とある魔術の絶対値数(スカラオペレート)   作:Ωウエポン

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扱うは力  The_decisive_battle_of_K.

 

 

 

 

 今現在、エアコンの設定温度が26度という、人間が動きやすいとされる超快適空間の部屋で、部屋の主である桐生正宗と、同級生の上条当麻、土御門元春、青髪ピアス、の4人で『大乱闘(スマブラ)』をやっていた。

 彼らの近くにあるテーブルにはそれぞれが持ち寄せた甘い系のお菓子にスナック類、冷えたジュースと氷の入ったガラスコップが置いてあり、駄弁り、遊び、お菓子を摘まみながら遊んでいた。

 ここで、カイッーン!! 『ウワッーァァァァ……』と帽子にMマークの赤いオジサンがテレビの中でキラーンとお星様になる。

 

「キタねぇぞ土御門! ホームランバットばっかり使いやがってーっ」

「にゃ~、アイテムのせいにされてもルール上ありだから、負け惜しみにしか聞こえないにゃー」

 

 ここでこう遊ぶ前に正宗はATM からお金を降ろすことが出来たので昼飯は例の焼肉バイキングへ行った。そこで昨日の事があり当麻はお金がなくなっていたので正宗は貸してあげていたりする。

 以前、店は『なんとか開店した』と土御門は言っていたが、看板に書かれていた店の名前が『ナントーカ』と言うものだった。突っ込んだら負け、と土御門が改めて言って来たので、みんなで痛々しいほど突っ込んだ。おもに裏拳で。

 

「トマトはもらったぜい」

「あぁ! また落とされたコンチクショー!」

「土御門が全然死んでねー」

「この波乱。攻撃あるのみやね!」

 

 ちなみに、正宗は昨日のあの後に御坂美琴に出会ったが、何故か、ずぶ濡れになっており「あー、あんた……もう調べはついてるし、今日は疲れたから勝負しないであげる」と意味深げな言葉を残して帰って行ったのだった。

 

 

 次はバッコーンとゲーム画面の床が爆発。『ウォォォォォ!!』とゲームの中で歓声があがる。

 

「誰だよこんなところにセンサー爆弾しかけたのは!」

「ふっふっふ、カミやん? 僕が『トラップ青髪』だということを忘れてへんか?」

 

 

 ちなみに正宗が使っているのが『赤いオジサン』、土御門は『星のキツネ』、当麻は『大食いピンクボール』、青ピーは『緑色の変な恐竜』である。

そんなゲームの強さ的には、土御門≧青ピー>正宗=当麻の順番である。

 

「よっしゃハンマー取った、覚悟しろ土御門」

「あまいにゃー」

「ギャァー! ボム兵ー!」

「うわ、誰だよ伝説のポケ○ンなんて出したの!」

「僕やでカミやん」

「ゲームの中でも不幸ーだー!!」

 

 ちなみに土御門と青髪ピアスの強さは別格だ。『COM(コンピュータ)』のレベルを最大にしても1回も死なずに生き残る程の腕前だ。正宗と当麻も決して弱くはなく、強い分類にされるのだが、次元が違い過ぎた。

 

『5!・4!・3!・2!・1! ~TIME UP~』とアナウンス。バトルが終了。

 

「あー! また俺の負けだー!」と頭をかきながら叫んでいるのは当麻。

「やや? これでカミやんは3連敗だにゃー」

 

 ちなみに笑ってはいるが正宗はずーっと3位である。うん、どことなく空笑いに見えなくもない。

 

「次は『マリテニ』でバトルだ!」

「挑むところや」

「負けないにゃー」

 

 時刻は17:12。高校生にとってまだまだ遊べる時間帯だ。

 だが、

 

ピーンポーン…………と、突如正宗の部屋のチャイムが鳴った。

 

 

「誰か来たかにゃー」

「うわーめんどくせー、誰か代わりに出てよ」

「なんでだよ。そもそも正宗の部屋なんだから正宗が出ろよ」

 

ピーンポーンピーンポーンと続いて二回連続で鳴り響く。

 

「なぁー、何度も鳴らしてるって事は知り合いとちゃうんかいなー?」

「っちぇ~、わかったよ」

 

 押し売りだったらいきなりドアを閉めて、宅配便だったら助かるな~とか思いながら玄関の方に行く。

 

 ピーンポーンピーンポーンピーンポーン……と、また鳴る。

 

「マサやーん、今3人じゃマリテニ無理だから『カート』でええかー?」

 

 青ピーが言って来たので、いいぞーと正宗は答えた。ちなみにカートは『赤いMオジサンのカート』である。

 

 ピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン……!

