繋想(けいそう)   作:彩加

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第13話

「お待たせ」

 

と言って佐為の生まれ変わりである子供を抱えてアキラが戻ってきた。

 

「抱いてみるかい? 首は据わってるよ」

 

そのままヒカルの隣に座り込むとアキラは赤ん坊をヒカルの方に向かせながらも自分の膝の上に座らせた。

ヒカルはピンク色のベビー服を来た赤ん坊を見て少し困惑する。

 

「佐為の……生まれ変わり……」

 

女の子への生まれ変わり。この子が佐為の生まれ変わりなんだと言われなければ、決してヒカル自身分からなかっただろう。

それでもまた佐為に会うことが出来たという実感を少し持てたのは、その赤ん坊がヒカルを見て笑顔になり、抱っこしてと言わんばかりに両手をヒカルに向けてきたからだ。

 

「佐……為……」

 

こちらに向ける笑顔と小さな手を見てヒカルの目にうっすら涙が浮かぶ。

その姿にアキラも心を打たれる。

 

「どうぞ」

 

とアキラは赤ん坊をヒカルの膝に乗せた。

ヒカルは、渡された赤ん坊を支えようと腕を回す。少し高い体温を手から感じると、虎次郎の生まれ変わりである秀輝を抱いた時とはまた違った妙な感覚を覚えた。

 

 

「……ひあゆ(ヒカル)?」

「え? こいつ、もうしゃべんの?」

 

ヒカルが驚く横でアキラはもっと驚いた顔をしている。

 

「………」

 

言葉が出ないアキラ。

 

「ひあゆ!うひまひょう(ヒカル!打ちましょう)」

 

と佐為はお構いなしにヒカルの胸にしがみつく。

声帯が未発達な3ヶ月の赤ん坊では上手く話せる訳がなく、ヒカル達には伝わらない。

 

「驚いた。どうやら、君に触れている間だけ佐為としての記憶が蘇るようだ」

 

アキラは平静を取り戻し、冷静に事の成り行きを分析する。

 

「は? オレに分かるように説明しろよ! 塔矢」

 

理解できないヒカルはアキラにキレ気味に質問する。

 

「君に説明しても無駄だろう」

 

とアキラは混乱するヒカルから佐為を離し、

 

「話してごらん?」

 

とアキラは佐為に話しかけるが反応はない。

次にもう一度ヒカルに渡してから

 

「何がしたいの?」

 

とアキラが問うと

 

「ひお!ひあゆとうひあい!(囲碁!ヒカルと打ちたい!)」

 

と佐為は答える。

何か訴えていることは分かるが、さすがに聞き取りは難しい。

ようやくヒカルにも目の前にいる赤ん坊が佐為自身だと分かる。

 

「佐為……なのか? 佐為なんだな! 会いたかった!!」

 

ヒカルは佐為を抱きしめた。

佐為もそんなヒカルを見て、自分に会うのを本当に心から待っていてくれたんだと思い、小さな腕を目一杯広げてヒカルを抱きしめ返した。

暫し再会を喜んだ後、佐為の視界にヒカルの扇子が目に入る。

言葉では伝わらないと思った佐為はヒカルの足元に置いてあった扇子を掴み、碁盤を差す。

 

「打ちたいのか?」

 

ヒカルが佐為に聞くと佐為は満面の笑みでこくんと頷いた。

 

「ようし! じゃ、勝負だ!」

 

とヒカルは碁盤に並べられた碁石を片付けると、一手目を打つ。

佐為はその低すぎる視界からヒカルから離れないように碁盤をのぞき込もうとするが上手く見えない。まだハイハイすら出来ない身体で思うように動いてくれない事にイライラが募っていく。

話せない(伝わらない)・見えない・扇子も届かないの3拍子に碁を続けられずやむなく対局は断念した。頬を膨らせご機嫌斜めな佐為に対し、ヒカルはそんな佐為を笑い飛ばす。アキラは喧嘩が始まりそうな雰囲気を察知し、サッと詰碁集を開いて問題を出すと、2人はどっちが先に解くか競い始めた。

 

「ヒカル、そろそろ秀輝のご飯の時間が来るから帰るよ」

 

あかりが呼びに来た。

まだ1時間ほどしか経っていないため物足りないヒカル。

しかし、秀輝のご飯なら致し方ない。

その辺は少し大人になったようで、素直に応じる。

佐為も察して少し寂しい顔でヒカルを見やるとアキラに腕を伸ばした。

アキラは佐為を抱き上げる。

 

「立てるようになったらまた呼ぶよ。今度こそ対局しよう」

 

アキラはヒカルに次の約束を交わす。

 

「おう!」

 

哀愁が漂っていたヒカルから笑みがこぼれる。

 

「約束だぞ」

 

とヒカルはアキラに念を押して、短い時間ながら佐為に再会出来たことを喜んで、塔矢家を後にした。

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