あれから2週間が過ぎ7月に入り、じめじめとした暑さから本格的な暑さの夏へと季節は次第に変わっていた。
今日という日は期末テストも終わり、普通から上の人は夏休みを待ち、欠点の確率が高い人は成績表が返ってくるまでの余韻に親しむのだった。そんな中、正宗の成績は中の上かもしれないし、古典が最悪の一途を辿るかもしれない感じだった。
そして比べるのは悪いが、
そんな初夏、学園都市の学生全体が今週から始まる『
しかし自分の能力のレベルが上がった、上がらなかったの話で盛り上がるのではない。
スキャン週間の副産物として学園都市内の全ての学校が午前中に授業が終わる。 それが学生達を湧かせるのであった。
そしてこの日、正宗は、「ふぅ~、食った食った~、~♪」と授業が終わってから、ヨシノ屋の新作、
(この後で当麻の部屋で『スマブラ』やるんだっけ、かな~)
もちろん皆大好き、パーティー用ゲームの一種の定番――大乱闘スマッシュブラザーズのことだ。
そんなこんなで、これからの予定を考えながら帰り道の近道であり、横道を歩いていく。
「金出せっつてんだろが!!」
正宗が言われたわけではない。路地裏で1人の同い年くらいだろうか…。イヤホンを掛けたひ弱そうなメガネの少年が5人の不良に絡まれているのが見えた。
「ぼ、僕は本当にお金なんか……」
「ごちゃごちゃうるせぇーな!」
そう言って不良は少年を殴りとばし、他の不良がバッグを奪い、漁っている。
「何だこりゃ~、兄貴、コイツ千円しか持ってませんぜ~」
(あ……アイツは……!)
兄貴と呼ばれた人物はあの時の『コイルガン』だった。以前と違って頭がスキンヘッドになっているのは御坂美琴によって紙がチリチリになったからに違いない。
「ケッ、ハズレかよ、適当にボコッとけ、喋らせないようにな」
「……………、おい」
正宗は何時もより低い声で彼らに声をかけた。
「あぁ!? 誰だ…………、げぇっ!」
男は覚えていたみたいで正宗を見ると分が悪い顔をしたが――
「チッ! こんなところでもヒーロー気取りかよ」
何を考えたのか強気だった。
「それがどーした? ソイツに金を返して、あの時の分を弁償(780円分)して貰おっか?」
ちょっとばかりケチなのではない。学生にとって780円とは大金である。
「バカかテメエは、俺達がそんなことするとでも思ってんのか?」
「そんなこと端っから思ってねえよ。大した金額も持ってないんだよね? コソコソと集団でしか行動できないチキンなウジ虫くん?」
正宗がそう言った瞬間、例の男は見境無しにコイルガンを射ってきた。どうやら正宗がガスライターを出す前に仕留めるつもりだったのだろう。
「ふ~ん、お腹の方に狙いを定めてるし、当たったら命に関わるよ? ……これ」
しかしその『弾』である乾電池は正宗の数歩前で止まった。
おらぁっ! という大声と共に今度は子分みたいな不良が鉄パイプを振りかざしてくるが、
振り降ろしたはずの鉄パイプはまるで磁石の同じ極を向けてお互いが拒むかの様に停止した。
そして、そのまま正宗は鉄パイプを振りかざしてきた男の腹を右手で殴り、左足で顔面を蹴り飛ばして気絶させた。
「なっ何でそんなことができる!? テメーはパイロキネシストじゃねえのかよ!!!?」
「あぁ、俺の能力か? そっちの予想とは違ったみたいだけど、これはただ単に『運動エネルギー』を『位置エネルギー』だけに変えただけだからさ~。案外簡単だろ?」
驚いている相手をちょっと笑いながら言う。
そして浮いてある乾電池を掴み、周りの金属を腕の運動量(質量と速さ)を変え、中から出てきた強酸の液体の酸化エネルギーを0にし、握り潰した。
「か、乾電池を握り潰したってまだあるぞ! それに此処にいるのは全員能力者だ!」 とか言いながら周りにあった金属のパイプとかが浮かびあがる。どうやら磁界を操り本気で来るみたいだった。
周りの子分とかも、手からちょっとした火の玉とか、空気の弾、その他もろもろ出している。
しかしそれに臆することなく、一喝するつもりで正宗が横殴りだが拳でコンクリートの壁にドンッ! という音が響き、ひび割れて拳の型をした穴が空いた。
