「へぇー、明後日は一夏くんの誕生なんですか」
千冬と束と仲良くなって数ヶ月。珍しく、千冬さんが話があるとか真剣な表情なので、何かあったのかと聞いたところ、明後日は一夏の誕生日で誕生日会をやるのでいつもお世話になってるから誘いに来たようだ。
「で、誘うついでに一夏君に何をプレゼントすればいいかわからないから相談に来たと?」
「ああ、いつもは忙しくて行けなかったが、今回は運良く休暇を取れてな。普段、家はあいつに任せっぱなしだからな……姉として何かしてやりたいと思っているんだが……」
確かに、誕生日会に家族が揃わないのは悲しい。千冬いわく、いつもは五反田食堂か鈴ちゃんの中華料理屋でやっていたみたいだけど、今年は家族全員揃うと言う事で織斑家でやるそうだ。
料理や飾り付けは、弾君達がやるみたいだが、千冬さんはそういった分野は苦手だから実質何もやることがないそうだ。
それなら、せめてプレゼントだけでも特別なものを送ろう……といった感じだ。
俺?料理に使う食材や調味料は全部俺が出してます。因みに、全部再生させた物です。
「なら、一緒に買い物にでも行きますか?丁度、新しいショッピングモールが出来たみたいで、どこも開店セールとかやってるようですし」
確か、レゾナンスとかいったかな?原作で一夏君がシャルロットと水着を買いに行くときの場所で、ラッキースケベが発動したりして、ヒロインズと色々と修羅場になってたっけ?
それはともかく、ありとあらゆる物が売ってるようだし、千冬の目にとまるものも多くあるだろう。
「ふむ、それはいいアイディアだな。だが、今日はもう遅い、明日にしようと思うのだが?」
「そうですね、では、明日の9時に迎えに行きますね。」
「ああ、わかった」
「それでは、また明日。お休みなさい〜」
「ああ、世話になったな。お休み」
そいって、千冬は家を出ていった。
千冬と買い物か……あれ、よく考えたらデートじゃないかこれ?いや、ただ買い物に行くだけだから違うか。
何考えてんだか。
千冬もそんな気全くないだろうし、何より俺なんかじゃ、とても釣り合わないよ。
八神次狼……生まれてこのかた異性と全く縁がない故に思想が一夏と一緒になりつつあった。
said千冬
「やはり、相談して正解だったな」
千冬は帰り道、次狼に相談してよかったと心から思っていた。
最初は束に相談しようかと思ったが、彼奴は何をしでかすかわからないからない。
以前、クリスマスの時なんか、夜中にサンタクロースの格好をして訪れたかと思ったら、一夏に怪しげなDVDを渡していたのを発見し、取り上げて、再生させたら、「ちーちゃんの写真集!すぺしゃるばーじょん!」と画面にデデーン!んと現れた瞬間、私の高校生時代に束に無理やりコスプレさせられた、黒歴史写真がたくさん写っていた。
無論、それを見た千冬は般若以上の鬼と化し、問答無用で束にアイアンクローをかました。
深夜のクリスマスに女性の叫び声が町中響き渡たり、翌日に怪奇現象としてニュースや新聞で取り上げられたりしていた。その真相を知るのは一夏と千冬だけである。当の本人である束はその日の記憶がないんだとか。自業自得とはまさにこのことだ。
その後、DVDは粉々にされ、溶鉱炉で溶かされたとかなんとか。
このような事があり、こういった相談は殆ど次狼に持ち込まれている。
だが、彼奴のことだ。また、何かやらかすに違いない。その時はどうやって追い返してやろうかと考えている内に家に到着した。
「あ、おかえり千冬姉!」
扉を開け、部屋に入ると丁度、一夏が夕飯の支度をしていた。
「もう少しで出来るから、お皿だしといて」
「ああ、わかった」
言われた通り、千冬は食器棚から手頃な皿を取り出し並べる。しばらくすると、そこに一夏がやってきて適当に料理を盛り付けはじめた。
「ほう、今日は親子丼か」
「ああ、次狼さんから鶏肉と卵貰ったんだ。ついでに親子丼のレシピもくれたんだ」
料理してるときの一夏は本当に楽しそうだ。
それにしても、次狼直伝のレシピか。彼奴の作る料理はいいつまみになるから、味は期待できる。
む、この親子丼からする香りは……もしや
「一夏、この鶏肉、もしかしてニンニク鳥とか言うやつじゃないか?」
「あれ?なんで知ってるの千冬姉?」
「この前、彼奴の家を訪ねた時に、鶏舎見たいな所があってな。そこで、肉垂(にくすい)がニンニクの形をした変な鳥を見てな。彼奴に聞いたところ、そんな事を言っていたのを思い出してな……」
実際には、こっそり次狼の家に束(月に3回は来る)と飲みに言った時につまみとして出されたのが正解だが、禁酒令が出されているので、バレないようにごまかした。
我ながら、素晴らしい言い訳だと思う。すこし、一夏が「そんな場所あったけ?」という疑問に少しドキッ!としたが、「まぁ、いいか。」と気にしてないようなので助かった。
