やばいやばいやばい!遅刻だ!
よりによって、なんで今日に限って寝坊するんだ…
今日は、待ちに待った日。今日は、声優のライブに行く予定の日なのだ。
名前は柊カノン
彼女は高校3年生の時にデビューし、3年という短い期間で高い人気を得て、現在は大学に通いながら声優活動をしている。その才能、努力、美貌あらゆる点で人気があり、その魅力に俺もやられたのだ。
俺はどこにでもいる大学2年生。成績がいいわけでも、家が金持ちでもない。どこにでもいそうな一人の大学生。
俺は半年前、柊カノンさんのライブに当選した。そのことをあるSNSで呟いたところ、よくカノンさんのことで盛り上がっていた人も当選しており、偶然にも席が隣だったのだ。住んでるところもそう遠くないことから待ち合わせして、一緒に行こうということになったのだが…
「響也〜!今日用事があるんじゃないの〜?まだ起きなくていいの〜?」
俺の名前は宮内 響也《きょうや》。俺の名前を呼んだ女性は、俺の母の花澤 京《はなざわ みやこ》。どこにでもいそうな母親だ。俺の家庭は少し複雑で、俺の両親は昔、交通事故で他界した。隣の家に住んでいた幼馴染みの親である京さんと京さんの夫の颯斗《はやと》がここまで育ててくれ、大学の学費まで出してくれている。俺もバイトをしているのだが、それだけじゃ全然足りていないのが現状だ
それもあり、京さんの家事の手伝いなどもよくしている
おっと、こんなことしてる場合じゃない。いじっていたスマホをポケットに入れ、俺は急いで階段を降りリビングに向かった
「おはようございます、京さん、俺そろそろ行ってくる!」
「行ってらっしゃい、響也。気をつけるんだよ」
「ありがと!用事終わったらすぐ帰る!」
俺は小走りで駅に向かう
最寄り駅から目的の駅まで10分。人を待たせてしまっている、それもネット上の知り合いなのだ。移動時間の10分がとても長く感じてしまう。
同い年とは聞いているが、怖い人だったらどうしよう…
話し方的に男性だよなぁ…着いたらすぐに謝ろ
よし!着いた。ホームで待ち合わせだよな。どこに居るんだろ…
「あ、すみません。怪我はありませんか?」
よそ見していた俺は、女の人にぶつかってしまった。怪我は見た感じなさそうだ
「あの立てますか?」
そう言い、俺は右手を伸ばした
「えっと、ありがとうございます。あのもしかしてヒビヤさんですか?」
「はい、そ〜ですけど」
彼女はヒビヤと、俺のことをそう呼んだ。ヒビヤは、昔から使ってるネットをする時の名前だ。
…もしかして…
「あの、もしかしてカナデさんですか?」
「はい、カナデです」
笑顔で微笑むカナデさんの笑顔はとても眩しく、素敵で、可愛かった。そんな彼女の顔を見た俺は、しばらくぼーっとしてしまっていた
「え、えっとヒビヤさん!?どうかしましたか?」
「いや、あの…えっと…なんというか、失礼かもですが。話し方的に男の方だと思っていて…」
「あ!すみません!そ〜ですよね…一人称僕だし、かわいい女の子の話ばかりしてたのでそう思われても仕方ないですよね」
「謝らないでください!悪いのは僕なんで。よろしくカナデさん」
急な展開に思わず、僕なんて言ってしまった…僕なんて言わねーよぉ…
「はい!よろしくお願い致しますね。ヒビヤさん」
「はは、その呼び方リアルでされるとなんか恥ずかしいな…」
「で、ではなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「宮内響也って言います。年齢は19です」
「宮内くんって呼ぶね。私は速水楓《はやみ かえで》。楓でいいよ!年齢は19だよ!同い年だから敬語なしってことでいいかな??」
え、こっちは苗字なのに名前で呼んでって…
深い事情があるのかな、詮索しない方がいいかな
「よ、よろしく楓さん。分かったよ」
家族以外の女性を名前で呼んだことない俺からしたら、かなり気恥しいが、どこか嬉しい気持ちもある…ダメだ!そんな事考えたら
「それじゃ行こっか。宮内くん」
「そうだな。行こうか。遅刻してごめん。」
「私も着いたばかりだったから気にしないで!謝らないで!これから楽しいライブなんだから!楽しもうよ!」
「おう!」
彼女が差し出してきたグーの手に俺もグーの手を作り合わせる
って!なんでこんなこと自然にしてるんだ…
俺達は少し足早にライブ会場を目指した
続く