激ウマ…いや、激マズ日和   作:黒鋼

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サブタイ通り、ようやく神機を使った戦闘に入ります。
7話目にしてようやくとは……相変わらず、長引かせる癖がありますな自分。


7品目 祝?神機デビュー(やり過ぎは程々に)

先日幕を開けた新人虐めじゃないかと疑いたくなるような基礎訓練も今日で早1週間。

 

基礎体力の強化訓練については、俺とコウタ、二人揃って昨日終了が言い渡された。

いやー、感無量とはあの事なんだろうな。コウタなんて実際、眼が潤みまくってたし。

普通に走っているだけなら俺は初日で何とかなっていたのだが、ステップとなるとこれが予想以上にキツかった。スタミナはガリガリ削られていくし、足捌きを一瞬でもミスしようものなら、その場で床に強制ヘッドバッドである。何度意識が飛んだことか……

それでも、この1週間毎日行っていたお陰で、咄嗟の事でもない限り前後左右、自在に動けるようにはなった。

戦場ではまだまだ物足りないものだろうけれど、未経験よりは全然マシなはずだ。ツバキさんにも及第点はもらえたから、全く使えないということはないだろう。

 

座学は毎日内容を変えてはいるものの、常に神機を用いた戦術について、旧型神機の特徴を中心に、遠近両方の闘い方を満遍なく教わった。

やや遠距離寄りの戦術内容だったとは思うが、指導教官がツバキさんなのだし、新人は両方遠距離が出来る人間なのだ。遠距離寄りの戦術内容でも特に問題ないはずである。

……個人的には、座学はゲームの様なアラガミの生態や、フェンリルの組織についての説明かと思っていたが、そう言うのは実際に戦場で使えるようになった人員になって初めて教えてもらえるらしい。……まぁ、下手に先入観があって『戦えません』なんて事態は避けるに越した事はないから当然と言えば当然だろう。

逆に知識も何も無くて良いのか、と聞かれるかもしれないが、この世界で生きている以上一度もアラガミを見たことがない人間なんてほぼいないはず。恐怖の代名詞としては十二分に役立っている。

 

まぁ、そんなこんなで本日からようやく、神機を使った訓練開始である。

 

……うう、捕食したくない……

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

『では、昨日通達していた通り、本日から実際に神機を使った戦闘訓練へと移る。

 各々自身の神機を手に取り、指示する位置へと移動しろ。

 神機を掴む際は、必ず腕輪の付いている方の手で掴む事。無事神機を手に取れたら、眞城は右手に見える小型アラガミを模したダミーの前へ、藤木は左手に見える的の前に立て』

 

「了解」

 

「分かりました」

 

ツバキさんの指示に簡潔に返事を返して、目の前に鎮座している神機に歩み寄る。

この一週間、ツバキさんの地獄の指導を受け続けた俺とコウタは、とっくにツバキさんに逆らう気力など失せていた。……だってさぁ、少しでも反抗的な態度を取ろうものなら、

 

『よし、ならば明日までにオウガテイル殲滅戦の有効な戦術を組み立てて報告してみろ。

 出来なければ訓練時間は倍増だ』

 

やら、

 

『今晩中に訓練場の床を汚れ一つない程に磨き上げておけ。

 そうすれば、間違っても汚すような行動はしないだろう……?』

 

等、頭と体、どちらにも深刻なダメージを負うことになるであろう罰を強制的に受けさせられるのだ。当然拒否権はなし。

更に不服を言おうものなら罰が増加するので下手な事は言えない。……ああ、リンドウさんとかアナグラの皆さんが全くは向かおうとしない理由が良く分かったよ。

 

「へ~、クウヤのはいかにも新人用って感じだな」

 

サッサと自身の神機を手に取ったコウタが俺の神機を覗き込みながら話しかけてくる。

 

「……まぁ、そうだな」

 

俺の相棒はコウタのとは違い、全くもって汚れや傷が見受けられない。コウタの神機が中古店で取り扱っている商品なのだとすれば、俺の神機は正規店で取り扱っている正真正銘の新品だ。

