この力、この世界で役立つのか?   作:zaurusu

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やっと終わった


番外編 一夏の誕生日 final

この世界についてどう思うかか……

 

簡単な質問なのに、いざ答えるとなると何も思い浮かばない。

 

故に

 

「……わからないです」

 

そう答えるしかなかった。

 

「………そうか」

千冬はそれを聞いて、予想外だったのか少し驚いた顔をしていた。そしてすぐに、なにかを思ったのか表情が先程よりも暗くなった気がする。

 

正直、今の世界をどう思うかなど、次狼には重すぎる質問だった。

 

慎重に選んだ結果が“わからない”だ。

 

極端に言えば、女は住みやすい、男は住みにくい世界になった事だ。

 

次狼もこの世界に来て、あまりいい思い出はない。

 

でも、これだけは言える事がある。

 

「……でも、千冬や束といるのは楽しいですよ」

 

この世界に転移して初めてできた友人であり、親友。もし、二人と出会わなかったら、孤独に生きることになったかもしれない。

 

出会いは最悪なものだったが、千冬とはこうして買い物に一緒に楽しむ仲になった。

 

束は相変わらずというか、自由奔放でたまに厄介ごとを持ち込まれたりと一緒にいるとロクな目に合わない。

 

だが、一緒にいて飽きることはないし、なにより弄ると面白いから、千冬共々と良好な関係である。

 

人生というのは本当に不思議なものである

 

「…………そうか、やはりお前は……」

 

何か言ったようだが小さくて聞こえなかった。そして、安心したのか千冬は黙ったままだが、頬が一瞬だけ緩くなり、微笑んだ気がした。

 

「千冬、こんな言葉知ってますか? 」

 

「?」

 

「我思う、故に我あり。とある偉人が残した言葉ですよ。自分を含めた世界の全てが虚偽だとしても、まさにそのように疑っている意識作用が確実であるならば、そのように意識している我だけはその存在を疑い得ない。『自分は本当は存在しないのではないか?』と疑っている自分自身の存在は否定できない。―“自分はなぜここにあるのか”と考える事自体が自分が存在するという意味ですよ」

 

今の千冬はどこか自分を否定してる気がする。自分のせいで世界が変わってしまい、ブリュンヒルデと呼ばれるようになって状況が更に一変した。そして、いつか自分が何なのかわからなくてなってしまったのだろう。

 

だから、あんな質問をして来たんだとおもう。

 

「千冬がブリュンヒルデだろうと、親友である事は変わりません。いくら、千冬が自分を否定していても俺は否定しません。なんせ、千冬は……」

 

弟想いの強くて優しい親友なのだから。

 

 

 

 

said 千冬

 

「わからない」

 

次狼からそれを聞いた時は、予想外だった。それと同時に、なんとも言えない感情が湧き上がって来た。

 

勝手に期待をしておいて、私がとやかくいうことではない。

 

でも、私は無意識に心の何処かで次狼を頼っていたのだ。

 

こいつなら、何かわかるかもしれないと。

 

それ故、次狼のこの答えは私の心を大きく揺さぶる事になった。

 

今思えば、ずるい質問だった。

 

自分も分からないし、正しい答えなんてないのだから。

 

わからない、という次狼の言った言葉は一種の正解なのかもしれない。

 

やはり私は……と思った時だ

 

「……でも、千冬や束と一緒にいるのは楽しいですよ」

 

これも予想外だった。

 

私といるのが楽しいなんて、言ったのは一夏を除いて、あのバカ(たばね)以外は誰もがいなかった。

 

先程同様、なんとも言えない感情が湧き上がってくるが、先程とは違い何かこう暖かく抱かれるような感覚だ。

 

はっきり言ってこれがなんなのかは分からない。でも、悪くはないのは確かだ。

 

「……そうか、やはりお前は……」

 

私同様、ずるい奴だ。

 

私は自然と微笑んでいた。

 

そして、追い討ちをかけるかのように次狼が言った言葉で私の迷いは一瞬にして消え去った。

 

最後に何か、ボソッと言ってはいたがよく聞こえなかった。

 

でも、私を否定しないとはっきりと聞こえた。

 

そして、私はまた助けられたのだと、悟った。

 

本当にずるい奴だ。

 

でも、ありがとう。

 

私もお前を否定したりはしない。なんせ、お前は…………

 

………なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「「「「一夏、お誕生日おめでとう!!」」」」

 

無事、一夏くんの誕生日会が行われた。

 

豪華な料理がずらりと並び(弾くんと鈴ちゃん作)ならび、家には横断幕などが飾られていた。変なところで万国旗が飾ってあったのが謎だが。

 

食事を楽しみ、いろんなゲームをしたあと、プレゼントを渡す時間になった。

 

弾くんからは、クロムハーツのアクセサリーを

 

鈴ちゃんは何故か、中華鍋セットをプレゼントしていた。料理好きな一夏君は結構喜んでた。

 

数馬君は何やら丁寧に包装された、薄い本を渡していたけど完全にアレだろうな。

 

そして、千冬の番になったが、いかんせん恥ずかしいのかなかなか渡さないので助け舟をしてようやく渡せた。

 

初めて見る、二眼レフカメラに興奮していたが、色がマゼンタなのが少し気になったのか、最初は「え〜」の顔していたが、不思議と引き寄せられる感じがした事と、なにより似合っていたので、気に入ったようだ。

 

早速、記念に一枚撮る事になったのだが、何故か千冬とのツーショットを取る事になった。

 

腕を組んでとか、もっと寄ってとか、一夏君てそんなキャラだったかな?

 

先程から弾君たちがこっちを見てニヤニヤしているが、何故だろうか。

 

千冬も何故か顔が赤いし……酔っ払ってるのかな?

 

そんでもって、記念すべき二眼レフカメラの写真第1号は次狼と千冬のツーショットになった。最初、ぶれないか心配してたが、物凄く鮮明に写っていた。

 

それは、どう見てもカップルにしか見えないとかなんとか。

 

 

余談だが、一夏君はカメラを余程気に入ったのか、常に装備するようになり、それを見たクラスメイトの女子は、その容姿と二眼レフとは古風だけどマゼンタ色なのがこれまたいいと更にモテたんだとか。

 

更に、カメラを持ち歩けばモテると勘違いした男子たちがこぞって二眼レフカメラを求めるようになったが、いかんせん見つからず、見つかったとしても学生が買える値段ではないので撃沈したんだとか。

 

どうやら、一夏君は何かしらのブームの牽引役になってるようだ。

 

 

 

 




一気に飛ばして、原作(一夏がISを触るところまで)へ進むか、少し日常編書いた方がいいのか。迷っています。

でも、鈴ちゃんとのお別れや第2回モンドグロッソ編は書きたいな〜。

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