とある魔術の絶対値数(スカラオペレート)   作:Ωウエポン

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夢 One's_aim_in_life.

 

 

 

 ありがとうごさいましたー……と、一応コンビニの店員からの言葉を聞きながら二人は店を出た。

 一方通行が大量に缶コーヒーをレジに持って行ったとき店員は顔を引きつっていて、一方通行は表情を変えることなく、正宗は苦笑い半分、愛想笑い半分で会計を済ませた。

 そして正宗は寮に、一方通行は何処かへ、今は共に同じ歩道を歩いていた。

 

「オイ、まだ信じられねェンだが。俺は変な夢でも見てンのか? 隣に付いてンのは幽霊じゃァねェだろォな?」

 

「人聞き悪いな。何なら触ってみるか?」

 

「……いや触っただけじゃァわかンねェ。血もあンのか確かめてみるわ」

 

 そう言ってニタァと笑って手を伸ばしてくるのは端から見てかなり怖い。一種のホラーだ。

 

「わ、わ、わーっ! やめてくれよ! あの頃のように無意識に防御なんて出来ないから!」

 

 腕を交差しバッテンにするようにして慌てて“彼の前では無意味だが防ごうとする”。もちろんだが相手も冗談だ。

 

 8年前の出会った実験、一方通行が触れても正宗が傷つかなかったのは、特力研で数々の実験という名目の『戦闘』を無意識に正宗は自己防衛反応として全ての攻撃に関係される質量、温度、電荷、速さを無効化していた。彼の血液逆流に対して当事は無意識にだが『スカラー』を用いて、手の動く速さを止めて触れることさえ許さない絶対の守り。しかし、この自己防衛反応は過剰過ぎて、任意以外のモノは触れられなかった。

 だが、その頃の正宗は防御なら一方通行と並ぶ程であったが、肝心のスカラーを使う攻撃はまったく扱えなかった。

 任意だと『温度』の変更は時間が半日掛かって出してもマッチより小さい火が出るくらい。『電荷』も静電気なみ。『質量』もせいぜい2kgの変更が限界範囲。『時間』や『エネルギー』など使えもしなかった。

 だから実験における戦闘では相手も自分も死なない。

 

 それでも付けられたのが、強能力者(Level3)――『絶対値数(スカラオペレート)』だった。

 

「だったらなンで生きてンだ? そこならお前程のヤツを研究して『LEVEL5』に上げるか、実験で狂い死ぬかだろ?」

 

 缶コーヒー片手に一方通行はそれを飲みながら正宗に聞いくる。辺りはすっかり暗くなっていたが大通りで通行人もちらほらいた。その通行人のほとんどが最終下校時刻を過ぎても町を徘徊する不良でもある。

 

「居なくなっていた親が現れたんだよ。お前が居なくなったあと直ぐにな……、親権があるのを示して学費を払って去ってったよ……」

 

 大体の実験では被験者側と実験台がある。

 実験台は主に『置き去り(チャイルドエラー)』であるのは親がいないからだ。

 だが正宗は9歳の時に親が現れたので実験から外すしかなかった。

 またいくら実験における戦闘を正宗が重ねても相手は死ぬこともなく、かと言って正宗も殺られなかった。中々成果は上がらず、研究者も他の研究に目を向けるようになったので手放していった。無論、策を施して。

 

 

「今もまだ……、虚数研だったっけ? そこに居んの?」

 

「……イヤ、今は別の所だ。対して代わり映えもしねェが、昔と比べて、このくらいの歳になると研究者が下手に媚び売って出てくるからなァ、まだマシだ……」

 

 そう言ってカパッと一方通行は缶コーヒーの封を開ける。

 

「つゥーかよォ、お前こそどォなんだ? 制服は着てるみてェだが、普通の学校行って、目的(ユメ)は叶ってンのか?」

 

「まぁ少なくとも、今は叶えられてるよ。はじめは大変だったけどな……」

 

「……そォか」

 

 正宗の夢は普通の学生生活を過ごしたいという素朴な夢だった。

 当事の特力研で過ごし見ていた正宗には()()()学生生活というのが輝かしく見えていた。

 

「さっきの続きだけど、だったら今はどこに在学してんの?」

 正宗は一方通行が言いそびれたのか、話がそれたのか、ちょっと聞いてみることにした。

 

「ア? 今は絶…………いや、名目上は長点上機学園だ」

 

 長点上機学園(ちょうてんじょうきがくえん)

 能力開発において学園都市ナンバー1を誇る高校。第一八学区にある。昨年の『大覇星祭(だいはせいさい)』の優勝校。

 

