ユーノ・スクライア外伝 PARALLEL STORY   作:重要大事

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魔導虚篇
第11.5話「黒衣の白騎士」


新歴079年 4月22日

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

「ありがとうございます♪ またのお越しをお待ちしてマース」

 

 スクライア商店店主ユーノは、朗らかに笑みを浮かべ客人へ商品を手渡す。

 松前町の一角に店を構えるスクライア商店。駄菓子屋兼雑貨屋という表向きの顔とは裏に、死神絡みの商品も多数取り扱う店舗。その裏の顔としての機能を果たすこの店に足繁く通い詰める常連死神がいた。

 その死神の名は、白鳥礼二。

 護廷十三隊一番隊第三席の地位は尸魂界(ソウル・ソサエティ)の記録に名を残すに足りるものであり、一般隊士達とは明確に一線を画している強者だ。

 本来ならば現世に留まるのではなく、死神の中枢である瀞霊廷の守護に当たるのが真っ当だ。しかしながら、とある諸事情によって白鳥は無期限で現世に駐留する任を仰せ遣っていた。

 白鳥はいつものように店で買い物を済ませ、早々に帰路に就く・・・筈だった。

 だが、今日は事情が異なった様子で一旦立ち止まると、ユーノの方へ振り返り、意外な事を口走った。

「・・・ユーノ店長。貴殿にはいつも世話になっている。礼を言うぞ」

「あらら~、どうしちゃったんですか急に改まって? いつもの白鳥さんだったら・・・『庶民が貴人に良質な品々を献上するのは世の摂理である』とか何とか、ものすごく上から目線でカチンとくるひと言があってもいいのに」

 (ぬし)は日頃からそんな風に私を見ていたのか・・・。心中ショックを受ける白鳥だが、ここは一先ず呑み込む事にした。

 咳払いをしてから、改めてユーノに対して次のように語りかける。

「私の為に日頃より尽くしてくれる事には深く感謝するとともに、この機会にユーノ店長を我が家へと招待しようと思う」

「え? 白鳥さんの自宅・・・ですか?」

「現世で活動するための仮住まいではあるがな。だが居心地は非常に良いところだ。是非ともお土産を持ってくるがいい。良いお土産を持ってくるがいい」

 最後の最後でいつもの白鳥らしい癇に障るひと言を残し、スクライア商店から踵を返し歩き始める。

 ユーノはどこか唖然としながら傍に控えた熊谷金太郎と顔を見合わせる。

「いかがなさいますか店長? 白鳥殿があのような事を言うとは・・・・・・今日か明日は嵐の予感が致します」

 金太郎もユーノ同様に白鳥への心象は案外酷かった。

 それはともかくとして、ユーノは常連ながらこれまで一度たりともプライベートを公開しようとしなかった(ユーノ自身も詮索をしようとしなかった)白鳥が、直々に自宅へ招待すると言われた事に強い興味と関心を抱いた。

「白鳥さんの住まいか・・・・・・まぁ、正直気になってはいたところだよ。ここは日頃ウチの店を利用してもらってるリピーターさんの厚意には答えなきゃね♪」

 

           ◇

 

4月23日―――

東京都 海鳴市

 

 白鳥の伝令神機より転送されてきた住所を確認しながら、ユーノは道なりに沿って住宅街を歩いていた。

「えーっと・・・・・・地図だとこの辺りの筈なんだけど・・・妙だな。この景色何処かで見覚えある光景なんだよなー」

 このときユーノは気付いていなかった。今いる場所が幼少期に僅かだが時を過ごした思い出深い町であり、魔法について理解をする者が住む場所である事を。

「あ、いけない! お土産を忘れてた。あの人お土産ないと機嫌損ねそうだしなー」

 今になってユーノは手土産の持ち合わせが無い事に気付いた。

 正直持っていくか否か迷っていた所だが、少々スケジュールが立て込んでいた為、結局土産を持参する(いとま)を作る事が出来なかった。

 土産が無い事をあとで白鳥がねちねちと言われるのも正直嫌だった。

 悩んだ挙句、ユーノはふと道端に自生していた雑草―――山菜や天ぷら、ハーブティーの材料としても使えるドクダミに目をつけた。

「まぁこの辺の草でいいか。あと小石も少々・・・」

 言わずもがな、小石はユーノから白鳥へのちょっとした嫌がらせだった。

 

 暫くして、ようやく住所と一致するそれらしい一軒家―――もとい、屋敷を発見した。

「えっと・・・これじゃないよなまさか」

 ユーノは自分の瞳で見る物が信じられずにいた。

 目測ではあるが約1100坪という大豪邸が目の前に佇んでいる。白鳥から送られてきた住所を幾度となく確かめるが、間違いなくこの豪邸の場所を指していた。

「なんか見覚えある表札が掲げてあるけど、違うよな」

 英語で『Bannings』と表記された豪奢な表札が既視感を抱かせる。

 既視感の正体を探るべく、ユーノは意を決して恐る恐る玄関のインターフォンを鳴らす。

 

『・・・はい、どちら様でしょうか?』

 ユーノにとって聞き覚えのある声だった。

 声の主は自分と同じ年頃の女性のものであり、恐らくこの屋敷の家主と言っても差し支えないと確信を抱いた。

 ユーノは今のこの複雑な心境をそのまま声に現した声色で家主へと声をかける。

「アリサ、僕だけど・・・」

『え″~~~ユーノぉ!? どうしたの!? ちょっと待って、今開けるから!!』

 予想外の来客に驚いた女性―――アリサ・バニングスは電子ロックされていた格式高い門を開放し、ユーノを招き入れる。

 門を潜ったユーノが久方ぶりに訪れる友人の家に寸分違わず間違いではないと確かめる中、家の扉が勢いよく開かれる。

 出てきたのは9歳の頃からの友人で、今は快活な美女となったアリサが喜々とした表情でユーノを出迎えた。

「何よ―――!! 来るなら電話してよぉ、いつも突然なんだから!!」

「やぁアリサ。その件については謝るよ。えっと・・・一応聞くけど、ここはアリサの家で間違いないんだよね?」

「何言ってんのアンタ? どこからどう見てもそうじゃないの」

「そうだよね・・・イヌもたくさんいるし・・・アリサも目の前にいるし・・・」

 疑い深く念入りに屋敷内を隈なく観察するが、やはり何度見てもここはアリサ・バニングスの家に違いなかった。

(これが白鳥さんの仮住まいだなんて僕は信じないぞ。万が一ここに白鳥さんがいたら信じるしかないけど・・・)

 そう思っていた矢先、奇妙な歌声が聞こえてきた。

 声は庭先にある噴水からだった。まさかと思い振り返ると、アコースティックギターの位置が膝の高さと異様に低い事に微塵も違和感すら抱かず、歌の体を成したものを諳んじる白鳥の姿を発見した。

(いた―――!! なんか歌ってるー! ていうかギターの位置低っ!!)

