忙しい人のための赤竜亭   作:おーり

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色んな二次作家さんがハイスクールD×Dの原作とのリンクをやっているので便乗してみた
忙しい人のための赤竜亭、最終回


以下略ッ!!
赤竜亭よ、永遠に


 意識を高めて、呼吸を整え、身の内にいる相棒と力をあわせる。祈り、輝き、詠唱――!「『卍・解!!』」装纏衣・赤竜王、此処に推参。えっ?名称違う?気のせい気のせい。

 夏休みも終わる頃、庭先で卍解を発揮する俺とドライグ。それというのもつい先ほどアラスカから届いた手紙が発端であった。『拝啓、残暑がまだ厳しいと思われますそちらの塩梅は如何なものでしょうか? こちらは適度に涼しく、妹と二人のんびりとした毎日を過ごしています。先日は亜熱帯の地域に滞在していたのですが、そちらにいると故郷のことを思い出し少々ノスタルジックな空気に陥ってしまったのが困りものです。妹もいい加減に帰りたいなどと駄々を捏ねるものですから、つい口喧しく叱ってしまうもこの遣り取りがまるで本当の家族のようで、と益体も無いことを思ってしまうものです。そちらの夏はまだ暑いでしょうが、どうぞ体調にお気をつけてお過ごし戴けますように配慮いたしております。追伸、そろそろ帰りたくなってきたのは私も同じ想いです』風情と育ちの良さを匂わせる気持ちのいい手紙であった。誰からだろうと裏を見てみれば、流氷を背景にピースを決めたオーフィスとグレッドさんの姿が。お前らかよ。というか改めて文面を読むと次元の狭間に早く帰らせろ、とせっつかれている様にしか聞こえない罠。まあ俺としてもどうにかしないといけないなとは思ってはいた。冥界から帰るとき同じように炎に囲まれて切り裂いたのもいい思い出。

 『Extraboostッ!Extraboostッ!Extraboostッ!Extraboostッ!Extraboostォォォォッ!』二乗化を五回繰り返せばいい具合に次元の壁くらい乗り越えられる強さを得られるはず。破ァッ!と中空に向けてコブシを突き出せば何処かで見たような地獄の劫火がよんどころの無い勢いで燃え盛っているのが見えた。もう此処焦熱地獄とかに名称改名しようぜ。それはともかく穴が塞がらないうちに突っ込んで内側から穴を無理矢理塞ぐ。気分はフュージョンしたスーパーゴテンクス。

 

 さて、炎を鎮めるにはどうすればいいのか。燃えるものが無いのに未だに燃え続けているお盛んな劫火に億劫な気分になりつつも、自分の使える手札を思い浮かべる。……ここで炎をさらにやっても二度手間だろうなぁ……。そうなると使える手札は限られる。食らえ、今まで使う機会のなかった必殺技!ドラゴンブレスを両手を構えて吹き出した。属性は万能物理、攻撃的には多分“りゅうのいぶき”なんだろう。そう思ってやってみたらビッグバンアタックだったでござる。炎は消えたが一緒になんかやべえものまで消し飛ばしたようないけない気分になる。次元の底のほうで燃えていたなんかでっかい生き物っぽいのってなんだったんだろう……?

 とりあえず火は消えたのだから問題は解決した。そう思って元の世界に戻ろうとしたとき、知った気配を感じてそちらへ目を向ける。……何故かアーシアが気を失った状態で次元の穴を破って落ちてきた。なんで?

 

 とりあえず拾い上げて連れ帰ることにしたけど、アーシア、お前そんな簡単に気絶するようなか弱い子じゃなかっただろ。いやウチでのレベル的にはそれも致し方ない程度だっただろうけど、精神的には結構修羅場を潜って来た彼女にしては現状が無防備すぎる。まるでヒロインのように降ってきたアーシアに「親方ー空から女の子がー」と叫びつつ始めはどっきりかと思ってカメラを探したのは仕方ない。無かったけど。彼女の現状を疑問に思いながらも次元の狭間を抜け出、元居た庭先へ。ブーストを解除し卍解も解除したときにようやく目を覚ます我が家のお姫様。そして泣きながら俺に抱きつく我が家のお姫様。ええっ!?アーシアがあざとくないだとっ!?普通に可愛いと思って抱きしめ返したのは仕方ない。そしてその姿を家の中からひょっこり出てきたアーシアに目撃されたのも仕方な……い……? どういう、ことだってばよ……?

