典道君と会ってから一年が経った。
私は、三ヶ月前、典道君が引っ越す前に見送ろうと女友達が教えてくれた典道君の家に行った。
でも、典道君はもう引っ越し先に行ってしまっていなかったんだ。
最後くらい、会いたかったな。
結局、私は神様に見捨てられたのかな…。
私は、今、前の学校に再婚相手の都合で戻ってきている。
一年前と変わらず、水泳部に所属している。
変わったことと言えば、典道君がいなくなったことと祐介君が私の彼氏になったことぐらい。
なぜ、典道君の方が好きなのに付き合ってるかって?
典道君のこと何か教えてくれるかもしれない。って思ったから、私はOKした。典道君と本当は付き合いたかったな…。
そんな気持ちが、私の心の中で木霊する。
祐介君に付き合ってくれって言われた時、凄い胸が痛かった。
祐介君は、性格は良いと思うけど何か違う。
私のことを他の男子みたいに嫌らしい目で祐介君は見てる気がするんだ。
典道君は真っ直ぐな目で私のことを見てくれたのに…。
私は、スタイルとか顔も悪くないから、そんな風に見られるのかもしれないけど、正直気分は良くないんだ。
そんなことをふわっと考えていると祐介君が近づいてきた。
「なずなっ、帰ろうぜ」
「うん」
こうして、私達はいつも下校する。
「なずなって可愛いよな」
「そう?ありがと」
人がいるのにそんなこと言わないでよ…。祐介君はデリカシーがないんだよね。
「なずな、俺、手を繋ぎたい」
なんで、人がいるのに、そんな恥ずかしいこと言えるの…。
「私達、まだ彼氏彼女の関係でしょ。恋人になってからにしよう」
私は笑顔で返した。
「えーっ」
祐介君は膨れる。だって、手を繋いだら、自分の胸がキューっと締め付けられる気がするの。
好きじゃないのに、彼氏彼女の関係になるって辛い。
「なー、なずな?俺のこと好き?」
「好きだから付き合ってるんだよ」
私は、祐介君に嘘をついている。実は、典道君のことが好きでしたなんて言えるわけない。良く、小悪魔みたいって友達に言われるの。私って性格悪いのかもなぁ。
「ふーん、本当?」
疑われてる?もし、バレたら多分被害を受けるのは典道君だよね。
バレないようにしないと…。
「本当」
「好きならなんで手を繋いでくれないの?」
「まだ私もそんな歳じゃないから」
そう言って、誤魔化す。
そういえば、もう直ぐ私の家だ。
「もうすぐ私の家だから、バイバイ」
「おう、じゃあな」
私と祐介君は別れる。
家に帰ると、母親がいる。
「なずな!あんた帰るのが遅いのよ」
いつも、怒鳴られるのは毎日のこと。もう、とっくに慣れてるんだから。
「…」
バタンと自分の扉を閉める。
「なずな!」
ママの怒鳴り声が聞こえる。ママは全然変わってない…。何度も再婚して。私のことなんか1つも考えたことないくせに…。
はぁ…。
プルルルル。携帯の着信音…?誰からだろ。
「もしもし、なずな?」
なんだろう、この声何処かで聞いたことある。
「誰…?」
「忘れたのー?由郁だよー」
思い出した。由郁は小学校の時、唯一友達だった女の子。少し、懐かしくて由郁といれた空間は楽しくて涙が今出てきそう。
「覚えてるよ。由郁のこと忘れるわけない」
「覚えてくれていて、嬉しい。そういや、なずなの学校に田島っているでしょ」
「田島君…?典道君の友達だったような…」
「典道…?ねえ、なずな」
「何?」
「そのさ、典道君っていうのの名字教えてくれない?」
「島田だと思うけど…」
「島田っていう人、転校したでしょ」
まさか…。典道君が由郁と同じ学校…?
「そうだけど…」
「やっぱ、典道じゃん。典道、今私達の学校にいるよ」
「本当!?」
「今度、なずなのこと知ってるか聞いてあげよっか」
「うん、お願い」
「なずな、典道がいるって聞いてから、テンション可笑しいよ」
「いつも通りだよ」
「もしかして、典道に気があるの?」
「そんなっ…」
「典道、私の彼氏だから」
「えっっ!?」
「今度、旅行行くんだ。8月1日にね」
「そうなんだ。でも、私にも彼氏いるから。余り関係ないかな…」
私は、驚きながらも平常心を保った。
「へぇー、あのマドンナのなずなに彼氏か…。大人になったね〜」
「別に、男の子とは余り関わらなかったから…」
「って言って、クラス中からモテてたのにね。なずなのスタイルと顔が羨ましいわ」
「そんな…由郁だって可愛いよ」
「なずなが言っても嫌味にしか聞こえないよ。でもありがと。じゃあ、また暇な時かけるね」
切られちゃった。まさか由郁の学校に典道君がいるなんて…。思いもしなかった。
でも、これがチャンスかもしれない。典道ともう一度会える、そう思うと嬉しい。
今度は、ちゃんと告白しないと。
後、8月1日に旅行かぁー。私1人で行くと怪しまれるから祐介君も連れて行こうかな。
私の願望だけど…
もしも、8月1日に典道君と駆け落ちできるなら。