 白鳥は決してユーノに嘘などついていなかった。だが当初の情報だけでは信用に足りる情報とは判断し難かった。

 ユーノは、改めてこの場に白鳥が居るという事実に驚愕しながら、何事も無く普通に過ごしているアリサに問う。

「あ、アリサ・・・・・・あの人は?」

「あぁアレね。一緒に住んでる白鳥礼二よ」

「な・・・・・・! 一緒に住んでるですと!?」

 聞き捨てならない言葉に動揺を隠し切れなかった。

 そんな折、白鳥がユーノの存在に気づき、膝の高さまで垂れ下がったギターの位置を直す事無く爪弾く仕草だけを強調しながら声をかけてきた。

「おぉユーノ店長、遠路遥々よく来たであるな。弾き語りしながら」

「弾いて無かったですよね!?」

「実は弾けないのだ。今日始めたばかりであってな」

「それなのにそんな誇らしげにぶら下げるんですか!?」

「まったく小さな事に拘泥しおって。不愉快だ」

 言うと、ぶら下げていたギターを持ち上げ、何を血迷ったのか噴水の角に思い切り叩きつけると言う奇行に走った。

「ええい!! ギターなど止めてやる!!」

「もうやめたッー!!」

 どっかのギャグ漫画で見たことある応酬のようなそうで無いような・・・・・・。そんな気持ちを抱くアリサは露骨に苦笑しながらもユーノを来客としてもてなす事にした。

「と、とりあえず入りなさいよ。ていうか白鳥、壊したギターじゃあとでちゃんと片付けなさいよね」

「心配は要らぬぞアリサ嬢。私も責任ある男だ。自分のしたことに対してはしっかりと責任を果たす」

「とか何とか言いながら・・・アンタはいっつも口先ばっかりなんだから」

「それは心外であるな」

 とても自然な会話の流れだった。まるで最初から家族の一員であったかのように、他人行事な感じがしなかった。

(いったい何がどうなっているんだ!? 何ゆえこの二人が接触し、何ゆえ一つ屋根の下で暮らしてるんだ!?)

 ユーノはますますこの二人の関係が気になった。事情を詳しく聞こうと、屋敷内の廊下を歩きながらアリサに問い質す事に。

「アリサ、何がどうあって白鳥さんと一緒に住む事になったわけ?」

「あら? もしかしてユーノの知り合いとか?」

「まぁそんなところ・・・。」

「それについてはあとで話すわ。今お茶を用意するから。鮫島(さめじま)、白鳥にはコーヒーを。あたしとユーノとそれからもう一つ・・・全部で三つの紅茶を部屋まで運んでおいてちょうだい」

「かしこまりました」

(三つ? 僕とアリサで二人しかいないのにどうして三つも紅茶が必要なんだろう・・・?)

 ふとした疑問を抱くユーノだったが、この謎は直ぐに解決する事になる。

 アリサに案内され、屋敷の奥へ向かおうとする中、ユーノは唐突に羽織の裾を引っ張られた。

 足を止めると、白鳥が「待つのだ」と言ってユーノを制止させた。

「ユーノ店長、忘れたとは言わせぬぞ。お土産は持ってきたであろうな」

「あ。やっぱいります?」

「要るに決まっているだろう! タダで我が家に入ろうなんて図々しいにも程があるぞ! 片腹痛いわ」

「我が家じゃないですよね。まぁ、そんなに欲しいならどうぞ」

 言いながら、懐から土産品を入れた巾着袋を取出した。

「ふふふ。こちとらこれだけが楽しみであっ・・・・・・なん・・・だと・・・?!」

 嘗てこれほど想像の斜め上(悪い意味で)を行く土産の品があっただろうか。

 我が目を疑いながら、白鳥は巾着袋から顔を覗かせた雑草と小石の山を見るなり魂が抜けそうになった。

 

「ちょっといくらなんでもアレは無いんじゃないのユーノ?」

「まさかこんな展開になるとは予測して無かったんだよ。白鳥さん、謝りますからそんなへこまないでくださいよ」

「草ってお主・・・・・・石ってお主・・・・・・」

 部屋に通されたユーノはアリサと紅茶を飲むかたわら、コーヒーに口を付けず机に伏して項垂れる白鳥を気の毒に思った。

 貴族出身の白鳥はユーノが持ってきた土産の価値が分からなかった。確かに素人目にもとても土産とは言い難いものであったので、ある程度の同情は買う。

 いよいよ罰が悪くなってきた。ユーノは流石に非があったと自省し、落ち込む白鳥を元気づける為に最大限の譲歩を示す。

「―――わかりましたよ。今回は僕の側に非がありますからね。ではこうしましょう。先月のお品物の購入代金を半額分カードにキャッシュバックと言う事で手打ちにしませんか?」

「素晴らしい提案である! やはり一流の商い師とはそうでなくては困る」

 聞いた瞬間、白鳥の耳がピクッと反応。顔を上げるや嘘のように生気が漲った表情を浮かべ上ずった声を発した。

「ウソみたいに機嫌よくなったわね」

「これだからこの人はめんどくさいんだ」

 二人だけでなく、誰の目から見ても白鳥礼二という男は面倒な性格をしていた。

 ユーノ達の気苦労を知ってた知らずか、白鳥は上品そうにコーヒーを飲みながら、「していかがかな? 我が家の感想は?」と言って来た。

「って! アンタの家じゃないでしょう! 居候の分際で!」

 アリサが白鳥の言い分に猛反発。一方のユーノは「やっぱそうなんだね・・・・・・。」と、何となく読めた展開となった事に安堵感を抱く。

「でも、どうして白鳥さんがアリサの家に居候なんか・・・」

 核心を突くユーノからの質問。アリサは「これには色々と事情があるのよ」と言い、今に至るまでの経緯を詳細に語り始めた。

 

 

 話は数週間前に遡る―――。

 父親が経営する会社の跡取りとして多忙を極める日々を送っていたアリサは、いつものように執事の鮫島が運転する車で帰路へ着こうとしていた。

 しかし、道中にて彼女は謎の(ホロウ)の一団に襲われた。

 いつの頃だったか明確な時期までは不明だが、アリサ・バニングスは最近になって霊魂の存在を認知出来るようになっていた。

 霊魂が視える―――すなわち霊力が多少なりとも備わった事が災いとなり、彼女は(ホロウ)の格好の標的とされた。

 群れを成して一斉に襲い掛かって来た全く同一の姿をした(ホロウ)は、彼女が乗っていた車を襲撃。執事の鮫島に深手を負わせると無抵抗なアリサを喰らわんと迫りかかった。

「く、来るな・・・!! あっち行きなさいよ!!」

 震える声で呼びかけるアリサの言葉などまるで無意味。(ホロウ)は本能のままに標的を狙い、見据えた獲物目掛けて牙を剥く。

(もうダメっ!!)

 死を覚悟しアリサが目を瞑ったその時、月光に映える影が中空より舞い降りるとともに、華麗に(ホロウ)を斬り倒した。

 いつまで経っても痛みが襲ってこない事に不審がったアリサが恐る恐る目を開けた時、眼前には自分を護るように立ち尽くす黒衣の着物―――死覇装に身を包んだ死神・白鳥礼二の姿を捕えた。

「汚れた魂の者達よ。自らの所業によってその身を更なる不浄へと陥れるか。哀れな―――」

 (ホロウ)という境遇そのものを悲嘆するかの如く言動で、白鳥は群れを成す(ホロウ)に向かって突進。手持ちの斬魄刀で次々と敵を斬り伏せ、一匹残らずその命を刈り取った。

 アリサは自分を護ってくれた白鳥を輝かしい眼差しで見つめた。当時の彼女にとって、白鳥は御伽噺(おとぎばなし)に登場する王子様とよく似ていた。

 

