「そうでしたの、ではあの時の『道路破壊事件』の真相は桐生さんでしたのね……」
「え! あの都市伝説になった事件がですか!?」
「……やっぱり、アレって、まずかった……?」
とりあえず正宗はクレープを注文し、空いていたベンチに座っていたら、程無くして初春と黒子がやって来た。
どうやら2人はまずベンチを確保しに来たが、生憎この人々の中、空いてなかったので正宗が食べた後『貸して欲しい』とのことだったので『それなら俺はいいから二人とも座っとけ』と言って席を譲ったのだ。
そして正宗は黒子に美琴と始めて会った時の事を話したのだ。
「白井さん、また反省文書かなきゃいけないの? 最悪の場合……捕まったり、とか……?」
「はぁ……、もういいですの。しょっちゅう物は壊されていますし、桐生さんの場合は『正当防衛』にあたりますわ」
「よ、よかった~」
「……それよりも、なんだかあなたの様な方に『白井さん』と呼ばれるのは何だか変な気がしますの」
「え……、じゃあ、話かけないでくれ……と?」
嫌われてたのかよ俺、と心の中で思ったが、表情ではガーン……と、ちょっとショックを隠しきれてない正宗だった。
「そうではありませんわ。先輩なら先輩らしく『さん』などつけないで欲しいのですわ」
「あぁ、そういうことね。『白井』って呼べばいいのか?」
「だったらついでに私のことも『初春』って呼んでくださいね」
「りょーかい」
そうこう話している内に佐天涙子と御坂美琴がクレープを合わせて4つ買って来たが、何だかもの凄いどよーん……とした『負のオーラ』と共にやって来た。
「仕方がないですよ御坂さん、あんなに人がいたんですから……」
そう言って佐天は美琴を励ましていた。どうやら『負のオーラ』は美琴から出ているようだった。
「ぐすっ……うぅ……ゲコ太ぁ……」
御坂美琴は涙目でそうぼやいていたが、そんなゲコ太というマスコットが好きだということを正宗は聞いていないので、パクリと、自分の持っているクレープ……というより味はもはやトルティーヤに近い様なモノをを食べ進めるのだが、
食べにくい。
御坂美琴が未だに自分の目の前に突っ立ているのだ。
その彼女はジー……っと何を思っているのか、美琴は幼い子供が玩具を目の前にして我慢しているかに様な下唇を少し噛むぐらいで涙目で羨ましく思うように正宗をジーッと見るのだった。
(……、はぃ?)
その視線の先を追っていくと……、
どうやら正宗がクレープを買った時に貰って、そのまま右手の小指に掛けてある『ゲコ太ストラップ』の様だった。
(………これか?)
そう思って正宗は少し右手を美琴の方に見せる様に動かすと、動かした方に『ジー……ッ』と美琴も視線を動かすのであった。
ストラップを右に動かすと……右に、ジー……
次は左に動かしてみると……左に、ジー……
上へ動かすと上、下だともちろん下、くるくる回すと僅かながらくるくる視線も回るので、何コイツおもしろい。と、思いながら遊んでいたが、時たまにチラッと正宗の方に(ゲコ太が欲しいのだろう)目線がくるので、ちょっとかわいそうに思えてきたのだった。
「なぁなぁ御坂」
「!? な、なによ、ってそれにやっと真面目に名前で呼んだわね!」
「んなことどーでもいいから。それよりもコレ」
欲しいんだろ? と言い、ゲコタストラップという名のコレをより近くで見せびらかす。
「~~!! え、な、何勘違いしてんのよあんた! べ……、別にそんなのなんか欲しく……ない……わよ……」
初めは「良いの!?」と言わんばかりに嬉しそうな顔をしたのに、直ぐにそっぽを向いてツンっとした態度をとるが、言っている言葉の最後の方はだんだん小さくなっていった。
「? 欲しいから見てたんじゃねーのか?」
「バ、バカねー。私はたまたま空、……ほら飛行機! 飛行機を見てたのよ!」
「飛行機って、お前さー」
こどもかよ。と言いたかったが相手がブチギレて電撃が飛んで来るのもイヤなのでやめた。ちなみに空にはきちんと飛行機が飛んでいた。
「まぁいいや、じゃあ貰えてないかわいそうな子供にあげてこよーっと」
「なっ!? ちょっと待ってそれって! げ、限定品なのよ!」
