凍てつく華は可憐に消える   作:乃依

13 / 35
連日投稿です。


第12話

「『山茶花 山茶花 咲いた道 焚き火だ 焚き火だ 落ち葉焚き』」

「『当ぁたろうか 当たろうや 霜焼けお手手が もう寒い』」

1人の青年が歌を歌いながら森の中を歩いていく。

その周りを火花に包まれた枯葉が舞っていた。

 

 

 

「…何したのあんたら。」

「何したもこうしたも無いわよ!」

「ちょっとしくじっちゃってね。治してくれない?」

練融はため息を吐きながら腰のポーチから1つの瓶を取り出した。

「最近材料も少なくて、補充出来ないのよね。これが最後だわ。」

中に入っていた薬品を、天癒の肘に振りかけるとたちまち元通りの腕に再生した。

「これは核炎にやられたの?」

「えぇそうよ!調子に乗ってるわ!あの小娘。」

実年齢はあんた達よりよっぽど年上だろうけどね、という突っ込みは心の中に留めておく。

「血すら出なくって、痛みも無くて…神経や血管ごと焼かれたみたい。」

「焼かれた腕は?その場に落ちてたりしなかった?」

「そんなの確認する暇無かったわ。」

「そう…」

「なーんか嫌な予感がするのよね。逃げられただけで上場と思うべきかしら。」

あの化け物から逃げられたのは賞賛されるべきであろう。

「顔を覚えられてはあんた達も監視しにくいだろうし…どうしたものかしら。」

少し頭痛のする頭に手を当てながら、練融は唸った。

 

「やけにご機嫌だな?核炎」

「えっ!?そ、そうかな…」

何かおかしい事でも聞いただろうか。

先程までの彼女は鼻歌を歌いながらスキップに近い足取りでずんずんと前を歩いていたから言っただけなのだが。

「?」

「な、何も無いよ?」

「ふーん…」

何か隠している、と確信した。

それは滅創も同じのようで

「核炎。ちょっとこっちに来い。」

2人でどこかに行ってしまった。

………俺は?

 

 

「何か隠しておろう?何を隠している。」

近くの岩に腰掛けながら、滅創は核炎に問いかける。

「別に何も無いけど?」

そう言いながらも視線が泳ぎまくっている。

「あ、新しい技が成功して浮かれてただけよ。何か悪い!?」

逆切れされた。それだけでは無さそうだが。

「ほほう。ちなみにあの技はどういう技なんじゃ?裏なんだからただの爆炎でも無いんじゃろ?」

「ただの爆発よ?ただ…あの、誰だっけ?敵の子がやってきたみたいに火の攻撃を受けたらちょっとばかし強くなる感じの。」

それはしょぼくないか、と思ったが、まぁ使うところはありそうだ。

「そうか。まぁ奥の手として取っておくのがいいじゃろうな。」

「だね!」

 

別にもう1つ効果があるんだけどね、という核炎の小さな呟きは滅創に届かなかった。

 

 

 

「『春が来た 春が来た どこに来た』」

「『山に来た 郷に来た 野にも来た』」

三味線の様なものを手で掻き鳴らしながら、青年は森の中を歩く。

先程とは打って違って、周囲には桜の花びらが散っていた。

 

 

 

山河からの告白を受けた後、自室に戻った海堂は自責の念に囚われていた。

申し訳ない、と。

何も出来ない我が身が忌々しく、死んでいった隊員達には何と謝罪をすればいいのか。

彼らが死んだ理由は、元を辿れば我が先祖の失態にあったのだ。

妻子を持ち、よく家族の話をしていた部下や、妻が欲しいと常に愚痴っていた同僚。思い出せば思い出すほど辛くなる。

数百人の命が散った理由は自分の先祖のせいなのだと。

今頃は東西が同じことを聞いているだろう。

軍人と一般企業の社長。

職業は違えど人の上に立つものとしての責任の重さは同じだろう。

彼はどのように思うのだろうか。何も無くして居ない彼なら冷静な判断を下し、新たな作戦を考えることが出来るのだろうか。

前にも進めず、ただ後悔するだけの自分とは違うのだろうか。

目元を抑え、ただただ思考の渦に捕らわれていった。

 

 

「なるほど…」

山河からの唐突な招集を受け、そして衝撃の事実を受けた東西は、海堂と同じく思考の渦に囚われていた。

だが考えることは真逆。

「今まで得た情報を一旦整理し、新たに作戦を立案しましょう。私共も全力で協力致します。」

山河は鷹揚に頷くと、辞することを許可した。

 

 

「…よし、決めた。私も付いてくわ。」

「は?」

「え?」

練融の突然の申し出に、驚きを隠せない天癒と風弓。

「何も不思議じゃないでしょう?サポートぐらいはできるし。あと薬の材料も調達したいし。」

「い、いや良いんだけどさ。」

「守り切れるとも限らないですよ?」

はぁ、とため息を吐いてから一言。

「そんな簡単に死にゃしないわよ。いざとなれば転移出来るんだし、正直あんた達の方が心配だわ。」

「うっ」

「ゆ、油断しただけよっ!!?」

「じゃあこれからは油断なんてしない事ね。さて、行動は早い方がいいわ。行くわよ。」

練融は一瞬でどこかへ行ってしまった。

「…やっぱ苦手、あの人。」

「は、早く行かないと追いつけなくなるよ!!」

2人はあたふたと飛び立ち、彼女を追った。

 

 

「ただいまー」

「おう。おかえり。」

「…殲撃。お前の番だ。」

「え?俺も!?」

何かしたのか、とニヤつきながら聞いてくる核炎を肘で小突きながら、滅創について行く。

 

「俺はなんも隠してないぞ?」

「それは分かっておるわ。儂はあいつの話をするためにお前を呼んだんだ。」

「と言うと。」

「恐らくあいつ、また『喰った』ぞ。」

「…何故?確証が何処にある。」

「まずは傷の治りの速さじゃな。早すぎる。それにあいつのコアの色。微かだが青が混じっておった。何か変かがあったのは確実じゃろう。」

「…それまたなんで喰ったんだ?俺にはさっぱり分からんのだが。」

「儂にも分からん。だからお前に聞こうと思ったんじゃが…心当たり無しか。」

少し考え込む様子を見せてから、滅創は再び口を開いた。

「儂らの集落の者を喰った訳でもあるまいし、処分するつもりは無いが、少しの間観察が必要だ。肉を食ったわけでも無さそうだ。乱用されては困る。」

「…これで何人目だ?」

「16…いや17か。最早儂とて勝てるかは分からんな…」

「ジジイが弱気になってんじゃねーよ。俺だって居るだろうが。」

「お前如きでは瞬殺じゃわい。」

軽口を叩きながら腰を上げ、2人は核炎の元に戻って行った。

 

 

 

「『兎追いし 彼の山 小鮒釣りし 彼の川』」

「『夢は今も 巡りて 忘れ難き 故郷』…」

周りに動物達が集まり、青年の歌を聞いていた。

切り株に座っていた青年が立ち上がると同時に、動物達も巣に戻り始めた。

ただ1匹の異質な兎を除いて。

 

「次は何を歌おうか。」




名前は出てませんが新キャラ登場させました。
彼のことはまた後々。
では。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。