 

 

「はいはい! 今開けますよ」

 

 ガチャッ(open the door)

 

 玄関のドアを開けると、ムワァ~と夏の過酷さの代名詞、暑さが雪崩れ込んで来る。宅配便なら、ご苦労様です。ハンコをとっとと押すから貴方も涼しい車内にとっとと帰ってくださいね、と言いドアを早く閉めたくなるし、知り合いなら無駄なことはせずに部屋にすぐさま入らせる。

 

 だがそこに居たのは押し売りどころか宅配便でもなく、クラスメートでもなく、自分の親でもなく、理想とするニーソを穿いた足の長い美人でもなく……

 

「ちょっと! 何度も鳴らしてるんだから早く開けな――」

 

 バタァッン!!(close the door)

 

 カチャン……(and lock)

 

「………………、???」

 

(なんで? 何でアイツが俺の住所を……?)

 

「マサやーん、どうかしたのかにゃー?」

 

 土御門が顔を覗かせて言ってくる。正宗は、な、何でもなーいと返す。ここで見つかれば大変なことになる。相手は仮にも女の子、ここは男子寮。そして今部屋にいるあのお三方、確実に勘違いをされる。

 

 ビリビリッ……カチャン(!?!?)

 

「へ?」

 

 バーッン!!(emergency!)

 

「訪問拒否すんのかこらぁぁぁぁーっ!!」

 

 デデーン、『怪物』もとより『まな板』でもある最強の電撃使い、御坂美琴が現れた。という現在進行形のゲーム的な彼の反応……じゃなくて、

 

「のわぁぁぁ!? ちょっ待て待て待て!」と半分叫びながら急いでドアを閉めて玄関前の通路において二人は口論を開始する。

 

「マジでおま、何でこんなとこまで来るんだよ!」

「うっさい! もう逃げらんないわよ! いつぞやの決着……、私と今から勝負しなさいっ!」

「ハァ!? んな理由!? たったそんなことで!? いいかよく聞けよく考えてみろよ。おかしいだろ! んなことで家にまで押し掛けるなぁー!!」

「なによ!! 昼間来ても居ないし、いくら捜しても居ないあんたが悪いのよっ!!」

「む、むちゃくちゃなこじつけかよ! 俺に否なんて一個もねえじゃねーか!」

 

 つーか昼間に来ていたのかよーっ! と、ぎゃあぎゃあとワメいて玄関から出て話していると、

 

 ガチャッ(open the door ……)

 

「なんだなんだマサやん、叫び声なんか出して大丈夫かに……」

 

 ピタッと止まった後、

 

 にゃわあぁぁー!! と心配してくれた土御門が玄関から出てきたことがさらに最悪の展開にさせたのだった。

 

「つ、つ、土御門!? 誤解だ! つまりは数多くの理由があるんだ!」

「この状況でどういう理由があるのかにゃー!! 詳しく話せ! どの程度進展してるのかにゃー!!」

「ちょっとちょっと聞いてんの!? 私と勝負!」

「あわわわわわわ……」

 

 もう何がなんだか分からなくなってきた正宗が取った行動とは、

……もういいや~。と、悟りでも開いたかのような表情で、思考の停止と

 

「うぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 逃走という『現実逃避』だった。

 

「え、ちょっ、待ちなさいよっ!! 今さら逃げんなぁぁ!!」

 

 美琴は走って正宗の跡を追いかけてくる。

 

 残された土御門は頬をピクピク、口をポカーンと開けたまま取り残された。

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 その後、正宗は走りに走ってあの川原の土手まで来ていた。西に沈みゆく夕日は本当に綺麗で、こんな青春チックな風景がまだ残っていたなんて……と、誰かが言いそうなくらいだ。

 だがここにいる少年Kは体育座りで頭を伏せて明らかに『元気がないんです。ほっといて下さい』という雰囲気が出ていて、またそれを夕日がより引き立ててくれている状況だった。

 

「なーにぐずってんのよ。……嫌でも勝負してもらうんだから……」

 

 追いかけて来た御坂美琴が正宗の隣に立って言ってくる。言ってくる言葉は迷惑極まりないが……。

 

「絶対に土御門が当麻と青ピーに言って、怒り狂った奴らは俺の部屋を……あーぁ、こんなことになるんならちゃんとエロ本隠しておけばよかった……」

 

