とある魔術の絶対値数(スカラオペレート)   作:Ωウエポン

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不幸は周りに伝染する? Are_you_unhappy?

 

 

 

 

 

――記録・72m23cm

――指定位置・誤差54cm

――総合評価・LEVEL『4』

 

 そんなアナウンスが校庭の競技場のある一部で響いた。

 

「はぁ、調子が今一つですの。やっぱり昨日のジャッジメントの仕事が影響していますわ~」

 

 身体検査(システムスキャン)の3日目、今日はここ常盤台中学で行われていた。そして今、白井黒子の身体検査が終了したところだ。

 空間移動能力者(テレポーター)である彼女は毎回の様に大能力者と評価される。だが普通、この『レベル4』の評価を貰うことは青春の全てを費やしても取れるか分からないほど難しかった。

 

「うっふふふ、そんな言い訳なさるようでは先が見えていますわね、白井黒子さん」

 

(うげ、婚后光子(こんごう‐みつこ)

 

「この分だとレベル5に到達するのは(わたくし)の方が先かしら~」

 

 婚后光子は2年生。一応は白井黒子の先輩にあたる。能力はレベル4の『空力使い(エアロハンド)』。一般的な高飛車お嬢様で何かと黒子に突っ掛かってくる。いつも高級な扇を持ち歩いている。

 

「フン、私と貴方の能力といっしょにして欲しくはありませんの。大体3次元と11次元では空間把握法が根本的に違っ

「もともと(わたくし)、一年の分際でこうも――」

 

(相変わらず人の話を最後まで聞きやがりませんの)

 と話しているのを遮られてしまった白井黒子は握り(コブシ)をわなわなと震わせて、怒りを我慢する。

 婚后光子と知り合ったのは彼女が転校して来て間もない頃に迷子……というか、自分の行くべき寮を間違った彼女を風紀委員(ジャッジメント)として案内していた途中の会話で彼女が『派閥を作りますわ!』などと言ったのでそれを真っ向から否定勧告したのが事の始まりで、『常盤台のエースになる』と言ったからには口喧嘩に勃発。その時は居た場所が寮の目の前だった故、すぐに寮監に『うるさい!』+ゲンコツ一撃を二人とも貰って終わったのだが、何故かそれからは黒子にお嬢様なりに突っかかってライバル視しているのだった。

 

 

「――宜しくて~? 私がこの常盤台のエースとなった暁には」

 

 うるさいな~と思いながら立っていると

 

 突如。

 ドゴォンッ!! と轟音が鳴り響き、地面が揺れ、プールから爆弾でも落とされたかの様に何十メートルもある水柱が上がった。

「何!? 爆発!?」「プールの方からよ!」と周りの一年生の生徒達も驚いているが、二年生から上の生徒は、あぁまたか、の様な顔をしている。

 

「な、何事ですの?」と婚后は周りの生徒と比べたらもっと情けない感じで、尻餅をついていた。

 

「フンッ、本年度から2年へ転入してきた貴方はご存知無いかもしれませんが、今あのプールで能力測定をされているのが、『常盤台のエース」ですわ~」

 

 そう白井黒子が言うとまたもやドゴォン!! と五十メートルプールの水が爆発する。

 

「プールの水を緩衝材に使わないとまともに計測もできない程の破壊力」

 

 何度も爆発し、水は雨の様に落ち、校庭を濡らす。水柱の間から見えるオレンジ色の光熱線は正に怪物が咆哮し、目前の存在を薙ぎ倒す必殺の一撃だった。

 

「勝負するなり何なりしてエースになるのはかまいませんが、あの化物じみた一撃を真っ正面からお受けになる覚悟が貴方にあって? 私には到底無理ですわよ」

 

 

………………

 

…………

 

……

 

……side プール……

 

 時間ギリギリ、最後の一発をプールに向けて、ドゴォン!! と地面が揺れ、空気が裂き、音がつんざく。

 

 

