繋想(けいそう)   作:彩加

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第14話

あれから生後8ヶ月になった佐為はつかまり立ちするようになったとアキラから連絡があり、日程を調整して会うことにした。

しかし、ヒカルもアキラもトップ棋士の為対局数がかなり多く、なかなか日程が合わなかった。

だんだん日が経つに連れ、ヒカルのアキラを見る目が鋭くなっていく。

いつになったら佐為に会えるんだと無言で訴えるその目は遠くからでも分かる。

数人に「喧嘩でもしてるのか?」と聞かれた2人だが「してない」とだけ答えるのでますます周りは不思議がる。

アキラは遂に根負けし、棋院に行った際に2人のスケジュールを合わせて貰えるよう頼んだのだった。その甲斐あって、調整後は比較的定期的に会えるようになった。

佐為が1才になる頃にやっと会えた為、歩けるようにもなってたし、話せるようにもなっていた。

 

 

 

 

塔矢家に着くと今回は久美子が出迎えてくれた。

腕の中には佐為が眠っている。

 

「進藤君、いらっしゃい。また咲似に会いに来てくれたんだってね」

 

久美子が笑顔でヒカルに話しかける。

 

「さ……い……?」

 

この子供が佐為の生まれ変わりであるから合ってはいるが、何故久美子が佐為の事を知っているのか疑問に思う。

 

「あれ? アキラさん、最初に来たときに言わなかったの? もう何度も来てるのに…」

 

久美子がやれやれと苦笑いする。

 

「この子の名前は『咲似』。花が咲くの咲くに、似るって書いて『さい』って言うのよ。よろしくね」

「あ、あぁ。『咲似』ちゃんね。よろしく」

 

ヒカルはびっくりしつつも、漢字違いかと納得する。

 

「はい! 今回も咲似の面倒見てくれるんでしょ?」

 

と久美子は満面の笑みで咲似をヒカルに渡す。

ヒカルが来る度に、面倒を見るからとアキラが咲似を抱きかかえて行くので、さすがに久美子も直接ヒカルに渡した。

眠っていた咲似が目を覚ます。

 

「私は今からあかりに会いに行くから後はよろしくね」

 

と久美子はそのまま外出してしまった。

 

「佐為、お前の母ちゃん、出てったぞ」

「そうですね」

 

とはっきり話せるようになった佐為とヒカルは呆気に取られる。

まぁ、いない方が気兼ねなく碁を打てるから良いかと思い、玄関で靴を脱いでアキラのいる部屋に向かった。

 

 

「塔矢!」

 

とヒカルはアキラに声を掛ける。

 

「来たか。……咲似も一緒なんだね。久美子はもう出掛けた?」

「うん。佐為を俺に渡した足でそのまま出てった」

 

アキラからの質問にヒカルが答える。

ヒカルに触れている間は佐為だから、1才とは思えない程とても大人しい。

だから男2人でも安心して面倒を見てられる。

 

「そういや、子供の名前、咲似って言うんだな。俺びっくりしたよ」

 

とヒカルが笑いながら言うと、アキラはキョトンとする。

 

「……言ってなかったっけ?」

「言ってねぇよ!」

 

1年越しに子供の名前を知るとか普通有り得ないだろ。

恥かいちゃったよ、俺。

 

「でも、違和感ないだろう? 女の子の名前としても可愛いしね」

 

とアキラは気にせずヒカルに笑顔を向ける。

 

「俺としては佐為は男だから違和感ありまくりだけどな」

 

とヒカルはアキラを牽制するも、キラキラと笑顔でいるアキラに、

 

「君が呼び間違える心配もないしね」

 

と言われるとぐぅの音も出なくなってしまった。

 

「そろそろ打ちましょうよ! ヒカル」

 

と佐為がヒカルに向かって話しかける。

 

「そうだな」

 

とヒカルは言うと碁盤の前に座り直す。

立てるようになった佐為はヒカルの膝の上に立ち、碁盤全体を見渡す。

ヒカルが一手目に17-4に打つと佐為は16-17とはっきりとした口調で話し、ヒカルはそこに白石を置く。

まだ扇子も碁石も全体に届かないし、ヒカルから離れては佐為でなくなるため今度は言葉で指示していく。

2人分の碁石を並べるのはそれなりに疲れるが、佐為といられる幸せは大きかった。

一度佐為の分はアキラに打って貰った事があるが、対極に座っているので置く場所が反対になり上手く行かなかった。

ヒカルと佐為の対局が始まるとアキラはお茶の用意をしに台所へ行き、完全に傍観者だ。

対局が終わると検討し、佐為とアキラ、また佐為とヒカルの順に対局と検討を繰り返す。

たまにヒカルとアキラの対局もやるが、囲碁サロンでも打てるので、この場では基本的に対局しない。

 

 

 

「ただいま」

 

と久美子が玄関を開けて声を掛ける。

パッと時計を見ると21時を回っており、

 

「やべ。あかり、怒ってるかも」

 

ヒカルは急いで碁石を片付ける。

 

「進藤君、そろそろ帰らないとあかりが……」

「分かってる。またな、佐為・塔矢」

 

部屋に入ってきた久美子の言葉を遮りながら佐為をアキラに渡し、玄関に向かう。

バタバタと帰っていくヒカルを横目に見ながらアキラは落ち着きがないなぁと思いつつも、定期的に佐為に会えるからか精神的には落ち着いていることに安心していた。

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