 二人いるアーシアズに内心一番狼狽えているのは間違いなく俺である。お前らいつのまに細胞分裂まで身に着けたんだよ。「そこはせめて双子とかそういう可愛い表現をつかってくれませんか?」ごめんなさい。家の中から出てきたほうが我が家のお姫様のようである。一人あわあわしている連れ帰った方のアーシアの方が正直あざとくなくて可愛いし。そんなことを思って見ていたら何かに気付いたのか、我が家の姫がもう一人へと近寄って、むんず、ともう一人の自分のおっぱいを鷲掴みにしていた。「イッセーさん!この子私よりおっぱいあります!」「なん、だと……っ!?」アーシア(ちっぱいじゃない)との見分けのつけ方が確定した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪数ヵ月後≫

 

 イッセーは死んだ。

 サマエル、というドラゴン殺しの毒にその身を蝕まれて、次元の狭間にて息絶えた。

 それを看取るのは彼と共に生きた仲間たちではない。

 力無き無限の竜神と、彼の相棒としてずっと片腕に宿ってきていた赤龍帝のみである。

 そのイッセーの死はどうしようもなく無情だが、彼はようやく満たされた気分を味わえていた。

 

「(アーシア……、これでようやく、俺も、そっちへ、逝ける、よ……)」

 

 数ヶ月前、彼は仲間の一人にして救いたかった少女を見失った。

 唐突に出現した敵の攻撃を感知することも出来ずに、光の中へとむざむざと失ってしまった。

 悪魔にとって光は絶対的な凶器。

 それは元が聖母と呼ばれた彼女であっても同じこと。

 その祈りを大天使に緩和されていたとしても同じこと。

 

 そんな彼女を失った哀しみで、一時は我を忘れて暴れ回った。

 それを救ってくれたのは彼を愛した赤い髪の少女。

 彼を受け入れてくれたのも赤い髪の処女(乙女)。

 ――それを受け入れられなかったのは、他でもない自分自身だった。

 

 もっと彼女と楽しい思い出を作りたかった。

 もっと彼女に色んなものを見せてあげたかった。

 もっと彼女を、愛していると、伝えたかった。

 

 それをできなかった自分を許せずに、彼はがむしゃらに、受け入れてくれた主のために強くなろうとした。

 救えなかった命を取り戻したかったのだろう、救いたい者たちへと積極的に手を伸ばした。

 その果てに、こうなった。

 

「(ああ、もう……)」

 

 もう、終わる。

 自分の意識が消えかけているのを実感して、兵藤一誠の人生に、ついに暗幕が下りた。

 

 

     ☆   ★   ☆   ★   ☆

 

 

「へいらっしゃい!」

 

「――は?」

 

 え。此処何処だ?

 妙に騒がしくなったと思ったらたくさんの人たちが飲み食いしている空間へといた。な、何が起こったのか俺でもわからねぇ。死後の世界がこんなんでいいのか?

 

「ご注文はなんにします?」

「いやいやいや、その前に俺金持ってませんし、つーか此処ってどこな――」

 

 思わずきょろきょろと辺りを見回して、――気づく。

 周囲の人間の顔に、どれもこれも見覚えがあるんだけど!?

 

「あ、あんたら歴代の!?」

 

 赤龍帝の篭手≪ブーステッドギア≫の持ち主であった先輩方の残留思念だと!?

 皆さんなにしてんのさこんなところで!

 あれか! 俺が死んだから一緒に死後の世界にやってきたってそういうオチっすか!?

 

「ご注文はなんにします?」

「なにもねえよ!? っつうか店員さんさっきから俺の話聞いてなくねっ!?」

 

 ちょっとしつこいよこの店員さん!

 そんな意味も込めて振り返れば――、絶句した。

 

「まあまあ、腹が減っては戦もできぬって言うじゃないか。ご注文は?」

「――お、お任せで……」

 

 ――その店員は、俺自身だったのだから。

 

「ま、騒がしいのも事実だし」

 

 その居酒屋の店員の格好をした“俺”は、伝票を放って手のひらをパン、と一回叩く。

 次の瞬間には先輩方は消えて、俺と“俺”だけが屋台を挟んで座っていた。

 

「赤竜亭へ、ようこそ」

 

 どうやら、それがこの『店』の名前らしかった。

 

 

     ☆   ★   ☆   ★   ☆

 

 

「はあ? 毒にやられた? 弱くね?」

「うるせー、ドラゴン殺しなんて持ってこられたら普通死ぬっつうの」

 

 突き出されたちくわぶとかはんぺんとかをいただきつつ、この店についての話と、俺自身の話を突き合わせる。

 此処はどうやら並行世界の俺が作り出した内側の仮想空間であるらしく、俺自身が死んだことによって変なリンクが繋がったらしい。次元の狭間で死んだことが関係してるんじゃね?というのがもう一人の“俺”の見解であった。

 そして自分の死因を語ったところ、盛大に馬鹿にされる。そんなん言うならお前も食らってみろよ!