実際、俺のは新人用というよりは、この支部初の神機なのだから新品で当然だ。

……というか、一応先週分の座学の中でその説明はあったんだが……ああ、また寝てたのか。

 

「お前のは……旧型アサルトか」

 

ゲーム通りモウスィブロウである。

 

「おう。

 ツバキさんが使ってたやつらしいからな。

 ……なんか、いらんプレッシャーがあってさ……替えれるもんなら替えて欲しいぜ」

 

「無茶言うな」

 

前任者と比べられるのは確かに嫌だろうが、裏を返せばそれだけ熟知している人がいるという事。困った時には聞ける人がいるというのは、何よりも強みになるだろうに……

それに比べて俺は、経験者が周囲に全くおらず、新型の戦術について教えてくれる人がほとんどいない。近接は旧型近接、遠距離は旧型遠距離の人にそれぞれ聞けばいいのかもしれないが、その場合切り替えるタイミングなどの新型特有のアクションは全く教えてもらうことが出来ない。

俺以外の新型の人間といえば、アリサや後半の新人二人など、途中から増える人間しかいないのだ。それまで手探りで進まなければいかず、下手すれば俺が教えなきゃいけない立場になる。そんな俺と比べれば、コウタはかなりマシだと思うんだが……まぁ、相手がツバキさんだったという時点で御愁傷様である事に変わりはないか。

 

「よっと」

 

「……」

 

コウタに対する愚痴を脳内で漏らしつつ、台座に寝かされている自身の愛機に右手を伸ばす。

適合試験の時の様な緊張はない。

あるのは、遂に逃れられない捕食の時間が来てしまったことに対する諦観の念のみである。

神機を右手で掴むと、神機から黒いコードの様なものが伸び、腕輪に接続される。それと同時に体に漲る充足感は、先日適合試験の際に感じたものよりも強く、しかしあの時の様な一時の昂りではなく、不安定に揺れていた俺自身の力を安定させ、支えてくれているかのような充足感だ。

 

『よし、では早速移動しろ』

 

俺とコウタが神機を持ったのを確認したのか、ツバキさんが次の指示を出してきた。言われるままに移動する俺たち。コウタの方はどうなっているのか知らないが、俺の目の前にはゲームのチュートリアルで見た、不気味な色合いをしたオウガテイルもどきが鎮座していた。

流石に地面から湧いて出てくるような仕掛けはない様だが……はっきり言って気色悪い。

目の前に立ったはいいが、どうすればいいのやら……斬るなら斬る、撃つなら銃形態で攻撃するのだが、訓練なのだから開始の合図もないのに勝手に始めるのはマズイだろう。だからって、こんな毒々しい人間大のモンスターを目の前に据えられたままと言うのは、決して良い気分にはならないものだ。

若干俺が視線を逸らしつつ立ち尽くしていると、ようやくツバキさんが声を掛けてくれた。

 

『眞城、それは小型のアラガミ、オウガテイルを模して造られた訓練用のダミーだ。

 お前には神機の扱いを一通り慣れるまで、そのダミーで訓練を行ってもらう』

 

「……了解しました」

 

『ダミー相手とはいえ侮るなよ?

まずは10分間、ダミー相手に好きに動いてみろ。

その上で、追って指示を出す』

 

「分かりました」

 

ツバキさんとの会話が終わると、それまで黙ったまま動こうともしなかった目の前のダミーがスイッチでも入ったかのように――実際に入ったのだろう――突然動きだした。

蹲っていた体勢から立ち上がり、体を伸ばす様な行動をして、周囲を見渡すように首を振る。

 

≪……成程、動きは確かにオウガテイルそのものだな≫

 

前世のゲームでの記憶や、今世で何度か見たオウガテイルの動きと目の前のダミーの動きは完全に一致する。動きのみに着目するのであれば、確かにそれはオウガテイルそのものであった。

 

「よっと」

 

一先ず習得したばかりのステップを使い、ダミーから距離を取る。

神機を持っているが、行動に然したる影響は見られない。むしろ今迄足りなかったものがすっぽりと納まったパズルの様に、今迄の訓練時の動作以上に体の動きが完成している気がする。