「はぁ? お前マジで? どんだけ賢いの?」

「……テメェ忘れてねェか? 俺はこの学園都市の第一位なンだぜ?」

 

 ちょっと自慢気に言ってきた一方通行。

 

「ヘーエー ケッ ソレハスゴイデスネー オメデトー」

 正宗はムカついたのでちょっと皮肉を込めて言ってみた。

 

「……………………、」

 一方通行は恐い顔をして、手を伸ばしてくる。

 

「うわ、ごめんなさいごめんなさい。まだ死にたくないです」

 

 急いで、というか半泣き顔みたいにして謝る正宗。

 

「はァ~。……オイ」

「なに?」

 

 さっきの事はまるで無かったかの様に正宗が返事を直ぐに返して来たので、切り替え早いなァと言って呆れる一方通行。

 

「オマエは……、(こっち)に上がろうとは思わねェのか?」

 

「俺の強度(レベル)は3だぜ? ムリムリ」

 

「そりゃァ本気でやっての結果か?」

 

「……違うけど……、いいんだ別に。このままのほうが、さ」

 

 最後は苦笑いしながら言っていた。上がったら上がったで、今の生活――『夢』が崩れてしまうと思った。

 

「つーかお前痩せすぎじゃね? 8年前のほうがまだ可愛げがあったし、体格もあったと思うんだけど」

 

「仕方ねェだろ。能力のせいでホルモンバランスが崩れちまったンだからよ」

 

「そんなの言い訳にしか聞こえない。もっとこうなんか、肉とか食べろよ。あとコーヒーばっか飲んでると身長伸びないって」

 

「ハァ? 余計なオセワだっツゥーの。……それによォ、肉ならファミレスで毎回ステーキ食ってる」

 

「じゃあ運動しろよ、運動!」とか正宗が言うのに一方通行は無視して隣でコーヒーをごくごく飲む。これで買ってから5本目。

 

「ったく……。んで? 彼女とかは~?」

 ちょっと話しを、青いね~という感じに変えて、変な目で一方通行を見る。

 

「ブッ!! ゲホッゴホッ……、ハァ!? いきなり意味わかんねーわ、居るわけねェーだろ」

 

 突然のことに一方通行はちょっとムセ動揺し、この反応にしてやったりと正宗は笑みを浮かべた。

 

「えー、見てくれは良いし、ファッションセンスあるのに」

 

「見てくれは良い……って、お前ぐれェしか言わねェよ」

 

「そんなことねーって。目付きは悪いし、見た目モヤシみたいだけど……。ってションボリすんなよ、ゴメン! ゴメンって、自信持てよ!」

 

「クソッ……。その要らねェ事を言うのも昔っから変わンねェな」

 

「へっへー、生憎だけど変わる気はしないから。……おぉ! そういやそのズボン。ベルト付きの……」

 

「あァ、もちろんブランドもンだ。学園都市のな」

 

「やっぱり、どっかの雑誌で見たことあると思った」

 

 

 

 そうこうして話していると後の方はブランドだとかブレンドだとか、コーヒーはミルクと砂糖たっぷりが美味いだとか、この邪道がァ! ……だとか、話が尽きることは無かった。

 

 そして、とある曲がり角に来て道が交差点となっていた。

 

「俺はァ、こっちだ」

 

「おぅ、じゃあな。また話そうぜ」

 

「あァ……、またな」

 

 そう言って二人は別の道を歩いていった。

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 ……side 一方通行……

 

 

 白い少年、一方通行は実験場である場所に向かっていた。

 今日の『シナリオ』の設定は『入り組んだ建物の内部における戦闘』らしい。

 実際に見た感想は、不気味に真っ黒なほど暗く、スキルアウトも居ない。またはそんな輩ですら近寄らないような通路を進み、ある金属製品加工場だったらしい建物の中に入る。

 

 サビれた機械、割れた窓ガラス、ホコリを被ったベルトコンベア、天井から虚しくぶら下がったクレーン。

 もう二度と使われることはないだろう。

 

 

「来ましたか、とミサカは言います」

 

 そう話しかけてきた少女は建物の階段の中腹で立っていた。

 

「……お前が今回の人形(ターゲット)で構わねェンだな?」

 

「はい。ミサカの検体番号(シリアルナンバー)は9479号です、とミサカは返答します」

 

 

 

 

(そう……コイツらは()()だ……)

 

 

 

 そう思ってしまったのもコンビニに行く前に考えていたことである。

 実験が始まる前に考えていた

 

 