「いや、俺はマニアじゃねーし。お互いに要らないみたいだから別に良いだろ? ほら、そこに貰えなかったみたいな子供が……」
そう正宗は言ってゲコ太ストラップを目立つ様に摘まんで持って、何だが美琴と同じく貰えなくてショボくれている子供の方へ歩き始めると、
バッと右手からストラップを美琴にもぎ取られた。
案の定、と、正宗はわかっていたが、ちょっと強引過ぎたので顔をヒクつかせ呆れた感じになる。
「で、でも、限定品で、あ、あんな手がクリームベタベタな子供に渡すくらいなら、その……私が貰ってあげるわよ!」
「お前、すんごくおとなげないな、オイ……」
「うぅ、うるさいっ!!」
そう言う美琴だったがストラップを貰って(奪ってだが)どこかしら機嫌が良くなっていた。あのままどういう形であれ、受け取らないで子供に渡す時にどう話し掛けるか考えてなかったので、結果はオーライ、と彼は思うのだった。
………………
…………
……
「ほらお姉さま! 遠慮なさらず」
「要らないって言ってんでしょ。何よ! トッピングに納豆と生クリームって」
「ほらあーん」
「わ、ちょっと!」とそんな事言いながら白井黒子と御坂美琴はクレープ片手に追いかけっこしている。
「どんなトッピングだよ、生クリームに納豆とか……」
「そう言いながらも桐生さんだって、クレープにしては変なニオイのするのを食べてませんか?」
そう言ってきたのは佐天涙子、あのあと初春の紹介で正宗は『佐天』っと呼べるくらいに知り合う事が出来た。だが佐天の方も「先輩だから」という理由で『さん』を付けていた。
そして正宗の食べているクレープとは、
「あぁ、これ? 『チーズ&ソーセージ、チリソース風味』だよ。でもこれには深~い訳が。俺さ、昼飯がまだだったから昼飯感覚で食べているよ」と佐天と初春に説明した。
「まぁ、お昼ご飯の様な感覚だったら」
「まだありですかね?」
そう言って中学生少女二人は顔を見合わせる。
「はぁ……、もしデザートとして食べるならチョコとバナナと生クリームの単純な組み合わせが一番好きだな」
「あ! それ、わかります」
「お! 共感してくれた」
「一番安いし、美味しいですよね」とこんな感じで佐天や初春と話していた。
「ところで、何で桐生さんはお昼ご飯にクレープを選んだんですか?」と初春が聞いてくる。
「それがさー、最初は友達と焼肉屋に行く予定だったんだけど、お金が無くてさ……仕方なしに銀行へ行ったんだけど閉まってて」
(開いてくれなきゃ困る……)
只今の正宗の財布の中身420円。
「それって何処の銀行ですか?」
「道の向かい側の、ほらあれ『いそべ銀行』だよ」
そう言って正宗は銀行の方を指差す。
女子中学生2人もそちらを見るが、初春は人差し指を口に当ててうーん……と考えてから、
「変ですよね。銀行とか金融関係の設備は今日、普通なら定休日なんかじゃない……はず……」
そう言った次の瞬間、ゴドン!! と目の前で『いそべ銀行』は店内から爆発を起こした。
………………
…………
……
直後から、銀行からの強盗専用の緊急アラームと消火栓のベルが鳴り響き、平穏な午後は一変する。
「初春! アンチスキルの連絡と怪我人の有無の確認を!」
「はい!」
そう言って黒子はベンチから向かい側の道に飛び出す。
「黒子!」
「白井さん!」
「いけませんわ、お姉さまに桐生さん、学園都市の治安維持は私たちジャッジメントのお仕事、今度こそお行儀よくしていてくださいな。それと桐生さん、さっき言ったこともう忘れていますわ」
美琴は仕方ないな……という顔をして、正宗は「そうだったな」と言って苦笑いをして頭をかいた。
「オイ、グスグスすんなよ!」
銀行から出てきた強盗3人は急いで逃走用の車に向かっていた。
「お待ちなさい!」
「ああん?」
「ジャッジメントですの! 『器物損壊』および『強盗』の現行犯で拘束します!!」
自分の腕に着いた
しかし何故か犯人達は驚きもせずお互いに顔を見合せる状況に、うん? と黒子は小首を傾げる。
そして強盗達は、ギャハハッ!! と突然笑い始めた。
「どんなヤツが来たかと思えばー!」
「ジャッジメントも人出不足か~?」
そんな理由で笑っていたのだ。確かに黒子は中1であり、女の子だから。
(む、ムカつくですの……!)