 

「……うん」

 

ダミーとの距離も、予想通りだ。一週間前だったら加減が出来ず、必要以上に距離を取ってしまっていただろう。それを考えると、俺も成長したと思う。

 

≪さて、と……どうするかね≫

 

距離を取ったからといって銃形態に神機を変えるつもりはない。まともに訓練を受けていない銃を使うよりは、近距離式の特訓をする方が良いだろう。大体、銃形態の訓練ならコウタと同じことをさせるだろうし……

 

≪この距離なら、エミッター系のバレットだったら使うんだが……セットしてないしなぁ~≫

 

熟練の銃型神機使いなら近接戦でも無問題だろうが、新兵の俺には無理だ。

 

≪取り合えず、ゲーム通りの戦法がどこまで通じるか試してみるか≫

 

オウガテイル相手に戦法も何も無い様な気はするが、何事も基本が大事。相手の全面に付いている威圧感大な頭部よりも、尾の部分に注意しつつ攻めてみますか。

 

「グルルゥゥーーーー」

 

「お、来るか?」

 

俺に気付いたのか、低く唸り声を上げるダミー。今にも飛びかかって来そうな雰囲気だ。

 

≪先に一撃加えるべきか……?≫

 

ゲーム通りなら、今はまだ出会いがしらの威嚇状態だ。一瞬で距離を詰めれば一撃ぐらいは叩き込めるはず。

 

「……やるだけやってみるか」

 

即断即決、攻めると決めたのだから即座に行動しよう。

唸り声を上げ、尻尾を振り上げているダミー目掛けてステップを使い正面から突っ込む。さっき下がった時の様な加減など皆無。自身の出せる全力で床を蹴り、前方に加速。勢い良くダミーへと迫る。

 

≪……思ったより速いな……けど、これなら相手の攻撃前にこっちが攻撃できる≫

 

本気でステップを使ってみたのは初めてだったが、幸いにも自分が反応できないほどの速度ではなかった。ダミーに迫りながら神機を右手で大きく振り上げ、迫る勢いそのままに、

 

ザンッ!!

 

振り下ろす。振り下ろした神機は狙い通り、ダミーの首の部分を斬り裂いた。斬り裂き、着地すると同時に敵の反撃を警戒し、再度ステップを使ってその場から離脱する。

 

「……え?」

 

着地し、離れた位置から敵の方へと眼をやると、信じられない光景が。

若干勢いに押されたのか、首の中程ではなく根元部分にずれてしまったが……それは構わない。不可思議だったのはその威力。ショートだから切断はそんなに威力はないと思い、手加減せずに思いっきり振るったのだが……

 

ド、ドサッ

 

見事にダミーの頭部と胴体を分離させていた。

自分でも信じられないが、目の前には確かにダミーの頭部と胴体が横たわっていた。

 

「……マジですか?」

 

いや、自分でも特典のお陰で大分強化されているとは思っていたけど、まさかダミーを一撃で仕留められるだなんて思ってもみなかった。

そりゃRank10辺りまで強化した武器なら一撃で倒せるだろうけど、俺が今使っている神機は新人に支給されたRank1の最弱装備。いくら相手がダミーとはいえ、そう簡単に敵を倒せる筈がないのだ。……でも、チュートリアルでリンクバーストLv3はできないから、ゲーム上で実際にどうなるか分からないが……

(オウガテイル相手なら試せるけど……どうだったっけな?)

