・・・アーシアってちっぱいじゃなかったんだ・・・
そしてレーティングゲーム当日。私たちは改めておめかしして、観客席へと足を運びました。
なんでも立食パーティみたいな仕様にしたらしく、食事しながら観戦できるVIPな扱いです。
それはともかく、イッセーさんと二人っきりとか久しぶりでした。
あれです、リアス部長のご実家では私はお三方の修行相手をしてましたし、意外と小猫ちゃんやギャスパーちゃんのほうがイッセーさんと一緒にいることのほうが多いんです。思わず朱乃さんやゼノヴィアさんにちょっと強めの魔砲をぶっぱしてしまうのも仕方ないですよね?いえ、ストレス発散とかそういうことではないですよ?ちょっとだけ手元が狂っただけなのです。大丈夫です、消し炭にしても基本的に非殺傷ですし、酷い怪我をしたときには私の神器で回復も出来ますし。初めて使ったときにはなんでか驚かれてましたけど。そういえば見せたことなかったでしたね。
そもそもイッセーさんと二人っきりとか何を話していいのかわからなくなるときがあります。イッセーさんは未だに私のことを妹扱いですし、根本的に好きな人相手だとそれだけでどきどきするんですよね。修道女をしていたころには考えられない人生で、私いますっごい青春してるって感じです!追放の理由を作ってくれたDIOなんとかさんには感謝しても仕切れませんが、此処は元修道女らしく主に感謝の祈りを捧げます。あっ、亡くなってたんでした。ではとりあえず運命的な何かに。すていないと、でしたっけ?
会場には色んな人(悪魔なのでしょうか?)がいらっしゃいました。
何故かアザゼルさんまでいました。……あと天野さんも。
「よぉ赤竜帝、それと聖母さん。お前さんらはゲームには出ないのか?」
「どーもアザゼル=サン、俺は元々誰かの眷属ってわけじゃないですし」
「私は何故か出禁扱いでした」
「そうなのか……」
本当に何故なのでしょうか?
まあお陰でイッセーさんと離れる必要性が無いのでありがたいですけど。
「それはそうと赤竜帝、お前の仕出かしたヴァーリの回復だけどな、ようやく目処が立ったぜ」
「それ俺に言う必要あります?」
「言わせろよ。お前の所為でここんところ連日徹夜だったんだからな。回復できたからこうして俺も冥界へと足を運べたわけだし」
ああ、それでなんか足取りがふらついているのですね。
目の下には隈らしきものまでうっすらと見えます。……お休みになられた方がよろしいのでは……?
「まあ今日はこれから付き合っていく相手への顔出しだな。それと、今後ともというわけでお前らの町に駐在するのはそいつらだ。顔なじみのほうがわかりやすいだろうと思ってな」
「天野は知ってますけど……、そっちの人らって誰ですか?」
天野さんと、少し暗い雰囲気のおじさんと、髪の長いお姉さんと、私と同じような金の髪色をした女の子でした。そういった人たちがアザゼルさんの後ろにいました。
「あんたがイッセーね……! この泥棒猫っ!」
「猫じゃないドラゴンだ。誰だてめぇ」
女の子が何故かイッセーさんに凄い攻撃的です!
小猫ちゃんみたいなろ、ろりっこ? なのですがあれは雰囲気が違います!『くーでれ』である小猫ちゃんとは違う『つんでれ』の香りがします!
「私はミッテルト! レイナーレさま一番の僕(しもべ)だ! レイナーレ様を返せー!」
「レイナーレって誰だっけ」
誰でしたっけ?
「ちょ、忘れないでほしいんだけど。まあそれはともかく、ごめんねイッセーくん、この娘ってちょっと⑨な娘だから」
さいきょーなんですか。わかりました。
小首を傾げていると天野さんが女の子を押し留めてました。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「よお!久しぶりじゃないか!」
「あっ、ロキさん! 久しぶりっす!」
どちら様でしょうか……?
天野さんたちと別れた後料理を手に取り談笑しているところへ、美人さんを引き連れたいけめんのお兄さんがイッセーさんに話しかけてきました。お知り合いですか?