 物の数分で状況は終了した。

 全ての(ホロウ)を片付けた白鳥は負傷した鮫島に鬼道による治癒術を施したのち、何事も無く立ち去ろうとした。

「ま、待ってください!!」

「うげっ!!」

 直後、アリサは背中の首根っこ部分を強い力で引っ張り強引に白鳥を差し止めた。

「あ、あの・・・助けてくれてありがとうございます! せめてあなたの名前を・・・聞かせてくれると嬉しいんですけど・・・」

 珍しく照れた様子で語りかけるアリサの仕草が非常に女性らしかった。

 これに対して、白鳥は全く別の意味で驚愕。目の前で紅潮しているアリサの事を凝視した。

「な・・・・・・なんなのだ・・・・・・なにゆえ死神の姿が視える市井(しせい)の者が私の周りにはこうも一度に集まって来るのだぁぁ!!? 霊王様ァ―――!!! 私はなぜこんな目に遭わねばならぬのだぁぁ―――!!!」

 

 

「―――と言う訳で、助けてもらったお礼に家に置いてるってわけ」

「なにその今どきコミケにも無さそうなガール・ミーツ・ボーイ的な展開!? というかアリサ、(ホロウ)に襲われたって本当なの!? どうして黙ってたりしたのさ!?」

「ごめんなさい。本当なら真っ先にユーノやアンタの師匠達に言うべきだったんだけど、いろいろ立て込んでたものだから言う機会がなかったのよ。それにしても驚いたわ。まさか白鳥がユーノの店の常連さんだったとはわね」

「常連などではない。私とユーノ店長は最早主従の関係に等しい」

「その場合誰が主人で従者なんですかね・・・」

 二人のやり取りが妙におかしくアリサは見ていて決して飽きる気がしなかった。

 紅茶をひと口啜り、気分転換にアリサはユーノの仕事について尋ねる。

「ところで、あんた仕事はどうなのよ?」

「僕? 僕は知っての通り気楽にやってるよ。ま、確かな収入源があるお陰で食べる分には困らない程度のお金は入るし、何かとやることも多いから充実した生活を送ってると自負してるよ」

「そう・・・なら良かったじゃない」

「僕の事よりアリサはどうなのさ? やり手女社長だって専らの噂だけど」

「大袈裟よ。私なんかパパの会社を引き継いだばかりの若輩者だし・・・。あぁそうだ。実は今日このあと取引先の人とお茶する事になってて、それで家にたまたまいたんだけど。そしたら予想外な事にアンタが来たのよ」

「そうだったんだ。道理でお茶が三つ必要だったわけか」

 紅茶の数の謎が解けたユーノは、話の流れからこの後もうじきアリサの取引相手が来ることを察し、自分がこの場に長居するべきではないと判断する。

「じゃあ・・・僕はこの辺でお暇した方がいいよね」

「あぁ別にいいわよ。取引先って言っても実際今日は女同士のお茶会と大差ないから同席してても問題ないと思う」

「女同士? という事はこれから来る人も女性って事?」

「えぇ。大道寺トイズコーポレーションの社長令嬢さんよ」

「へぇー、あの一部上場の大企業か。確か最近じゃ玩具だけじゃなくて電子機器やファッションコーディネートも手掛けてるんでしょ?」

「ぜんぶそこの社長令嬢さんの趣味が高じたものなんだって」

「すごいねー。アリサの人脈は」

「あんたほどじゃないわよ」

 等と話をしていた砌、部屋をノックする音とともに鮫島が部屋を訪れ、アリサに来賓の到着を報せた。

「アリサお嬢様、御来賓の方がお見えです」

「ありがとう。通してちょうだい」

 恭しく頭を垂れると、鮫島は本日の正式な来賓である若い女性をアリサの部屋へと通した。

「お待たせていたしました。本日はお招きいただき誠にありがとうございます」

 部屋へ通された直後、アリサ達にぺこりと頭を下げるのは気品あふれる黒髪の美女だった。肩まで伸ばした長く艶のある髪。全体的に気品に満ち溢れたそれは典型的なお嬢様と言って差し支えないものだった。

 その女性のあまりの麗しさと輝かしさに白鳥は忽ち心を奪われ、飲んでいたコーヒーの味さえ忘れてしまった。

(な・・・なんという・・・麗しきことよ・・・・・・)

 一方、白鳥ほどではないがユーノもまた、間近で相対するその女性の容姿や立ち振る舞いを見た瞬間、素直に美しいと感じていた。

(この人が大道寺トイズの社長令嬢さんか・・・・・・噂に違わぬ美人だな。それにしても同じ社長令嬢でもアリサとはえらい違いだな)

 内心割と酷い事を思っていた折、アリサが目の前の取引先相手―――大道寺知世(だいどうじともよ)にユーノ達の事を紹介する。

「大道寺さん、こちらは私の古い友人でユーノ・スクライア。こっちは居候の白鳥礼二です」

「どうも初めまして皆さん。大道寺知世と申します」

 粗相という言葉すら感じさせない完璧なまでの挨拶。

 ユーノは今の格好があまりにTPOに反していると心中猛烈に自省しながら、帽子を脱ぎ、咄嗟に手汗をズボンで拭ってから、大道寺知世に挨拶をする。

「いいえいいえ! こちらこそこのような粗末な格好で大変恐縮です。ユーノ・スクライアです。しがない駄菓子屋の店主をやってます」

「よろしくお願いしますね、ユーノさん。とてもお綺麗な方なんですね」

 屈託ない笑みを浮かべながら知世が何の気なく言い放った一言。ユーノは悪気は無いと知りながらも、どこか納得のいかない様子で微妙そうな顔を浮かべる。

 これを横目で見ながらアリサは一人笑いを堪えるのに必死な様子だった。

 するとそのとき、満を持したとばかりに白鳥が知世の前に出て来ると、紳士然とした態度で知世の手を優しく握りしめ、甘い声で囁いた。

「初めまして美しき姫君。どうかこの私をあなたの眷属(けんぞく)、いや側近に加えて頂きたい所存――――――よしなに」

 チュっと、どこで覚えたとも知れない仕草で知世の手の甲に接吻を落とす。

 刹那、ユーノとアリサはともに脳裏に稲妻の直撃を受けたかの如くショックを受けて絶句。直後にアリサは白鳥の首根っこを掴み、容赦ない鉄拳制裁を喰らわる。

「このバカチンがっ!!」

「ぐっは・・・! な、なにをするのだいきなり!?」

「それはこっちのセリフよ!! 白鳥あんたねぇ! 自分が何してるかわかってんの!? ジョーダンじゃすまされないわよ!! 大道寺さんに・・・ききき・・・キスするなんて・・・・・・莫迦じゃないの!!」

 異様なまでに羞恥心を抱くアリサとは裏腹に、知世は思いのほか動揺しておらず、やや照れた様子で若干頬を赤らめる程度だった。このリアクションの差に傍で窺っていたユーノは疑問符を浮かべる。

 すると、不意に白鳥はアリサの顔を凝視しながら予想外の事を口にした。

「・・・もしかしてアリサ嬢もしてほしいのか?」

「・・・・・・え?」

 意味が解らないという顔を浮かべるアリサ。

 次の瞬間、白鳥は意表を突かれた様子でいる彼女の額に知世にしたのと同じ事をした。

「な・・・・・・!」

「まぁ」

 思わず赤面するユーノと、お嬢様らしいリアクションで驚く知世。

 そして、キスをされたアリサ本人は沸騰した薬缶の如く顔中を真っ赤に染め上げたのち―――発狂した事は言うまでもない。

 

「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

           *

 

午後8時24分―――

東京都 松前町 スクライア商店

 