「え……え、え、エロ本って!? まさかあんたそんな物を読ん――!? うっ、……こんな時とか場所とか……相手を考えて言いなさいよ馬鹿!! エッチ!!」 

 

  一応言っておく。正宗だって思春期なのだ、エロ本の1冊や2冊持っていてもいいはずだ。しかしそんな言葉を聞き慣れてない。いや、慣れていても困るのだが……『エロ本』と言うワードに対応出来てない美琴は顔を真っ赤にして抗議する。

 まあ『普通の女の子』の前だったら言う言葉ではない。

 

「エッチで結構。健全な男子はみんなエッチですーぅ!」

 

 とうとう何処かネジでも飛んだか吹っ切れている正宗。言ってはイケない恥ずかしい事を言ったのだが、吹っ切れた相手に向かって悪口を言っても何も効かないので御坂美琴は、はぁ……とため息をつき、そんな年上の座り込んでいる少年を見ているだけだった。

 けど突然、

 

「でもよ、戦闘狂(バトルジャンキー)のお前でも女の子の様に恥ずかしがるんだな?」

 

 そんなことを言い、座ったまま正宗はクスリと小さく笑う。

 

「……それって私が女の子じゃないような言い方じゃない」と、いきなり言ってきた言葉が自分の癪に触る言葉なので、ムッとしたように美琴がそう言い返す。

 

「……、バレたか」

 

 次の瞬間ビリビリッ! と電撃が飛んできた。

 

「ムカついたからって電撃うってくんな!」

 

「もう! うっさいわね! こんなヤツに何で私の電撃がいつも効かないのよ! しかも毎回勝負を挑んだらいつも言い訳して逃げるし……。ふぅ~ん、あんた、それでも健全な男の子なの?」

 

 最初は怒りながら言っていたが、ふと思い付いたかの様に挑発気味に最後は言ってきた。

 そんな彼女に溜め息を吐いて彼は一言、

 

「あのなー……、理由も無しに女の子と勝負なんか出来るかよ」

「じゃあ『理由』があればいいのね?」

 

 美琴は言ってくるが何か思い付いた感じだった。

 

「賭けよ、私とあんたで『勝った方に敗けた方が夕食を奢る』ってのはどう?」

「はぁ? そんなの嫌に決まって

「断ったら、あんたがエロ本を持つ()()だと、うちの後輩とか他校の女子にも言いふらしてやるんだからー」

 

 正宗を指差して、もの凄く意地悪く笑っている鬼畜なお嬢様。当の本人は、な……と口を開け、バカ面を示して美琴の策略にしてやられたことに気が付いたのだった。

 

(もし常盤台の女子に噂が広まって、他校の女子にも……って最悪だぁぁぁぁ)

 

「クソッ……この野郎、やってやろうじゃねえか」

「フンッそれでいいのよ。絶対に勝ってやるんだから」

 

 勝負が始まる前から勝ち誇った様な顔をする美琴であった。

 

 

 

 時刻は19:06分。

 夏の夕日が沈みかけていた川原には二人以外は居らず、通報される心配もなかった。

 

 そしてその川原で対峙する。

 

「さっさと始めて終わらせようぜ~……」

 

 いかにも、やる気ないでーす的な感じで正宗は言う。

 

 実は、ちょっとは頑張って勝負するが、

 その1、美琴が撃ってきた電撃に簡単にぶつかる。

 その2、その際に電荷を落として軽症で終わらせる。

 その3、美琴は勝ってもう正宗に用はなくなる。

 

 それで『全て終了』という風に考えていた。

 こんなこと思い付くなら始めて会った時にそうしていればよかったと思う正宗だった。

 

 だが、方や美琴は正宗がやる気の無いように言った時から勘づき、考えていた。

どうやって本気を出させようか、と……。

 

(…………よし!)

 

「言っておくけど、私にとっての夕食(ディナー)は、第三学区にある高級レストランのフルコースだから!」

 

 第三学区は外部からの客を多く招く学区。プライベートプールや高級ホテル等がある。

 

 そう『これ』が考えた結果だった。しかし、さすが常盤台のお嬢様、規模が違う。ちなみにお値段は諭吉さんが何十枚も、

 

「待てや待てや待てやこらぁぁぁ!! 一般学生にそんな余裕あるわけねーだろ!」

 

「じゃあ学園都市第3位の私と本気で勝負して勝てば良いんじゃないの?」

 

 この瞬間、正宗の考えていた事が全て駄目になった。

 