「そちらの娘とは始めましてだな。俺の名はロキ、彼とは生まれ変わる前からの知り合いだよ」
「この人のおかげで業魔殿を利用することができたから、ある意味アーシアの恩人でもあるな」
なんかさらりと衝撃の事実を聞いた気がします。
あと周囲から「お前か」という声が聞こえました。
「今日はまたなんで?」
「ん? 聖書の陣営が他の神話体系にも目を向けるっていう話を聞いてな、とりあえず俺が代表として顔出しにきた。こっちのヴァルキリーはロスヴァイセという、といってもキミとは一応顔合わせは初では無いけど」
「そーでしたっけ?」
言われてぺこりと頭を下げる美人さん。
「どうも、代表である彼のお目付け役としてきました」
「はあどーも。でもそういうのって普通主神とかが出張るものでは?」
「……此処だけの話、オーディン様はグングニルを奪われたことですっかり腑抜けてしまいまして、今では縁側で茶を飲むご隠居に成り果てています。(まあセクハラ爺だった以前よりはずっとましなので貴方には感謝もしているんですけど」
「はい?最後なんて?」
「いえ、何も」
なんとなくロスヴァイセさんから苦労人のオーラを感じました。
そして、レーティングゲームのスタートとなったのです。
☆ ★ ☆ ★ ☆
『くそっ! 何処にいるんだあいつら!』
画面の中では匙さんが駆けずり回っておりました。
ステージは百貨店。敵陣に真っ先に切り込んでいったソーナ会長陣営の何人かは、開始十分経った今でもリアス部長眷属の皆さんを一人も見つけられていません。
それもそのはず。リアス部長ご一行はギャスパーちゃんの作ったダンボール空間の中に隠れていますから。リアルハイドアンドシークを再現できる性質の前では範囲を狭めた決闘場では不利になる一方ですよね。あとアザゼルさんが「えげつねぇな……」って呟いてました。
そしてステージの百貨店内は人間界のそれを忠実に再現しているわけですから、再現された倉庫にはダンボールが山のようにありました。それを持ってきて全階層に配置しながらかく乱作戦を実行しているのが今の戦状です。
指し詰めピラミッド内部の宝箱トラップと言ったところでしょうか。
「開けるとグレモリー陣営の悪魔が飛び出してくるか……。たまげたなぁ……」
「完全に『待ち』ですけど、戦略としては面白いですね」
このお二人意外と仲がいいのでしょうか。
ふむふむと頷きながら、画面に食い入るように観戦しているロキさんとロスヴァイセさんでした。
そして画面の中では、匙さんが箱の一つに手をかけます。すると――、
『俺!参上!最初ッからクライマックスだぜぇえええ!』
『誰!?』
あ、森沢さんが飛び出してきました。
イッセーさんが一週間ばかり人間界へと戻っていた折、彼を集中強化する特訓を行っていたようです。
私のようにペルソナを与えようかとも思っていたそうですが、悪魔に転生するとなるとペルソナは扱えなくなりますから、仕方なく神器のように悪魔の力を注入したそうです。
結果、森沢さんは首のところに突起のようなものが生えた、全身を淡く発光する紋様で武装した『人修羅』となった。というのがイッセーさんのお話でした。ひとしゅらってなんですかね?
「成果と調整の為にトレーニングタワーの最上階に置いてきたのが功を奏したみたいだ。一週間で結構な力量になったようだし」
「せめてもうちょっとやさしく扱ってあげましょうよ」
「男ならある程度叩いても平気だって」
イッセーさんの男女観は極端な気がします。今更ながら、ギャスパーちゃんが元男性だったって、気付かれなくって良かったのかもしれませんね。
『ひゃあ勝てねえ!撤退だぁ!』
『って戦わないのかよ!?あっ待て……って速っ!?』
ある程度の打撃を加えて飛び跳ねて逃げ惑う森沢さん。
戦闘能力よりは逃走能力に重点を置いて“強くなった”気がするのですが……?
「置いとく場所間違えたかな」
「最上階では転生したての人ではちょっときつすぎるんだと思いますよ?」
「そのトレーニングタワーとやら、ちょっと気になるな……」
ロキさんが思案顔でそう呟いたとき、森沢さんが別のダンボールをひっくり返します。すると、
『GAAAAAAAAuuuuuuuuu!!!!』
『げぇ!?今度はなんだぁ!?』
使い魔の森に解き放っていたはずのケルベロスちゃんが飛び出てきました。
「二人目の兵士ってあの子だったんですか」
「そう。一応悪魔じゃないと駄目かなーって思ったからさ、ミルたんはこっちの世界に引き込んじゃ駄目だろ?」
イッセーさんにしては賢明な判断でした。
「………………おい、あれうちのフェンリルじゃ無いか? ここんところ姿見ないと思ったらなんでこんなところに……」
「えっ、いえケルベロスですよ?首きちんと三つあるじゃないですか」
「いや、あの二つの首完全に作り物だろ。しかもあの神食いの気配とか俺が間違えるはずが無い」
……はて?どーいうことなのでしょうか……?
わけがわからない話にそろって首を捻る私とイッセーさん。
そうこうしているうちにレーティングゲームは架橋です。どっちも頑張れー。
~すていないと
アーシア、それ運命違いや
~ちっぱい要員追加
レイヴェルちゃんだと思った?残念!ミッテルトちゃんでした!
駆逐されたけど命まで奪う理由がなかった駄天使陣営は全員生存
いつから全滅していたと錯覚していた・・・?
~ぐんぐにる
槍は男性自身の象徴だとかって何処かで聞いた気がする
特に悪魔の持つ三椏の槍は悪魔には三つの男性器が備わっているんだぜ?という意味合いを持っているとか・・・
それを知った今、微妙に目にする子悪魔系女子のファッションに注視するのも重要かもしれない。ゴクリ・・・
~森沢さん
悪魔合体亜種。種族・人修羅
レベルは7、言うほど強くなったわけではないご様子。なのに最上階に放置とか鬼畜の極み
鍛え上げられた特性はポケモン的な逃げ足。相手が強ければ強いほど逃走率がぐんっと跳ね上がるらしい
~ケルベロスたん
真相は闇の中