「そ、それで・・・・・・結局アリサの怒りを買って屋敷を追い出されてしまったと?」

「まったく理不尽なものだ・・・・・・私が一体何をしたと言うのだ・・・・・・!?」

 涙ながらに事の事情を語る白鳥の格好は酷くみすぼらしかった。

 いつも皺ひとつないクリーングの行き届いた白いワイシャツは獣の爪で引っ掻かれた様にあちこち破り去られ、靴すら履いていない。おまけに手には何故か薬缶と何処で拾ったともしれぬイヌを引き連れていた。

 ユーノは深く溜息を吐くと、「セクハラですよね・・・」と、白鳥の自業自得が招いた結果を嗜める。

「妙齢の女性にわいせつ行為を働いたんですから仕方ない事です」

「接吻ぐらいでなぜあそこまで一方的に暴力を振るわれなければならないのだ!? ユーノ店長の友人はどうかしておるぞ!!」

「どうかしてるって・・・そう言う白鳥さんも気違いというか、正気の沙汰の行動ではなかったと思いますけどね」

 淡々と白鳥を諌めるユーノだったが、やがてこの現状に堪え切れなくなったのか、白鳥はみすぼらしい格好で座り込むとユーノに嘆願する。

「頼む! どうか今晩の所はこのみすぼらしいあばら屋に一晩だけでいいから置いてはもらえぬか!? どうかこの私の顔に免じて!」

「それが人にものを頼む態度ですか? どうしましょうかね・・・・・・白鳥さんの場合はタダでとは言えないんですよね~」

「そこをなんとか!! いつも贔屓(ひいき)にしているではないか!!?」

「私からもお願いできないでしょうか店長」

 すると、見かねた金太郎が店の奥より現れ白鳥に救いの手を差し伸べるようユーノへと願い出た。

「確かに白鳥殿は愚かで、世間知らず、おまけに有頂天になりがちではありますが・・・」

「ゴールデンベアーよ・・・私の居る前で堂々と貶めるとはいい度胸であるな」

「ここは何卒寛大な対応を求めます。白鳥殿は鬼太郎のようなどうしようもない男とは違いますゆえ」

「本人が聞いたらなんて言うかな・・・・・・わかったよ。じゃあ、今回は金太郎に免じて特別ですからね」

「す、すまぬ!! この恩は忘れるまで決して忘れぬぞ!!」

「イチイチ癇に障る発言は控えてもらえますか。あと、そのイヌはうちには置けませんからさっさと逃がしてくださいね」

 

           *

 

午前0時過ぎ―――

海鳴市 バニングス家

 

 その日の晩の事だった。

 アリサは就寝中、ある夢に(うな)されていた。

「うぅ・・・・・・。」

 レム睡眠中の彼女が見ている夢はいつも見ている平凡なものとは異なり、明確に悪夢と呼ぶに相応しいものだった。

 どことも知れぬ場所で一人佇んでいたと思えば、周りから悲鳴のようなものが聞こえる。怪訝そうに辺りを見渡すと、そこには何故か白鳥の姿があった。

『白鳥!!』

 どうしてここに? と声を掛けようとした矢先―――白鳥は何者かの手によって傷つけられ、全身から血吹雪を上げ、アリサの目の前で斃された。

 アリサは目の前の光景がただただ信じられなかった。白鳥から流れ出る大量の血液はやがて血溜まりとなり、彼女の足下へと集まった。

『い・・・・・・いやあああああああああああああああああああ!!!!!!』

 

 

「はっ!!」

 バッと飛び起きたとき、アリサはそれが夢であると理解した。

 酷い寝汗をかいたばかりか、体中が強張った様子で小刻みにに震えている。

 先ほど見た悪夢がまるで現実のものになってしまうのではないかと言う強い恐怖感情が如実に体に現れた何よりの証拠であった。

「白鳥・・・・・・・・・まさかね」

 

 あいつに限ってそんな事ないわよね――――――そう願わずにはいられず、アリアはこの後気になって殆ど眠る事が出来なかった。

 

           ◇

 

4月24日―――

東京都 松前町

 

 一晩経ち頭が冷えたアリサは、白鳥に謝る為にスクライア商店へ出向く事にした。

「さすがに昨日はどうかしてたわ。あいつだって悪気があってやった訳じゃないって事はわかってる筈なのに・・・・・・」

 白鳥への罪悪感を募らせつつ、アリサはどうにも昨日見た夢の事が気がかりだった。

「何もないと思うけど・・・・・・べ、別にアイツの事が心配とかそんなんじゃなくて! あたしはただアイツが不憫だなぁーと思ってるだけであって!」

「さっきから人の家の前で何をぶつくさ言ってるの?」

 そのとき、横から声を掛けられたと思えば、ユーノが訝しげにひとり言を呟くアリサの方を凝視していた。

「うぇええええええ!!! ユーノッ!!! いつからそこに!!?」

 いつの間にかユーノの店の前にいた事、彼に唐突に話しかけられた事に驚愕。

 更にアリサは自分の恥ずかしい胸の内を聞かれたのではないかと焦燥―――ユーノの胸ぐらを掴み掛かって尋問する。

「あ、アンタ!! さっきの話聞いてじゃないんでしょうね!! だとしたら今すぐ忘れなさい!! じゃないとどうなるか分かってるんでしょうね!!」

「ど、どうなるんでしょうか・・・・・・」

「知・り・た・い?」

「いえ・・・・・・結構です///」

 魔導死神も真っ青なほどの危機迫る気迫にユーノは勝てる気がしないと、素直に身を引く事にした。

 知り合った時から全く変わる事の無いツンデレ姿勢を貫くアリサだが、それこそが彼女らしいと思いつつ、ユーノは表情を柔らかくすると彼女の考えを見透かした様子で問いかける。

「―――白鳥さんを迎えに来たのかな?」

「は、はぁ!? な、なんでこあたしがアイツなんか・・・!? あたしは大企業の社長よ! こう見えても暇じゃないの!」

「じゃあその忙しい人がこんな真っ昼間に仕事もしないで何してるの?」

「あ、あたしは重役出勤だからいいの!! で、白鳥はどこなの!?」

(結局白鳥さんが目当てなんじゃん・・・ほんとかわいい顔して素直じゃないなー)

 そう思いながら、ユーノはありのままに事実を語る。

「白鳥さんならもう出て行ったよ。昨日の事はさすがに軽率だったと反省した様子だったから、何か手土産でも持って謝りに行くって言ってったよ」

「そ、そう・・・・・・」

 安堵させるつもりがどこか憂いを帯びた表情を浮かべるアリサ。これを見たユーノは不思議に思わざるを得なかった。

「どうしたの? 浮かない顔して。何か心配事でもあるの?」

 すると、少し悩んだ末にユーノにならと話して見るか・・・という気持ちになったアリサは、おもむろに昨夜見た夢の事を話し始めた。

「実はその・・・・・・昨日のさ、あの後嫌な夢を見たのよ。白鳥が私の眼の前で死んじゃう夢・・・・・・」

「そうなんだ・・・」

「ねぇユーノ。白鳥・・・・・・死なないわよね?」

 真剣に白鳥の身を案じるアリサ。彼女の顔から滲み出る不安や恐怖といった感情を読み取ったユーノは、難しい顔を浮かべ率直な事を述べる。

「・・・僕にも何とも言えないよ。確かに、護廷十三隊の第三席ともなればちょっとやそっとの事じゃ倒されないとは思う。でもそれは結局のところ白鳥さん次第だ。彼がこの先任務の過程でいつ命を落とすも限らない。死神っていうのはそう言う仕事なんだ」

