とある魔術の絶対値数(スカラオペレート)   作:Ωウエポン

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 盆休みも今日までという……
 かつて載せていた分も全て投稿出来たらいいな……







遭遇 An_encounter_with.

 

 最終下校時刻を過ぎ、全ての公共交通機関が止まったので正宗は歩いて帰っていた。西の空にはまだ陽が射していたが道は建物の影などで暗闇が占める部分が多かった。

 

(あの先公マジで、あり得ねぇよ……)

 

 説教時間は軽く1時間を越え、そしてそのあと古典のプリント(×50枚)をやらされ……そうになったのだ。『終バスも電車も済んじまったじゃねぇか!』と抗議したら『居眠りしているお前が悪いんだ、歩いて帰れ!』と言われた始末。

 ケータイの時刻は現在19:00分を回っていた。

 

 がっくりと(うな)垂れながら確か冷蔵庫にはなーんにもなかったよな……と、そんなことを思い、帰り道のT字路にあるコンビニに行くことに決めた。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 入った時のお馴染みのアラームと同時に『いらっしゃいませ~』という女性店員の愛想良い声が聞こえてきた。

 

(お! 『密室×密室探偵』の続きが出てる!)

 

 と思って、それが連載されている週刊少年雑誌を取ろうとしたのだが、

 あとから入店して来たはずの常盤台中学の服を着た女子中学生に先にかっさらわれるようにレジに持っていかれ、その女の子とすれ違う時に勝ち誇ったような顔された。

 なんだよアイツ……と内心、腹がたったのが、取って買われた商品の所有権は女の子に移り、読むことは出来ない。……仕方なく他の雑誌を読むことにした。

 

「ん~……」

(この雑誌はこの前読んだし、他の週間雑誌も古いのばっかだな、ファミ通は~……、売り切れか)

 

 しかし色々と読み漁っていたが、これと言っておもしろいものはなかった。だが、

 

『恐怖! 学園都市の都市伝説 第二弾!』

 そんな本が最上段の隅に目立たない感じで置かれていた。

 

 だから変に目立っていたのだろう。少し気になりだせば止まらない。正宗は気がついたら手にとっていた。

 パラパラとめくって行くなかで、『虚数学区・五行機関の真相』、『脱ぎ女との遭遇体験記』、『幻想御手《レベルアッパー》』、『第三位の複製《クローン》疑惑』『多重能力者《デュアルスキル》』。とか何かしら確認できた。

 そのなかで目を惹いたのが、

 

『全ての能力が効かない逃亡者』

 

(……これって、当麻のことじゃねえか?)

 

 題名からしてそうだった。

上条当麻と共に出かける場合、その帰り道が主にだが彼は老若男女問わず人を助ける。

 それが何の巡り合わせなのか半分以上は女性。その中でも不良に絡まれた女の子を助ける際に相手がちょっとした能力者であって、能力を使って来たときは右手にのみ宿っているとされる幻想殺し(イマジンブレイカー)でそれを打ち消していた。

 ここまでならイイ話かもしれないが、そのあとが問題だった。

上条当麻は不良の人数が多かったりして途中で逃げに変更するのだ。

ではとばっちりを喰らった正宗はどうなるのか、

 

 もちろんイイ迷惑である。

 

 毒づきながらでも、そこは当麻と違って男としてのプライドなのか、一度『吹っ掛けた』からには逃げるよりも不良達を相手どっているのだ。

 だが正宗が不良を8割。当麻が約2割倒しても結局フラグがたつのは何故か当麻だった。

 

 そして先日、入学して1学期もたたないうちにクラスの女子のほとんどから好意を持たれ、一部フラグを建てた上条当麻少年に対して、正宗、青ピ、土御門の三人は、

 

『カタツムリ計画』を実行した。

 内容的にはカタツムリが大量に入った(ツボ)のなかに宙吊りにした当麻の頭をズボッ……と。

 

 あの時『不幸だ不幸だー!!』とツボの中で連呼していて三人で腹を抱えて大爆笑していたのはいい思い出でもある。

 

 変に思い出し笑いをした後、都市伝説の本を戻して自分の腹を満たせるような食べ物を選ぶことにした。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

『いら、……いらっしゃいませ~』

 しばらくして、他の客が入って来た様だった。さっきの愛想良く返事をしていた店員が少し躊躇した返事をしていた。

 少し気になったが、正宗からは見える位置ではなかった。

 

(……、俺には関係無いな。見たからと言っても店員が躊躇するくらいの厳つい人か不良なんだろうな。ちら見して「なにガンとばしてんだよコラ」とか言われて喧嘩になるのは、正直面倒だし……)

 滅多に無いことだが、かつて相手に(ケンカ)した相手ならそれどころでは済まない。もう一度吹き掛けられる。嫌な世の中だよな~と思いながらレジに向かった。

 

 途中、ガシャン……ガシャン……と、その客は何か飲み物を大量に買い物カゴに入れている様な音が聞こえた。

 レジからは遠い筈の飲み物を置く棚から聞こえてくる。音が響くという事は、缶ビールの様な薄い感じのアルミではない。量が少ないが、120円で売っているスチール缶のモノが乱暴に入れられている。

