あいよ、どうだった?」

 

「最高、でした!!」

 

「そうかい、そりゃよかったよ。

 また、何かあったら言いな。

 あんたぐらい、嬉しそうに食べてくれる人ならこっちも作りがいがあるってもんさね。記念の時は私たちが総出で祝ってあげるからねぇ」

 

「ありがとうございます!!」

 

深々と頭を下げ、おばちゃんたちに挨拶をすると、調理上の奥の方から、

 

「頑張んな~」

 

「いつでも来ると良い」

 

「良い食材が来たらメールするからねぇ」

 

等々暖かい声が。

緩む涙腺を抑え、何度も何度もお礼をしながら俺は食堂を後にした。

……うん、一日一回、必ず来よう。例え、普段の材料が酷くても、ここなら良いものにしてくれる!!

 




あの世界の食糧事情がどれほどのものかいまいち分かりません。
かなり酷いとは思いますが、漫画と小説では違いますしね……
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