その力と、正宗の表情を見た不良は少したじろいだ。
「へぇ……、俺を殺ろうとする決意があるなら――」と、能力を隠す能力者は言う。
「――テメェらは逆の『覚悟』だって、出来ているよ、な?」
そう言って正宗はポケットからガスライターとスタンガンを出してそれぞれ左手、右手に持つ。
左手のガスライターの火は日本刀くらいの長さで太さは2倍ある剣の様に。右手のスタンガンは“普通のスタンガンならあり得ない電気量”を出して特有の雑音を出していた。
「……………………、」
不良達は『何ですかこれは、悪夢でも見ているんじゃないですか』と言わんばかりの信じられなさそうな顔をしていた。
「――
たじろぐのは多数の不良達。
こうして正宗の人助けがてらの
……………
………
……
……side 白井黒子……
「まったく、お姉さまといっしょにショッピングに出掛けていましたのに~、どこぞの
黒子は美琴と買い物に出掛けていたのだが、電話で連絡を受けて駆け付けていたのだった。
いつもながらお姉様と言い、美琴Loveな彼女でも自分の
「こちら白井黒子。初春、事件発生現場まではあとどのくらいですの?」
『――次の角を右に曲がって2つ目と3つ目の建物の路地裏です』
「了解ですの!」
黒子はケータイを片手に通信サポートをしている『初春』という女の子と連絡をとりながら走っていた。
(通報の内容から、野蛮人ともいえども能力者と、それに一般の人が助けに入っているらしいですわ。早く向かわないと……)
………………
…………
……
「「「おわぁぁぁぁ!!」」」
(! あそこですのね!)
路地裏の入り口に着きバッと彼女は腕章を見せながら
「ジャッジメントですの! 通報を請けて参りましたの! 大人しくお縄に……」
自分の目の前の光景を見た瞬間黒子は言葉を失った。
駆け付けてみるとそこは路地裏であるにも関わらずコンクリートの壁は所々何かに撃ち抜かれて凹んでおり、散乱したゴミは青く燃えて、地面は言い表せない程黒く、まさに地獄への道のようだった。
「いったい、何がおきたのですの……!?」
そう言っていると彼女に2人の不良が泣きついてきた。
「助けて! 俺達が悪かったから! 命をたずげでぐれぇぇ……」
不良なのに、情けないくらいに涙を流していた。
「ちょっと! あなた方、何があったのですの!? ……それにこんなこと、一体どこの誰が……」
「ほらほら! そこのちっちゃいジャッジメント! こっちの不良を2度と悪さ出来ないように『地獄』を見せてるから、ソイツら捕まえておいてくれ!」
「「イヤァァァ……!!」」
黒子の近くの不良は『男』なのにも関わらず女性の様な悲鳴をあげて、そして逃げはじめた。
「あ! こら、ボサッとすんなよ!」
黒子は唖然としていて逃げはじめた不良2人を追いかけるのを忘れていた。
正宗に言われて、はっとするが、逃げた2人は一方は近くで倒れており、もう一方は少し遠くで正宗に一本背負いをされているのが見えた。
路地裏のほうも残りの3人の不良の方は2人は意識がなく泡を口から出して倒れており、1人は顔を真っ青にしてへたりこんでいた。
助けようとしたひ弱そうな少年にちゃんとお金は返したが、この少年も正宗の事を怖がっていた……。
………………
…………
……
「――まったく、それでもやり過ぎですの!」
「すいませんでした」
アンチスキルが到着して5人の不良は連れていかれた。だが先ずは病院だろう。
白井黒子は事情聴衆を正宗に始めた。はじめこそ、『あのくらいの事をする人なので少し性格に問題が?』と思ったが、話しているうちに、何気に気さくな人だと思った。
そして『あんな事』をした理由も大体筋がわかり、そのことを話していた。
「一応ですが、事件に関わった『報告書』と建物を破壊した『反省文』を書いて貰いますわね」
「それって絶対?」
「えぇ、絶対ですわ」
はぁ……と正宗は溜め息をつき、
(こうなったら足の運動量を大きくして一気に逃げるしか……)と思った時にポンッと肩を触られた。
