出来はなんか微妙だけど
あと今のうちに謝っとく。土下座体勢は万全です
僕の名前は森沢信一郎。これといって特長らしき特徴の無いサラリーマンである。
先日いつもやる契約とは違った意図でお誘いを受けて、お得意さんの根城である魔界へと足を踏み入れた稀有な経験を持った青年である。と自負しても過言ではない。
………………嘘です。めっちゃ話盛りました。
人付き合いに難を持っていて、人恋しさに悪魔の契約に手を出してしまった脆弱な人の子です。しかも願い事を叶えてもらうには必ずといって良いほど自らの命を差し出さなければ対価にならない、とかって自身の価値の低さに辟易としだした男です。あ、あと若干オタク趣味もあります。
どうしたらいいのだろうね……?
先日は帰宅早々に泣き寝入りしたわけだけど、このままでは僕の尊厳は最底辺のままだ。
どーしたら強くなれるのかな……、と子供の頃の志向に嵌まりかけていたそのとき、玄関のドアを叩く音が聞こえたのでほぼ条件反射的に顔を出す。
おや?確かキミはゼノヴィアちゃんや小猫ちゃんといっしょにいた男の子の……?
「いこうぜ!」
「いきなりどこへ!?」
さわやかアルカイックスマイルの少年に連れ出される。二十七の夏であった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「ただいま戻りましたー」
部長の自宅へと一週間ぶりの帰宅をしたわけだけど、返事が無い。まだ皆帰ってきてないのかなぁ。
ソーナ会長とのレーティングゲームは一週間前に二週間後に行うと告げられた。つまりあと一週間修行のための猶予はあるのだけど、師匠の下で着実に実力をつけてゆく以上に、思うところがあったために師匠の修行を一週間で切り上げてもらったわけだ。
それもこれも規格外の実力者を目前にしてしまっているせいなのだろう。
師匠にイッセーくんのことを聞いてみたところ、「根本的に生物としてのぽてんしゃるが普通の悪魔を零五桁くらいは上回っているような印象を見せてくれますね。元は普通の人間だったという話でしょうが、的確に鍛えれば今以上の実力に成り得る“才能”を後天的に賦与されたと私は見ます。……そんな怪物を的確に鍛えられるとれーにんぐめにゅーとか私には思いつけませんが……」と説明してもらった。
そこで僕が思いついたのは、彼に実戦の相手を取り次げないかという考えだ。今回のレーティングゲームではこちらのセコンドに入ってくれているというし、これくらいの注文を受けてくれるとは期待しているのだけど。
そんなことを考えながら屋敷内を歩いていたところ、中庭にてオカ研の皆を発見した。
………………。
絶賛修行中だった。
サイドテールの髪形となったアルジェントさんを相手に、部長と朱乃さんとゼノヴィアの三人でほぼ互角に渡り合っている。
一瞬文章がおかしいなと思ったけど、アルジェントさんの実力を考えれば何も可笑しなことはなかった。
近くに控えていたメイドさんに聞くと、この一週間でようやくこのレベルに達したらしい。
そして小猫ちゃんはギャスパーくんの修行をつけているらしい。
改めて僕のやることも無いので、声をかけることもなくそっとその場から立ち去った。――ところで、
「ただいま戻りましたー」
イッセーくんがひょっこりと玄関から現れた。どうやら彼も屋敷にいなかったらしい。
「イッセーくん、お帰り。どこに行ってたの?」
「おう、ちょっと人材発掘に元の世界へ。兵士二人程度なら目星がついたからさ」
彼は彼でやることを考えてくれていたようである。
「木場は、確か剣の師匠に手ほどきを、とか言ってなかったか? もう修行は終わったのかよ?」
「そのことなんだけど……」
僕らはあえて中庭の惨状には目を向けないようにしつつ、今後の修行について話し合った。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「本とーーーーーーーーうに、いいのか?」
「改めて聞かないで、決心が鈍るから」
頼み込んだところ、休み明けの学食を奢ることで話が付いた。
自分でも思うけど安すぎやしないだろうか。
「じゃあ、木場の実戦経験を研ぎ澄ますためにそのいちー」
僕は構えて、彼の攻撃に備える。
僕が知る中で最強に位置に立っている彼の攻撃に慣れることで、それ以下でも対処できるような強さを身につけたい。そう思っての組み手の依頼だ。
さあ、どうくる?
