本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。
見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。
この話はバンビーズに破れて復活する間までの話です。
この話は”更木剣八と卯ノ花烈の最期の決闘を粕人が見る”という感想から閃いた話です。この場を借りてお礼申し上げます。
粕人が目を覚ますとそこは赤黒い空間だった。上下左右、どこを見渡しても赤黒い空間が広がるだけで、空も地面もなかった。
そこは死後の世界で生者が死者へと変わる狭間の空間。数えきれないほどこの空間に来たことがある粕人だったが、生き返る度に記憶が消えている粕人は初めて見るかのように見た後に考える。
ここはどこだ?何で僕はここにいる?
粕人は思い出す。
たしか。更木隊長の救援が来る時間稼ぎのために見えない帝国の星十字騎士団と交戦して……
そこで記憶が途切れる。否、バンビエッタ・バスターバインを除くバンビーズと戦った記憶がみるみる内に消え失せていた。ついには更木剣八と星十字騎士団の一人、グレミィ・トゥミューと交戦していた所を見届けるまで記憶がなくなっていた。
「ん?」
ふと後ろに何かが現れた気配を感じ、粕人は振り返る。
そこには重々しい真っ黒な巨大な扉が開いていた。そしてその開いた扉の前には一人の女性が立っていた。
「う、卯ノ花隊長!!」
死んだと聞かされていた自分の生きる道を示してくれた大恩人に向かって走り出し、
「……ッ!?」
粕人は思わず立ち止まった。
目の前に立つ女性は間違いなく卯ノ花烈だった。しかしその顔は粕人が今まで一度も見たことが無かった顔、尸魂界で護廷十三隊に入らなければ投獄されていた大罪人・卯ノ花八千流の顔だったからだ。
「……卯ノ花、隊長……なのですか?」
尋ねられた女性は心臓を鷲掴みするような薄い笑みを浮かべる。
「……!?」
その笑みに粕人は思わず下がっていた。
「私の顔を見て、私が卯ノ花烈だと分からないとは……やはり貴方を
「え?……う、卯ノ花隊長……貴女はいったい……何をおっしゃっているのですか……」
粕人は震えながら尋ねる。目の前の女性が言った言葉が信じられなかったからだ。
(あの時、僕に異動をすすめたのは……僕を思ってのことだったのでは!?)
嘘だといってくださいと心から願う粕人に、かつての上司は口を開く。
「この距離から聞こえなかったのですか?だったら分かりやすく説明しましょう」
侮蔑の笑みを深め、粕人が大恩人と慕う女性は言い切った。
「貴方のような目障りな存在を私の
「……………………」
大恩人の言葉を信じられず、粕人は呆然と立ち尽くす。嘘だと言ってほしい。先ほどの言葉は冗談だと言ってほしい。その望みにかけて目の前の隊長に訴える。
「卯ノ花隊長、それって……嘘ですよね?だって卯ノ花隊長は僕のために……僕という男の存在を思って……十二番隊の異動を勧めてくれた……だって卯ノ花隊長は言っていたじゃないですか!?十二番隊なら活躍できる才能があると!!」
「……あぁ。そんなことも言いましたっけ。貴方のようなクズに才能があると、私が思っていたと本当に思っていたのですか?」
「……………………」
「まあ。その嘘を信じてしまうところが、クズがクズだという
「だ、だったら……僕に居合を教えてくれたのは何故ですか!?僕を追い出したいのなら、そんなことをしなくてもいいはずです!?」
「貴方はクズとはいえ私の四番隊にいたのですよ?そのまま他の隊に追い出しては、私の隊長としての力を疑われるじゃないですか。だから適当な理由をつけて貴方に居合を教えたのですよ。『卯ノ花烈は何も教えていなかった』と言われないように」
「……………………」
ドサッ!
粕人はその場に両膝をつき、
「まあ、居合を教えたところでクズはクズ。あの
ハハハハハハッと哄笑する元上司の笑い声を聞きながら、粕人は頭を下に向けたままゆらっと立ち上がる。
「卯ノ花隊長。貴女が僕を十二番隊に異動させた理由が僕を
頭を上げた粕人の目には烈火のような怒りに満ちていた。
「僕は貴女と同じように
右手に愛刀・幽世閉門の柄を握り左足を下げながら続ける。
「僕にとって言われなきことで卯ノ花隊長と涅隊長を侮辱されることは自分が馬鹿にされること以上に許せない!例え卯ノ花隊長、貴女であっても!!故に、涅隊長をバケモノ呼ばわりしたことを、撤回していただきたい!!でなければ、貴女に教えて頂いた居合を貴女に向けます!!」
「ふ、それは私の
粕人同様、卯ノ花烈も斬魄刀・
「この私をあの
いつでも抜ける体勢のまま、二人は一向に動かない。
(これが隊長……なのか!?)