「そこをどきな、お嬢ちゃん」と、強盗の中で一番大きな体格の太った男が言い始める。
「どかないとぉ、ケガしちゃうぜー!!」
そして黒子に向かって突進して行くが、
「……そういう『三下』のセリフは――」
そう言いながら大男に足をかけ袖をを引っ張る。
男は「なっ!?」っと言いながら空中で回転し、背中から地面に叩きつけられ後頭部を打ち、気絶。
「――死亡フラグですわよ」
………………
…………
……
「すごい!」
「さすが黒子ね」
「やるなー」
そういう風に3人は事件に遭遇したのに黒子に釘を打たれたので『傍観して』いた。
「ダメですって! 今この場を離れたら」
「でも!」
傍観している時に初春がバスガイドの腕を掴んで必死に止めていた。それを見た3人は初春の近くに寄る。
「あの……どうかしたんですか?」
美琴がバスガイドに尋ねた。
「男の子が1人足りないんです! 少し前にバスに忘れ物したって言ったきり……」
「え……」
危険はあるだろうとは思った。でもそう言われて、ここから離れてなどとも言えないのが、そして、探そう、放っておけないと決めるのが彼女の性格だった。
「じゃあ、私と初春さんと、え~っと……」腕を組んで、御坂美琴はその目の前にいる年上の少年に向かって、
「確か、……
ビクッと動いた。
……うん、と正宗は頷くが、言われた時、ものすごーく嫌な予感と背中が冷たいゾクゾク感に見舞われ、それが確心的になったのは美琴がどこかニヤついているように見えたから。
「私も手伝います!」
そう言って佐天も参加する。
「わかった。手分けして探しましょ!」
………………
…………
……
ボォッ! と強盗のリーダーであろう男の手から炎が出た。
(パイロキネシスト……まったく……)
「今更後悔しても遅いぞ! お前には消し炭になってもら……」
しかしそんなことを聞かずにダッ! と黒子は道路に駆け出した。
「な……、逃がすかよ!」
リーダーの男は炎を黒子に投げつけるが黒子はテレポートで避けた。
しかしあろうことか避けた炎の弾は……
………………
…………
……
「桐生さん危ない!!」
初春に言われて正宗はとっさに後ろを振り向くが、
……直撃、ではなかったが、炎の弾は正宗の手前の地面にぶつかり爆発した。結構な威力があった様で砂ぼこりがあがっていた。
「桐生……さん……」
佐天は目の前で人が死んでもおかしくない爆発にただ目を丸くさせるだけだった。
「そ……そんな……」
黒子は悔やんでいた。自分の判断の誤りで一般人に被害が出たことを……。
(私のせいですの……炎の弾がどこまで飛んでいくか、ちゃんと予測しておくべきでしたの!)
「お、おい、殺しちまったんじゃねえの?」
「し、仕方ねえだろ、とっさだったから、威力の調節が……」
「俺ら捕まったら、少年院……いや刑務所まで……」
そう言いながら強盗達は慌てていた。砂ぼこりが収まり、見るとそこには仰向けに倒れている正宗の姿があった。
軽くキレた、様子で。
「はぁ? フザケンな、勝手に殺すなよ。……それに何言ってやがる。その前に俺の『私刑』に決まってるだろ」
しかしその倒れているだけだった人物はそう言葉を発しながら起き上がって強盗を見据える。
「人を殺そうとしておいて、『わざとじゃないんです』とか言って言い訳してさ……許されるとでも思ったのか、アァ!?」
その表情に慈悲はない程に冷たく、目を細ませ、視線が鋭利な刃物の様に突き刺さる。
「お、お前……。俺の炎をくらって……」
リーダーの男は驚いていた。
自分の炎の威力は
「そんな炎とか爆発時に生まれる『運動エネルギー』とか『温度』を操れば簡単に防げるから。まぁ気がつくのが遅かったから自分の体の周りだけだったけどさー……」
そう言って正宗はリーダーであろう男をより睨み付ける。
「さっきも言ったけど。タダで済むと思ってんじゃねえだろうな?」
正宗はポケットの中からガスライターを取り出して蒼い火を点火したと思ったら、
揺られているが長さが……いや、刃渡りが3メートルある火柱の様な剣となってガスライターから出ていた。
「な……」
強盗は驚く。
仮にも自分だって
目の前の
(ま、マズイですわ!)
