なずなと再会して一年。もう、夏休み間近。何もしなくても熱中症になるくらい、暑い。なずなと会うことを諦めた俺は東京の学校に通っている。
東京の学校にはすぐ慣れて友達もたくさん出来た。
そして、彼女も出来た。
彼女の名は
黒髪ロングで派手系女子だ。
由郁に6月に告白され、付き合ったばかりだ。付き合っていることは悪くはない。
ただ、なぜか心の中のモヤモヤがなくならない。
あのことが原因なのか…。いや、そんなことはないはず、俺はもう諦めたんだ。
自分の思い出をリセットするって。
でも…忘れられない、なずなのことが。
「なあ、典道。一緒に帰らねー?」
そう、俺を誘ってきたのは
知弥はよそ者だった俺に最初に喋りかけてくれた親友だ。俺が東京で馴染めたのは知弥のおかげだと思う。
「ごめん、他の奴と帰るわ」
「どうせ由郁だろ。まあ、また明日な」
「おう、ごめんな」
「別にいいってことよ」
知弥はいい奴なんだな、本当に。
「典道〜。帰ろう」
そう言ってきたのは由郁だ。今日帰る約束がある。
「うし、もう帰るか」
「今日さ…うちの担任がね…」
先生や友達の愚痴を言ったり、くだらない話をしたりして毎日下校している。時に、疲れるときもあるけど…。いや、それは黙っておこう。
「そういえばさ、典道。前の銚子の学校に及川なずなって言う人知ってる?」
「なずな!?」
俺は、なずなという言葉を聞いた瞬間衝撃が走った。それと同時に錆びていた血が再び体に煮えたぎって回るようなそんな感じがした。
「なずなのこと、知ってるんだ。私、なずなと小学校一緒だったんだ」
「なずなって前からあんな感じだったのか?」
「んー。小学校の時、なずなめちゃくちゃモテてたよ。まず、顔はアイドルみたいで可愛いし、抜群にスタイルいいし、小悪魔みたいで小学生には見えなかったね。バレンタインデーなんてなずなの話題で持ちきりだったんだから」
「でね、私、なずなの連絡先知っててね。時々、メールするんだけど、なずなの中学と典道が言ってた中学一緒だなって」
「なずなに、俺のことは言ったのか?」
「言ってないよ。まだ、確定じゃなかったし」
未だに体が動揺しているのが分かる。
「夏休み、旅行行かない?後、1週間で夏休み入るじゃん」
「うん」
今の俺の脳の中はなずなでいっぱいで由郁の話を聞いていなかった。
「典道、聞いてる。夏休みに旅行行くって」
「あ、すまん。いいよ、行こう」
「オッケー」
と俺と由郁は旅行に行くことになったのだった。
「そんじゃあ」
「ん、またね」
その後、俺と由郁は駅で別れた。
俺は、何故か気が乗らない。
由郁と旅行に行くはずなのに…。普通の男子であればもう少し喜べるはずだ。
でも、何故か素直に喜べない自分がいる。
心の中に、モヤモヤが溜まっているような…。
会えるはずのないあいつに会えるような気がしてならなかった。
まだ、俺はなずなを諦めきれてない。
もう一度、会いたい。
いや、ダメだ。
もう、俺は会わないって自分の中で約束したんだ。
あの恋をリセットするためにって…。
なんか、そんなこと考えていると変な気持ちになった。
胸がキュンとなって心に穴が開いているみたいな感じ。
俺ってつくづく、諦めの悪い奴だなって思う。
また、ifの願いで叶うはずないけど、俺は呟いてみた。
もし、なずなに今会えるなら。