――記録

――砲弾初速・1030m/sec

――連発能力・8発/min

――着弾分布・18.9㎜

――総合評価・LEVEL『5』

 

「ふぅ……」

 

(電撃が効かないなら……)

 

 彼女は手元にあるコインを見ながら考えていた。

 

………………

 

…………

 

……

 

……side 帰様の浴院(シャワールーム)………

 

「え? 校庭まで音が届いていたの?」

「物凄い音でしたもの、皆驚いていましたわ」

 

 スキャンを終えた美琴と黒子はシャワーを浴びていた。

 

「わざわざプールの水を緩衝材にしなきゃまともに測定もできないなんて、私より黒子の能力の方がよっぽど便利よねー」

「ふふ、隣の芝生は青く見えるものですのよ」

「そりゃまあ、そうかもしれないけど……」

 

「気にすることなどございませんわ。お姉様は『常盤台のエース』なんですもの」

 

 そう言って黒子はシャワーを終え、タオルを体に捲る。

 

「エースって………」

「努力してきた方ゆえにもっと堂々と、胸を張っていれば良いのですわ。……まぁ、もっとも~――」

 次の瞬間、黒子はテレポートして、

 

「――張るというには自己主張の足りない慎ましい胸です・け・ど」

 

 御坂美琴の背後に移動して、まだ成長途中である小さな胸をむにむに~と触って、

 

「あーん、でもこの慎ましさこそがお姉様の」

 

 バンッ!! 「ひゃーぁー」と当然、美琴は黒子を蹴り跳ばした。

 

「ただのスキンシップですのにぃ~」

「こんの変態がっ! それに『AA』のあんたに言われたくないわよ!」

「むぅ! 聞き捨てなりませんわ。これから成長するんですの!」

 

 そう言って黒子は胸を張るが、そこには憧れのお姉様以上に乏しい光景が広がっていたのだった。

 

………………

 

…………

 

……

 

……side 柵川中学校……

 

 ここ柵川中学でも身体検査(システムスキャン)が終了して多くの学生が帰り始めていた。

 その中で頭に花束の様に花をつけて小さなノートパソコンをいじっている少女がいた。

 

「え~と……」

 

(今日は白井さんが御坂さんに会わせてくれる日でしたね)とか考えていると、

 

 

 

「う~い~はぁ~~るぅ~!」

 

 

 そう言われて初春のスカートがバサッと捲り上がり、周りの学生。特に男性諸君が顔を真っ赤にしている。

 その空間だけ時が経つのが遅くなった気がしなくもない。

 

 

 

「お! 今日は淡いピンクの水玉か~」

 

「ひ、ヒィ~ッ!! な、な、ななん、いきなり何するんですか佐天さん!」

 

 そして初春は顔真っ赤にして腕を振りながら『佐天』と呼ばれる女の子に必死で抗議し始める。だけれど抗議と言っても初春は、ふにゅ! うにゅ、ふにゅ! と言うだけで言葉になっていない。

 

「相変わらず他人行儀だね~。どれ親睦を深めるためにもう一回!」

 

「ふぬわぁぁぁぁ~!!!?」

 

………………

 

…………

 

……

 

 所変わって、とある町中の道のベンチ。

 そこに座りながら初春が、はぁー……と大きなため息をつき、

 

「……ヒドイですよ……」と、目の前の佐天に不満を漏らす。

 

「ごみんごみん。代わりに私のパンツ、見るぅ~?」

「結構です……」

 

 佐天涙子は初春のクラスメート。髪の長い外形は大人びた中学1年生。しかし毎日初春のスカートを捲るセクハラ中学生でもあった。

 

「そーいや、どうだった?」

「? どうって?」

「決まってるじゃん。『身体検査(システムスキャン)』」

 

「あぁ! ……全然ダメでした。相変わらずのレベル1。小学生の時から変わってません」

 初春の能力は触れた物の温度を一定に保つ事ができる能力だった。

 