「なのは達がそうであるように」

「あぁ・・・・・・」

 いつも大切なものを見守る事しか出来ない事の歯がゆさ。力が無い事の悔しさ。アリサは湧き上がる感情をぎゅっと拳に込めて強く握りしめる。

 プルル・・・。プルル・・・。

「あぁ、ちょっとごめん」

 そのとき、ユーノの携帯電話が鳴った。着信相手は「非通知」となっていた。

「もしもし?」

『こちらはユーノ・スクライアさんの携帯電話で宜しいでしょうか?』

「そうですけど・・・・・・もしかしてその声、大道寺さんですか? どうして僕の携帯電話の番号を?」

 電話の発信者は昨日知り合ったばかりの大道寺知世からだった。

『説明は後ほど致します。とにかく、今直ぐに海鳴総合病院に来てもらえますか? 白鳥さんが・・・白鳥さんが!』

「白鳥さんが!?」

「え!」

 

 このとき、アリサは強い悪寒を抱かずにはいられなかった。

 

           *

 

海鳴市 海鳴総合病院

 

「軽い脳震盪(のうしんとう)で良かったじゃないですか」

「ったく。人騒がせなヤツだ」

「不覚を取ったに過ぎぬ」

 知世からの一報を聞いたユーノは、一護や織姫らを伴い白鳥が搬送された海鳴総合病院へと直ちに向かった。

 血相を変えたアリサが白鳥の容体を確かめると、彼は意外にもケロッとしており、軽い軽症と脳震盪という診断結果に終わった。

 安堵したユーノ達は事の経緯についてを知る知世に話を伺うことにした。

「えっと・・・大道寺さん、でしたよね。どうして白鳥さんがこんな事になったんでしょうか?」

 織姫がおもむろに尋ねると、知世はばつの悪い顔を浮かべる。

「その件についてはこちらに非があります。ここ数日の日差しの強さに当てられてしまい、わたくしの体がフラッとなって横断歩道に倒れた際、車が飛び出してきて・・・そのときたまたま通りかかった白鳥さんが間一髪のところで助けて下さったんです」

「マジでか!? おめぇやるな!」

「見直しましたぞ白鳥殿」

「これくらい当然のことである」

「何が当然のことよ!!」

 そのとき、今まで口を閉ざしてだんまりを決め込んでいたアリサが怪我をした白鳥の胸ぐらを掴みかかって鬼か修羅を宿した顔つきで恫喝する。

「アンタ人にどれだけ心配かければ気が済むのよ!! あたしがどんな思いでアンタの帰りを待っていたのかわかってるの!?」

「ままままま!!! 待ってくれアリサ嬢!! どうかこの通り!!」

 予想だにしなかった展開に白鳥は周章狼狽し、怒り狂った彼女を宥めるのに必死だった。

「おい止せって!」

「アリサ、ここは病院なんだ!」

 見かねた一護とユーノが興奮するアリサを押さえつけ、冷静になるように諌める。

「ご、ごめんなさい! あたしったらつい・・・」

 冷静さを取り戻したアリサは自分のした事を深く反省。

 やがて、彼女が落ち着きを取り戻したのを見計らって、知世が白鳥を弁明する言葉を紡ぎ出した。

「アリサさん。どうか白鳥さんをあまりお叱りにならないでくれませんか? すべてはこの私が招いた事ですので」

「そ、そんな! 大道寺さんは何も悪くなんか・・・・・・!」

「その()()()という呼び方も他人行儀すぎますわ。もっと砕けた口調で、()()と素で呼んでくれませんか? 宜しければ皆さんも」

 笑顔でそう語りかける彼女に、一瞬戸惑っていたアリサやユーノ達だったが、やがて踏ん切りが付いた。

「そ、そうね・・・・・・じゃあ知世。アンタにはいろいろと迷惑かけたわ。本当にごめんなさい!」

「僕からも白鳥さんに成り代わって重ね重ねお詫び致します」

「待ってくれ。何ゆえ主らは謝る必要があるのだ? 私はただ姫君を災いから守ってやったにすぎぬ。つまりこれは私の意志に基づくものであり強制されたものではない」

「この期に及んでおめぇは少しは場の空気を読むとかそれくらい察しろよな・・・・・・」

 と、横で一護がいくら言ったところで白鳥は決してブレない。彼のズレた感性は今に始まった事ではないのだから。

 

 診察が終わった後、アリサは休憩所で一人コーヒーを飲みながら、自分の気持ちを整理していた。

「ふぅ~・・・。」

「おつかれですか?」

 横から知世が声をかけて来た。知世はアリサの横に座ると、彼女の心情を察した様子で自然と話し相手となる。

「なんかね・・・・・・ほっとした反面、ちょっとどうなのかなーって思うところがあって」

「白鳥さんの事ですね?」

「ま。あいつは性格に難はあるけど、根は良い奴なのよ。だけど時々怖くなるんだ・・・・・・あいつがいつの間にか私の知らない遠い場所へ行っちゃうじゃないかって。そう思うと、不安で夜も眠れない。昨日だって夢でアイツが死ぬところを見ちゃうし」

 出会った当初とは打って変わって影を落とすアリサ。

 そんな彼女の表情を窺いながら、知世は微笑しアリサの心を看破した様子で次のように呟いた。

「アリサさんは白鳥さんの事がお好きなんですね」

「え″!? なななななな・・・なに言ってるのよ知世!!? ジョーダンも休み休み言ってよね!! あ、あたしが白鳥を好き? ないないない! あいつはただの居候よ! 第一完全にあたしの好みじゃないし!!!」

「たとえ好みではない殿方でも、人は誰かを好きになるとその人の全てを好きになると言いますわ。アリサさんは今、白鳥さんと一緒にいられる時間をとても愛おしいと感じていらっしゃるのでしょ? ならそれはとても素晴らしい事だと思います。きっと白鳥さんもそんなアリサさんと過ごす時間を同じくらい尊いものと感じていらっしゃるかと思います」

「知世・・・・・・・・・アンタ凄いわね。ひょっとして、知世って魔法使い?」

「いいえ。ですが、魔法使いの大親友とその伴侶でもある殿方とは家族ぐるみのお付き合いをしておりますわ」

 言っている意味はよく分からなかったが、少なくとも知世の笑顔を見た途端、悩んでいた事がまるで嘘のように吹き飛んだ気がした。

 アリサは笑みを浮かべると、「あんたには敵わないわね」と、知世の心の内を見透かす鋭い洞察力に脱帽した。

 やがて、踏ん切りの付いた彼女は飲んでいたコーヒーカップを捨て、おもむろに立ち上がり宣言する。

「あたし、決めたわ。アイツが現世(こっち)にいられる間は付きっきりで面倒見てあげる事にするわ。ちょっと生意気で高飛車だけど、あたしは心が広いからそう言うダメなところも含めてアイツの帰る場所であろうと思う。少しでも白鳥があたしの傍にいて心地良いと感じていられるように―――」

「アリサさん。応援していますわ」

「よし! そうと決まったら即行で今日の仕事終わらせて準備しなきゃね!」

「あら? これからお仕事ですの?」

「大したことないわ。あたしはパーフェクトバイリンガル! 噂の敏腕社長は何もアンタだけじゃないんだからね!」

 意気揚々と口にしながら、アリサは病院を飛び出しそのまま職場へと直行した。

 一人残された知世は、アリサの前向きな姿勢がどことなく自分の親友に通じるものを感じ自分の事のように嬉しくなった。

「・・・・・・今ごろ、さくらちゃんは香港(ほんこん)で李くんと一緒にがんばっていらっしゃるのでしょうか。きっと、がんばっていらっしゃいますわ。だってわたしの大好きなさくらちゃんですから」