 

 正宗はレジを終えてコンビニを出ようとしたがやっぱり気になった。

 

(何をそんなに買っ、て…………)

 

 正宗は少し見るだけだったが、見た瞬間コンビニのドアの前で立止まってしまった。

 あの時、あの頃、あれから幾つもの年を越してきたが。

 この学園都市で初めての『友達』という存在だった……。

 だが、それは突然に別の学校。『虚数研』に転校してしまった。

 

 

 それは忘れもしない。

 

 あの頃の、髪のままの。

 

 ()()()がいた。

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 ……side ? ……

 

「なァーンなンですかねェーこの扱いわァ。変更するなら車ぐらい回せよな」

 

 彼は少し苛立っていた。

 彼がうけている実験場が急遽別の場所に変わったのだった。

 

 別に実験の内容が変わるわけではない、内容は全て世界一の演算能力を持つ

 超高度並列演算処理器(アブソリュートシミュレーター)――樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)によって決められる

 

 彼の実験は2万通りのパターンによって進められている。

 最初の9802通りは研究所でも運用可能であるが、残りの10198通りは屋外で行うしかなかった。

 しかも屋外は()()()()()()()()()1()()()()()()というのが必須条件、そして限界であり、屋内の実験が終わったあと屋外実験を始めると何年もかかってしまう計算になる。だから同時進行で昼は研究所で、夜は屋外で実験をしている。

 しかしながら、その()()()()()()()にあう実験の場所というのも都合よくこの学園都市にあるわけでもなく、決められたシナリオにより近い環境、条件にするために場所の変更も少なからずあった。

 

 この実験と称される殺し合い……いや、彼による一方的な殺戮と言った方がいいだろう。

 

 何人になるだろうか、と、ふと彼は考えた。

 彼は今この『絶対能力進化(level.6 shift)計画』で、クローンではあるが自分より2つ下であろう少女、そして過去に行われた別の研究での実験では学園都市に捨てられた子供達(チャイルドエラー)を。

 

 最初は直ぐに終わる。

 少ない犠牲で済む。

 誰もが敵わないと覚る『絶対的能力者(LEVEL.6)』になれば、誰も傷つかないようになる。

 

そう思っていた。それを望んでいた。

 けど……、気付いた時には、

 

1万人を超えるほど、ヒトを殺していた。

 

 しかし……、自分の意思では、もはや、止めることが出来なかった。

 今、これを止めたら、これまで殺してきた『ヒトの命』は無駄になり、自分は何をしてきたのかを問うようになると思った。

 

 

(いや、よく考えると、そう多く殺したことにならねェな……)

 

 今、『絶対能力進化計画』で扱われているクローンは自分の意志を二の次として任務を最優先にしてくる。

 例えその先に、死が待ち構えていようとも……。

 

 

 そう、それはまるで……

 

 

 ……まるで機械だな

 

 

 

 そう結論づける、いや、結論付けるしかなかった。

 

 (だが……、もしも……)

 

 もしも誤作動で、それよりも自分の意志で彼女たちが

 

 助けを求めてきたら?

 

 痛いと叫んで来たら? 痛みで泣いていたら?

 

 その時、……自分は?

 

 どうするのか? どうすればいいのか、

 

 そして、自分の意志を優先した彼女達を()として認めてしまったら、

 

 

 

 この手を……

 

 

 

「ったく……、俺は何を考えてンだろォな……」

 

(もしそれで計画を止めたら、アイツらだって路頭に迷って……、最悪の場合は廃棄処分ってところじゃァねェか)

 

 そうなるのなら……、一番効率が良いのは今のやり方だと、

 自問自答でこの問題を終わらせることにしたのだった。

 そうだな、と息をゆっくり吸い込んでから

 

 (コーヒーでも買って行くか……)

 

 頭の中で出てきたこの問題、わずかに残る心の中の葛藤を、一度リセットするために、近くのコンビニに入って行った。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

『いら……、いらっしゃいませ~』

 その声は明らかに自分の姿を見て躊躇した声だった。

 

 だが彼は慣れていた。 髪の色素は無くなって真っ白、瞳は燃えるような赤色、体は能力のせいでホルモンバランスが崩れて男か女か分からないような感じになっている。

 

 自分の姿を初めて見て躊躇しない人何て居なかった。

 

 

(いても身の程を知らねェ挑戦者(ザコ)か……。もしくはアイツぐらいだったな)

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 ――――8年前――――

 

 始めて会ったのは、最初の実験。

 たったの10人だが自分と同い年、または少し年上の能力者との実験という名の()()()()

 その第一実験の相手が、

 アイツだった。

 

 あの時、もしかしたら始めての実験という理由もあったのかもしれないが、自分の能力が通用しなかった。

 いくら掴みかかろうが、物を飛ばしぶつけようが、アイツは平然として立っていた。

 

 

 そのまま実験は中止。

 始めの1人からすら倒す事は出来なかった。

 研究者も慌ただしかった……。

 