(敗けたら金が無くなるどころか月末で金もあんま無いから借金だし、逃げても変態呼ばわりだし、勝つしかないのかよ!? しかも相手はレベル『5』……、でも中学生の女の子だぞ。怪我はさせたくないし……って下手したら俺が大ケガ)

 

 無言で『あれよあれよ』と考えていた正宗に向かって突然、

 

「こっちから行くわよ!」

 

 そう言って美琴は電撃を正宗に放ってきた。それを合図に勝負が始まる。

彼女の電撃はジグザグに曲がり、不規則な変化をしながら空気を裂いて向かってくる。捕らえ難い。もし第三者がこの勝負を見ていればそう語るだろう。だが工夫空しく、それは正宗に当たる前に消される。

 

「お、おっかねえなオイ……でも電撃は効かないって何度も耳にタコが出来るくらいに言ったはずですけど? だから開始早々だけどさー。あきらめてくんねーか?」

 

 早く帰りたいんだよ……とまだ文句を言う正宗。

 

「フンッ、何の冗談? まだまだこれからよ! でもやっぱり、効かないか……なら!」

 

 そう言って美琴の周りに砂鉄が集まってくる。フレミングの法則の応用、体中に電流を流し、磁界を辺りに新たに作る。彼女の片手にはその磁界により集まった砂鉄で作った剣の様な物があり、周りでも砂鉄が嵐の様に舞っていた。

 

「うわぁ、そんな物騒なもん作りやがって。マジ引くわー」と、どんより顔の正宗。

 

「んな!? これは勝負なんだから文句言うの禁止!」

 

 そう言って砂鉄の巨大な槍が飛んで来るが、正宗の能力範囲に入ると止まり、砂鉄の粉に戻される。ドバン! ドバン! と音がなるのは止まった砂鉄に行こうとする砂鉄がぶつかるからだ。

 

「こんのっ!」

 

 次は美琴が持った砂鉄の剣で攻撃してきたが、それを正宗は避ける、逃げる。反撃しようにもそんな気持ちが出てこないのだ。

 

「避けてんじゃないわよ!」

「無理いうな!」

 

 だが、避けるのも疲れてきた正宗は、学生ズボンの後ろポケットからガスライターを取り出す。

 

「っ!!」

 

 それを見た美琴は攻撃を止めステップで後ろに下がる。

 

「どうやらあんた……マジで私を殺すつもりの様ね」

「…………はぁ?」

 

 どうやら誤解されたみたいだが、ガスライターを出したのは蒼い炎の剣を作り、砂鉄の剣を溶かそうとしたからである。その前に磁界は熱に弱い。作り出せば彼の独壇場だろう。無効化するのも熱源があるので容易だ。

 だがそれを美琴はかつて見たあの道路を破壊した様な攻撃を自分にしてくるのだろうと思ったのだった。

 

「じゃあ私も容赦無しに本気で行くんだから!」

 

 ゲームセンターにありそうなコインをポケットから取り出す。

即ち、超電磁砲(レールガン)を撃ち出す様だ。

 

「ちょっ! わ! んなもん当たった死ぬってーっ!」

「あんたもライター出して来たじゃないの!!」

 

 そう言って美琴はお構いなしに右手を出して構える。 

 同時に正宗もライターに火を点け蒼い炎を出した。

 そして ドゴォォン!!!! と地面が抉られる音と共に炎と雷の光線がぶつかるが、炎は依然として持続したままだった。

 

 超電磁砲(レールガン)は掻き消されたのだった。詳しく言うと、超電磁砲の弾となるコインが限界射程に到達、完全に融解よりも前に蒼い炎によって融解させられてしまった。

 『射程』では美琴の方が上だが『威力』なら正宗の方が上だったのだ。

 

「ふ……防がれた……」

 

 空気抵抗や温度でコインは溶けるのはわかっていたが、美琴にとって絶対的に信頼を置く超電磁砲をたかが(名目上は)レベル3に防がれたのは少しショックだった。

 

「御坂だから見境(ミサカい)なしってか?」と余裕の表情で、だが少し苦し紛れの様な感じで言う。

 

「でもどうすんだ? 言っとくが力量(スカラー)を扱うからな。俺にはまだ手の内が残っている、ぜ……」

 

 脅すつもりで正宗は言ったが、早く諦めてくれ、と心の中ではそう懇願していた。

 

「くっ!!」

 

 美琴は考える。正直に言うと、これまでの勝負では戦略的なモノをあまり考えた事はなかった。考える必要がなかったのだ。

 自身の扱う能力は雷ですら超える電撃能力、それはまず『災害』の領域だ。これまでの対戦相手は災害を相手にして、いくら考えても“自分だけに降り注ぐ自然災害以上の災害”など勝てる訳がない。防ぎ様がなかった。

 だが、それも“これまでは”だ。

 

 

(考えるのよ……。あいつに有効な攻撃を…………………、そうよ!)