 

 願わくば彼女にも幸せが訪れるように――――――・・・・・・・・・。

 

           *

 

 同じ頃、ユーノ達は白鳥の無事を確認したのち帰路に着こうとしていた。

「じゃ白鳥、俺らは帰るわ」

「白鳥さん。いくら死神でも義骸に入ったままで自動車の直撃を受けたら、タダじゃすみませんからね」

「白鳥さんならやりかねないから怖いですねー」

「お主達揃いも揃って私を見下し過ぎだ。きっと今言った言葉をいつか後悔する日が来るであろう」

()えよ。んじゃなー、もう心配させんなよ!」

「一宿一飯の料金はサービスしておきますからねー♪」

 白鳥の大事を祈ってユーノ達は挙って病室を後にした。

「まったく・・・・・・おぉそうだ。これを渡しておかねばならんかったな」

 思い出した様子で、白鳥は足下に置かれた紙袋の中からアリサの為に用意したプレゼントが無事であることを確認する。

 梱包されたものを丁寧に剥がすと、手の平サイズに収まる小さな箱があった。中身を確認し、白鳥は口元を緩め笑みを浮かべた。

「よし・・・・・・。」

 やがて身支度を済ませて病室を発とうとした時だった。白鳥の伝令神機に尸魂界(ソウル・ソサエティ)からの指令が入った。

「指令か・・・。やれやれ私は病み上がりの身なのだがな。つくづく人遣いの荒い組織だ」

 と、組織への愚痴を零しながらベッドからおもむろに立ち上がった次の瞬間―――白鳥は全身に刺すような途轍もなく巨大で禍々しい霊圧と魔力波長を感じ取った。

「なっ・・・・・・。」

 

「「「「―――っ!」」」」

 この霊圧を感じ取ったのは白鳥だけではなかった。

 先に病院を出ていたユーノ達もまた同様に、霊圧と魔力の禍々しさを感じ取った様子で一様に表情を険しい物にさせていた。

「ユーノ」

「ええ。今の霊圧は・・・」

「まさかとは思うけど・・・・・・」

「あぁ。嫌な予感がしてきたぜ」

 手遅れになる前に手を打つ必要があった。

 踵を返して、ユーノ達は霊圧を感じ取った場所へ向かって急行する。

 

 ユーノ達より一足先に現場へと向かっていた白鳥もまた、言い知れぬ不安を抱いた様子で屋根や電柱を飛び越えながら、夕陽に映える海鳴の町を疾走していた。

(嫌な予感がしてならない。この霊圧の揺れ幅・・・・・・(ホロウ)なのか? それとも別の何かか?)

 ―――ドカン! 

 刹那、近くで轟音がしたと思えば、多量の粉塵を上げる何かが白鳥の目に飛び込んだ。

「あれは!」

 慌てて現場へと向かってみたところ、白鳥の目に飛び込んできたのは些か信じ難い光景だった。アリサが以前に倒した筈の(ホロウ)の大軍に追い回されていたのだ。

「アリサ嬢! それにあの(ホロウ)共は・・・・・・先日私が倒した筈の!? 何故再び復活しているのだ!?」

 湧き上がる疑問と警戒心。だがそれ以前に敵が前回と同様にアリサを執拗に付け狙っている理由が分からなかった。

 彼女の危機を救う為、白鳥は切羽詰った様子でアリサの元へと向かった。

 

「きゃああああああああ!!」

 インパラに酷似した大量の(ホロウ)の群れに追われるアリサ。

 何とか逃れようと努力したが、最後の最後で脚を負傷してしまい、完全に逃げ場を失ってしまった。

『はっはー! ようやく観念しやがったな。手間かけさせんじゃねーぜ。バニングス家の御令嬢様よ』

 絶体絶命のアリサへと不気味な声が呼びかける。

 血を流す脚の痛みに堪えながらアリサが前を見れば、(ホロウ)の軍勢を従えその手に錫杖の様な杖を手にした上半身が人間で、下半身はインパラという特徴を持つ魔導虚(ホロウロギア)―――インペラーZXが佇んでいた。

「は、は、は、は、は、あんた・・・あたしに何の用があるわけ!?」

『用だと? そりゃもちろんオメェさんの命を奪う事さ。オレは昔な、オメェのパパが経営する会社で働いてたが・・・社員の若返りとか下らねえ理由の為にリストラされたんだ!  それからオレの人生は転落の一途! 妻にも子供にも見捨てられて自殺した挙句、こんなバケモノの姿になっちまった。だがこれはまたとない好機だ。ある男がオレに力をくれたのさ。オレをこんな目に遭わせた連中や世の中に復讐してやる。その為の(にえ)として先ずはオメェさんの命をいただく! その綺麗な五体をズタズタに引き裂いて、粉々にして、パパのところまで送りつけてやるのさ!! フハハハハハハハハ!!!』

 空いた孔を埋める為に狂気に身を浸し、怒りと憎しみに心を支配されたインペラーZXの姿は見ていて嘆き悲しい物だった。

 アリサは復讐心に捕われた敵が手持ちの杖を用いて発動した召喚魔法によって呼び出される無数のインパラ(ホロウ)にただただ怯え震える。

「い・・・や・・・来ないで・・・・・・・・・///」

 数に物を言わせて圧を加えながら一歩、また一歩と迫りくる恐怖の根源。

 死の恐怖に震えながら、アリサは心の底で彼の名を叫んだ。

(―――白鳥、助けてぇぇぇぇぇぇ!!)

 