「そっか、でもいいじゃん能力がある時点で、私なんかレベル0。無能力者だよ?」

 

「……………」

 あ、という感じの顔で初春は佐天を見る。

 

「でもね。私は毎日が楽しかったらそれでオッケ~! 今のところ能力なんて必要ないっかな~っと」

 佐天は指で0を作り初春を見ながら笑顔で言った。

 

「佐天さん……」

 

「あ、変なこと言っちゃって。心配しなくても。ホラ、悲しそうにすんなって! これでも聴いて元気だしなよ!」

 

 そう言ってイヤホンの片方を初春の耳に付ける。

 

「あ、これって『一一一(ひとついはじめ)』ですか?」

「そう。先行ダウンロードされた新曲だよ~。今からCDも買いに行くんだ~」

「え? ダウンロードしたのにCDも買うのですか?」

 

「ちょ、当たり前でしょっ! ファンたるものはCDも買ってこそ、真のファンというものでしょうが! ……っと言うわけで初春! いっしょに買いに行くよ!」

 

 という感じで佐天涙子は何かを意気込む様にして片手拳を挙げて、勢い良くベンチから立ち上がる。

 

「ああー! すいません今から白井さんとの約束が……」

 

 そんな佐天に向かってちょっと申し訳なさそうに初春は言った。

 

「え、白井さんって、ジャッジメントの白井黒子?」

「はい! 念願叶って、常盤台の御坂美琴さんに会わせてくれるんです! 佐天さんも一緒にどうですか!?」

 

 初春は両手を合わせて目をキラキラさせながら彼女を誘った。

 

………………

 

…………

 

……

 

 

……side 正宗……

 

 

 

――総合評価、LEVEL『3』

 と、アナウンスが鳴り終わり、正宗の身体検査(システムスキャン)が終わった。

 

「まぁ、こんなもんか」

 

 

 

 

 そう、正宗に当麻、土御門、青ピがいる高校でもシステムスキャンは行われていた。

 終わった後、正宗はスキャンする時は体操服だった為にHRの教室で着替えてから、同じ教室で夏の暑さのためノックダウンし、机に突っ伏している通称『不幸な少年』とその近くにいる自称『関西人』に近づき声を掛けた。

 

「よぉ当麻、どうだった? 奇跡が起きたか?」

 

「あ――、そんな奇跡なんぞ、相変わらずのレベル0の貧乏学生のまんま」

 そう言うと当麻は突っ伏している状態から頬杖をつく状態に変えてから、

 

「んで? 『我が校のエース』様はどうだったんだよ?」

 

「へへ、よしてくれよ~。たかがレベル3だぜ?」

 

「まぁまぁ、言われるんはしゃーないって。マサやん以上のレベルを持つ人。しかも『4』に近い人なんて、この高校にはおらへんやろ?」

 

 この丘の上にある高校は学園都市でも平凡が売りの学校だ。平凡ということは学園都市に住む学生の大半が強度(レベル)が『2』以下が多いので高位能力者はまず入ってくる事は歴代でもあまりなかった。

 強能力者(Level3)ともなると実験における商品価値が付く(=エリート)と見なされ、上の高校にも大学でさえ推薦で入れるのだが、

 能力実験で縛られることのない、ある意味一般的な学生生活を送りたい正宗はこの高校に通うが、逆にこの高校の在校生の強度(レベル)が自分より上の能力者がいないので『エース』と呼ばれることもあった。

 

「そうそう、かつては小学生の時に『レベル4』を記録したことあるんだろ?」

 

「まぁな、……まぐれだろうけどな」

 

 正宗の過去の中で辛い過去の1つ。

 9歳の時に小学4年生に転入、小学校といえどもレベルの高い進学校であった。 一般的小学4年生の能力レベルは1~2程度(テレポーターを除く)その中に正宗が入ってきた当時は強能力者で頭も良く、大変珍しがられた。

 

 しかしそれは()()()()での話だ。

 

