愛は時を忘れさせ、 時は愛を忘れさせる   作:月瀬 星音

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一章 〜ifの願いが叶うまで〜
1話 〜典道の視点〜


 

【挿絵表示】

 

 

新学期の日、俺は遅刻してまであいつに会いに行った。

 

あいつとは、及川なずな。

 

俺はなずなことが好きだ。今もその想いは変わらない。

なずなは、俺が見た中で最も綺麗な女子で性格は孤独だけど大人の色気がある。

 

そんな、なずなは色々なクラスメートからモテていた。例えば、祐介。祐介は俺とは親友なはずだった。

 

俺が、祐介のことを殴りさえしなければそんな関係が悪くなってなかったと今後悔している。

 

だけど、今、俺は祐介なんてどうだっていい。もう、俺は来年の4月には別の中学校に通う。

 

俺の場合、なずなみたいに両親が離婚とかそういうのじゃない。親の転勤だ。

 

だから、なずなに会わないともう一生会えなくなるかもしれない。俺は居ても立っても居られなくなった。今日遅刻してでもいい。先生に怒られることぐらいなずなと会うことに比べればどうってことないだろう。俺はただ、なずなに会えなくなることが嫌なのだ。

 

確か、この辺だっけな…。

 

なずなに教えて貰った住所の周辺に来たんだけどな…。

 

そのとき、なずなが家から出るところを見た。

 

ようやく会えた。そんな思いが込み上げてくる。

 

恥ずかしい気もするけどなずなに勇気を出して声を掛ける、そう心に決めてなずなの元へ歩いた。

 

「なずな、久しぶり」

 

俺は出来るだけ平静を装って話しかけた。

 

「典道君!?典道君なの?」

 

なずなは驚いていた。そりゃ、驚くな、なずなだって俺が来るなんて思ってもみなかっただろう。

 

「そうだよ」

 

俺は答えた。

 

「典道君が来てくれるなんて嬉しい」

 

そう言って笑ったなずなの顔は綺麗だった。

 

「俺もなずなに会いたかった…」

 

「ところで、学校は、行かなくて大丈夫なの」

 

「別に、学校一回ぐらいサボったって何もなんねーよ」

 

「典道君らしいね」

 

「別に。普通だろ」

 

そんな他愛もない会話が俺には嬉しかった。好きな人と会話するだけでもどれだけ嬉しいか…。

 

「私ね、もしかしたらまたあの学校に戻れるかもしれないの」

 

「えっ!?」

 

「お母さんの再婚相手の人が、前の学校の近くに転勤するんだって。だから、また会えるね!」

 

「それっていつから?いつから学校に復帰するの?」

 

「来年の4月だよ」

 

「…マジか」

 

「どうかしたの…?」

 

「俺、まだ誰にも言ってないんだけど来年の4月から東京に転校するんだ。今の学校から」

 

俺はなずなにこのことを言いたくて会いに来たのだ。半分会えないと覚悟して半分会えると期待して。

 

なずなが何か言った気がした。でも、俺はなずなが言ったことを聴けるほど余裕はなかった。なずなの転校先は元の学校に戻ってしまう。

 

日曜日とか、休みの日はなずながいる銚子市に行けるかもしれない。でも、向こうでの連絡先は知らないし、住所も知らない。俺も東京に行った時の住所も分からない。

 

俺は分かっていた、けど淡い期待を裏切られた。

 

俺はもうなずなの悲しむ顔が見たくなくて、

 

「そういうことだから…。じゃあ」

 

と言って俺はなずなの顔すら見ずにこの場を足早と去った。

 

俺はなずなと別れた後思った。もしも玉は今はない。

 

それでも俺は願いを込めて呟いた。

 

もしも、またなずなと会える日が来るのなら。

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