 

 

 そして何かを思い付いた美琴の周りに、最初の段階よりも2倍の量はある砂鉄が集まってくる。

 そして磁界を操って正宗を中心とした砂鉄の嵐を作り、ズサァァァァ……という砂と砂が擦れる音で聴覚を、その砂鉄の量で視覚を奪った。

 正宗はその嵐の動きを止めようと演算をするが、気が付いた。

 

(……俺の能力範囲外で操って…………って、まさか!)

 

 そのまさか、砂鉄の壁の向こうから美琴は『超電磁砲(レールガン)』を放ち、それがうねりをあげて迫ってきた。

 しかし予測していたのでとっさに本気で速さのスカラーを操って当たる直前で止める。

 

「こ、殺す気かあー!!」

 砂鉄の嵐と壁をガスライターの炎の剣で壊して掻き分けて、撃って来た方に行くが……

 

 御坂美琴が撃って居たとされる場所に彼女はいなかった。

どこだ!? と探すが、彼の周りはまた砂鉄が舞っていてよく見えない状況になっていた。

 

(あいつは、あの時私の飛び蹴りをくらったのは背後だから、気が付かなかったのよ……なら有効なのは……)

 

 不意打ち。

 正宗は ガシッ と左手をか細い手で力強く掴まれる感覚がした。

 

「勝負あったわね……」

(これなら、多少電荷を操られても電撃は効くはず!)

 

 美琴は本気で電流を流そうとしていた。気絶させるのがベストだ。けど生半可な攻撃では防がれる。『このチャンスを逃すまい』と思っていた。

 

「な……!?」

 

 とっさに正宗は美琴を速さのスカラーを操り右手で突き放そうとしたが……バチバチィッ! という音と共に左手の甲に突き刺す痛みが走った。

 いくら電荷を『0』に持っていくのが早くても、相手は仮にも最強の『電撃使い(エレクトロマスター)』。零距離では火傷で終わらせるのが精一杯だった。

 

 正宗は痛みから逃れたい一心で突き放そうと美琴の握る手の力を奪い、そして彼女の右肩を押し、突き放そうとしたが、その右手に加えた運動エネルギーの量を誤って、過大にしてしまった。

 

「つぅっ!!」

 

 美琴は軽々と突き飛ばされて地面に思いっきり叩きつけられそのまま地面を転がる。

 

 

 

「だい、丈夫、か……ッ……!」

 

 左手の火傷の事よりも、『やってしまった』と思っていた。どんな理由であろうが相手は女の子。さっきの反撃でケガをさせてしまったのは確実だからだ。

 

 

「ぅ……痛ッ! い……ったぁ……ッ! ……こっ、の……」

 

 美琴は起き上がろうとするが、右肩と足を怪我したのか、顔が痛みからか引きつり、立つのがやっとの様だった。

 

「ちょ……やめろ! 勝負なんかよりも……!」

 

「勝手に終わらせないでよ! ……まだ、まだ勝負は終わってないんだからっ!!」

 

 そう言って痛む右肩を左腕で支えながら美琴は超電磁砲(レールガン)を撃って来る、が……

 正宗は蒼炎を出さずとも、自分の10メートルの範囲に来ると容易く打ち消した。

 いや、レールガンの速さを『0』にしたのだ。

 

「……う、そ……」

 

 彼女は目を見開いて信じられないといった表情をした。

 

「もういいつってんだ! 俺が本気出したらレールガンの速さだって扱える。だからもうやめろ! これ以上続けても」

「まだよ! まだ……負けてない!!」

 

 そう言って超電磁砲(レールガン)を、痛みを堪え、力の限り撃って来たが桐生正宗はただ速さを扱うだけでそれを凪ぎ払う様に防ぎながら、御坂美琴に向かって何の躊躇もなく歩いて行く。

 

 最後の悪あがきで電撃も放って来たが、それも彼女の目の前で虚しく消えた。

 

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 そして二人の間が1mくらいになってから美琴は目の前にいる年上の少年に攻撃をやめて、能力も体も限界だったのだろう……その場にドサッとへたれこんだ。

 

 

「……ぅ……ぅ……」

 