「それより、早く食べようぜ!」
「ああ、そうだな!」
手を合わせて、頂きますをやる。
普段は、あまりやらない千冬だが次狼にその事を指摘され、説得と言う名の説教をくらい、やるようになった。
あのときの次郎は、本当に恐ろしかった。
でも、そのおかげで私の中の命に対しての考え方が変わったのは事実だ。
「うまいな」
一口食べると、大きめにカットされた肉から、じゅわっと肉汁が溢れ、ニンニクの香りが広がっていくと卵のふわふわな食感と濃厚な甘みを引き立てている。これは、箸が止まらなくなる。
あー、ビールがあればもっと最高なんだが……
「ダメだよ千冬姉」
やはりだめか……
「あ、そうだ千冬姉」
千冬が少し、落ち込んでいると一夏が何かを思い出したかのように語りかけてきた。
「どうした?」
「明日、俺は弾の家に遊びに行くけど千冬姉は何か予定はある?」
「明日か?明日は次狼とレゾナンスに行く予定だが……」
「え?」
一夏は千冬がいつも忙しい事から、休日はゆっくりと家で過ごすと思い、そらなら、昼食でも簡単に作っておこうかと考えていた矢先、予想外の答えが返ってきたため、驚いてしまった。
「千冬姉、今なんて……」
聞き間違いかな?もう一回聞いてみよう。
「だから、明日は次狼と買い物に行くと……聞いてるか一夏?」
「………はっ!ああ、聞いてるよ」
やはり、聞き間違いでは無かった。
てか、買い物って……それってデートじゃないか!?
嘘だろ、千冬姉が!?世界最強、歩く兵器と言われ、家事全般が全滅なあの千冬姉がデート!?
「一夏、何か失礼なこと考えてないか?」
「いえ、何も」
「まぁ、いい」
危なかった、千冬姉はなぜか人の考えている事がわかるみたいで、時々、エスパーなんじゃないかと疑った時期があった。
それにしても、次狼さんとデートか……美味しい食材を分けてくれたり、ときどき、酔いつぶれた千冬姉を運んできてくれたりと色々とお世話になってるし、束さんとも仲がいいみたいだし……これは、どうすればいいんだ?せっかく千冬にきた春だし……温かい目で見守ればいいのか?どうすれば……
「よし、決めた」
「なにがだ?」
一夏の中で1つの決心が出来た。
「ところで千冬姉、明日、次狼さんと買い物の訳だけど、どんな服装で行くの?」
「服装?そんな物適当でいいだろ?」
いつもは、各国の代表や重鎮と会うのでメンズスーツでちゃんとした格好はするが、今回はオフだ。動きやすいのでいいだろう。
「千冬姉、
あまりにズボラな答えに一夏の全身がぷるぷると震えだした。
「明日は俺が服装を選ぶ。それでいいよな、千冬姉?」
「いや、だから簡単なので……」
「い・い・よ・な・?」
「………はい」
このモードの時の一夏は逆らってはいけない。素直に頷く千冬であった。
しばらくして……
千冬が風呂に入っている隙に一夏は自宅の電話でとある人物としゃべっていた。
「もしもし、弾か?」
「どうしたんだ一夏、こんな時間に?」
弾は明らかに眠そうで、ときどき欠伸をしているのが電話越しでも分かる。
「実は……」
一夏、説明中……
「……と言う訳なんだ」
「……マジかよ!?あの千冬さんがか!?」
その話を聞いて、弾も驚きを隠せなかった。
「ああ、間違いない」
「そうか、で、お前はどうするんだ?」
「どうするってそりゃー……」
作戦会議中……
「わかった、じゃ、明日は8時に俺の家に集合な。あと、鈴の奴も誘うか?」
「ああ、そうしよう」
「そろそろ、千冬姉が出る頃だ。詳しくはまた、明日な」
「ああ、おやすみ」
「またな」
受話器を置くと同時に千冬姉が風呂から上がってくる音が聞こえた。
丁度、服も選び終わった事だし、風呂に入ってその後、鈴を誘って、今日はもう寝よう。
因みに、一夏が鈴に電話をかけた時
「鈴、ちょっといいか?」
「こんな時間になによ、一夏?」
「それについては悪い、ところで話があるんだ」
「話?」
「明日、レゾナンスに(偵察しに)行かないか?」
「え?」
「だから、明日、レゾナンスに行かないかと聞いてるんだ。」
「え、それってもしかして……デート?」
「ああ、そうなんだ(千冬姉と次狼さんが)。どうしても、お前に確認してもらいたいことがあるんだ。」
「ーーーッ!わかった!明日どこにいけばいいの!?」
「大丈夫だ、明日迎えに行くから(弾と一緒に)」
「ええっ!?」
「おっと、これ以上はまずいからまた明日な。」
「あ、ちょっと一夏……」
プープープー
「一夏が私をデートに……」
鈴、一夏が詳しい説明を省いたため、デートに誘われたと勘違い。
久しぶりです。番外編も多分あと2つくらいかと。原作はどう始めようか悩んでるところです。