てか、俺どうすればいい?
なずなと付き合えるってのはめっちゃ嬉しいけど、駆け落ちだろ。
しかも、今日の10時とかめちゃくちゃでしょ。
ガチャっと扉が開く音。
由郁か。
これから、俺が裏切る相手。
ごめん。
今は口に出せないけど、いずれ謝る。
そして、ありがとう。
こんなクソ野郎の俺に付き合ってくれて。
「ごめん、長い間マッサージマシンやってて。独りにさせちゃってごめん」
「別に大丈夫。それよりさ、下のゲーセン行ってきていい?一緒に行く?」
「行かないよう。もう、私疲れた。長居し過ぎたかなー」
「おけ。じゃあ、行ってくる。30分くらいで戻る」
と言って俺は外に出た。
ゲーセンへの通路を歩いていると電話?
東原知弥…?
知弥?
すぐに俺は出る。
「知也?」
『おう、そうだ』
「なんだ?」
「お前、今長野にいるだろう」
「そうだけど」
『いやー、今お前と同じいるんだ』
はっ…!?
もう、訳がわからねー。
どうなってんだよ。
「いや、どういうこと?」
『いや、そのままの意味じゃん。俺のじいちゃんが経営してっからよ。今、兄貴と泊まりに来てんだ』
「えっ…。マジで。あのめっちゃヤンキー系の人?」
『そう。今からお前らの部屋行くから番号教えて』
待って…。
あいつに相談したいことがある。
「いや、待て。由郁が今いる。由郁には相談できない悩みがある。今、相談に別の所でのってくんない?」
『いいぜ。どこでする?あっ、俺の部屋来い。もし、由郁に疑われたらこう言え。知弥に偶然会って行かされたって』
いいやつだな。
知弥は。
親友って持つものだな。
「おけ。何号室?」
『321号室。兄貴も起きてるから兄貴にも聞いてもらえ。結構いいアドバイスくれたりすんだぜ。ああ見えてもよ』
「分かった。そっち、すぐ行く」
『今から典道が来るって兄貴にも伝えとく』
「よろ」
そう言って、俺は321号室に行った。
ノックをする。
「知弥、いるか?」
「いるぜ。入れよ」
「あー、お邪魔します。ってあれお前の兄貴は?」
「あー、なんか外とかぶらぶらして風呂入るって言ってたからまだ来ないと思う」
「そうか」
「で、相談ってなんだよ」
「うん、その話なんだけどな。俺ってさ、由郁と付き合ってんじゃん」
「そうだな」
「俺、最低な男なんだ」
「はっ…?どうした、お前」
「俺さぁ、別の女が好きなんだ」
言ってしまった。
親友に。
嫌われんのかな。
「知ってたよ」
えっ。
どういうこと?
「どうして…?」
「バレバレだよ。お前、昔初恋の奴の話してたときお前の目すげー輝いていた」
「そうだったか…」
「そうだったよ。それに比べ由郁といる時にはなんか物足りなさそうな顔して、初恋の話をした時のお前の目の輝きはなかった」
そうなのかもしれない。
知弥の言う通り心の中ではなずなのことを諦めきれなかった。
多分、それだ。
「初恋の相手はなずなって言うんだ」
「なずなか…、いい名前だな」
「なずなと今日旅館で会った」
「はーっ!?」
「で、なずなが俺に告ってきたんだ」
「へーへっへっへ、で、どうしたよ」
すげー、笑ってんじゃん。
むしろ、驚きながら笑ってるよ、こいつ。
「で、俺はもちろんOKしたよ。でもよ、問題があるんだ」
「なんだ、言ってみろ。そのおもしれー恋愛話聞いてやるからよ」
「まず、俺にも彼女がいてなずなにも彼氏がいる。その彼氏とは俺の元親友で恋敵でもあった」
「ほーっ、面白くなってきた。昼ドラみたいだねー」
こいつ、真面目に人が喋っているのに…。
「笑ってんじゃねーよ。もう一つ、俺に駆け落ちしようって言ってきた」
「えーーーっ!?駆け落ち!?なずなちゃん、何歳?」
「同い年」
「駆け落ちなんて、中学生でしないよ。よく思いつくね」
「なずなは元々そう言う感じだから」
「へー、性格どんな感じ?」
「小悪魔タイプで、めっちゃ異性にモテる。孤高のマドンナって感じ」
「とういうことは可愛いの?」
「…」
なぜ、俺から言わなきゃ…。
「いや、両想いなんでしょ。それぐらい言えよ」
「なずな、めっちゃ可愛い」
なんで、恥ずかしい事言わせんだよー。
「ほー、それで。駆け落ちのことどうなった」
「今日、10時にエントランス集合。由郁にバレないように」
「なるほど。お前に協力するわ。由郁には悪いけどお前らが結ばれた方がお前となずなちゃんは幸せだと思う」
「ありがとう」
「で、どうするか…。10時にエントランスに来てくれ。荷物はどうすっか…」
「それ…」
「分かった!今日、後でだけどお前らの部屋行く」
「おいっ!そんなことしたら」
「大丈夫だって。別に俺が同じ旅館にいたって駆け落ちを手伝ってるとは由郁は思わんだろーよ」
「そうか…でも」
「大丈夫。俺はミスらない。そんで、適当に喋ってそのついでにお前の荷物を持ってく」
「大丈夫なのか…?」
「言うて、着替えのバックとか雑貨だけだろ。俺のバックに入れるからバレねーよ」
「そうか…」
「典道は、10時にエントランスに来い。遅れるな。その時、兄貴がクルマに待機してるから、俺について来い。詳細は、その時お前らに伝える」
知弥が親友で良かった。
こういつやつは早々いない。
俺は知弥を信じる。
「分かった、サンキュー」
「じゃあ、後でな。1時間後くらいに来る」
ああ。
駆け落ちか。
もし…?
もしってほどじゃない。
願いは一応叶った。
強いて言うなら、
もし、由郁にバレずにエントランスに集合できるなら。
これが願いって。
前のと違って安っぽい願いだな。
ま、これも俺となずなの運命がかかってるから大事か。