天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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新章第三十三話二番隊編 激突!砕蜂(夜一バカ) VS 鬼塚静気(喜助バカ)前編

 隠密機動第四分隊の分隊長を務める古参、鬼撫(おになで)は目の前の光景に凍りついていた。

 隠密機動の主要人物が会合するために作られた、機密性と安全性のために作られた隠密機動専用の特別な地下会議室。並大抵の攻撃では傷一つつかない床や壁に、無数の傷がつけられていた。

 その無数の傷をつけたのは

 

「死ねぇ! 静気(しずき)ィィィッッッ!!」

「死ぬのはお前だぁ! 梢綾(シャオリン)(砕蜂の本名)ッッッ!!」

 

 鬼撫の前で、相手を殺す気で襲いかかる二番隊隊長兼隠密機動総司令官の砕蜂(ソイフォン)と二番隊第三席檻理隊分隊長の鬼塚(おにつか)静気(しずき)だった。

 ことの発端は砕蜂が会合の日の変更を伝え忘れた第二分隊・警邏隊の大前田(おおまえだ)希千代(まれちよ)を除く隠密起動定例会議後の麻雀で、第五分隊・裏廷隊分隊長を務める顔だけ見れば凄腕イケメン忍者に見えるスケベ男、逃隠(にげかくれ)才蔵(さいぞう)の一言だった。

「誰が最強なのかといえば特記戦力に数えられた黒崎(くろさき)一護(いちご)更木(ざらき)剣八(けんぱち)兵主部(ひょうすべ)一兵衛(いちべえ)藍染(あいぜん)惣右介(そうすけ)浦原(うらはら)喜助(きすけ)など色々な人が思い浮かびますが、『最高』という定義ならば誰が一番最高の人物と言えるのでしょうか?」

 

「それはもちろん!」

「それはもちろん!」

 

 砕蜂と静気が一コンマも狂うことなく同時に喋る。しかしその後に続く台詞は違っていた。

「夜一様だろう!!」

「浦原分隊長でしょう!!」

 

「「ん??」」

 

 二人は互いの顔を見る。

「静気。今『最高』の定義に当てはまる人物の名前に夜一様以外の名前を言ったように聞こえたが……私の聞き間違いだよな?」

「奇遇ですね、砕蜂隊長。私も隊長が『最高』の定義に当てはまる人物の名前に浦原分隊長以外の名前を言ったように聞こえましたが……私の聞き間違いですよね?」

 不気味なほど笑顔で確認しあう二人。しかしそれは嵐の前の静けさだというのは誰の目にも明らかだった。

「浦原喜助が最高だと? 崩玉というとんでもない物を作りだした男が『最高』だと!? その大きく見開かれた目は何も見てないのだな!?」

「夜一様が最高? 星十字騎士団(シュテルンリッター)の特記戦力という『見つけ次第優先して倒すべし』という強敵と認識されなかった夜一様が『最高』? 刀のように研ぎ澄まされたその瞳は人を見る能力もそぎ落としたのかしら!?」

 

「「なんだとコラアアアァァァッッッ!!」」

 

 二人は目の前の牌を投げつけると同時に投げつけられた牌を掴み、地面に投げ捨てる。

「静気。私のことはともかく夜一様を侮辱した罪、万死に値する! 命を持って償ってもらうぞ!!」

「それはこちらの台詞よ、梢綾。浦原分隊長を侮辱した罪はアンタの命で償ってもらうわ!!」

 二人はお互いを殺すべき敵と認識すると斬魄刀に手を置いた。

 

尽敵螫殺(じんてきしゃくせつ)雀蜂(すずめばち)』!!」

()(しる)せ『記呪筆(きじゅひつ)』!!」

 

 同日の誕生日。幼馴染。親友。好敵手。上司と部下。それらの繋がりを超えた不倶(ふぐ)戴天(たいてん)の敵に斬魄刀を解放し刃を交える二人。

「お、おい逃隠! お前があの二人を焚きつけたんだぞ! 責任とって──」

 鬼撫は隣を見る。そこにいたのは年下の同僚の姿をしたカカシだった。

「……ッ! あの顔だけイケメン忍者男めぇぇぇっっっ!! 名前の通り逃げ隠れしよって!!」

 古参の男は怒りを抑えて

 

(つた)われ神報(しんほう)!」

 

 ホイッスルのように変化した斬魄刀を吹いて目の前の脅威を隠密機動の主要人物に伝わると

 

(頼む……早く誰か来てくれ!!)

 心の中で必死に助けが来ることを祈った。

 

 

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 その頃

 無断欠席した月読を除いた隠密機動の副分隊長達が麻雀をしていた。

「ツモ! 国士無双十三面!!」

 檻理隊副分隊長を務める葛原粕人が牌に他の副分隊長達が凍りつく。

「ば、馬鹿な! 国士無双十三面待ちだと!?」

「う、嘘だろ…… これで何回飛ばされた……? もう今月どころか来月の給料も負けてるんだぞ……」

「取り乱すな! 金が無いなら借りてくればいい! それを元手に伊達に隠密機動やっていないことを新任副分隊長に知らしめてやるのだ!!」

「ふふふ、何度やっても無駄ですよ」

 強がる副分隊長達に、粕人は微笑する。

「十二番隊にいた頃。借金帳消し(正確には涅隊長が僕名義で作った借金)のために、僕は超人的な頭脳と先見性、他の追従を許さない豪運で戦後の日本を裏から支配していた闇の帝王とお金の代わりに血液を賭けて約20年に匹敵する一夜の麻雀勝負をして生き延びたほどですよ。負けるわけがないじゃないですか」

「闇の帝王がどうした!? いつもピリピリしている砕蜂隊長やサボってばかりの大前田副隊長、覗きばっかでろくに姿を現さない逃隠五席の下で 働きアリのように働いているんだ! その苦労は並じゃねぇんだよ。行くぞ根来(ねごろ)甲賀(こうか)。新任副分隊長に 目に物見せてやるぞ!」

 刑軍の伊賀(いが)の言葉に警邏隊の根来と裏廷隊の甲賀が「応ッ!」と答える。

「面白い ! (くろつち)隊長の下で万を超すほど死に匹敵する地獄を見た僕に見せてもらいましょうか !!」

 その時だった。鬼撫の神笛によって鬼撫の見た出来事が四人の脳内に伝わったのは。

 口を開いたのは粕人だった。

「僕が砕蜂隊長と鬼塚三席を止めます!!」

 その言葉で三人が動く。

「じゃあ俺は箝口令を敷く!」

「俺はいざというときに他の隊に応援を頼めるように準備を!」

「私は被害を最小限にするために隊員を動員させておくわ!」

 そうして四人は散った。

 

 

 

 この決定が粕人の運命を決定付けるとは、粕人本人は気づいていなかった。

 




後編でまだ出現していない裏見隊、月読が出ます。
そして砕蜂と静気の殺しあい。

気長に待って下さると幸いです。
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