天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。


番外編 葛原粕人はモテるようです

「ふう、こんなものかな」

マユリにクズと呼ばれている男は山中を歩きまわっていた。男の背中には様々な草や鉱石が入った篭がある。

「いくら命令とはいえ、鬼梅(おにうめ)尸魂界(ソウルソサエティ)で使用が禁止されている強い幻覚性のある梅)を始めとするものを採取させられるとは……ん?」

 

バサバサッ!!

 

遠くから鳥の羽ばたく音が聞こえる。それを飛び立つためではなく苦しんでいるような、切羽詰まった羽ばたき。

「なんだ?」

男が音の方へ歩いていく。そこには湿原の中に一羽の鶴がいた。その鶴の足元には金属製の罠が鶴の足を挟んでいた。

男の姿に殺されると思った鶴は最後の力を振り絞って逃げ出そうとする。しかし激しく動いたため足からは更に血が流れ、鶴の体力を奪っていく。そして鶴はその場に崩れ落ちた。

「……」

男は濡れるのも気にする様子もなく、ゆっくりと鶴に近づく。

「心配しないで、僕は君を傷つけることはしない」

そう言って男は鶴の足を捕まえていた罠を外すと懐から塗り薬を取り出す。

「これは血止め薬だ。これで血は止まったはずだ。あとはこれで……」

鶴の足に薄く包帯を巻いた。

「ほら、今度は捕まるんじゃないよ」

鶴はペコリと頭を下げると空に向かって飛び立った。

 

 

 

数分後。

次の場所に向かおうと歩いていた男は道中で倒れている地蔵を発見した。

「大変だ、すぐに元に戻さないと」

男は地蔵を起こす。そして地蔵が汚れていることに気づくと持っていたハンカチで地蔵の身体を拭いた。

「よし、これで綺麗になったな。あ、そうだ!」

男は懐からみかんを取り出すと地蔵の手に乗せた後に拝むと地蔵の元を後にした。

 

 

 

一時間後。

海を訪れた男は白い砂浜に立っていた。

「次は大王イカ。さてどう取ろうか……ん?」

目の前の大海原を前に考えていた男の視界に数人の子供達が見えた。その足元には一匹の亀がいた。

「おい、もっと早く動けよ!」、「さっさと動かないとまたひっくり返すぞ!」、「じゃなかったら殺しちゃうぞ!」

「こら君たち、何をしているんだ!?」

男は子ども達の間に割って入ると中にいた亀を救出する。

「おい、お前!何をすんだよ!!」

男よりも背の高い一人の少年が男の顔に拳をめり込まそうとした。しかしその拳は亀を持った手とは反対の手で遮られた。

「て、てめぇ!放せよ!!」

「はい」

「う、うわあぁ!?」

いきなり手を離され、男に殴りかかった少年は砂浜に尻もちをつく。

「か、カンちゃん!?」、「大丈夫かよ!!」

尻もちをついた子供を心配した二人が慌てて起こす。

「おい、その亀は俺達のおもちゃなんだよ!さっさと返――」

カンちゃんと呼ばれた子どもは言葉を詰まらせた。自分よりも小さい男から発せられるオーラに気圧(けお)されたからだ。

「「――」」

それはカンちゃんの後ろに立つ二人も同様だった。

彼らの本能は悟った。

 

目の前の男には勝てない、怒らせてはいけない。

 

と。

何千回と死の淵に立たされ生還してきた男の強さを感じ取った少年達は固まってしまう。

小刻みに震えだす少年達を前に男は懐から小さな石を取り出す。

「これは翡翠だ。これでこの亀を買い取らせてもらいたいのだが、どうだろう?」

男の顔は穏やかだった。しかしその穏やかな顔と先ほど感じた恐怖でより一層少年達の恐怖心を駆り立てる。

「し、しかたないな。その石で売ってやるよ」

カンちゃんは震える手で男から翡翠を受け取ると足早に去って行った。

「ま、待ってよ!カンちゃん!!」、「置いていかないで!」

二人の少年もカンちゃんの後を追って男の前から走り去った。

「……行っていいよ」

男は亀を砂浜にそっと下ろした。

亀は男の顔を少しだけ見た後、海に向かって身体を動かし、海へと姿を消した。

その様子を男は笑顔で見送った。

その後男は大王イカを釣り上げるとマユリの待つ技術開発局へと足を進めた。

 

 

 

夜。

「ふう、今日も疲れた」

マユリに頼まれた物を渡した男は一畳の部屋で窮屈な大の字になって寝ていた。

コンコン

「ん?」

扉を叩く音に、男は立ち上がると扉を開けた。

「今日は罠にかかったところを助けていただき、ありがとうございました」

そこには雪のように真っ白な振袖に身を通した、艶やかな黒髪の女性が立っていた。

「え、貴女は?」

「今朝方助けて頂いた鶴でございます。いきなりで失礼なのは百も承知なのですが、私と結婚して下さい!!」

「のえぇぇぇっっっ!?」

両手を挙げて驚く男。しかし彼が本格的に驚くのはこれからだった。

「貴様!何をしている!!」

部屋の天井から灰色の浴衣にウェーブする灰色がかった黒髪のショートヘア女性が降り立った。

「私は今日助けてもらった地蔵だ!葛原粕人、そんな女から離れて私の夫となるがいい!!」

「お待ちなさい!!」

今度は男の部屋の床から勢いよく何者かが現れる。

そこには翡翠のような煌く髪を背中まで伸ばし、フリルのたくさんついた水着を着た女性姿が。

「私は海で助けられた亀でございます。これから竜宮城へ行き乙姫様の前で永遠の愛を誓いましょう!!」

「ちょっと待ったぁぁぁっっっ!!」

黒髪をポニーテールにまとめた緑色の忍び装束を着た女性が廊下から現れた。

「我輩は主とずっといたのだぞ!貴様らよりも我輩の方が妻に相応(ふさわ)しい!!」

「誰だよ、お前!!」

マユリの擬人化薬で人間に変身した竹馬棒だと知らず、男は突っ込みを入れた。

 

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