 同級生はレベルの有りすぎる正宗に快く思ってもいなかった。正宗はそこまで会話力には乏しくなかったが、転校してきた身だったので同級生に話しかけづらかった。

 そして正宗が大能力者(Level4)となった時に、

 

同級生からの無視(シカト)が始まった。

 

 自分の能力が有りすぎるから、勉強が出来てしまうから、会話が苦手だから……、

 そういう理由でレベルを上げようとも、勉強をしようとも思わなくなった。 いや、思わなくなったのではない、怖くなったのだった……。

 

 

 

 

「にゃー」

 

 と、教室に土御門が自分の口癖を言いながら入ってきた。

 

「お、土御門お疲れ~」

 

「んで? どうだった?」

 

「『レベル0』だにゃー。せっかく体を傷め付けてスキャンしたっつうのに全然変わってないにゃー」

 

 そう言いながら土御門は自分の体操服を脱ぎ、着替え始める。

 彼の体は特にスキャンの為に傷を付けたという痕跡はなく、プロボクサーでもここまで絞ることはないと言える程の見事な筋肉があるだけだった。

 

「お前の能力って『肉体再生(オートリバース)』だよな?」

 

「そうだぜい。でも治癒速度とかが早くなったわけじゃないから『レベル0』なんだにゃー」

「レベルが上がったら高速再生とか出来たりしてな」と、笑いながら言った後、笑いが消え、ふとした表情で、

 

「ところで青ピーはどうだったんだ?」

 

 大男で関西系な青髪ピアスをじーっと見る。

 

「僕はね……」

 

 何故だかドキドキと一同の鼓動が今、一つになる。

 

 

 

「ヒ・ミ・ツ・や・ね・ん♪」

 

「「「………………、」」」

 

 とりあえずそんな返事期待してなかったのと、キモチ悪かったのでみんなスルーすることにした。

 

 

「ねぇ何でみんな口聞いてくれへんの? ねぇ? オーイ、マサやーん、カミやーん、ツッチー? ……ウワァァァァーン!! 一人にしないでえぇぇぇ!!」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

「はーい、みなさん今日はこれで終了なのですー。気をつけて帰ってくださいねー」

 

 小萌先生にそう言われてクラスのメンツが、疎らに帰り始めた生徒や、駄弁る生徒、購買は開いているのでそこに行こうとする生徒、部活だ急げーなどと言っているどこかの運動部員もいた。

 部活には所属していない桐生正宗も荷物をまとめて帰ろうとすると、

 

「ちょい待つにゃー。今からこのメンツで、駅前にどうにか開店した焼肉バイキングに行かないかにゃー?」

「おぉ! 行く行く!」

「ええやん、ええやん、行きまっせー」

「でもそのどうにかって言葉が気になるけど……」

 

 各々が行く気満々だった。しかしながら聞いておかなければならないことがあった。

 

「つーか貧乏学生の当麻にそんな余裕なんてあるのか?」

 

 そう正宗が言うと当麻は手を合わせて、頭を下げてきて。

 

「すまん正宗! このとーり。お金貸して!」

 

「……やっぱり」

 

 そう言って正宗は財布の中身を確認する。が……

 

(確実に足りない……)

 正宗の財布の中身、ちょうど千円。

 

「……当麻、俺も行けない額しかない……」

 

「え!? うわホントに野口さんが一枚だけ。……土御門と青髪は?」

 

「こちとら持ち合わせは1人分だけだにゃー」

「僕もそんなに持ってないねん」

 と、本気で金はなさそうで財布を出して二人とも嘆く。

 

「土御門すまねえ。今日は銀行行って金降ろしてくるわ」

 

「そりゃ仕方ないにゃー。じゃあ明日にするかにゃー」

 

 結局このあとの予定が、怪しげな焼肉バイキングから『いそべ銀行』にお金を降ろしに行くことになった。

 

………………

 

…………

 

……

 

……しばらく歩いて……

 

「……な、なんで開いてないんだよーっ!」

 

