バレンタインの話は書けず、ホワイトデーも書けなかったので後日話を書いてみました。
笑って貰えたら嬉しいです。
アキラはヒカルに対して冷やかな目を向けている。
そして、あかりに憐れみの目。
アキラは心底、本当に心底思った。
「君がどうして結婚出来たのか不思議だよ」
「何でだよ。バレンタインのお返しがないくらいで大げさじゃん」
ヒカルはアキラの言葉に口をへの字にして反論する。
すでに3月14日が過ぎたある日曜日。
いつものパターンで進藤家が塔矢家にお邪魔したのだが、今日は昼御飯を皆で食べようと台所に久美子とあかりが準備をしている最中だ。
咲似がもうすぐできると囲碁部屋へ呼びに来た時、アキラが一番に服と髪飾りを誉める。
「着替えたの? 似合ってるね」
「へへっ! ありがと。お父さん」
咲似はパッと笑顔に溢れてヒカルの方にも顔を向けて誉め言葉を待つ。
「何かいつもと違うのか?」
ヒカルはマジマジと咲似の顔を見て考える。
「ヒカルおじさん、ひどい! お父さんからこの服と髪飾りをホワイトデーに買って貰ったの!」
普通ならチョコのお返しはクッキーや飴を用意するのだろうが、ショッピングに行った時に物欲しそうに見ていたのが印象的だったので、アキラは洋服とそれに合いそうな髪飾りを買ってあげていた。
今日はそのお披露目。
咲似は怒りながらもお気に入りの服と髪飾りをくるりと回ってヒカルに見せる。
「オレ、分かんねぇよ。それより飯だろ? 行こうぜ」
ヒカルは咲似のオシャレを見ても反応なし。笑顔で台所を指差し足を廊下に向ける。
「ヒカルのばかぁ───っ!」
ショックで大粒の涙を流し始めた咲似は佐為に入れ替わる。
佐為はヒカルの耳元に近寄って大声でヒカルを責めた。
「佐為! 何だよ。オレが触れなくても出てこれんじゃねーか」
「違います! 咲似ちゃんがショックで奥に引っ込んじゃっただけです!」
「何だよ、それ。オレが悪いみたいじゃねーか」
「ヒカルが悪いんですよ! お気に入りの服とプレゼントの髪飾りですよ。いつもより高くて可愛いでしょ? 謝って下さい」
「いつもより高いなんてオレ、知らねぇよ。いつも高い服着てんじゃねーか。変わってるなんて分かんねぇよ」
「ヒカルは女心が分からなすぎです! 髪飾りはいつもしてないんだから髪飾りぐらい誉めれるでしょ」
「髪飾りぐらいってお前も分かってねぇーじゃねぇーか!」
「口答えばっかり上手くなってどうするんですか! 良いですね! 咲似ちゃんに謝るんですよ」
廊下に出た所で二人のケンカが続いている。
ヒカルと佐為の口論をアキラは止めようとオロオロしていた。
しかし、止める間もなくそのまま佐為は咲似に入れ替わる。
「あ、おい! ……咲似か。か、か、か……」
「か?」
咲似はまだ涙目になっている。
ヒカルをじっと見つめて言葉を待っている。
ヒカルが佐為に言われたように伝えようとするが、普段あかりにも言ったことのない言葉を言うには、あまりにも恥ずかし過ぎる。
顔を真っ赤に染めて耳まで赤くなり、下を向いて廊下を見つめながらやっと咲似に聞こえる程度の小さな声で伝える。
「か、可愛いよ」
「ありがとう」
咲似は笑顔に変わってお礼を言う。
告白でもしたかのようなヒカルの態度。
「何やってるの? 冷めちゃうから早く食べに来て」
咲似が呼びに行ったのに帰ってこないので、あかりがさらに呼びに来たのだった。
「ヒカル、熱でもあるの? 顔赤いよ」
「何でもない! さっ、飯だ飯。行こうぜ」
あかりに目を合わせないように庭を見ながら廊下を歩くヒカル。
「?」
意味不明なヒカルの態度にあかりはキョトンとする。
「私の服と髪飾りを誉めてくれたの」
「ああ。それで恥ずかしがってるのね」
咲似が説明するとあかりは納得した。
「誉め言葉なんて言わないし、プレゼントなんて絶対しないから。慣れない事してどんな態度すれば良いのか分からなくなってるのね」
「プレゼントしない? ホワイトデーは?」
アキラが質問する。
「チョコは毎年あげるけどお返しは一度もないわ」
「え……」
あかりが当然のように答えるが、アキラと咲似はドン引きだ。
咲似は言葉を失ってしまった。
アキラがヒカルに言う。
「君がどうして結婚出来たのか不思議だよ」
「何でだよ。バレンタインのお返しがないくらいで大げさじゃん」
本当にあかりは女神様か何かなのだろうか。
アキラと咲似はあかりを心から尊敬した。