 美琴は今にも泣きそうだったが唇を噛んで堪えていた。ただその泣きそうになる理由は痛みからだけではなかった。

 これまでになかった悔しさが滲んでいた。

 痛む左足首と右肩。痛い部分を手で抑える。そうすると、かつて自分にこんなことがあったのだろうかとより悔しくなった。

 

 正宗はそんな美琴の目の前でしゃがみこんで、

 

 

「……足首、ちょっと見せてみろ」

「……あんたに見せたって……」

「能力を使ったら冷やすぐらいは出来るから、……ほら」

 

 悔しいが、悔しい相手に今は助けて貰うしかなかった。手を出す正宗に美琴はしぶしぶといった感じで見せてきた。ルーズソックスを脱いだ彼女の左足首の関節は少し膨れあがり、捻挫しているように見えた。

 

「ちょっとヒヤッとするぞ」と言って正宗はその腫れた部分に手を当てて温度を操り冷やす。

 

 冷たい……両方の手のひらを足首に巻くように当てられて、気が付いた。

 その左の手の甲が少しだけ血を出し、火傷の様に爛れていることに。

 

 あ……、と声を掛けようとしたが、そんな痛々しい事を気にもせず集中して足首を見ながら冷やす正宗の顔を美琴は知らず知らずのうちに見ていた。

 

「……? どうかした?」

 

 ほんの少し時間がたってからだろうか、自分の方を向いてくる美琴に気が付いて正宗がそう聞く。

 

「な、なんでもないわよ……。それにいつまで触ってんの! もう大丈夫だから!」

 

 そう言って美琴は無理に立てろうとする。無論、正宗は美琴に突飛ばされるので尻もちを着くはめになるが、

 だが肝心の相手は立てることはできたが、歩こうとした時に辛そうな顔をして足を引きずり、少し歩いたが、また立ち止まってしゃがみ込んでしまった。

 

「お、おい! 無茶すんな!」

 

 彼は御坂美琴に駆けよる。

痛さでしゃがむ美琴は情けない気持ちでいっぱいだった。自分から撒いた種だったのに、それに付き合わせた正宗が心配してくる事に対して……。

 

 

「……ほら、おぶってやるから」

 

 

 ……行くぞ、と。もう見るに耐えかねなかった正宗は最後の手段として反対側を向いて背中を出す。

 

 美琴は「え?」と言いながら俯いていた顔をあげると正宗の背中があって、ちょいちょいと手で『乗れ』と示してくる。

 

「なっ! なんであんたなんかの背中に!」

 

 そっぽを向いて少し顔を赤くして言ってくる。こんな反応が返ってくるのは予測できたが、そう大声で言われてちょっと心にグサッと来るのが半分、この状況から早く抜け出したいので、コイツめんどくせ、っと半分、心の中で思うのだった。

 

「乗るくらいなら歩けるようになるまでここに座っておく!」

 

「はぁ~。そう、ここでずーっと座っておくのか? …………あ! でっかい虫が御坂の方に!」

 

 コガネムシだった。だがそれも一回り大きくギチ、ギチと気持ち悪く足を世話しなく動かし美琴の座り込む足下に……

 

「うわあぁぁぁぁーっ!?!? いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そう言って思いっきり正宗の背中に飛び付いてきた。正宗はその衝撃で、ぐふぇ! と言って衝撃になんとか耐えた。

 

 

「こっち来ないでー!! わあぁーっこっち飛んでくんなぁぁ!! ちょっとあんた早くどっか行きなさいよぉー!!」

 

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 現在の時刻は20:03 

 常盤台の御嬢様――――御坂美琴をおぶって人の通りのない裏道を桐生正宗は選んで歩いて行く。

 背中にいるので正宗は見えないが美琴は少し顔を赤くしていた。

 また正宗の方も顔をちょっと赤くしていた。なぜなら美琴から女の子特有の匂いがしたり、ほんの僅かな胸の膨らみが背中に当たったりして、凄く恥ずかしい思いをしていた。

 

 正宗は始め病院へ向かって歩いたが、美琴が『寮の門限があるのよ』と言って断ってきた。話しによると、どうやら保健室の様なものが寮の中にあるみたいだった。

 

 

 

「あんたも左手、火傷してるじゃない……」

 

 正宗の左手を見た美琴が言ってくる。

 

「あー、大丈夫。こんくらい平気へーき」

 

 あの時くらった火傷は結構ひどく、手の甲は赤く皮膚がただれていた。

 しかし正宗はある程度痛みの大きさですら、どのような力が働いているのか分かっているのならば操ってしまうので痛くなかった。

 そう御坂美琴に説明すると、何でもアリね……と飽きられてしまった。

 