「お待ちなさいな」
「……いえ、あの~あいにく今から用事が……」
「ではその用事は強制的に中止ですわ」
そう言われた後にバシュンッと音が鳴ったと思えばそのまま正宗は黒子と共にテレポートさせられた。
………………
…………
……
「……それで? ここ……、まあ街なのはわかりますが、どこですか………?」
何度か所々をテレポートさせられた後に着いたのは小さなビルの前だった。
「風紀委員活動第一七七支部のがあるビルの前ですわ」
(今ならまだ間に合う。走って逃げよう)
そう思って少しずつ黒子から遠ざかる正宗。そして走り出そうとした時に
バシュンッとあの音が鳴って……
「逃げようとしても無駄ですわ。次は支部内に強制転移させますの」
走り出す方向に向いた瞬間に、目の前に黒子が現れそう言われたのだった。
「もうわかった降参、普通に入らせていただきます……」
正宗は逃げられないと覚り、諦めたのだった。
「只今戻りましたのですの」
支部の厳重なID認証付きのドアを開けて黒子と正宗は『第一七七支部』に入った。
「あ! お帰りなさい、白井さん」
「……どうもおじゃましま~す」
奥からセーラー服を着た花飾りを大量に付けた短髪の女の子が出てきたので正宗は一応挨拶をした。
「あ、わ! どうも。……え~と………」
「あぁ、はじめまして。桐生正宗っていいます」
何だか女の子は知らない人が入ってきて驚いている様子だったので正宗は先ずは自分から自己紹介をすることになった。
「あ、はい! 桐生さんですね。私は『初春飾利』です」
初春も気が付いたようで元気そうに自己紹介をした。だが目線は何故か初春飾利の頭の方へ……
(頭に花が咲いてる。……痛い子なのだろうか?)
そうさっきから正宗は初春の頭の大量のお花畑の様な花飾りが気になって仕方がなかった。
「頭に着けているその『花』飾り、珍しいし、結構かわいいね」
一応お世辞として言った。本音を打ち殺して。
「? 一体何のことですか?」
………………え? と正宗は言葉に詰まった。
「いや、その頭の花」
「ですから、何のことですか?」
「………………、」
冗談抜きで初春は知らないと言わんばかりの惚けた顔をしていた。
「初春、私は自分の報告書がありますので、桐生さんの分の報告書と反省文を出しておいてくださいな」
「わかりましたー」と言って初春が出してくるのは……『報告書』と言われる紙3枚と、『表裏』びっしり行のある『反省文』5枚だった。
(おいおいおいおい……実質的に13枚じゃねえか……)
「じゃあ、ここから名前を……」
「あ、はいはい……」
初春に指示されて名前を書く欄から書き始めた正宗。
(最悪だ……だけど、もうやるしかねえよな……)
……1枚目(報告書)……
「お茶いれたので、よかったらどうぞ」
コト……、という音と共に机に湯飲みが置かれた。初春がお茶を入れてくれたのだ。
「あ、すんません、ありがとうございます」
ゴクと一口「! ~~アツッ!」
……2枚目……
「桐生さんの能力の『
「そのまんま、『スカラー』を操ることが出来るよ」
そう言って正宗が簡単に説明した時に黒子が一枚目の報告書を見る。
「ふむふむ……結構便利な能力ですのね、本当に
「!! ん……まぁ、そうだよ……」
「いえ、あの~。スカラーって……?」
……3枚目……
「やっと報告書が終了した……」
「続けて反省文もお願いしますわ」
「……、はぁ……」
……4枚目(反省文)……
プルルルルップルルルルッと正宗のケータイが鳴った。
「はい? もしもし?」
『マサやん何処にいるんだにゃー? もうみんなとっくにカミやんの部屋で遊んでいるんだぜい』
電話の相手は土御門だった。『そういえば……』っと正宗は当麻の部屋で遊ぶ予定を思い出す。
「いや、その……(かくかくしかじか)……というわけだ」
『にゃー、それはしかたないにゃー。せっかく今日は舞夏がクッキー作って持ってきてくれたのに、残念だぜい』
「うぅ……、すまねえ土御門……」
何だか分からないが、何でこうなったのか、涙が出てきた正宗だった。
