『━━━感動のお別れした直後でちょっと気まずいけど』
頭の中から声が聞こえる。
『私はあんたの傍に居るし、助けてあげるから』
上から目線の言葉が投げかけられる
『好きにやっちゃいなさい。』
『意外と躊躇無かったね。もしかしてそんなに思い入れ無いヒトだった?』
影から再び人影が現れる。
ニヤニヤと、意地の悪い笑顔で。
「そうじゃない事ぐらい分かるだろ。糞餓鬼。」
狂歌が苛立ちと苦悩の混じった声で怒鳴る。
『糞餓鬼…?僕が?はははっ。笑わせないでよ。』
『君たちよりは年上だよ。僕は。』
「…何者だ。貴様。」
『遂にボケだしたのかな?滅創。』
「………何?」
滅創の名を知っている。そして親しげに話すこの様子。
『君たちの上に居た奴の事を忘れるなんて、そうとしか考えられないね。』
嘲るようにまた笑った。
『黒華、だよ。忘れたとは言わせないよ?』
「…信じられるか、そんなもの。」
そうだ。彼は我々を逃がすために最期を迎えた。
彼の華も最後まで見届けた。
容姿も生前のそれとは別物だ。
『それは君の自由にしたらいい。だけど僕は黒華だし、
影はため息を吐きながら淡々と話す。
「…なのに2度も殺したのか。お前の孫娘と言うのなら蘇らせるなどという痛ましいことを何故」
『殺した?君が言うのかい?』
遮るように声が発される。
『僕は『殺すしかない』なんて言ってないだろう。殺したのは君たちじゃないか。』
『…お頭。』
『奴の気配が消えました。完全に消滅したかと。』
黒い人影が黒華に向かって語りかける。
それに顔色一つ変えずに
『あぁ、そうかい。少し残念だね。』
ため息すらつかない様子で
『もう少し使えるかと思ったのに。』
「残念だったな。」
男の細い体が人影の合間を塗って吹っ飛ぶ。
「アイツは簡単に消えねぇし、死なねぇよ。『俺の中に居るんだからな』」
そう宣言する殲撃の手には黒い炎が燻っていた。
『…まだ続けるのか』
『貴様は……いや、貴様らは何も学ばない。学ぼうとしない。』
『争いは終わらない。我々の血筋が続く限り。』
『同族喰らいが存在し続ける限り。』
『…稀に居るのだよ。』
『お前のような奴が。』
『自らの犯した罪を自覚すること無くただただ強大な力を振るうものが。』
『そのような者を同族と我々は思いたくない。』
『お前は気づいているか?』
『自らの犯した罪と、今行っている行動の矛盾に。』
『
『可笑しいではないか。』
『結局、死ぬ人間が変わっただけだ。』
『お前が護れたとしても、お前によって誰かの命が散り、またお前が護れなかったとしても、誰かによってお前の命が散る。』
『プラスもマイナスも、全て0に戻るというのに』
『なぜ無意味なことをする?』
『なぜ安らかに眠らせてはやれんのだ?』
『生者が死者に頼ることによって、安眠を食い潰し、ようやく得た平穏すらも戦闘の最中に放り込むのか?』
4人の人影はただただ語った。
『俺たち』の異端さと、罪を。
ただ目の前の親類しか見ることの出来ない自分たちと
同族すべてを見ている彼ら。
果たしてどちらが正しいのか。
━━彼女なら、どんな答えを出したのだろうか。
『…だから、我らは、お前達に語り続ける。』
『自らの意思でその忌まわしき行動を辞めるまでな。』
『そして』
4人が片腕を同時に掲げる。
『今がその時だ。『
『古き友の言葉を借りるとしよう。』
1人の男がその掲げた右腕を
振った。
「あっぶねぇな……」
男が手を下ろすと同時に衝撃波が木々を襲った。
そしてその木っ端が殲撃のみを狙い、襲い掛かる。
「…何か、変だ。行動が突拍子も無さすぎる。」
「黒華とか言う奴は。」
「伸びておるようじゃが……」
「…ならトドメは俺が刺す。お前らはその4人を片付けろ。」
狂歌は低い声でそう伝えると、姿を消した。
「…落ち着きがない奴らばかりじゃの…仕方あるまいか……」
ため息を吐く滅創に歩み寄り、
「殲撃。頼みたい事がある。」
『貴様の命1つで今までの同族喰らいの命が償われるのだ。』
『悪い話ではあるまい?』
『貴様が想う女も。』
『過去の同族喰らいも。』
『さぁ、お前で終わりにしようじゃないか。』
狩るべき標的を見つけた猟銃は、獲物に向かって語り掛ける。
「残念だけどな、まだあいつに会いに行くのは早いんだよ。」
しかしその獲物も、黙って命を奪われるだけでは無い。
「『爆炎刃』」
「『刃器創造』」
殲撃の声と、滅創の声が交差する。
そしてその声の余韻が消え去ると、
哀れな獣には炎の牙が与えられていた。
「さて、改めて自己紹介としようか。」
誇らしげに、高らかに宣言する。
「『殲撃』改め━━━『核炎』の焔だ。ま、借り物だがな。」
「余りカッコつけると叱られるぞ。」
「うっせ。いいとこなんだから邪魔すんなよ。」
焔の長身をゆうに超える大剣を軽く振り回し、その切っ先を人影達に向ける。
「焼かれたいのはどいつだ?」
男の子下へ向かいながら、狂歌は考え続けた。
なぜ彼女は自分ではなくあいつを選んだのか。
伴侶である自分を差し置く程、あいつに特別な感情を抱いていたのか。
「…俺にしか見せたことない顔だってあるくせに。」
ある年の冬の夜のことは忘れていない。
木々を避けつつ、昔の記憶を呼び覚ます。
だが、今は必要ない思考だ、と。
「まずはジジイをぶち殺さねぇとな。」
残虐的な思考に支配された脳内を押さえつけることもせず、ただただ、どうこの苛立ちを晴らすかを考えていた。
『…忌まわしい術を、再び継いだというのか。』
『許さぬ。我々は』
『貴様を許さぬ。』
『最早小手調べも、手加減も全て』
『終わりだ。『七二柱ノ魔神』』
今度は女の形をした人影が手を振り下ろす。
『それ程炎を愛するというなら、炎で最後を迎えれば良い。』
『『
光と熱の爆発。
が、もう「彼」には効かない。
「しょぼい炎だな。神サマも型落ちか。」
両手で大剣の柄を握り締め、振り抜く。
剣先の速度は音速に匹敵するレベルまで加速した剣戟だったが、彼らは回避した。
「やるじゃねぇか。」
『貴様らと違って我々に身体的疲労はない。』
『お前が負けるのも時間の問題だ。』
「なら、俺が疲れる前に終わらせてやんよ。」
大剣に炎を纏わり付かせ、核炎は吠えた。
限られた炎を有効に使え、という声を心に留めたまま。
ただの子供のごっこ遊びのような斬り方を、鍛えられた筋肉で無理やり加速させ、相手を捉え、斬る。
シンプルだが、彼にとって最も効率の良いスタイル。
「さて、先に燃料切れになんのはどっちかな!!」