凍てつく華は可憐に消える   作:乃依

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第9話

「ではまず報告から聞かせてもらおう。」

 

『対超越者抵抗会議』

急遽開始することになった緊急会議である。

 

「はい。御報告させて頂く事は大きく分けて3つです。」

そう切り出しながら、サティラは前に出た。

「まず1つ。核炎の能力で熱を出すことが可能、だと判明致しました。」

部屋中がどよめきに包まれる。

何故だ、熱は出さないのでは無かったのか、などの意見も時たま聞こえるが、上座に座る上層部の連中は默したままだった。

既に東西が伝えていたからであろう。

 

「そして2つ。彼女が所持しているこの球体。この球体にダメージを与えると瀕死まで弱体化させることが可能です。」

こちらは感嘆の声が多かった。

弱点が判明した事は、これからの戦闘で重要だろう。

 

「しかし、この球体は核炎が能力を行使する際に使うモノでもあります。ですので攻撃する際は最大限の注意が必要かと。」

納得してもらえたようだ。

 

「…そして3つ。核炎、氷華以外の超越者を『2人』確認致しました。」

最初とは比べ物にならない驚愕の表情が全員に浮かぶ。

上層部すらも目を見開いている様子だ。

 

「1人はスーツ姿の男。髪の色は黒に近い茶色で、筋肉質な体を持っていました。」

しかしこいつには毒が聞くことが判明している。

まだ対処の仕様があるだろう。

問題は2人目だ。

「そして、2人目。和服姿の老人で、髪は青が混じった茶色。老人、から分かるように戦闘出来るような体ではありませんでした。が…」

1度言葉を切る。

「戦闘した感想として、ですが。1人目のスーツ姿の男より手強いという印象を持ちました。十分な警戒が必要かと。」

元より超越者には最大限の警戒が必要ではあるが。

報告を終えた後はこれからの方針が語られた。

 

『超越者の情報を集め、可能であるならば撃破する』

というのが上層部の意思だった。

 

が、正直今の軍事力では無理だろう。

最早実験などさせてくれる空気でも無さそうだし、そろそろ手を引くことを考えた方がいいかもしれない。

 

 

 

「で」

いきなり核炎が

「氷華を取り返しに行きたいんだけど!!」

とか言い出した。

 

「お前馬鹿なの?やられたばっかじゃん。」

「今なら勝てる!!」

「その謎の自信はどこから溢れてくるのやら…」

呆れたような2人と負けじと抵抗する核炎。

「てかお前そもそも氷華がどこに居るか知ってんの?」

「知らない。」

「どうすんの?」

「探す。」

なるほど。こいつはバカのようだ。

 

「あのなぁ。探すって言ってもお前」

「やる前にぐだぐだ文句言う人よりはマシだと思うんですけど?」

「ぐっ…」

嫌味な言い方をしやがる。

 

「それに…早くしないとまた苦しい思いをさせちゃうかもしれないじゃない…」

…確かに正論だ。

というか露骨にしょぼくれるな。

 

「だーかーらー!!取り返しに行こ!!」

「…はぁ。仕方ないのぉ…」

「げっ。滅創意外と乗り気?」

「こいつの言うことは間違っておらんしな。」

まぁ確かにそうなんだが。

「また探すのか?」

「そうするしかあるまい。」

「ほーらー!!行くよ!!」

元気なこった。

 

 

 

視界は、黒と闇。

冷たい鉄の感触と、耳を塞ぎたくなる機械音。

口は塞がれていて動かすことが出来ず、体も拘束されているのだろう。

…もう慣れた。

この状況を恐慌するのでもなく、ただただ諦観していた。

 

自分は冷たい。

人としての温もりはとうの昔に忘れてしまった。

憎悪も好意も、何も。

全てがどうでもいい。

むしろ早く終わってくれないかとばかり思っている。

 

だが『彼女』は暖かった。

懐かしいような、不思議な感覚に襲われた。

少し苦しかったが、彼女の胸で眠る夜は悪くは無かったし、むしろ心地よかった。

あれが安心感というものだろうか。

 

もう得ることは無い暖かさ。

そう考えると無性に虚しい。

鉄の温度しか知らず、ただ朽ちていく日々を待つだけの毎日に虚しさを覚える。

 

……………

 

 

「で、『これ』の処分はどうなさるのですか?」

氷華の事だ。

ここに留置していればいつかは核炎がまた取り返しにやって来るだろう。

今度こそ殺されかねない。

一刻も早く処分しておく方がいいと思うのだが。

 

「…放置?」

意外な返答だった。

殺すのでもなく解放するのでもなく、放置。

「餌として…ですか。」

勝ち誇ったような顔をしてその事を伝えてくる上官を横目で見つめる。

 

勝てると思っているのか。それとも何か策があるのか。

もし作戦が決定したからその為に、というのであれば辞めるよう進言した方がいい気もする。

「…了解致しました。」

やむを得ず、そう返事する。

彼女の対策を考えねば。

 

 

「で、どこか心当たりはあるのか?」

「いや、無いね。」

「断言しおったな。少しは考えたらどうじゃ…」

うーんと悩む核炎を数秒見つめた後、自分も思考の海に浸る。

 

恐らく氷華を取り返しに来たのはフロスト社の手の者。

だが超越者が一般企業に協力するとは思えない。

すると

「…政府が絡んでる?」

我々の一族は政府の黙認により、日本国の法律からは逸脱した地位を保っていた。

彼らも、何を仕出かすか分からない連中と対立したくは無いのだろう。

だから確率は低いとは思うのだが…

「でもそれぐらいしかなくない?てか手掛かりがないんだから全部訪ねていくしか無いでしょ。」

「馬鹿者。訪ねて行ってもし敵対されたらどうする?」

「燃やす?」

「阿呆。」

拳骨を落とす。

「痛っ…」

「反省しとらんな?お主。」

「し、してますごめんなさい」

本当か?こいつ。

「じゃ、じゃあとりあえず目指すは都内か?」

「そうじゃな。」

 

 

「サティラ」

名を呼ばれて振り返る。

呼ぶ奴に目星は付いているが、警戒を怠る気は無かった。

「…なんだ、『風弓』か。」

「何だって何よ。せっかく報告しにきて上げたのにー。」

「はいはい、ごめんなさいね。で、何を報告しに来たの?」

人使い荒いんだからー、と愚痴りながら「風弓」━━『風弓の琴音』はこう報告してくれた。

 

「横浜の人口森林にて、超越者3人を発見。内1人は核炎確定。」

「…ふむ。」

「何笑ってるの?怖いんだけど。」

…笑っていたのだろうか。表情筋など滅多に動かないから自分でも分からない。

「あんた、ポーカーフェイスって思ってるんでしょうけど割とバレバレだから気をつけなさい。じゃあ戻るわ。」

「了解。『天癒』にもよろしく言っといて。」

「分かったわ。」

彼女はひっそりと飛び立って行った。

 

 

「今度は逃がさないわ。」

またもや不自覚の上で、サティラは不敵に笑った。

 

 

 




新キャラですわよ
風弓(ふうきゅう)の琴音(ことね)さんと
天癒(てんゆ)の智美(ともみ)さん(まだ作中では名前は出してませんが)
ですです。
2つ名は能力に関係してます。
のちのち語られるでしょう。

そして1つ御報告が。
これから新生活が始まるので、少々投稿ペースを落とさせて頂きます。
4月中に…というより月一で投稿できたらいいな、というぐらいのペースになるかもしれません。
7月ぐらいになると多分大丈夫なんですけどね。

ではでは、ここまでお読み頂きありがとうございました。
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