粕人の身体は汗でぐっしょりと濡れていた。曲がりなりにも数々の戦いを経験してきた粕人の危機管理能力が自分と卯ノ花烈との実力差を把握してしまったからだ。一瞬でも意識を途切れさせれば間違いなく斬られる。また相手が動けばその動きに対応できるものでないと。目の前の元上司が動かないのは自分に警戒しているのではなく、
と。
「……」
一瞬でも気を抜けば斬られる。
乾く喉のために口が唾液を出していることにも気がつかず、粕人は目の前の元上司を見続けていた。
「葛原粕人。貴方は人が良すぎる。人が良いから騙され、利用される」
「……」
突然投げかけられた言葉に、粕人は警戒を解かずその言葉を聞く。
「護廷十三隊に甘さは不要。葛原粕人、貴方は甘すぎる!虫唾が走るほど!!」
(本当に、……何も変わっていない)
かつての上司は心の中で笑う。呆れるような、それでいて嬉しいような笑みを。
葛原粕人という男は何も変わっていない。誰に対しても優しく、他人のために自分の時間を潰す。人が良すぎる。
それが彼女の評価だった。
自分も仕事で疲れているはずなのに皆が気持ちよくなれるという理由で人より早く起きて掃除を行っていた。仕事を早く覚えようと仕事で気づいたことをメモに書いていた。人が酒や趣味などの娯楽に興じている中、休日など空いた時間に本を読んで知識を得ていた。
自分の犠牲にして他人のために貢献しようと行動する。
だからこそ気づいてほしかった。もっと自分を大事にしろと。
教えたかった。もっと自分の為に時間を使えと。
他人のことばかり考えていたら、自らを滅ぼすことになると。
「クズ、せめてもの情けで教えておいてあげましょう。貴方は
「卯ノ花隊長!!」
涙を流し悪鬼の如く女上司を睨み付けながら間合いを詰めた粕人は刀を抜いた。
刹那のような一撃を
「ふふっ」
卯ノ花烈は完全に間合いを外し、ギリギリ当たらない最小の動きで避けた。その時だった。
「……ッ!?」
粕人の左手には鞘が握られその鞘がギリギリで躱した自分の顔に迫ろうとしていた。
殺サナケレバ殺サレル
初代剣八として生きた戦士の本能が自身の意思に反して、無意識の内に刀を抜いていた。
そして刀を抜きながら気づく。目の前の男の左手の動きが一瞬緩んだのを。
バシュュュュュュッッッ!!
「ッ!?」
卯ノ花烈が見た光景、それは自らの居合で斬られたかつての部下が、血飛沫をあげながら倒れる姿だった。
「葛原さん!」
地面に倒れ込む部下に、悲痛な顔を浮かべながら近づく。
「なぜ、なぜ貴方はそのまま鞘を打ち下ろさなかったのです!?あの時の私は虚を突かれてしまった。あのまま鞘を下ろせば、私に斬られることはなかったはず!なのに何故!?」
涙を流していることに気づかず叱責するように尋ねる烈に、粕人は息絶え絶えに答える。
「卯ノ花、隊長……。貴女に殺気がないのは……気づいて、おりました……あんなことを言ったのは……僕に、気づかせるため……だったのでしょう?」
「だとしても、なぜ鞘を振り下ろすのを緩めたのですか!?」
粕人は苦しみながらもにっこりと笑う。
「僕は、卯ノ花隊長に教えられたことを、頑なに守るだけでなく……涅隊長の下で……成長した姿を、見せたかった……涅隊長が、卯ノ花隊長に勝るとも劣らない……素晴らしい隊長だと、卯ノ花隊長にお見せしたかった……」
「貴方には、私に騙されたという怒りはなかったのですか!?」
「卯ノ花隊長が、僕を騙したとしても……僕は、今の僕があるのは卯ノ花隊長のおかげ……そんな大恩人に…………――――」
言い終わる前に、粕人はゆっくりと目を閉じた。
「葛原さんッ!!??」
卯ノ花烈は自身が斬った箇所を見て、気づく。傷が浅かったのだ。自分の知る葛原粕人だったら絶命しているはずの威力で斬ったにも関わらず。
よく見ると粕人の身体には鋼鉄の帯「
そして気づかされる。葛原粕人は
「……葛原さん。本当に貴方は、変わっていない。あの時からずっと……」
そう言いながらも手当をする卯ノ花烈は嬉しそうだった。
かつての部下が自分に本気を出させるほどに成長したこと。そして不器用で、優しくて、そして強い目の前の男を部下に持ち、そんな男に大恩人と言われた自分を。
傷口が塞がると、治療していた男の身体は白い光に包まれ消えた。
「葛原さん……ご武運を」
尸魂界に戻ったのを確信した卯ノ花烈はそう言い残し、黒い門の方へ足を進めた。
ギィッ……バダンッ!!
黒い門は卯ノ花烈が入ると同時に閉じた。
残念なお知らせです。
明日、筆先文十郎はインターネットが繋がらないところに転勤となります。つまり次の話は来年以降となる見込みです。
超絶飽き性の私がここまで書けたのは私の作品を読み、アドバイスを下さった皆様のおかげです。
この場を借りてお礼申し上げます。
引き続きアイディアを募集させていただきます。何かありましたら感想の方にお願いします。
それでは皆様、良いお年を。