「それで? 今日は無理だけど……、どこがいいの?」

 正宗に向かって不意に背中の美琴が聞いてくる。

 

「なにが?」

 

「……賭けの事よ。……悔しいけど、敗けた方が奢る約束でしょ?」

 

「そんな約束してたな~、どこでもいいよ」

 

 美琴をケガさせてしまったので普通に忘れていた桐生正宗だった。逆に御坂美琴はケガをさせてしまったから……いつ言おうかな、という感じで覚えていた。

 

「まったく……、私の連戦連勝記録もあんたで終わりよ」

「そうですか、そりゃ~残念でしたね~」

「む! 適当に流すなーっ!! 私以外に負けたら承知しないんだから!!」

「こら暴れるなって! ケガ人は大人しくする!」

 

  さっきまで大人しかったのに、正宗の背中でガミガミ言って暴れる美琴に正宗が注意すると彼女は不本意ながらもまた静かになる。

 

「だって………、私だって頑張ってレベル5の能力者になったのよ……。でも、確かにあんたが強いのは調べた時から分かってた……」と背中にうずくまりながら美琴は言葉を繋げる。

 

「……けど、それでも悔しいし、あんたが他のヤツに負けるなんて、……私が惨めになる……から……」

 

 確か『常盤台の超電磁砲(レールガン)』は努力で超能力者(Level5)に上がった一例だということを正宗は思い出した。

 

 そんな『努力の人』がこんな『自分』に負ける事は、悔しいに決まっていた。

 いや、本来なら頑張った人こそ勝たなければならない……。

 

(あーぁ……)

 

 俺、なんてことしたんだろう……と。

 わざとでも敗けていたら良かったのだろうか……、わざと倒れておけば良かったのかな……、勝つなら勝つで本気で戦っていた方が良かったのかな……と、正宗は悔やみ、悩みはじめていた。

 

 

「あの時は本気だったの?」

 

 美琴が突然、肩から顔をだして正宗に聞いてきた。

 

「え、あ……うん」

 

本気でやったよ……と、何処となく、ぎこちなく応えてしまった。本当は本気など出してはいなかった。こんな時、正宗は不器用な言い方しか出来ていなかったのがいけなかった。

 

「そっか……、」

 

 美琴はそれを見逃さなかった。正宗が嘘を言っている事など、手に取る様にわかってしまった。 だが嘘をつかれた事よりも、『手を抜ぬいていた』ということの方がショックだった。

 

 黙り込む、それまでは無かった彼女の落ち込みに正宗もやっぱりバレてしまったと気が付いた。だから

 

「……んじゃ、約束する」

 

え? と背中でちょっと驚いて美琴は顔をあげる。落ち込んでいた美琴の顔を見て正宗は唐突にそう言ったからだ。

 

「何を……?」

 

「だからー、『お前以外の誰にも負けない』って。さっきの事もあるし、十分だろ?」

 

 ……もちろん、お互い分かっていた。常識的に考えたらそんな約束は『無理』なことを。『栄枯盛衰』という言葉があるように、必ず栄える勝者には敗北がいつか来るのだ。

 しかし正宗は美琴を元気付ける為に冗談でも約束しようと思って言った。

 案の定、美琴は「何よ、それ」と言って少し笑ってくれたのだが、

 

「じゃあ負けた時は私の言うことを何でも聞いて貰うわよ!」

 

 それを逆手にとって小悪魔の様にこの御嬢様、御坂美琴は言ってきた。

 

「え? ちょっとちょっと、冗談だよね……?」

 

 正宗は冗談で言ったのに真に受けられたと思って困惑する。

 

「なに? 自分から言ったはずよね? 男に二言ってあるの、ないの?」

 

「……普通は、ありません……」

 

 普通はね。と彼はブツクサ言っているのに

 

「うんうん、よしよし。じゃあ約束ね♪」

 

 最後の言葉は可愛らしい笑顔で言って来たが、正宗にとっては悪夢だとしか取れず、約束したことを後悔するばかりだった。

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 現在の時刻は20:15分。

 

 何とか常盤台中学の寮の20:20分の門限に間に合わせることができた。

 

「本当に病院行かなくても大丈夫か?」

 

 常盤台中学の寮の玄関が見える距離で美琴を降ろして言う。

 

「へーきよ。治療くらいなら寮でできるから。あんたこそ病院行ったら?」

 

 ちょっと足は引きずっているが元気そうに言ってくる美琴。

 