 涙越しに心で願いを唱えた直後、奇跡は起こった。

 動けないアリサの腕をインパラ(ホロウ)が掴み掛かった直後、もう一つの手が横から飛び出し、インパラ(ホロウ)の腕を強い力で掴み掛かった。

「その汚れた手を離せ―――」

 凄みのかかった声色で呟く男性。

 アリサが聞き覚えのある声に反応し目を開けると、死覇装姿の白鳥がインパラ(ホロウ)の手からアリサを放し、彼女を護る為に眼前に佇んでいた。

 見間違いなどではなかった。双眸に涙を溜めるアリサを一瞥し、白鳥は目の前のインパラ(ホロウ)の一体を斬魄刀で斬りつける。

「怪我は無いかアリサ嬢?」

「白鳥・・・・・・来てくれたんだ・・・」

 ほっとするアリサとは裏腹に、白鳥は至極穏やかではない様子だった。

 彼はアリサが脚に負った怪我を見るや目を見開き、静かにだが沸々と内側から湧き上がる怒りの炎を燃やし拳をぎゅっと握りしめる。

「主は私が護る。この身に賭けてでも護り抜いてみせる」

 力強い言葉で宣言した白鳥は、アリサを護る為に高位の結界鬼道『鏡門(きょうもん)』を発動させて安全を確保。

 そして、万全準備が調うと前方で控えるインパラ(ホロウ)、それを操る召喚主・インペラーZXを見据え霊圧と魔力を研ぎ澄ませる。

『ほう・・・これはおもしろい。あんたからはオレと同じ力を感じる』

「貴様、魔導虚(ホロウロギア)だな。如何なる理由でもってアリサ嬢に手を出したのか分からぬが、一つだけ重大なミスを犯した。この私の逆鱗に触れたという事だ」

 言うと、白鳥は瞬歩を駆使し夥しい数のインパラ軍団をところ構わずめった切りにし始めた。

 刃に込めた明確なる怒り。その力は普段冷静であるはずの白鳥に過剰とも言うべき力を与え、動きを俊敏にさせ、霊圧をより一層高める。

『やるな! だが―――』

 白鳥の攻撃力を評価しつつ、インペラーZXは手持ちの杖を突き、足元の召喚魔法陣からインパラ(ホロウ)を召喚し数の補充を図る。

 倒した傍から現れるインパラ(ホロウ)の群れ、群れ、群れ。

 圧倒的とも言うべき物量戦を展開する魔導虚(ホロウロギア)の狡猾さに白鳥は苦戦を強いられるが、彼は孤高に戦い続ける。

 アリサは鏡門の効果によって守られながら、結界の外で孤軍奮闘する白鳥をただただ見守る事しか出来なかった。

 倒せど倒せど敵は延々と数を増やし続ける。

 このままでは埒があかない。そう判断した白鳥は、発達した脚力によって高速移動しながら両腕の刃を持つ武器としヒットアンドアウェイな戦法を繰り出すインパラ(ホロウ)を一掃する為、間隙を突くなり斬魄刀を解放する。

 

「―――天地(てんち)にて音色(ねいろ)弾奏(だんそう)させよ、『琴線斬(きんせんざん)』―――」

 

 刹那、解号を唱えた事により白鳥の斬魄刀の形状が著しく変化。

 日本刀の体を成していた形状はエレキギターを彷彿とさせるものへと変わり、白鳥は襲い掛かる敵を殲滅する為、銀色に輝く弦に指先を触れ、霊圧を注ぎ込む。

「―――琴線斬奏楽(きんせんざんそうがく)鼓瓜田(つづみかでん)”―――」

 ギュロローン!! 霊圧を込めた大音量の音色を衝撃波として相手に放つ。

 霊子組成へと干渉して内部崩壊を起こさせる技の効力によって、インパラ(ホロウ)の軍勢は次々と消滅していった。

 しかし、それを嘲笑うかの如く召喚魔法陣より倒したものと全く同一の姿をしたインパラ(ホロウ)が新たに出現。

 白鳥は再び現れたそれを同じ要領で倒すが、そこから先はいたちごっこの応酬だった。

「まだだ!!」

 切羽詰った表情の白鳥は、ユーノから申し訳ない程度に見様見真似で盗み取ったチェーンバインドでインパラ(ホロウ)の動きを封じ込めた。

 逃げる間隙を与える事無く、弦そのものが刃となっている琴線斬で有象無象の敵を斬りつける。

『ハハッ! いつまでそうやって粘っていられるかな! オレの召喚スピード舐めてると痛い目に遭うぜ!』

 無尽蔵とも言うべき恐怖のインパラ(ホロウ)の軍勢。驚異的とも言える増殖スピードは白鳥の体力と霊力、魔力を急激に消耗させ次第に追い詰める。

「ぐああああ!!」

 疲労困憊とする白鳥の隙を突いたインパラ(ホロウ)の強烈な一撃がヒット。吐血した白鳥は地面に激しき叩きつけられる。

「白鳥っ!!」

「大丈夫だ! 私は倒れぬ・・・・・・絶対にな」

 傷だらけになりながらも、必死でアリサを護る為に剣を振り続ける。

 

 ―――面倒なことだ。

 戦いの最中、白鳥は心の中で独白する。

 ―――思慕の情も、親愛の情も、友情も。いずれ離れねばならぬ場所ならば、どれも枷にしかならぬ。死神にはどれも不必要な感情でしかない、そう思っていた。

 戦い続けながら男は思考に耽る。

 ―――私は―――・・・こちらの世界に長く関わりすぎたのかもしれん・・・。

 いつしか血溜まりが出来る程に負った無数の傷。だが、白鳥は決してその手から斬魄刀を手放そうとしなかった。

 ―――だが・・・・・・お陰で見つけられたのだ。命を賭してでも護るべき大切なものを。

 

『ちっ。ほんとしぶとい野郎だ。しょうがねぇ。最期くらい俺が引導を渡してやる』

 言うと、満身創痍の白鳥に見据えたインペラーZXが止めを刺す為、おもむろに杖を振り上げ霊力と魔力を混成させていく。

 強大な合成エネルギーを光線として放つつもりだった。白鳥はこれ以上の抵抗は出来ぬと判断。潔く死を迎えようと、抵抗するのを止めた。

『あばよ死神ッ!!』

「白鳥ィィィィィィィ!!」

(我が生涯に一片の悔いなし・・・・・・とまでは言えんな。せめて、死ぬ前にブルマンのブレンドコーヒーを飲みたかったな)

 

「月牙天衝!!!」

 刹那、インペラーZX目掛けて青白い斬撃が飛来した。

『ぐああああああああ』

 凄まじい威力を誇る高密度の斬撃。白鳥が驚いた様子で目の前を見つめると、身の丈ほどの斬魄刀『斬月』を携えた伝説の死神代行・黒崎一護が立っていた。

「よう! お前にしちゃそのガッツは大したもんだぜ」

「黒崎氏・・・・・・!」

「白鳥さ―――ん! 助けに来てあげましたよ―――ン♪」

 すると、少し遅れる形でユーノが金太郎と織姫らを引き連れ現場へとやってきた。

「ユーノ店長・・・! それにゴールデンベアに織姫殿まで!?」

『ぐうう・・・なんだ貴様らは!?』

「通りすがりの駄菓子屋さ。まったく、ここが死神代行組の島だって事を分かっていないようだね。覚悟はいいよね? 蛆虫が」

 ユーノは強大な力を持つ魔導虚(ホロウロギア)を前にしても決して物怖じしないどころか、それを見下した発言で相手を竦ませる。

「ユーノ、金太郎は左右を頼む! 俺は前方を片付ける。織姫、白鳥とアリサの怪我を頼むぜ」

「「はい(承知)」」

「うん。任せて」

「おっしゃ! じゃ死神代行組の力をこの世間知らずに分からせてやる!」

 口元を緩めた一護は、ユーノと金太郎と協力してインペラーZXが召喚した無数のインパラ(ホロウ)を一掃する為、協力して攻防に当たる。

「月牙天衝!!」

「輝け、晩翠!」

「ダイナミックハリケーン!!!」

 白鳥は織姫の治療を受けながら、自分一人ではどうする事も出来なかった敵が一気に数を減らしていく光景を見ながら心中思った。

(なんという力だ・・・・・・・・・私にもあのような力があれば――――――)

 ただただ悔しかった。彼らと肩を並べる事が出来ぬ未熟な自分の力が。何より、大切なものを無碍に傷つけてしまった事が。

 そんな歯がゆさを抱きながら、白鳥は事の成り行きを固唾を飲んで静観する。

 

「ったく・・・。確かにキリがねぇな」

「いかがなさいますか店長?」

「仕方がない。この技はちょっとえげつないからあまり使いたくなかったんだけど・・・背に腹は代えられないしね」

 倒しても倒しても無限に増え続けるインパラ(ホロウ)に一護達も苦戦を強いられる。この状況を打開すべく、ユーノは秘策を用意していた。

 口角を緩めたユーノは、一切の躊躇無くして晩翠の切っ先で左手の平を斬りつけ、そこから滴り落ちる血を刀身へと付着させた。

「アイツ・・・何するつもりなの?」

 アリサも一瞬怖くなって見守る中、ユーノは血液がべっとりと付いた刀身を地面へと突き刺し―――詠唱を唱え始めた。

「我が血を糧に盟約を交わしたる地獄の亡者共 時は来たれり 全てを(むさぼ)蹂躙(じゅうりん)せよ 愚鈍(ぐどん)なる者に死と恐怖を与えん」

 不吉な呪言(じゅごん)によってユーノの血が地面へと注ぎ込まれ、彼の足下を中心に巨大な召喚陣が展開される。

 