 正宗は第七学区にある『いそべ銀行』の目の前に来たものの、何故か昼間なのに開いていなかったのだ。

 続けて、グルルゥゥゥと腹の虫が虚しく鳴り、気が付くと今は昼過ぎの13時15分。年頃の少年にとって、腹がへってもおかしくはなかった。

 

 そんな時にふと道の向こう側をみると、何かしら屋台の様な車があり、人も結構集まっていた。こういう屋台は、原価は何より、そしてスーパーより値段が高いのだが、

 

(仕方ない、あれで我慢するか……)

 

 そう思って並ぶと、前の方は20人くらいならんでいた。そして店からは甘い匂い……どうやらクレープ屋のようだった。色々な学校の生徒、主に女子高生が多いのだが、そんな人たちが近くのベンチで食べているので甘ったるい香りがそこら中に漂い、正宗のお腹をより苦しめる。

 それに『祝・開店』で何だかいつもよりクレープも安くなっているみたいで、また……

 

(……『ゲコ太マスコット』ストラップが貰えるらしい。要らないけど……あーぁ、甘いもの以外の昼飯になるようなトッピングがあればいいな~)

 

 そんな嘆く様にして考えていると、すぐ近くの道に一台のバスが止まってきた。バスは学生が通学で使う様な低い車体ではなく、観光用の大型バス。

 

 そして中から出てくるもの凄い人、人、人……5歳くらいの幼い子供とその親達であるようだった。

 

 あれよあれよの五分も掛からないうちにクレープ屋は長蛇の列になった。

 

 運が向いているのか、地獄に仏なのか知らないが、早めに並んでいて良かったと正宗は思うのであった。

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

……side 佐天涙子……

 

「――とりあえず、ゲーセン行こっか」

 

「え……ゲーセンですか」

 

 

 佐天は初春に付いてきたが何となく気が乗らなかった。

 最初、彼女は『常盤台のお嬢様のレベル5だから何となく自分たちを小バカにするんじゃないか』と思っていたが……

 

(お嬢様って実際そんな感じなのかな? それともゲーセン好きのお嬢様?……それに最初ファミレスで見たときは……)

 

 黒子と抱きあっていた。

 いや、黒子が一方的に美琴に抱き付いていたのだが……。

 

「もうお姉さまったら…ゲームとか立ち読みではなく、もっとお花とかお琴とかご自身に相応しいご趣味をお持ちになれませんの?」

「うっさいわね。お茶やお琴の何処が私らしいって言うのよ」

 そう言いながらチラシを貰い、ゲーセンに向かう。

 

「何かさ、全然お嬢様じゃなくない?」

 佐天は初春に尋ねた。

「上から目線でもありませんね」

 そう言いながら初春はチラシを見ていた。

 

「お、何それ?」

「新しいクレープ屋さんみたいですね。先着100名様に『ゲコ太マスコット』プレゼント……って」

 

 チラシには『クレープハウスrabulun(らぶるん)』と書かれてある。

 そして幼い子供が貰ったら喜びそうなカエルのマスコット――――ゲコ太と呼ばれるキャラクターの絵柄があった。

 

「何この安いキャラ。今時こんなのに食い付く人なんて……」

 その時に佐天は初春の方を向いていたので止まっていた美琴に気がつかなくて、ドンっとぶつかってしまった。

 

「すみませ……ん?」

 

 しかし美琴はチラシをジーっと見たままで佐天がぶつかった事も気にしてないようだった。

 

「御坂さん?」

「どうなさいましたのお姉さま?」

と、そんな美琴を覗き見た後、そのチラシに目を通した黒子はニヤニヤしながら気が付いた。

 

「あら~? クレープ屋さんにご興味が? それとももれなく貰える『プレゼント』のほうですの~?」

 

「「へ?」」

 佐天と初春は同時に声をあげた。

 

「な、何いってんのよ! 私は別に『ゲコ太』なんか……。だってカエルよ両生類よ、何処の世界にこんなもの貰って喜ぶ女の子が……」

 