「俺もこのままだと戦闘向き、ってわけでもないんでな。ちょっと気合入れさせてもらうぜ? あれだ、レイフォンの剣の素振りみたいな」
これまで耳にした中でこれ以上に驚異的な例えが果たしてあっただろうか。
「はぁああああああ……!」
気合を、文字通りに溜めているような息遣い。
これが冗談ですまないんだから、せめて生きる希望が折れませんように、と祈ってみる。神は死んだらしいので魔王様にでも。
「――ふぅん!」
ボゴォン!と一瞬で肉体が三倍くらいに膨れ上がった!?
「ふぅ……、待たせたな……」
声まで変わってる……!?
っていうか誰!? 目の前で起こったことが信じられないんだけど!?
「え、ちょ、いっせーくん……だよね……? なに、なにをしたの……?」
「どうした木場、随分と小さくなったな」
「君が大きくなりすぎたんだよ……!?」
いやいやいやいや、これはない。
これは完全に別の世界線のイッセーくんだよ。この世界で再現しちゃ駄目だよ。他の作家さんに怒られちゃうよ。
「というかなにをやったの……?」
「よくぞ聞いてくれた。
――俺は強さを求めた。生まれなおした俺が手に入れたのは自身で抑えきれないほどの膨大な魔力、そして膂力。それらを制御しきるには第一に肉体を精神を強く保たねばならないと思ったからだ。
魔法を覚え、自分の使える技を覚え、レベルの果てを目指すことを止めることなく、御魂合体を繰り返して強くなろうと躍起になった。
……違ったんだ。俺が本当に鍛えなくてはならなかったのは、俺自身の扱い方だ。
膨大な魔力があっても使い道がなかった俺は、もっと器用になるために様々なことに手を出した。その一端はお前も知っているはずだ。電霊化、そして魔法陣の生成。だが、必要なのはそれ以上の制御力――。
一時は神器を使うことも視野に入れた。
二乗化の鎧に、相手の倍になれる剣。どちらも強力な卍解だ、得たことに不満は無いが、やはり俺の魔力はまだ騒いだんだよ――もったいない、ってな」
……彼の肉体を、炎のようなものが取り囲んでいるように見える。
これは、闘気……?
「見えるか? これは炎そのものだ。
俺はついにこの方法にたどり着いた……!
最大攻撃力と最大破壊力を持つ魔法・マハラギダインを放つことなく圧縮!
それを喰らうことにより、その魔法力全てを命を燃やす燃焼力へと変換!
炎を食らった肉体は超活性によって一時的な爆発力により膨れ上がる!
そう、これこそ俺自身が真に強くなれる第三の卍解!
名づけて、『超新星・竜闘気』……!」
前から言おうと思っていたけど、君のそれ絶対に卍解じゃない。
「いくぞ木場、生き延びて見せろ」
気付いたときには目の前にイッセーくんの姿が立ちはだかって、コブシをゆっくりとこちらへと押し出してきていて……、
あれ、これ、ちが、あれだよ、死ぬ前に見るっていう、走馬t――
☆ ★ ☆ ★ ☆
「――はっ!?」
死んだ。かと思ったけど、どうやら夢だったらしい。
イッセーくんのコブシが腹へと突き刺さった瞬間、僕の全身が真っ赤に燃焼して爆発――。
五体全てが粉々に粉砕される姿まで幻視した、やけにリアルで最悪な夢見だった。
悪夢にしたってタチが悪すぎる――、
「起きたか。情け無いぞ、一回死んだ程度で気絶するなんて」
………………夢じゃなかったぁー……。
「……っていうか、僕確かに死んだよね……?」
「ああ、だから蘇生させた」
無茶苦茶にもほどがあるんですが。
「大丈夫だ、俺のコブシは相手を爆発させてもすぐに元に戻せる。これで命を惜しまずに戦闘経験がたまるぞ?」
それ何処の主人公級&ラスボス級スタンドの複合?
「っていうか見たことあるよその修行。あれだよね、ザラキさんと卯の花さんのやっていた臨死の斬り合い――」
「そーれすごいぱーんち」
「ちょっ最後まで言わせt」
ボーン。僕は死………………ぬこともできなかった……。
~森沢さん強化計画
そして放置。
~木場の師匠
口調が変な気がするわ。沖田さんであってるんだっけ?
~まっするいっせー
なんかごめんなさい!
~第三の卍解!
名前だけ。木場が全てを代弁してくれました。
黒龍波と爆肉鋼体を複合したような超進化。
~ザラキと卯の花(ry
死ぬたびに蘇り斬り合うすげぇ剣戟。
魔法全てを身のうちに取り込んだイッセーのコブシにはサマリカーム(完全蘇生呪文)とマイト(爆弾化呪文)が同時に含まれているので、殴った相手を爆発させて復活させるという“ダイヤモンドは砕けない”を全て表現したような効果を発揮させる。相手は死なないけど確実に心が折れる。トラウマは必至。