()(ほふ)れ・・・・・・『獄卒晩翠(ごくそつばんすい)』」

 

 地響きがした直後、召喚陣が紅色に強く光り出す。

 そして地面を割って地の獄より招聘(しょうへい)された全身が黒一色で染まった異形の亡者が多数。あまりの異形と異様さにインペラーZXは嘗て経験した事の無い恐怖に戦慄する。

『何だ・・・・・・・・・何だよ一体・・・・・・一体何なんだよこりゃ!?』

「獄卒晩翠―――彼らは僕の血と契約を結んだ忠実な下僕だよ。僕の意のままに手足となって働く。僕が敵と断じた者を塵となるまで追いつめるんだ」

 不敵かつ畏怖の籠った笑みで技の説明をした直後、ユーノは無数に召喚した獄卒に命を下し、眼前に控えたすべてのインパラ(ホロウ)の殲滅を下す。

 獄卒達はユーノの命令に対して忠実だった。インパラ(ホロウ)さながらの数の暴力で目に映る全ての敵を悪魔染みた強さで屠り、断末魔の悲鳴すらも糧としてあらゆる障害を斬り捨てる。

 今迄イニシアティブを得ていて筈のインペラーZXは忽ち追い詰められた気分となり、次第に勝利への自信を殺ぎ落とされていった。

『くっそぉぉ・・・! こんなの聞いてねぇ!! こんな奴らがいるだなんてオレは聞いてねェぞ!! どういう事だよ、ドクタースカリエッティ!!』

「やはりスカリエッティが差し向けた個体だったのか。まったく・・・よくも飽きもせずいろんな種類の魔導虚(ホロウロギア)を作って」

「ユーノ。コイツ留め差しちまっていいか?」

 ほぼインペラーZXに勝ち目はないと踏んだ一護が問いかける。

「いいですよ。敵はもう戦意喪失ですから、これ以上うざったいインパラが召喚される事は無いでしょう。もっとも、召喚したところで獄卒達の餌食にしかなりませんけど」

 言いながら、ユーノは獄卒達の働きによってインパラ(ホロウ)が一匹残らず駆逐された情景を己が目で確認。

 僅かな時間で数百と言う数を殲滅したユーノの能力は驚異的であり、白鳥は未だ目の前の事実を理解し切れていなかった。

『く・・・来るなぁ!! 来るなぁぁぁ!!!』

 死の恐怖に怯えるインペラーZXへとおもむろに歩み寄る一護。その手に持った斬月をゆっくりと振り上げ、斬る事に一切の躊躇無い眼で敵を見定める。

「悪いな。俺は死神代行だから(ホロウ)を斬るのが仕事なんだよ」

 

 バシュン―――・・・。

 

「もう大丈夫ですよ」

「すまなかったである・・・・・・」

 インペラーZXを倒した後、白鳥とアリサは織姫の治癒を受けて事なきを得た。

 だが、白鳥の表情はどこか浮かない。それを気に病んだアリサは、彼を元気づけようといつもの調子で呼びかける。

「なに沈んでるのよアンタは。あたしもアンタもこうして生きてるんだからもっと喜びなさいよ」

「アリサ嬢・・・・・・・・・だが私は主を護れなかった・・・・・・私は自分が不甲斐なくて仕方がない! 私にもっと力があれば、そなたを危険な目に遭わせずに済んだというのに・・・・・・!!」

 力が未熟ゆえに護るべきものを傷つけた。少なくとも今日の戦いは、白鳥の中でその思いが強く心に残る後味の悪い結果となった。

「護ってくれたじゃない」

 白鳥の言い分に対し、傍で聞いていたアリサは穏やかな表情を浮かべると、自責と慙愧(ざんき)の念に捕われる目の前の死神に優しく語った。

「誰が何と言おうと、アンタは私を護ってくれた。一度ならず二度もね」

「アリサがあぁ言ってるんです。白鳥さん、あなたは死神として・・・一人の男として大切な女性を護ったんですよ」

「護った・・・・・・この私が・・・・・・」

 どうにも釈然としないものの、当人や周りからは称賛と激励の言葉が飛び交った。

 白鳥は今日の所は周りの厚意を素直に受け入れて自分を納得させる事にした。

 やがてアリサと面と向き合い真摯な眼差しで呼びかける。

「アリサ嬢――――――主に渡したいものがある」

 

           ◇

 

数日後―――

東京都 東京駅周辺

 

「アリサちゃーん! 遅れてごめーん!」

 休日。アリサは小学校時代からの親友である月村すずかを誘って余暇を楽しむスケジュールを組んだ。

「すずか遅い、5分遅刻よ」

「ごめんなさい。どうしても前髪が決まらなかったものだから」

「まったくアンタって子は。それより早くしないと目当ての物ゲットできなくなるわよ」

「そうだね。じゃあ、行こうか」

「待ってなさい! たとえバーゲンだとしても、人より多く高い商品を勝ち取ってみせるんだから!!」

 これから臨むバーゲンに強い意気込みを見せるアリサを横目で見ながら、すずかはふと彼女の耳に付けられた真新しいピアスの存在に気が付いた。

「あれ? アリサちゃん、そのピアスどうしたの?」

「あぁ、これ? プレゼントされたのよ」

 言いながら、身に付けているピアスに軽く手を添えてから口角を緩め、送り主の名を比ゆ的に表現した。

 

「黒い格好をした白いナイトからね――――――・・・」

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 2、6巻』 (集英社・2002)




登場人物
大道寺 知世(だいどうじ ともよ)
声:岩男潤子
9月3日生まれ。A型。好きな花は木蓮と桜。好きな色はベージュと白。
23歳。おもちゃ会社「大道寺トイズコーポレーション」の若手社長。伸ばした長い黒髪と色白の肌が特徴。常に「〜ですわ」などのお嬢様口調で話す。おっとりした性格だが思慮深く、歳に見合わぬ落ち着いた一面も見せる。
人の心理を読み取る洞察力が非常に鋭く、アリサの白鳥への恋心にもいち早く気付いている。人を包み込んだり励ましたりする保護者のような側面もある。
鮫島(さめじま)
声:前川建志
バニングス家の執事兼専属運転手で、小学校時代と変わらずアリサの出勤時の送り迎えを行う。






登場魔導虚
インペラーZX
声:村田大志
アリサを追い回していた魔導虚。上半身が人間で、下半身はインパラという姿をしており、生前はアリサの父が経営する会社で働いていたが、リストラに遭って職を失い、家庭も失って自殺した後、スカリエッティの手により魔導虚となった。
バニングス家と自分を陥れた世間への復讐を企てており、行く先々でアリサを追い回して命を奪おうとしていた。
召喚魔法が使え、手持ちの杖を用いてインパラの姿をした眷属虚を多数召喚しそれを従えた集団戦法を取る。白鳥を甚振って追い詰めるが、駆けつけたユーノ達との戦いで敢え無く敗北した。
名前の由来は、皇帝を意味する「emperor」と、レイヨウの一種である「インパラ」から。
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