 そうは言っているが……「「あ!」」

 カバンに付けていた『ゲコ太』は隠せてなかった。それがバレた時に美琴は顔を真っ赤にしていた。

 

(こんなキャラクターが好きなんだ……)

 

 

………………

 

…………

 

……

 

「うわ、人がいっぱい」

 

「何でこんなに小さい子ばかりいるんですかね?」

 

 クレープ屋の前に来たが、年齢層が自分(中一)より若い人が多かった。

 

(こんなに居たらさすがに御坂さんもゲコ太なんか…)と佐天は考えていると。

 

「ああっー!!!!」

 

 とか言いながら美琴は列の前の方にいた人物に凄い早さで向かって行く。

 

「ちょっと! 何であんたがここにいるのよっ!!」

 

「ん? っげぇ! …………え~っと~…………ごめん! まな板としか思い出せない!」

 

 その並んでいた少年は手を会わせ軽く謝りながら失礼な事を言っていた。

 

「ま、まな板じゃない! 私の名前は御坂美琴! 少しは覚えておきなさいよこの馬鹿!」

 

 そう言って何だかその人物と、勝負勝負、嫌だ嫌だの口喧嘩? をし始めた。

 

「お、おおおお姉様がと、殿方のもとへ……。黒子、黒子一生の不覚……」とか言いながら黒子の口から魂が抜け出して、今にも倒れそうだった。

 

「初春、何だかわかんないけど、完全にお嬢様のイメージと違うんだけど……」

 

 ゲーセンとか口調とか、挙げ句の果てには男の人と口喧嘩? をし始める。

 

(あれじゃーまるで私達と変わらない一般人じゃん……。いや、一般の人でもあんな風に叫ばないけど……)と佐天は思ったが、逆に親しみ易いとも思った。

 

「そ、そうですね……」

 初春も苦笑いをしている。ある意味でお嬢様というイメージを崩されたに違いない。

 

「あれ? ……白井さん、御坂さんが言い争っている相手、桐生さんじゃないですか?」

 

 そう初春に言われた黒子は魂が抜けて、燃え尽きたように白くなっていたのが「ハッ……」と言って自分の色を取り戻した。

 

「! あら、あらあらあらまぁまぁまぁ本当ですの。少し殿方の方は場合によってはいたぶって参りますの」

 

 そう言って黒子は2人にものすごい勢いで駆け寄る。

 

(うわ、何だか白井さんも危ない路線だねこりゃ)

 

 

「お姉様! それに桐生さんまで! 一体何をしていらっしゃるのですの!?」

 

 それを聞いた2人は「え? 黒子、コイツのこと知ってるの!?」「え? まな板と白井さんは知り合いなの?」「まな板いうな!」と、ちょうど声が重なり聖徳太子でなければ聞き取れない程だった。

 

「はぁ、同時に質問されても困りますの。とりあえずお姉様……、早く並ばないと『ゲコ太』がなくなってしまいますわよー」

 

「くぅ……あんた! 逃げるんじゃないわよ!」

 そう言って急いで美琴は後ろに並びに行った。

 

「ふぅ~……。すまねえ」

 

「いえいえお気になさらずとも。しかし桐生さんが何故、お・ね・え・さ・まの事をあれほど親しげになるまで知っていらっしゃるのですの?」

 

 黒子はとっても笑顔だが、背後にはドス黒いオーラが見えていた。

 

「言っとくが、ぜーんぜん親しくないからな、もともとはアイツが――」と、続けて説明しようとした正宗から後の列がつっかえていて、ちらほら『なにあれ割り込み?』『早くしろよ~』と声が上がっている。

 

「――まぁ、後で話すわ。今は……後ろが、ね?」

 

「むぅ……、仕方がありませんわ。それでは私もまず後ろに並んでおきますの」

 

 

 黒子は正宗の前に列がなくなったのに気がついていなかった。

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

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