凍てつく華は可憐に消える   作:乃依

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グロあります。苦手な方はご注意ください。


第8話

「……」

重い沈黙。

問う者、問われる者。

その真意は分からないが、今は口を挟むべきではないと感じた。

 

 

「…『裏』は、お前達『戦闘型』の使用出来る能力の最たる物。」

答えが返される前に滅創が説明を始める。

「自らの能力を高め、極め、そして撃ち出す。この3つのみ。シンプルかつ合理的。一切無駄のない攻撃だ。」

 

「だからこそ、我々最期の対抗策として秘めておくべきだと言われたのを忘れたか。」

冷たく固い声だった。

好々爺としての滅創では無い。

自分すらも硬直してしまいそうになる。

だが核炎は顔を背け続けたまま戻そうとはしない。

 

「お前にとってあの少女が如何に大切かどうかは理解しているつもりだ。長い付き合いだからな。だが許される事と許されざる事がある。」

今まで気が付かなかった事。なぜ疑問にすら思わなかったのか。

 

「得てして聞こう。」

このジジイ、何者だ。

 

 

「貴様が『裏』を使った理由を。」

お主、お前、貴様。

徐々に変化していく滅創の口調。

それが何よりも恐ろしい。

顔を上げられない程の威圧。

自分を見下す目は鋭く、萎縮してしまいそうになる。

だが彼の求めているものは萎縮ではない。

理由だ。

 

「…『あの子』は私の弟子なのよ。」

ぽつりと核炎が呟いた。

「500年前、急に私達の集落に落ちてきて、私が引き取った。」

今までの辛そうな顔は何処に行ったのかと思うほどの穏やかな表情。

「その子と…また会えて、浮かれていたの。」

500年間の記憶。

 

 

「氷華、って言うの?」

布団を被って横になる少女に疑問を投げかける。

「はい…」

「ふーん…私とは正反対ね。集落の大人からは『お前は華というよりは熊じゃろう。』って馬鹿にされたものよ。」

炎と氷。

本来相入れぬ者が出会った時、生じる現象。

 

「…やっぱりあなたにも能力があるみたいね。私達と同じだわ。」

「そ、そうなんですか?」

「えぇ。これならここに居ても良いって言われるかもねっ」

嬉嬉として伝えると、彼女も笑顔を返してくれた。

本当に、花のように儚い笑顔だった。

 

花はいつかは枯れ果てる。

変わらぬ事実であり、変えられぬ自然現象。

そうやって引き継がれていくのが、花。

 

「襲撃!?」

「あぁ。人間が軍隊引き連れて奇襲しかけてきやがった!今戦闘型の爺様達が戦ってるが、なんせ年だ。何分持つか分からねぇ!」

爆発音。響く悲鳴。

「若いモンから逃げろ!我々の血筋を絶やすな!」

「早く!核炎!!」

煙の匂い。崩れていく山。

「待って!私も戦う!」

隣に居た大人に担ぎ上げられる。

「子供が粋がるな!爺様達でも太刀打ち出来ねぇかもしんねぇんだぞ!」

「じゃあせめて氷華も…!」

「っ…!よ、他所者に関わってる時間なんてねぇ!早く逃げるぞ!!」

今思い返せば不自然だった。

なぜあの男が氷華を置いて行ったのか。

 

『逃げろ!!!』

 

自分が最後に見たのは、山の麓から頂きに掛けて咲き広がる巨大な炎の華だった。

 

 

それからは各地を転々とするしかなかった。

安定した食事も、暖かい寝床も、全て失った。

そして倒れていく大人達。

 

「…お前も、俺を『喰う』んだぞ。」

残った1人の大人がそう言い残し、息を引き取った。

「……ひとりぼっち…かな…」

そして、手を掛けた。

 

あの夜の事は今でも思い出せる。

散乱する臓器。鼻につく鉄の匂い。生暖かい肉の味。

そして、変色する自分の髪。

 

昔は憧れていた。

だが大人達が『引き継ぎ』を行っていたのは知らなかった。

知らずに尊敬の念を抱いていた。

そんな自分が馬鹿らしかった。

 

それからは1人だ。

幼馴染も生き延びているか分からない。

師匠も、きっと立派に散ったのだろう。

あの故郷の山で。

 

 

「それから450年、ずっと1人だったわ。」

最初の100年はまだ良かった。

髪の色もまだ白に近い茶色で、街中にも茶髪の人々が多かったため、目立つことはなかった。

 

次の100年は息苦しかった。

だんだんと茶色が濃くなり、周りの目を気にしなければいけなくなった。

 