………5枚目………
「ここ、漢字が間違えていますの」
「はいはい……」
……6枚目……
「こんなこと書かせてたら誰も人を助けなくなると思うけど~……」
「仕方がありませんの。桐生さんはやり方がやり過ぎですの。あ、また漢字が間違ってますの、ケアレスミスですわ」
「………………、」
……7枚目……
ガチャッ「ただいま~」
「「あ、固法先輩お帰りなさい(ですの)」」
「あら? 見かけない顔がいるわね」
「あ、どうも、桐生正宗って言います。見ての通り『反省文』書かされてます」
「何か悪さをしちゃったの?」
「……その逆です」
……8枚目……
「もう書くことないんだけどっ」
「つべこべ言わずさっさと書いてくださいまし。こちらも早く帰りたいのですの」
「あーぁ……、ってそれはこっちのセリフだ!」
……終了……
やっと終わった報告書と反省文の8枚(実質的には13枚)を初春に渡して、正宗はぐったりしていた。
「はぁ、もうぜぇーったい、二度と人助けなんてしないからな」
「そんなこと言わずに……」
初春が苦笑いしながら言ってくる。
「ジャッジメントに入れば、書かずに済みますわよ」
「誰が入るかよ」
「結構素質あると思うけど?」
「固法先輩、おだてても入りやしませんよ……。しかも先輩、俺の能力見てないでしょ?」
「あら、バレた? 結構堅い人なのね? 勧誘は失敗かな」
とか言ってあっさり諦める先輩。勧誘自体、得意ではないことがうかがえる。
「――冗談抜きで、本当に入る気はありませんの?」
空気が少し変わる様な感じで黒子が正宗に聞いてきた。
「……ない、ね」
ちょっと間を置いて正宗は申し出を断った。
「あれだけの能力ですのに……、役に立とうとは思わないのですの?」
「
「……それはどういう意味ですの?」
「さあー、少なくとも所属していなくても多くの人を助けているヤツがいるからかな」
まあ『アイツ』は助けた見返りにフラグを建てて行くけどな……と頭の中で付け加える。
「…………、」
黒子は何とも言えなかったが、少し残念そうな顔をしていた。
「――でも、困った時は頼ってくれよな、書類を書くのや掃除は嫌だが、鎮圧なら慣れてるからさ。『有志』ってことで」
「……わかりましたわ。では一応、携帯の番号だけでも教えておいて下さいまし」
「――ちょっと待って……ほれ」
そうして学生手帳の中の一枚の紙にケータイの番号を書き黒子に渡した。
時刻は16:37分
正宗はようやく第一七七支部からでることができた。
外に出ると、空は赤みがかっていた。
………………
…………
……
「しかし、何か引っかかるのですわ」
自分の荷物をまとめながら黒子は独り言を言った。
「どうしたんですか白井さん」
それを聞いた初春が黒子に聞いてきた。
「桐生さんから事情聴衆していた時に、何か色々と引っかかったのですが……それが何だったか思いだせませんの」
黒子は事件の後に正宗から事情聴衆していた時に、何故あれだけの事(人助けだが……)を仕出かしたのか理由を聞いた。
その時に引っ掛かる『キーワード』があったが、思い出せなかった。
「う~ん……」
初春も考えてみた。しかし今は仕事も終わってあまりそんなことを考えたくなかったのですぐやめた。
「……いつか思い出しますって、それより白井さん!」
突然初春が目を輝かせながら黒子に言った。
「な、何ですの?」
「御坂美琴さんに会わせてくれる約束、忘れないでくださいね!」
そう、初春は御坂美琴……もといセレブなお嬢様に憧れていたのだった。
だから以前に黒子とそんな約束をしていたのだ。
「はぁ……、わかりましたの、なんとかお姉様に掛け合ってみますの」
黒子は溜め息をつき、2人も支部から出て、ようやく『第一七七支部』の1日も終わった。
………………
…………
……
……side 桐生正宗……
(今日も疲れたぁぁ……)
風紀委員第一七七支部からの帰り道、電車に乗り寮の最寄り駅から歩いて帰っていた。
それと同時に『iPod touch』を取り出して、
~~♪~~♪!~~♪♪!!