火柱を見た瞬間、黒子がテレポートでリーダーの男にドロップキックをくらわせて、倒れたところでリーダーの服に釘をテレポートさせて身動きが出来ないようにさせた。
「これ以上抵抗するのなら、次は『地獄』をみるより怖いことになりますわよ」
「う……ぐっ……」
男は何のことかわからなかったが相手は『どこかの強者』と『空間移動(テレポーター)』だと分かり、しかも身動きが出来ないので諦めた。
「おい! 何の真似だ! 人のケンカに――」「勘違いしないで欲しいですの。また道路や建物なんて破壊されたりでもしたら……。それに過剰な反撃行為も罰せられますわ。ここは黒子に免じて怒りを鎮めてくださいな」
それと……、と白井はフゥとため息を吐いて、
「無事でいてくれて良かったですわ」
そんな事を宥めるように言った。
「……はぁ……、わかったよ。『反省文』だって書きたくないしな……」
そう言って正宗は炎を消してガスライターをポケットに入れて諦めた。
………………
…………
……
「うーん……」
佐天は正宗が無事だとわかってから男の子を捜すのを再開した。
美琴はバスの中を、初春はバスの後ろ側を、佐天は前側を捜して
『あ、何だお前!』
しゃがんで捜している時に後ろからそんな大声が聞こえた。
(え?……)
後ろを振り向くと捜していた男の子が強盗に連れ去られようとしていた。
「ちょうどいい!『なにお兄ちゃん、ねえ?』いいからさっさと来い!」
多分逃走する時に『人質』として扱おうとしているのだろう。
小さな少年の腕を強引に引っ張っていた。
一瞬、佐天は何が起きているのか判らなかった。困惑したままで美琴や初春を呼ぼうとしたが、彼女なりにもはっきりとわかったことがあった。
このままでは間に合わない、と。
(……、私だって!)
佐天は覚悟を決めた様に奥歯を噛み締めて、助ける為に駆け出した。
………………
…………
……
「そっちは?」
「ダメです!」
美琴は、灯台もと暗しとも言えるかもしれないとバスの中を捜したが、そんな男の子はいなかった。
「ったく、何処へ行ったのよ!」
そう言って焦っていた。(もし強盗にでも人質にされたら……)と美琴の心の中で考えていた。
そんな時、
「おい何だテメェ! 『ダメ――ッ!!』離せよ!」
強盗の怒鳴る声と佐天の叫び声に美琴と初春はとっさにバスの前側を見た。
「クソッ!!」
佐天は必死で連れ去られそうな男の子を掴み守ったが、
男の子を引き離した瞬間に強盗に顔面を蹴り飛ばされ佐天は倒れた。
強盗はそのまま車に乗りこみ一気に走らせドリフトし5人のいる方向に車の向きを変えた。
「こうなったらテメェらまとめて……」
………………
…………
……
(あの野郎ォが!!)
