「なるほど、異世界からの転移か……」
「むー、並行世界の存在は科学的には証明されてるけど、強制的に転移させたりするのは、天災の私でも無理かな〜。」
次狼は二人を自宅に招き入れ、自分の正体を包み隠さず伝えた。最初は半信半疑の二人だったが、原作の知識をフルに使い、なんとか納得させることが出来た。
とはいえ、その間にいざこざがあったりもした。
敵意がない事をはっきり伝え、千冬さんは信じてくれたみたいだが、束はどうも信用できなかったようで、俺が振り向いた一瞬の隙に、対IS専用の拘束ワイヤーで俺を拘束した。
対IS用なだけあって、巻きつく力は人間の身体を簡単に引き裂くような威力だった。
まぁ、俺の場合は少し骨の関節が鳴った程度だったけど。
予想外の結果に束は呆然としていた。その隙に強制的に解いた……もとい、引きちぎった。
二人とも終始驚いていたっけ?そりゃー、対IS用武装が簡単に壊されたらそうなるか。
大人しく、捕まっとけばよかったかもしれないと思う。
まぁ、やってしまったものは仕方がない。
その事に切れた千冬さんが束さんにアイアンクローをかまして気絶させたことは言うまでもない。
束が目覚めるまで、千冬さんと軽く会話した。その結果、今度、暇な時に組手をする約束をしました。
「は!頭はあるよね!?」
どうやら、束さんが目覚めたみたいだ。まぁ、俺がここにいる限り、絶命させることはまずないかな。
少し混乱しているようだから、静か茶(質素な味だが、飲むと気分が落ち着く)を出したところ、最初は渋い顔をして飲んでいたが、段々と柔らかな表情になった所で、話を再開したのだった。
まぁ、そんな感じで今に至るわけです。
千冬さんに仕事をしてるのか?と聞かれ、一応株をやっている事と、再生屋のことを話した。
そしたら、「「再生屋ってなに?」」と2人に聞かれたので、詳しく説明した所、興味を持ったらしく軽く2時間は質問攻めされた。その間に、ノッキングの事も話した。
特に千冬さんはノッキングに深く喰いついてきた。
「成る程、そのノッキングとやらは私にも出来るのだろうか?」
「んー、出来ないことは無いですけど……その為には相手の身体の特徴を瞬時に把握する事と、絶妙な力加減ですね。下手したら、相手を死なせてしまうこともありますし……」
「そうか……」
千冬さんは少し残念そうだった。ダメージノッキングくらいなら教えても良いかと思ったが、トリコで次郎がダメージノッキングにより抑えられていたダメージをアカシアに解除され、即死した事を思い出して踏みとどまった。
なんの拍子にノッキングが解けるかわからないのも理由の一つである。星がいくつも爆発するダメージなんてとても耐えれるわけがない。
「あ、でもこれを使えば簡単に出来ますよ?」
次狼が取り出したのは、ノッキングガンである。
「これは、ノッキングガンと言いまして、引き金を引くと2つの銃口から特殊な針を打ち出して、相手を縛る道具です」
このノッキングガンは次狼がとある大物政治家をコネに使い、IS専用の武器を作る特殊工場で特別に製造して貰った物である。
だが、作って貰ったはいいが肝心の特殊な針は製造不可と言われたので次狼がわざわざ作るはめになった。
金属を使うと人体に悪影響が出る可能性がある為、この針は天然素材100パーセントかつ、有害物質などは一切入っていない身体に優しい物である。
この世界にはトリコの世界の様な猛獣はいないので、ノッキングガンはだいぶ小さめにコンパクトになっている。飛び出す針も最大で爪楊枝ぐらいの大きさだが、効果は抜群である。
「ほぅ、これが……」
ノッキングガンを興味津々で見つめる千冬さんは一見落ち着いている様にみえるが、目がキラキラしていて子供の様に興奮していた。
「ヘェ〜、この先が尖ったちょっと大きめのもノッキングガンってやつなの?」
千冬さんとは違い、束は技術者面でノッキングガンを興味津々でじっくりと調べていた。
「それは、ハードタイプですね」
「ハードタイプ?」
「ノッキングガンには種類がありまして、今、千冬さんが持ってるやつは撃ち込み型のノッキングガンでノーマルタイプです。そして、束さんが持ってるのが針を飛ばすタイプのノッキングガンハードタイプです。他には、デリケートタイプなんてものもありますね。」
「んー、簡単に言うと、ちーちゃんの持ってるやつがショットガンで私が持ってるのがスナイパーライフル……みたいな事でいいのかな?」
「まぁ、ざっくり言うとそんな感じです。」
あながち、間違いではないので否定はしない。
両方とも発射すると、衝撃と振動が伝わるが、その中でもハードタイプは群を抜いて強い。一瞬でも力が緩めば骨が粉々に砕けてしまうかもしれない。
「でも、なんかデザインださくない?」
「そうですか?僕は好きなんですけど……」
まぁ、見る人によってはダサいかもしれない、そう思うとスタンガンにしか見えなくなってきた。
「ねぇ、これちょっと借りていいかな?」
「え、別にいいですけど……」
束さんに貸すのはちょっと不安があるが、本人は絶対悪用しない事、分解したら元に戻すこと、壊したら弁償する事を条件に、貸し出した。ついでに、針の材料や造り方も詳しく聞かせてほしいと言うので、こちらも、条件付きで渡した。
「やった!!」
そう言って、喜ぶ姿はなんとも言えないくらい純粋で心が癒される気持ちだった。
最初はピリピリしていた空気が数時間後には明るく楽しい雰囲気へと変わっていった。
気がつけば、もう5時過ぎ。そろそろ、ゴンが散歩を終え、一夏君たちが帰ってくる頃だろう。
「千冬さん、束さん……」
「千冬でいい。お前ほどの実力者にそう言われるとむず痒い」
「私も束でいいよー!」
「そうですが、なら俺の事も次狼って呼んで下さい」
「ああ。」
「了解だよ、じー君!」
じー君ね……悪くない。
束に認められた事に嬉しくなっている次狼だが、これが後々、千冬共々苦労する羽目になる事をまだ知らない。
因みに、2人が帰る際、次狼はそれぞれにお土産を渡した。千冬には無類のお酒好きと言う事で、サマーウイスキーを。束には、一粒食べれば1ヶ月は不眠不休で動けるメテオガーリックのエキスを絞った特製栄養ドリンクを渡した。
その後、千冬はサマーウイスキーを大変気に入ったようでちょくちょく次狼の家に遊びにきては飲んだり、政府の愚痴を吐いたり、酔いつぶれて一夏君の家に運ぶ羽目になったりしている。つい先日、一夏君から禁酒令が出ました。ものすごく、落ち込んでた。
お酒は飲んでも呑まれるな……全くその通りだ。
束はと言うと、メテオガーリックの影響で以前より仕事が倍以上に速く処理できるようになったが、副作用で筋肉ムキムキになるため、自重しているようです。衣食住をまともにしてればいい話なんだがな。
俺はどうなってるかって?
いつも通り、変わらなく暮らしていますよ。極たまに、2人が遊びにきては秘蔵のワインや食材を漁られる事以外はな。
でも、なんだかんだでこの2人といるのは悪くない。
いつまでもこんな感じで過ごせればいいなと次狼は密かに思うのだった。
バトル展開になると?残念!
そろそろ、原作を始めようかなと考えています。でも、その前にお気に入り件数が500人を超えたので番外編を書きたいと思います。
お楽しみに!