『ノイズキャンセリング』付きのイヤホンで音楽を聴き、ケータイを弄りながら歩いていた。まるで現代の学生を象徴している様な姿だった。この『iPod touch』はつい最近新しく買い換えたのだが、巷では学園都市製の3Dで映し出すことのできる『smartphone』が出てきたので、買いたいけど……という葛藤がひそかにあったりする。そんな悩める彼の姿を駅前で見たお嬢様学校の生徒がいた。
「あ~! いたいた見つけた!!!!」
お分かりだろうが、御坂美琴である。だが、正宗はそんな美琴から発せられる
「今度こそ
そう言って気が付かれない御坂美琴は正宗を追いかけはじめた。だが当の本人はケータイのボタンをピコピコと打ち、ゲームをしていた。
「あんたよ! あんた! むぅっ、止まりなさいってば!!」
また、美琴の顔などちゃんと覚えていなかったので、美琴が正宗の横に来てガミガミ言ってもわからない。
「ちょっとちょっと! もしもしあんた聞こえてるんでしょっ!! シカトすんなーっ!!!!」
本当に正宗には聞こえてないのである。
これだけ騒いで言ってたら普通聞こえるが、そこは学園都市の科学力で『完全雑音遮断機能』でも付けているのだろう。
そんな、ぎゃああ!! と呻くお嬢様は何か、吹っ切れた御様子で、
「……あっそーですかそうですか! あんたがそう無視すんのなら……」
そう言って美琴は立ち止まって屈伸から始まり、準備体操をちょっとやってから正宗目掛けて走り出し
「ちぇいさぁーッ!!」背中にドォーン! 「ぐへぇっ!?!!」と正宗に跳び蹴りをくらわせてきたのだった。
「……イッて……っ! クソッ、テメェ!! ざけんじゃね……え……ぞ……、ぇ?」
起き上がって正宗は怒鳴ろうとしたが、振り向いた瞬間にいたのは女の子。しかも常盤台中学のお嬢様がちょっとびっくりした表情で立っていたので『うわあぁぁぁぁ、絶対に人違いしてしまったぁぁぁぁ』と心の中で嘆いていた、というか勘違いしていた。
「む、無視するアンタが悪いのよっ!!!!」
怒ってきた正宗にちょっとビビってしまったが、カバンを持ったまま反論する美琴。しかし正宗は……
「やっぱり蹴ったのお前か! って……はぁ?」
(誰、だっけこのコ……?)
そう忘れていたのだった。そして思い出すためによーく見て考察する。
目の前の女の子は、髪の毛はサラサラで若干光沢のあるかの様な薄い茶色で肩に掛かるくらいの短髪。顔の形は整っており、客観的に見ると化粧をせずともかわいい分類に入るだろう。脚は細く、スラッとしていて華奢な体。
「な……、なにじろじろ見てんのよ……」
だが、ヒジョーに残念なことに……
(まだ中学生だから胸ないなぁ~……ぁぁぁぁぁあああ!?!?)