正宗は『もう我慢ならない』と限界だった。
さっきの事があったのに怒りを鎮めていたが、無理だった。ライターをしまった後にあんな怒りを増長させる出来事などを見れば当然と言えた。
しかしそれは、
「黒子ぉっ!!」
白井黒子はその怒鳴り声を聞いてビクッとする。
同じ時に御坂美琴も、同じ気持だった。
「こっからは私の
そして黒子の返答など待たず、道路の真ん中に立ち、車と向き合う。
「待てよ御坂!!」
正宗は叫んだ、美琴に向かって。
それを聞いた彼女は振り向き正宗を睨み付ける。まるで『邪魔すんな』と言わんばかりに。
しかしそれに臆する正宗ではなかった。逆に美琴の方が正宗の威容な存在感を感じて内心、驚くぐらいだった。
「俺も一発、参加させろ……!」
目を見開き言って、さっきの怒った時とは比べものにならない程の怒りがわかる感じがした。
「ふん、足、引っ張んじゃないわよ」
「お前こそな」
2人は静かに『逃走車』に向き直る。
………………
…………
……
「おっ、思い出した!」
突然釘を打たれて身動き出来ないリーダーの男が口走る。
「ジャッジメントには捕まったが最後、心も体も切り刻んで再起不能にする最悪の腹黒テレポーターがいるという噂っ!」
「誰のことですの? それ」
黒子は少しムカついた。『最悪の腹黒』と言われたら誰だってムカつく。
「それだけじゃねえ! そのテレポーターを虜にする相方、あの最強の電撃使い。ハ!? 『
………………
…………
……
正宗と美琴は道路の真ん中に立ち、向かってくるであろう止まっている車を見ていた。
「あんた、蒼い炎か何か出してガソリンに引火させて、死なせるんじゃないわよ」
「あぁ、わかってるよ。お前こそ車体に風穴開けて殺すなよ」
それに……と付け加えて、
「お前が
「……まさかあんた、ウソでしょ!? 電気系統も扱えるの!?」
勘違いしていた。正宗の事を『炎』と『空間移動』の二種類扱える能力者だと思っていた。
(あ、でもそうならあの時に私の電撃を防いだ理屈は通る……)
「ホント何者よあんた」
「さぁーて何なんでしょーか?」
そう言って正宗はポケットから『スタンガン』を取り出す。スタンガン? と言いたそうに美琴は小首を傾げた。
「まぁ見てろって」と正宗は言葉を紡ぐ「俺は
本気というのは威力の面ではない。
「へぇー。それは楽しみね」
この言葉は御坂美琴の本心とは少し違っていた。その『楽しみね』という言葉の裏には少なからず期待とショボい技出すなよ、という意味が込められていた。
そして美琴は、まるで試合開始前の合図をする様にコインを右手の指で上へ弾き、『超電磁砲《レールガン)』を撃つ動作を。
正宗は『スタンガン』を右手で持ち、まるで野球の
「そう、あの方こそが……」
学園都市230万人の頂点、7人の超能力者《レベル5》の第3位……そう黒子が言いかけていると強盗の乗った車が物凄いスピードで2人に向かって走りはじめた。
2人は背中合わせにだが別々の動作をして、だがその動作は無駄の無い、
――流れる様に、
――同時に、カッと目映く輝き、
――速さは
轟音と空気にうねりを上げて放たれた2つの光線は、車を後方数十メートル以上に吹き飛ばす。
御坂美琴は自身の代名詞であり一撃の必殺技である『
桐生正宗は
高速で電荷を帯びた粒子を撃ち出す、科学的識別名
『荷電粒子砲』を。
「
そして……、と呟く様に言葉を繋げる。
間近で見ていた黒子は凄まじい音と風を受けながら耳を押さえて続けて語る。 それは『あり得ない』と思っていた。
しかし『あり得ない』と考えていたモノは『実物』として黒子の目の前で、美琴の隣で堂々と立つ。
「都市伝説『裏のLEVEL5』の……桐生正宗さん、ですの」
「ほへ~……」
「凄い……」
確かに凄い光景だったであろう。
『
佐天と初春は言葉に出来ずに、ただ口を開けているだけだった。
………………
…………
……
……TIME 16:55……
事件が二人によって終盤を迎えた後、警備員(アンチスキル)が来て事件の処理を今行なっていた。
ちょうど処理に当たっていたのは、正宗の高校の体育教師である黄泉川先生の率いる部隊だった。
そんな時に「桐生、何やってんじゃん? こんなに女の子連れて、ハーレムじゃん?」「そんなわけない! 誰がこんなまな板娘と!」「まな板言うな!」ビリビリ~というやり取りをしていた。