 

 その次の日、またアイツに会った。

 

 

「おー! ねぇねぇそのかみのけってどうすればなれるの?」

 

 

 そんなことをほざいてきた。自分は日本語の文法事項には自信が無かった。だが、同い年に見えるがしゃべり方はどことなく自分より幼稚的だった。いや、自分が違いすぎるだけか……。

 

 

「はァ? お前は俺のこと怖くねェのかよ。第一に昨日、俺はお前を殺そォとしたのによ」

 

「? ……ほんとに?」

 

「今更、何言ってンだコイツ。……お前さ、研究の内容知らねェのか?」

「うん、まったく。たぶんみんなしらないとおもうよぉ……」

 

「はァ? ったァくよォ……、余計にやりにくくなったわ」

「でもさ、もしホントに、そうだったとしても、キミのかお、なんだか……

 

 

 

 ないていたよね?

 

 

 

 

 

 

 

「……………………、」

 

 ガシャン……、ガシャンと、彼は棚から缶コーヒーを取り出すのをただただ繰り返していた。

 

 その実験の後もアイツとは話をしたし、冗談を言えるような仲になった。

 

 そして夢を話した。

 自分の目的(ユメ)を。

 それが、案にこれ以上人を傷つけたくない、ということを……。

 

 そうすると、相手も、自分の置かれた状況をわかってくれた。相手は自分よりも幼稚そうだったが話しているとそうでもなかった。相手も今ある夢を話してくれた。だから、相手を理解しようともした。

たった一年間だけだったが、自分は充実していたと今になってそう思える。

 

 そんな、そんな楽しかったアイツはもういない。

 

 アイツと共に9歳まで過ごした『特例能力者多重調整技術研究所(特力研)』は、傍から見れば地獄の様なところだった。アイツが受けた実験は、自分より酷いものだったのかもしれない。薬を投与で意識を失くした後、心電図、脳波を測るための電極を張られた状態だけで水槽、氷の中、真空管に押し込められ、生き続けられるか試されていた。

 会話もできない日も多くあった。

 

 別れは突然で、自分は他の研究機関に連れてこられた。お別れを言う時間など与えてくれという時間もなかった。

 

 彼もまた実験の犠牲になったのだろうか? そうでなければ、……。

 

(アイツは……)

 

 

 

 

 昔の、唯一社交できた人物との出会いを思い返しながらカゴの中に大量の缶コーヒーの『BLACK無糖』を入れていた。

 

(なンだかなァ……、これも飽きてきたな……)

 

 それまでスーパーやコンビニで使用されるプラスチックで出来たカゴの中に何本も入れていたのに、ふと、その真っ黒なパッケージに白文字表示の缶コーヒーを見る。

 今買おうとしているのも今年の4月あたりから飲んでいた。

 

 約2ヶ月。

 それが好きな飲み物であるならば普通は飽きるのには早いかもしれない。

 

 しかし彼は1日に何十本と飲むのだ。これは決して短いというよりも彼にとって長かった方である。

 そして棚にある最後の1本を取ろうとした時、

 

 トントン……と背中を叩かれた。

 

 いや、触れられたと言ったほうがいいだろう。人間が感づく程の運動エネルギーで、だからこそだった。

 

 驚愕した。

 自身の能力は常時作動している。デフォルト設定で無意識でもあらゆる運動量・熱量・電気量などのあらゆる『向き(ベクトル)』を『反射』するようにしている。

 それは不意に『核弾頭』を頭上から撃たれても生きて居られるとさえ言われた。

 だから彼に関わろうとするなら『触れる』よりも『話す』しか方法がないはずだった。

 

 だがもっと彼は驚くのだった。自分の『反射』が効かなかったことよりも

 

「よぉ、そんな髪の毛とか染めたりしないのか?」

 

 彼は目を擦った。

 それでも彼の目には、そこには信じられない(モノ)が映っていた。

 

 だからまず彼は他の能力者がイタズラで幻覚でも魅せているのかと考えた。

 そんなことをして自分に向かって来る輩は叩き潰して来た、容赦なく。

 10歳の頃にアノような事が起きてからは……。

 

 だけれども、すぐに否定した。 自分とアイツの接点を知っている者は極僅か。そして、いくら幻覚でも自分の『反射』の壁を抜けて触れる事は不可能。

 

 だとしたら……?

 

「あれ? もしかして忘れちまった? 俺だよっオレ! 一方通行(アクセラレータ)さん。よっ」

 

 久しぶり、と声変わりはして、いくらか背が自分より高くなってはいたが、

 それでも何処か懐かしさで、

 色々と忘れていって、色々と捨てていった感覚をまた、

 

(オイオィ……、いくらなンでも、化けて出てきたンじゃァねェだろォなァ……コイツ)

 

 思い出していく感じがした。

 

 

 




『特例能力者多重調整技術研究所』
・多重能力者の技術研究施設で、多くの子供を使い、実験を行っていた。のちにこの施設で多重能力の不可能性が示された。現在では解体されている模様。
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