「あぁ! あの時の!」とようやく、
「――
バチ……ビリッと彼女から不吉な音がした。
「ま……、
次の瞬間。
「呼ぶなあぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!!」
ドッ!! バチンッ!! と痛々しい音と共に電撃の槍が常盤台の御嬢様の腕やら頭やらから正宗に向かって出てくる。
「ちょま、おわぁぁぁぁぁぁぁっー!!!?」
そんな怒り心頭の御坂美琴は電撃を何度も何度も飛ばしてきた。それを見た周りの一般人も正宗と同じ様に叫んで逃げている。
しかし電撃の矛先は正宗のみ。逃げても追いかけて来るので彼は電荷を『0』にして消す。
「ちょっと、わかったわかったからその電撃止めろ! 周りに迷惑だー!」
そう言われて美琴は電撃を射つのを止める。
「フーッフーッフーッ、まだ成長するわよ! ……はぁ……、それに私には御坂美琴ってちゃんとした名前があんのよ」
息を荒くしていたのを静めて、目の前で正宗を見上げながら美琴は言ってくる。
「そんで? その常盤台の
そう言った正宗に向かってビリビリッとまた電撃を射って来たがすぐに離れてまた防ぐ。
「わざと言ってケンカ売ってるでしょっ!? 私は電撃使いの頂点の『超電磁砲(レールガン)』なのよ!」
「えー、だって~。前に消してみたから慣れたし、俺に電撃なんて効かないもん。全然怖くないし~」
そう言って明らかにどうでもよさそうな顔をして正宗が言う。
「そんなことわからないでしょっ。……そうよそうよ思い出した。今から私と勝負しなさい!!」
指をビシッと差しながら正宗に言ってくる。が、
「はぁ? こんな時間に勝負とか……。帰りたいし、
そしてまた正宗は歩き始める。歩いている時には顔を向けずに手を降りバイバイってあまりにも素っ気ない感じで、
「……って待ちなさいよ!」
呆気にとられていた美琴だったが、はっと気づいて正宗を呼び止めようとし、また彼の隣に急いで付いていく。
「……また、……なんなんだよ? あ、さては、お前も帰り道こっちなわけ?」
「違うわよ! あんた私との勝負から逃げる気!?」
どうやら女の子が思い描いて言っていることは一昔以上まえの世代のことである。なんでもかんでも男なら勝負挑まれたら逃げたら駄目だと、そんなことは決まってはいない。今現代は思考の自由が認められている。
「あー……、もうそれでいいから」
そして正宗はダッシュで逃げはじめた。後ろで取り残された美琴は「へ?」とか言って驚いていた。
当麻とまでは行かないけど、走力には自信があった。また相手は仮にも女の子。
「本気で逃げてんじゃないわよコラーッ!!」
そんな考えが甘かったらしい。全力で正宗は走っているのに、後ろから追いかけてきていたのだった。
「ええぇぇぇぇーっ!! ちょ……何でついてこれんだよーっ!! 50メートル走、6秒代前半だぞ俺!」
能力を使わずに、とすれば、正宗の運動神経と運動能力は、黄泉川先生などの体育教師陣でも一目をおくほどだった。
「電磁加速すれば普通の男子には勝てるのよ! この逃げ腰ヤロー!」
「な、なんてヤツなんだぁー!!」
そう叫んで正宗は、『待ちなさいよっ!!』と連呼して追いかけてくる御坂美琴の魔の手から逃げていった。
その後正宗は、走る『速さ』のスカラーを操って美琴から逃げ様としたのだが、美琴は能力である程度の距離だと電磁波をレーダーの様に扱い、正宗を見つけて追い回していた。
しかし最終的には美琴の方が先に折れて、正宗には逃げられてしまった。
そして美琴は彼に会ったはいいが追いかけるだけで、名前も能力を聞くのもまた忘れてしまっていたのだった。
寮に帰って後悔したのは言うまでもない。