そんな最中、強盗3人は今から護送車両に乗せられるところだった。
「あなたの能力もなかなかの物でしたわよ。
唐突に黒子は背をむけてだが最後に乗り込もうとしていたリーダーの男に話しかけていた。
「能力に有頂天になるあまり、道を違えたようですわね……。しばらく自分を見つめ直して、もう一度出直してくださいな……」
そう言って黒子はリーダーの男から離れて行った。
男は何も言えなかったが、その表情に悔しさはあったが、悪意のない悔しさの表情があった。
「ふぅ……」
佐天は顔に大きな絆創膏を張って地面に座って一息ついていた。
(さっきは何だか恥ずかしかったなー……)
そう、さっきまで助けた男の子とその母親、そしてバスガイドさんにお礼を言われたからだった。
(『おねーちゃんありがとー』)
そんな助けた男の子の言葉を思い出していると、誰かか近づいてくる気配がした。
「お手柄だったね佐天さん」
「ホント、すっげーカッコよかったぜ」
美琴と正宗だった。
「いえそんな、私はただ……」
「佐天さんが男の子を助けてくれなかったら、もっと大変なことになってたかも知れなかったのよ? ありがとう」
そう美琴に言われ、佐天はまた顔を赤くして照れていた。
「佐天さん! お怪我大丈夫ですか?」
「ああ、へーきへーき。大したことないよー」
初春も心配して言ってきてくれた。彼女はうーとか言いながら彼女の傷を見ていた。
「……あ! そうよ!」
突然美琴が何かに気が付いた様に言って隣に居た正宗の方をぐるりと見る。
「あんた今から勝負」
「あー! 思い出したー! 今から大切な用事が~……」
そう言って正宗ははぐらかそうと思って、あさっての方向に向いて歩き始める。
しかしそんなことで美琴が見逃すはずもなく、正宗の服の裾を掴み、
「コラ! ちゃんと私の相手をしなさいよ!」
「うわ、放せよまな板娘! 台所にでも行ってろ!」
「なーんですってーっ!!」とまたその場で口喧嘩(電撃を含む)が始まった。
しかしそんな時、美琴に「おねぇーさまー!」っと黒子が飛び付き頬を擦り寄せ始めた。
「黒子は頑張りましたのよ~」
「うわ、ちょっと離れなさいよ!」
「お姉様ぁー」と頬をスリスリとするが「こんのっ!」ビリビリと、黒子は美琴の電撃を喰らって「あぁん! 愛の鞭ですわ~」と言って倒れる。
見ている方はいつものことだったが、何故だかついつい初春も佐天も笑ってしまった。
(御坂さんも、桐生さんも、かっこよかったです)
………………
…………
……
……side 常盤台女子寮……
「見つけた!」
そんなことを大声で言ってパソコンをいじっているのは常盤平のエースこと御坂美琴。
結局あの後は正宗にまた逃げられてしまったので、仕方なく寮に帰ったのだった。
しかし運がいいのか、それだけしか獲られず運が悪いのか、名前はあの時覚えたのだ。これを今、利用しない訳がないと、理由は伏せたが黒子に頼んで『
もちろん『タダで』というわけではない。
今度、黒子と一緒に買い物に行くという取引の上で閲覧しているのだ。そして自分のハッキングの能力を駆使して隅々まで調べていく。
能力の名称から用途、
(なかなか手強そうね……)
見ていてそう思った。大雑把にだが、正宗の能力とは全ての物理現象における『力の値』の変更と解釈した。
そして目を閉じて自分の頭の中で戦いをシミュレートしていく。
(……大丈夫よ、私。相手はそれでもたかが
そう思ったのは勝算が見つかったのだろうか。
はたまたは『自分だけの現実』を信じての事だったのか……。
『荷電粒子砲』
・砲弾として用いられる荷電粒子(電子、陽子、重イオンなど)を、粒子加速器によって加速し発射する。※荷電粒子とは、電荷を帯びた粒子のこと。
・しかし、現代の地球上では必要とされる超絶な量の電力が得られず(大気圏内で荷電粒子が直進するには、質量の大きな荷電粒子であろうと)、最低でも10ギガワットの出力が必要である。
※正宗は、能力によって粒子に荷電させ、その粒子の直進方向の運動力の大きさを変えるだけで放つので、電荷の付加ならびに粒子加速器による膨大な電力の必要性がなくなっている。地球磁場の干渉により直進するか否かの問題も、10mの能力範囲内ならば修正可能。10m以降は物理法則通りに曲がる可能性が出て、遠ければ遠くなるほど高くなる。