 

『……眞城、今何をした?』

 

「いや、何と言われましても……こう、ステップを使ってダミーに近付いて、首?の部分に神機のブレード部分を振り下ろしただけですけど……」

 

ツバキさんが珍しく呆気に取られたかのような声で俺に問いかけてくるが、俺だって現状が把握できていない。だから、取り合えず先程の一連の流れを口にしながらゆっくり目に再現してみたのだが……

 

『……お前、本当に新人か?』

 

逆に怪しまれてしまったようだ。

 

「本当に新人です。

 適合試験の資料ならサカキ博士に頼めば見れると思いますが……」

 

まぁ、前世でのゲームのプレイ時間や内容を考えれば既にベテラン級ではあるかもしれませんが……そんな内容はここでは通じないだろうし、言えるわけもないのだが。

 

『いや、すまんな……予想以上のことでつい取り乱してしまったようだ。

 ともかく、これまでの訓練内容から、お前が今迄の新人と比べて能力が非常に高いことは良く分かった』

 

呆れから一転、落ち着いた様子のツバキさん。それでも声はまだどこか震えており、驚愕から醒めきれていないようだ。

 

『……ともかく、お前はダミー程度ならどうとでもなるようだ。

 ならば、今日のところは藤木と同じ訓練に移ってもらう。

 藤木の所に移動しろ』

 

「了解」

 

ということは、これから射撃訓練か。

こればっかりは練習するしかないから早目にやっときたかったんだよ。うん、そう思うとダミーをやってしまったのも割と良い事だったな。

【翌日】

 

昨日の射撃訓練も無事終了し、本日は再び近接戦闘の訓練である。射撃訓練は遠くの動かない的を銃型神機で狙い撃つというもの。

コウタがアサルトであるのと違い、俺のはスナイパーなので若干訓練の仕方も違ったが。詳しく言うと、コウタは中距離――凡そ50m――からどれだけ連続して的に当てられるかというもので、俺の場合は遠距離――大凡100m――からどれだけ正確に的の中心に当てられるかというもの。

まぁ、各種兵装に合わせた特訓としては当然のものだと思う。

ブラストなら近距離での放射や爆発、アサルトはショート並の連撃、スナイパーは敵の弱点を安全圏から狙い撃つ狙撃。利点=基礎、だからな。

 

『藤木は昨日と同じ内容を行ってもらう。

 眞城は昨日ダミーと向き合った場所に移動しろ。指示はそこで出す』

 

「了解」

 

「は~い」

 

コウタと別れ昨日の場所に移動すると、スピーカーからツバキさんの声が。

 

『では、お前にはこれからこちらが指示を出すまで一切の攻撃を禁じる』

 

「はいぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

『うるさい、黙って聞かんか!!』

 

驚愕の声を上げた俺を速攻で黙らせ、ツバキさんは説明を続けて行く。

 

『昨日のことでお前は攻撃についてはほぼ問題がないことが分かった。

 だが、それではアラガミの動きに付いていけるかどうかという点では不安が残る。基礎訓練時の動きからほぼ問題ないと判断できるが、実際に相手がいる状態の動きの訓練は当然必要だ。

 故に、お前にはこちらが指示をするまでひたすら攻撃を避け続けてもらう』

 

そこまで言ったツバキさんが手元のボタンを押すと、

 

ゴウンッ

 

目の前の壁が開き、奥から昨日俺が対峙したのと同じ形態のダミーが登場した。

……ただし、5体も。

 

「うぇぇぇぇ!?」

 

いやいや、いきなり訓練のレベル上がり過ぎじゃありませんかツバキさん!?

 

『では、訓練を開始する。

 最初の目標は、10分間逃げ切ることだ――始め!!』

 

「ちょっ、まっ!!」

 

俺の心情など何のその。

ツバキさんの開始の合図とともに、ダミー5体は咆哮を上げ俺に飛びかかって来た。

 

≪ふざけんなぁーーーーっ!!≫

 




今更ながら、主人公の容姿について。
一々ゲームのキャラクリの番号で指定するのも面倒ですので、GE関連の漫画やノベルで男主人公として扱われているキャラをそのまま使わせてもらおうと思います。
ただし、髪は薄い茶ではなく、色素の薄い黒でお願いします。
名前も、当初は“神薙ユウ”で良いんじゃないかと思ってはいましたが、折角ですから、名前ぐらいは変えとかないと、と思い現在の名前に。
ちなみに、主人公の名字の誕生経緯は、

アラガミ→荒神→新上(あらがみ)→新上(しんじょう)→眞城(しんじょう)→眞城(ましろ)

なんてことだったり……
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