 コイツらは自分の意志が無い……

 

 コイツらは人のカラダの中から産まれて来ていない……

 コイツらは人ではない……

 コイツらは死んでも誰も悲しまない……

 

 そう自分のなかで言い聞かせ、確認していた。

 自分は人を殺しているわけじゃない。

 殺っているのは人間の形をした道具(モルモット)だ、と……。

 

 

 

 

 時刻は19:57。

 

 

「実験開始まで丁度残り3分です、とミサカは事務的に告げます」

 

 だが、もう一つ気がかりな事があった。

 一方通行はアイツの本質に昔から気がついていた。

 

 

 

「……オイ」

 

「? はい、何でしょうか、とミサカは珍しく貴方が話し掛けるので応答します」

 

 そう言ってくる少女は人間らしさというのだろうか、感情が込められた顔をしていなかった。口からは珍しくと言っておきながら少しも、驚きもしていない表情だった。

 

「もしも……()()()()いたら、この実験とやらはどうなるンだ?」

 

 飲み終えた缶コーヒーを縦にグシャリと潰してから聞いた。

 だが言った瞬間に、これは言葉の誤りだと思った。最強が二人、言い換えると『最も強い能力者が二人居る』というのは有り得ないのだ。

 

「……、そうなれば矛盾が生じ、再計算に至ると思います、とミサカは自分なりの予測を踏まえて答えます」

 

 

(――そォか……、矛盾か…………)

 

 

「ですが、何故その様な質問をするのですか、とミサカはあと数秒で実験開始ですが、逆に質問してみます」

 

 少女はそう言いながらも、軍用の精密ゴーグルを付け、アサルトライフル――――F2000R『オモチャの兵隊(トイソルジャー)』を脇に挟み、直ぐにでも少年を殺せる姿勢を取る。

 

 

 

「……そうだなァ――――」

 

 だが、そんなことも気にも止めず、薄く笑いながら、白濁した最強は質問に答える。

 

 

「――盾と矛が、――」

 

 語りながら、その意味を考える。果たして自分はどちらなのか、を……。

 そして、それは決して交じり遭うことはないことも。

 

 

「――出会っただけだ……」

 

 少女は、そうですか、と言い、最後の会話が終わる。

 

 

 

「午後20時00分」

 

 相手は無表情で、機械的に、事務的に伝える。

 

 

「これより第9474次実験を開始します」

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 ……side 正宗……

 

 

「ヒャ~~~ッックション!! グス……」

 

(誰か俺の噂してるんじゃね?)

 

 鼻を擦りながら少し機嫌良く、正宗はそう思った。

 まだそこまでいう年齢ではないが、古い友人にばったり会えたことは嬉しかった。

 正宗は一方通行と別れたあと、もう遅いが夕食である弁当とカップ麺、ジュースと食後の楽しみのプリンなどが入ったコンビニ袋を下げて人通りの少ない道を歩いていた。

 

 

 

 

(? ……あれって……)

 

 また曲がり角を曲がって歩いて行くと……、

 

 その道の少し先の方を見たら自動販売機の前の明るくなった辺りで1人の女の子が5~6人の不良に囲まれていた。

 

 その女の子は飲んでいただろうヤシの実サイダー銘柄の缶を片手に、コンビニ袋を持って、腕組みして自動販売機にもたれて立っていた。

 

 

(あれ? でも、服を見る限りは……()()()か、あそこの在籍なら最低でも強能力者のはずだよな……)

 

 第7学区には、常盤台中学という中学校がある。

 正宗の学校と比べても、中学校として見ても、生徒数は200人弱であり、人数で言えば小規模だ。

 

 だがこの学校、学園都市の中でも五指に入る名門校であり、同時に世界有数のお嬢様学校。超能力者(Level5)が2名、大能力者(Level4)が47名、それ以外の生徒は強能力者(Level3)。小規模ながらも女性能力者の精鋭(エリート)中の精鋭(バケモノ)が集まる。習う事柄は大学の講義と同じレベルであり、在学条件の一つに強能力者以上である事が含まれているとんでもない学校だ。

 

 そう、すなわち能力の強能力者ともなると、低能力者や異能力者と違ってかなり強力になる。

 だからこそ、こう思った。

 

(きっと透視能力とかだったりして、戦闘系の能力じゃないのかも……)

 

 そんな思想が出てくるのも、当麻と一緒に行動することが多かったため、そんな癖が付いていたと言ったほうが良いのかもしれない。

 

 だがそんな思想によって、ここから正宗の夢が大きく崩れ始めていくのだった。

 

 

 

 

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