天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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月読「計画通り」

 四番隊隊士・仏宇野(ふつうの)段士(だんし)は十二番隊二十席の葛原(くずはら)粕人(かすと)の協力を得て、日本円にして約二千万円相当の大金を得ると、翌日に何故か他隊の砕蜂(ソイフォン)に譲渡した。

「……」

 その事実を知った二番隊平隊士で仏宇野段士の実母、仏宇野(ふつうの)八葉(やつは)は面白くない顔で呟いた。

「砕蜂隊長には少し痛い目を味わってもらおうかしら」

 

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 翌日。隠密機動特別地下室

「各分隊の長である五人全員が(そろ)うのは何時ぶりかしら?」

大前田(おおまえだ)副隊長(に連絡が行っていなかったせいで)不在が多かったので、かれこれ数ヶ月ぶりなのは間違いではないな」

 大きく見開かれた目と髪型を似せれば砕蜂と見分けがつかない檻理隊分隊長・鬼塚(おにづか)静気(しずき)の疑問に、古参の裏見隊分隊長の鬼撫(おになで)がしんみりと事実を告げる。

「ところで砕蜂隊長。この度の招集はどのような件で?」

 女性の下半身(主に下着)のことを喋らせなければクールなイケメン忍者、裏廷隊分隊長・逃隠(にげかくれ)才蔵(さいぞう)が四人を代表して砕蜂に今回の緊急招集の理由を尋ねる。

「うむ」

 砕蜂は部下の顔を見た後に「こほんっ」と軽く咳払いをしてから口を開く。

「お前たちの耳にも裏見隊の月光(げっこう)が先日私が提示した金額を持って尸魂界(ソウル・ソサエティ)に戻ってきたことは届いているだろう」

「えぇ。確かに俺らの耳にも届いてますが……それと今回の招集に──」

 何の関係が? そう尋ねようとした大前田(おおまえだ)希千代(まれちよ)の台詞は砕蜂の獲物に突き刺す毒蜂のような鋭い視線で閉ざされる。

「そこで、だ。この金を先日行われた護廷十三隊対抗リレーの残念会の資金にする。異論はないな?」

 

 ッッッッッッ!!!!???? 

 

 砕蜂の言葉に四人は驚愕する。部下に厳しく、叱責と体罰を行うことはあっても部下を慰めるためにお金を使うほど心優しい人物ではないことを知っていたからだ。

 

 …………

 

 四人の驚愕の表情は疑心へと変わる。

「砕蜂隊長」

(こいつは偽物だ!)

 同日誕生、幼馴染み、親友、好敵手、そして砕蜂が最も嫌っている男・浦原(うらはら)喜助(きすけ)を崇拝の域に達するほど尊敬している理由で砕蜂と険悪な間柄である静気が斬魄刀に手をかけた。が、すぐに斬魄刀から手を離した。なぜならば

 

「ふふっ。これで夜一(よるいち)様は『隠密機動に泥を塗った部下をあえて慰めるとは、お主も成長したのぉ』とお褒めの言葉をかけてくれるに違いない!」

 

 自らが崇拝する四楓院夜一にお褒めの言葉をもらう妄想する姿を見たからだ。

 四人は確信した。先ほどまで疑念を抱いていた目の前の女は正真正銘、自分たちの上官である二番隊隊長兼隠密機動総司令官・砕蜂であると。

「それでは日にちは明日。店の手配は大前田、お前に任せる。それと裏見隊など仕事や諸事情で来られない者には来月の給料に色を付けておく。それでは解散!!」

 

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 緊急会議が終わった同時刻。

「ふふっ!」

 二番隊兼隠密機動総司令官とは思えないほど妄想でだらけた顔の砕蜂が廊下を歩いていた。

「月光が持ち帰ったあの大金……どのようにしようか!」

 自らが崇拝する四楓院夜一を模した人形などを制作し、砕蜂は自らの部屋に埋め尽くす妄想にふける。

「砕蜂隊長」

「ん?」

 後ろから呼び掛けられ、砕蜂が振り返る。そこには裏見隊分隊長・鬼撫という裏の顔を持つ古参の側近、犬飼(いぬかい)鳴ノ介(めいのすけ)が立っていた。

「犬飼か、どうした?」

「はい、先ほどの残念会の件。刑軍及び裏見隊全員に通達しました。檻理隊及び裏廷隊も全員に通達したとのことです」

「ん? 残念会……何のことだ?」

 意味が分からない砕蜂に犬飼は「御冗談を」と周囲に人がいないことを確認してから落ち着いた様子で答える。

「先ほど我々分隊長を緊急招集されたではありませんか。月光が得た大金を元に」

「残念会……だと……?」

 夜一のグッズ制作費用にしたお金が残念会に使われるという寝耳に水な情報に、砕蜂は驚愕の表情を浮かべる。

(ど、どういうことだ!?)

 どうしてそのような状態になったのかわからず混乱する砕蜂。その答えは砕蜂はすぐに理解する。

「おぉ、砕蜂!」

 砕蜂は振り返る。そこには自らが敬愛する元上司、四楓院夜一と二番隊食堂係、仏宇野八葉の姿があった。

「どうされたのです? 夜一様!?」

 予期せぬ夜一の登場に砕蜂は声を上ずらせながら尋ねる。

「いや。久しぶりに二番隊隊舎(こっち)を覗いてみたらのぉ、八葉に呼び止められてのぉ。『ぜひ明日行われる残念会に夜一様も参加してください』と言われてのぉ。しかし護廷十三隊対抗リレーで最下位になった部下を叱咤するのではなく慰めるために金を出すとは……お主も成長したのぉ!」

 腰に手を当てて「あははっ!」と楽しそうに笑う夜一に砕蜂は困った顔で「あ、ありがとうございます」と返す。

(どうしてだ? どうしてこんなことに……ハッ!)

 ある可能性が頭をよぎり砕蜂はうつ伏せていた顔を上げる。

 そこには夜一の隣にツインテールの幼女から一変、乳首が見えそうになるほど服をはだけさせた、夜一に負けず劣らずグラマラスな体型の裏見隊副分隊長・月読(つくよみ)が計画通りとニヤリと笑っていた。

 

 

 

 




計画通りと聞くと、どうもある有名キャラを思い浮かべます。
名前に月がついてるので余計に(^-^;

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