凍てつく華は可憐に消える   作:乃依

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核炎と狂歌が同棲していた頃の話を少しだけ。


「寝る!」「寝ろ。」

 

 

 

 

「っぁ…ねむ…」

「もう春だもんな。」

桜のつぼみが色付き始め、小鳥が冬の終わりを告げる頃。

狂歌と核炎は2人で釣りをしていた。

木の枝の先端にタコ糸を括り付け、小さな針を引っ掛けただけの簡単な釣竿を手に。

「眠いなら戻るか?」

昼下がりの睡魔に勝てる者など居るのだろうか。

そう思い彼女に声をかけると、

「1匹…釣る。」

首をかくかくと振らせながらそう呟いた。

「半分寝てるのによく言うな。」

「…だいじょぶ…」

明らかに眠そうな状態だが、まぁ寝落ちしてしまっても特に問題は無い。

このまま釣りを続けて、寝るならそれでもよし、と狂歌は結論づけた。

 

30分ほど経った頃、腕に少し重いものが持たれかかった。

…口にすると間違いなく次の朝日は見られないのであくまでも心の中に止めておく。

顔を左に傾けると、案の定眠っている彼女が居た。

「言わんこっちゃないな。」

彼女の釣竿を手繰り寄せ、自分の傍に刺す。

そして彼女を抱き抱え、自分の膝の上に移動させる。

心地よい温かみと、適度な重さがとても気持ちよかった。

小さな寝息を立てながら眠る彼女と釣竿を交互に見ながら、昼下がりは過ぎていく。

 

 

 

「狂歌!!」

「…んぉ!?」

大きな声で目が覚めた。

目の前には眉を尖らせた核炎。辺りはもう既に暗くなり始めていた。

「もう帰るよ!暗くなってくるし!」

「…はいはい。」

まさか自分も寝落ちてしまうとは夢にも思わなかった。

馬乗りになっている彼女を横に退け、ゆっくりと立ち上がると、軽い立ちくらみと関節がポキポキと鳴る音が聞こえた。

「春だなぁ。気持ちよかった。」

「もうちょっと釣りしてたかったかな。私は。」

「すぐ寝たやつが何を言う。」

腕に絡みついてくる彼女を小突きながらそう呟く。

「今度は朝から行こうね!」

「はいはい。帰って飯にするか。」

一層寄りかかってくる彼女を押し戻しながら、家に向かって歩き出した。

 

 

 

「…眠くないです。」

「ダメだ寝ろ。」

布団を敷き、さぁ寝るぞと言うタイミングで無駄な抵抗をする彼女。

「嫌です。」

「…ほほう。」

口を真一文字に結び、頑なに寝ようとしない彼女。

「おいで。」

なのでいつも通り腕を広げてやると

「わ〜〜」

いつも通り腕の中に入ってきた。

「捕まえた。」

そしてそのまま抱きしめ、布団の中に引きずり込む。

「…あ」

「寝ろ。」

逃がさないように足も拘束し、瞼を閉じた。

数分ほど抵抗してきたが、少し経つと静かな寝息が聞こえてきた。

何に関してもちょろすぎる。

 

 

 

「起きろー!朝だぞー!!」

「うるせぇ」

朝日が窓から差し込む心地よい春の朝…とは行かず。

無理やり布団を剥がされたので枕を投げる。

「へぶっ」

見事に彼女の顔にクリーンヒットし、変な声を上げて倒れた。

「ふふふふふふ…貴方には舐められたものね、狂歌。」

そして変な声を上げて立ち上がる。

「あん?」

「すみませんでした。」

もう一度枕を投げる動作をすると大人しくなった。

素直でよろしい。

 

 

「今日は何する!?」

「…寝たい。」

「やだ!!」

即答か。

彼女の底抜けの元気さには時たま疲れることがある。

━━それでも彼女の笑顔を見れるだけで幸せなのだ。

「行っくぞー!」

「はいはい…」

…が。ため息をつくことぐらいは許してもらいたい。

 

騒がしい━━がそれ以上に楽しい1日が「また」始まる。






本編が殺伐としすぎてるのでたまにこういうの挟んでいきたいです。
一応Rの方では多いのですがこちらでは少ないので…

次の更新は31話になります。
ではまた。
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