「こんくらい大丈夫だから」

 

 左手を振って、痛くないとアピールをしながら正宗は言った。

 実はお互いに心配をかけたくなかったから元気に返していたのだった。

 

「ホント、今日は最悪の日だったわ……」

 

 手を腰に当てて、小さな溜め息をつきながら美琴は言った。

 

(お前がそうしてきたんだろーが」

「何か言った?」

「!? なんにも言ってません!」

 

 心の中で呟いたつもりが本当に呟いていた正宗だった。

 

 そして常盤台中学女子寮の玄関前まで来た。

 

「おぶってくれてありがと。それじゃあね」

 

 美琴は小さく手を振ってから寮に入っていく。右手でしてきたので、右肩はそこまでひどくはないような仕草に、心の中で少しだけホッとする正宗だった。

 

「おう、じゃあな」

 

 正宗も手をあげて言葉を返す。寮の中に入ったのを確認してから正宗は自分の寮に向き直って歩き始めた。

 

 

 

 

「あ! また()()しなさいよ!」

 

 突然、寮の扉からひょっこり頭を出して正宗に向かって美琴が言ってきた。

 

「は、はぁ~? ……じゃあ()()になったら終わるんだよ?」

 

 振り向いて正宗が呆れた顔をして言う。

 

「私が勝つまでよ! 次は負けないんだからねっ!」

 

 そう言って美琴はべーっと舌を出して寮の中に入る。

 

「……、またぁ?」

 

 正宗は独り虚しく、そう呟いて寮に帰って行った。

 

 

 

………………

 

…………

 

……

 

……side 正宗……

 

 

「どういうこと何だにゃー」

 

 正宗が寮の部屋に入った瞬間、明かりがつき土御門がいた。

 

「うわ! だから土御門! あいつとは何も無いんだよ!」

「じゃあ何でこんなにも夜が遅いんだにゃー、場合によってはカミやんと青ピにバラすにゃー」

「え? まだアイツら知らないの?」

「何だかマサやんにも何かありそうだから、ウソついて帰らせたにゃー。でも理由によっては…………」

 

 にゃー、と口癖を言い、掛けているサングラスをキラーンと光らせて土御門はまじまじと正宗を見てくる。

 

 ここで正宗は必死で考えて、頭の中で説明文を構築していく。

 

 実は、ある日にあいつを不良から助けようとしたのに……とか、それで毎回の様に追いかけられ、電撃で攻撃してきて……とか、あげくのはてには住所まで。はぁ~、口が滑ってエロ本……とか、それで、今日のさっきまで、勝負…………とか、

 

 一応変な事を除いて正宗は説明した。

 御坂美琴が戦闘狂であって、いつも追い掛け回されて大変だったことを。

 

「それはまず災難だったにゃー」

 

 うんうんと土御門は頷きながら言う。彼は青髪ピアスと違い、女の子の属性は何でもかんでも良いという人物ではないので正宗の苦労話にも聞き耳を持ってくれるのだ。

 これが……、御坂美琴がロリっ子娘なら、彼も暴れていたのかもしれない。

 

「何よりもこの左手が証拠だぜ、まったく……」

 

 痛々しい火傷を見せるが、別に能力のおかげで痛くない。見せた後、彼は薬箱の中から消毒液とガーゼ、包帯を取り出して一応処置を開始する。

 

「でもこれから発展する?」

 

 包帯を巻いている途中で土御門がそうニヤニヤしながら聞いてきた。

 

「いやいや、絶対にないから」

「えー、つまんないぜーい。でも」

 

 こういう場合は発展していくんだにゃー、と言って来たので、ねーよバカ、と正宗は一発ぶん殴る。これまでから見ると、土御門元春は他人の恋などは応援するのに積極的な性格らしい。まぁ、上条当麻は所せましとフラグ建てて行くだけなので男子としては……我慢できないものもあるのだろう。

 

「まぁどんなことがあっても黙っておくぜい。だから今度昼飯を奢ってくれにゃー」

 

 とまあ、条件付きで土御門は黙秘してくれると言ってくる。

 

「はぁ~、わかったよ……。頼むから黙っておくか、バレたら弁解してくれよ」

 

 土御門の交渉は成立したのだった。

 その後ちょっと2人でゲームをして夜中まで遊んだ。

 

「じゃあなマサやん」

「おう、またあしたー」

 

 そう言って土御門は同じ階の部屋に帰って行った。

 夜の23:15分。

 ようやく1日が終わったのだった。

 

 

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