次の100年は辛かった。氷華の事を思い出してしまった。

彼女を探す旅が始まった。

 

そして400年が経った頃。髪は完全に茶に染まり、人々の思想からも『茶髪は居ない』という認識が固まり出した頃。

 

「見つけたのよ。氷華を。」

見かけたのは一瞬だったが、一目で分かった。

大人達に拘束される姿。

だが自分には助ける力も能力も育ってはいなかった。

 

そこから50年。

毎日毎日、制御と暴走を繰り返した。

闇に飲まれる意識と、凄惨な怪我。

腕が焼け落ちた事も1度や2度ではない。

だがそれも喰って直した。

同族を見つければ迷わず殺した。

 

その頃だ。

この2人と出会ったのは。

『…こいつなのか?滅創』

『そのようじゃな。まぁこのまま放置して良いと聞いておるし、身の程を弁えさせるぐらいで丁度いいじゃろう。』

組み伏せられた自分の体の上に、重い物が乗っている。

疲れ果てた肉体にはそれしか分からなかった。

『こんな奴が『同族嫌悪』…ねぇ。』

『ただの戦闘狂じゃろうよ。見た目に反して恐ろしい事ばかりしよる…』

 

知り合い、とまで友好関係は深まらなかったが、稀に連絡を取り合うほどまでは仲良くなった。

そしてそろそろ連絡の回数が3桁に差し掛かろうとした時、

 

氷華が何処にいるか分かったのだ。

 

それを聞きつけた核炎は天にも飛び上がりそうな気持ちになった。

やっと、やっと彼女にまた会える。

償いが出来る、と。

自らの下に積み上げられた死体など気にも留めなかった。

 

「なのに!!」

地面を叩きながら叫ぶ。

 

「まだ邪魔する奴が居る。そんな奴は消すしかない。150年間、探し続けて、やっと見つけたのに…!!」

 

「馬鹿者が。」

顎に衝撃が走る。

滅創に蹴られたと認識するまで、数呼吸分の時間が必要だった。

 

 

「『その程度』の私情で同族を根絶やす気か。」

正に『その程度』

我々の一族は既に滅亡の1歩手前まで数が減少している。

元々絶対数が少ないせいで、繁殖することも少ない。

髪を掴み、顔を持ち上げる。

「また『同族嫌悪』に成り下がる気か?」

 

ごく稀に居るのだ。

力を求めるあまりに同族を殺し続ける奴が。

その者を軽蔑を込めて『同族嫌悪』と呼称している。

「…丁度いいわ。」

蔑称を呼ばれても、彼女は笑った。

 

「あなた達も私の一部にしてあげる。」

 

 

滅創の齢は2000を超える。

高々500を超えたところの若造が叶う相手ではないのだ。

「…相変わらずじゃなぁ…お主。」

「…相変わらずデタラメだなぁ、ほんと。」

乾いた笑いしか出てこない。

もうこれで3度目。

こちらの攻撃は1度も当たらない。

コアを取り上げられ、渋々降参するしかない自分と、息すら切らさない滅創。

やはり経験なのか。

「…で、落ち着いたか?」

「んー?あぁ。大丈夫大丈夫。」

筋肉痛だけど、と付け足しておく。

もう烏が無く時間帯になっていた。

 

「で、結局理由は?」

米を掻き込みながら尋ねる。

「……その、勝てなくて、殺されるかと思って…」

「…人間にか?お主が?」

「いや、あいつは人間じゃない。同族だ。」

殲撃が口を挟んできた。

 

殲撃によると、あの毒(滅創には効かないようで気づかなかったらしいが)は普通のものではなかったらしい。

そもそもトリカブトやテトロドトキシンなどの自然にある毒は基本我々には効かない。

となると何か能力で作り出したとしか思えないそうだ。

というか、

「…お主ら戦闘型じゃろ。なんで毒殺されかけとるんじゃ。」

「耐久力はあるけど毒耐性は低いのよ。私達。」

得手不得手は誰にでもある、と自分にも言い聞かせるように言った。

「…意外じゃ。相手に知られんようにな。」

呆れたような声を出されても困る。事実だし、どうしようもないのだから。

 

「…ふーん…『同族嫌悪』ね。」

「どうする?報告する?」

「そうね。その方がいいわ。」

音もなく飛び立って行く2つの人影が夜の闇に消えた。

 

 




遂に3000超えましたね。語彙力とボキャ貧が欠如しまくってる私にはシリアスはキツいです。
グロとかを普通に入れてしまいましたが大丈夫でしたでしょうか。
こういう表現を頻繁に見てるので感覚が麻痺してるんですよね…

ではではまた次回。
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