愛は時を忘れさせ、 時は愛を忘れさせる   作:月瀬 星音

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1話 〜なずなの視点〜

新学期の日、私は旭市にまた引っ越す。今、引越しの準備をしているところ。

 

こんな時に典道君が会いに来てくれて、私を2人だけの世界に連れて行ってくれないかなって時々思うんだ。

 

でも、私は一年後元の学校に戻る。再婚相手が元の学校の近くの会社に転勤になったから。

 

もし、典道君に偶然会って、また元の学校に戻るって言ったらどういう反応してくれるかな。典道君は喜んでくれるかな。私は、喜んでくれるって信じてる。

 

典道君は私の初恋の相手。人から好かれたことは何回もあるけど、人を好きになったことなんてなかったからこの恋愛という感情がとても新鮮で初めて。

 

直接告白するのは恥ずかしいから、典道君にアプローチはしてた。

 

だから、海でキスした後告白された時はとても嬉しかった。

 

だけど、私は引越しする身だからこの恋も出来なくなるかもしれない。

 

私は、彼の告白を

「また今度、会った時に…」

って返事をしなかった。

 

私は今、返事をしなかったことに後悔していた。

 

でも、こんなポッカリと穴が空いた私の心に希望の光が灯った。

 

なぜかって、再婚相手の人が前の学校の近くで働くみたいなの。だからまたあの学校に戻れるんだ。

 

あの時、奥手になってしまった恋をまた取り戻せるかもしれない。

 

神様はまだ見捨ててなかったのかもね。

 

そんなことを心の中で思っていると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

もしかして…。

 

その声は、私の期待を遥かに上回った。

 

典道君の声だ。

 

「なずな、久しぶり」

そう言ったのは誰でもない典道君だ。

 

ドキドキが止まらない。

 

「典道君!?典道君なの?」

少し、声が上ずっちゃった。

 

「そうだよ」

典道君は、笑って答えてくれた。

 

ついに、私の恋も実るのかな…。

 

「典道君が来てくれるなんて嬉しい」

思わず、言っちゃった。感情が高ぶっていつもの私じゃない。

 

「俺もなずなに会いたかった…」

典道君に言われると少し恥ずかしいな。

 

「ところで、学校は、行かなくて大丈夫なの」

 

「別に、学校一回ぐらいサボったって何もなんねーよ」

 

「典道君らしいね」

 

「別に。普通だろ」

 

典道君は全然変わってない。私は、こんな大雑把な典道君も好きだよ。

 

「私ね、もしかしたらまたあの学校に戻れるかもしれないの」

 

「えっ!?」

典道君は驚いていた。

 

「お母さんの再婚相手の人が、前の学校の近くに転勤するんだって。だから、また会えるね!」

 

「それっていつから?いつから学校に復帰するの?」

典道君が真顔だ。典道君は私と会うのが嫌なのかな…

 

「来年の4月だよ」

 

「…マジか」

典道君は絶望的な顔をしている。私は、嫌な予感がした。

 

「どうかしたの…?」

恐る恐る私は聞く。

 

「俺…まだ誰にも言ってないんだけど来年の4月から東京に転校するんだ。今の学校から」

 

その言葉を聞いた時私は絶望した。天国から地獄へ突き落とされるみたいに。典道君に会いたいなって思って、今日典道君は会いに来てくれた。私、その時神様が願いを叶えてくれたのかなって、人生で一番嬉しかった。私はまだ、この事実を受け入れられない。

 

「嘘…」

 

そう、小さな声で呟いた。典道君が私の声に反応した。でも、聞こえてないみたい。

 

もう、私と典道君は縁がなかったのかな。

 

絶対、会えなくなってしまうの…?

 

会えなくなる前に、告白しないと…。

 

私は、告白しようと一歩踏み出した時

 

「そういうことだから…。じゃあ」

と典道君は逃げるように私から離れた。

 

待って…。私のこと、置いていかないで。告白ぐらいさせてよ…。

 

私は色々な想いがこみ上げてきた。こんなに人生で悲しかったのなんて初めて。

 

前に典道君とかけおちした時、不思議な玉があった。自分の願いを言って投げると願いが叶うって典道君から聞いた。

 

だから、典道君の気持ちが分かったような気がした。

 

典道君がずっと一緒にいたいって願ったように私も典道君と一緒にいたい。

 

今じゃなくていい。

 

何年、待ってもいい。

 

どうか、私の願いを…。

 

不思議な玉はないけど、私は願いを込めて言った。

 

もしも、典道君とずっと一緒にいることが出来たなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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