 

「んー、まあこのまま死なせるのも寝覚めが悪い。手を貸してやるよ」

 

 心で繋がっていても俺自身死んでるんですけど。

 そう思いつつも、握手のように差し出された手を渋々握る。次の瞬間――、

 

 

     ☆   ★   ☆   ★   ☆

 

 

「ドライグ、泣いてる……?」

『相棒……、オーフィス、相棒を、なんとか復活させることは出来ないか? このまま死なせるには、あまりにも相棒が浮かばれない……!』

 

 そう、二人(?)が会話しているそのとき、イッセーの身体に魔法陣が出現した。

 

『――ん?』

 

 胸の部分にウヴォッと出現した小さな魔法陣、それは見たことも無い紋様の召喚陣で、とても小さかった。

 とても小さかった“それ”から、手が生えた。

 

『は?』

 

 手から腕が続き、肩まで出たところでもう一方の手が続く。

 テレビの画面から這い出る貞子のように、腕が陣のふちを掴んでよっこいしょういち、と掛け声と共に少年の身体が抜き出てきた。

 

「――な、」

 

 普段驚く、という感情表現すらしないオーフィスですら目を丸くした。

 抜き出てきた少年は、その陣の真下で死んでいる、兵藤一誠自身であったのだから。

 出現した“イッセー”は立ち上がって、こきこきと身体をほぐす仕草を見せた。

 

「――ふぅ、逆召喚成功っと。さぁて、俺の死体は何処にある……、あ、下か」

 

 踏んでいるそれに目を向けて、手をかざす。

 

「サマリカーム」

 

 ぱぁっ、と光が倒れている“イッセー”を包み、次の瞬間には彼の鼓動がドライグにも聞こえてきた。

 

『なっ!? 馬鹿な! こんな簡単に!? 相棒、いや、お前は一体……!?』

「そんなことより早くそいつ起こしてもらえないか? ちょっと話しておきたいことがあって」

 

 さすがに自分の相棒ではないと理解できたドライグであったが、急かされて何も言えなくなる。

 何より実力差をすぐに理解できたからだ。目の前の“兵藤一誠”は全盛期の頃の自分と同等、いやそれ以上かもしれない、と。

 そしてそんな相手に下手な質問をぶつけても無意味であるとも理解できた。

 だから、彼にできることは自分の相棒を起こす努力をすることしかない。

 

『――おい、相棒。生きてるだろ、生きてるならとっとと起きろ』

「う、ぐ……、ど、ドライグ……? あれ? 俺、生きてる……?」

 

 意外にも早くに目を覚ましたイッセーに内心胸を撫で下ろすドライグ。

 そしてそんな二人に、“兵藤一誠”は言葉を放った。

 

「生存したところでちょっと重大発表があるのだけど」

「え……は? あ、あれ!? お前ひょっとして並行世界の俺!? なんで此処にいるの!?」

「いや、そっちの世界のアーシアをこっちで預かってるんだけどね」

「――はぁっ!?」

「あの子ウチの世界で超癒しだから返したくない。もらってもいい?」

「▲☆◆○■△●▽っ!?!?!?!?」

 

 なんかもう衝撃発表過ぎて、イッセーには言葉にすることも出来なかった。




・シリアスとかいらないって言っただろうがダラズ
・此処に来てタイトルロールを回収
・原作アーシアは天使、はっきりわかんだね

つうわけで最終回でした
フリじゃないからな。此処のスレッドは完結したんだからな。期待されても続きは書かないんだからねっ!
というか当初は隙間なく埋めてゆく書き方を貫き通すつもりだったのだけど、それだけだとさすがにきつくなったのは俺の力不足。イッセー視点だけじゃ書ききれないことってたくさんあるよね。原作でも木場サイドとか普通にやってたし
ぶっちゃけ、ラノベだとしてもあーいう書き方ってどうなのよ?って思う。二次創作じゃねえんだからさぁ

あと今回アーシアを入れ替えるネタを考えていたのだけど、そうなると赤竜亭のログ回収が出来ないから仕方無しにこうなった。入れ替わるとDIOなんとかさんを聖母とペルソナで全力で弄るアーシアさんが見れたりしたのだろうけど、誰かやってくれてもいいのよ?
つうかうちの子を誰か使ってあげてください。無敵進化しすぎたイッセーとか、イッセーとか、森沢さんとか
魔法少女りりかるアーシアを誰か始めてくれると期待しつつ、またどこかでお会いしましょう
さよならさよならさよなら





・・・たまにはギャグの無い話を書いてみたいとも思ってるんです。本当ですよ?

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