今日は千冬とレゾナンスへ買い物に行く日だ。いつもは、ラフな格好をしている次狼だが、今回はジーンズに、長袖、ダンガリーシャツ、スポーツサングラスといった、少しオシャレな格好をしていた。
約束の時間まで20分はあるが、千冬からメールで「そっちの準備が出来たら、直ぐに来い」と送られてきたので、急いで迎えに行くことにした。
side千冬
「なぁ、一夏、本当にこれを着るのか?」
私、織斑千冬は目の前の衣装に困惑していた。メンズスーツとかならともかく、これは……
「そうだよ、千冬姉。せっかくの買い物(デート)なんだから、それぐらいはしないとダメだよ。」
扉越しから一夏に注意される。
だがしかし……
「私には、このようなものなど似合わないと思うのだが……」
つば広帽子にサングラス。恐らく、変装用だろう。以前、変装せずに街を歩いたら、それに気づいたファンが寄ってたかって大騒ぎになった事もあるからな。
これは、百歩譲ってよしとしよう。
問題はこれだ!
勢いよく取り出したのは、以前、あの馬鹿兎(たばね)から渡されたロングスカートとトップス。
「ちーちゃんなら絶対似合うから!」とご丁寧にサンダルまで揃えて渡されたのだが、着るのめんどくさいからとそのまま放置していたのを一夏が覚えていたようで、わざわざタンスの奥から探りだしたのだ。
一夏も「これ、千冬姉なら絶対似合うよ!」と笑顔でハキハキと言うものだから下手に断れなかった。
「むぅ……」
千冬がロングスカートとに戸惑うには訳がある。それは、高校3年の頃に、束とゲームをし、負けた結果、罰ゲームでフリフリのフリルがあしらわれた、ロングスカートのメイド服を着て、束に大爆笑されたのが理由だ。
まぁ、このロングスカートはあれに比べたら、だいぶ落ち着いていて、ましだ。
「おーい、千冬姉!早くしないと次狼さんが迎えに来るよ!」
気がつけば、8時35分。メールで「そっちに向かいます。そっちは大丈夫ですか?」とメールがが来たから、「大丈夫だ。」と直ぐに返信したはいいものの、全然大丈夫ではなかった。
「………ああ、もうやけだ!」
覚悟を決めて、私はロングスカートを履き始めた。
said out
「おはようございます、次狼さ……」
「おはよう一夏君、どうしたんだい?急に黙り込んで?」
織斑家に着くと、丁度一夏君が玄関前で掃除をしていた。朝早くからご苦労です。
一夏君が俺に気づいて、挨拶をしたが、なぜか黙り込んでしまった。
「いや、なんかすごい車だなーと思って……」
あー、成る程。俺の乗ってきた愛車にびっくりしたのか。俺はよく知らないんだけど、なんかすごい車らしいねこれ?
「まさか、日本で……自宅前でランボルギーニを見る日が来るなんて思わなかったです。というか、これどうしたんですか?」
どうしたんですかって……
「あー、貰ったんだよ。ちょっとした仕事の報酬ってやつでね。ところで、千冬はまだかな?」
「あー、千冬姉なら、もうすぐ着替え終わると思うので、少し待ってて貰えますか?」
そういうと、一夏君は家の中に入っていった。
「千冬姉、次狼さんが来たよ……って何やってるんだ?」
「一夏……やっぱ他の服にしないか?」
「何いってるんだよ!それに、凄く似合ってるから大丈夫だって!」
「うう……しかし……」
何やら、騒がしいな。一夏君が必死に千冬を説得する声が聞こえる。なんか、割れる音とか倒れる音とかしてるけど大丈夫か?
数分後……
「すみません、次狼さん。ちょっと千冬姉が……」
そういうって出てきた一夏は何故か、ボロボロだった。何があったんだ本当に……
「ま、待たせたな……」
「…………」
一夏に引っ張られて、出てきた千冬の姿に次狼は思わず見とれてしまった。
普段はクールな服装でしか見たことがないゆえに、その格好に驚いてしまった。
「な、なんだ。やっぱり似合わないのか?」
次狼が何も言わないことに、少しふてくされている。
でも、格好のせいか可愛く見えてしょうがない。
「いや、そんなことありません。似合ってますし、可愛いですよ」
「な……」
照れくさいのか、赤くなりモジモジし出す。
「だー!!早く行くぞ!!」
そういって、車の助手席に逃げるように座り込む。
いつもの凛とした姿からは考えられない可愛らしさに、思わず微笑んでしまった。
「次狼さん、千冬姉をよろしくお願いします」
「任させてもらうよ」
俺がいる限り、何があっても千冬は守るよ。まぁ、必要ないかもしれないけど。
「あ、一夏君、夕食はあっちで適当に食べて来るから、弾君達とどっかで食べて来るといいよ。はい、これ」
夕食代として、一万円を一夏君に渡しておいた。おそらく、鈴ちゃん家の中華屋に行くと思うから、これだけあれば沢山食べれるだろう。
「じゃ、出発進行!」
車のエンジンをかけ、アクセルを踏むとブーン!一気に加速して、一瞬でその場からいなくなった。
「やっぱ、早いな……」
それを見て、いつか自分も乗ってみたいと思う一夏であった。
レゾナンスへ向かう途中での会話
「この車、どこかでみたことあると思ったら、ランボルギーニヴェネーノじゃないか?」
「んー、詳しくは知らないんだけど、なんか、よく売ってくれっ言われるんだよね。…千冬はその辺詳しいの?」
「私もそこまで詳しくはないが、モンド・グロッソの決勝戦で戦ったイタリア代表の愛車がこの車だった」
「へぇー、やっぱり高いのかな?」
「世界に数台限定で発売されて……確か、日本円で3億7000万円ぐらいだったか?」
「え、そんなにするの?せいぜい、1500万くらいかと思ってた」
「まさかお前、知らずに運転してたのか?というからどうやって手に入れたんだ?買ったのか?」
「いや、貰ったんですよ」
「貰った?」
「えっと、仕事でイタリアに行った時、たまたま心臓発作で倒れてたおじさんを蘇生させたら、何かお礼をしたいっていうから、話を聞くと、会社の会長だと聞いたから、じゃ、貴方の会社の製品を適当に1つくださいって言ったら、一週間後に俺の自宅にこれが届いてたんです。まさか、車製造会社だとは思わなかったけどね……」
「成る程、世渡りがうまいな」
「そういうけど、千冬だって国家代表なんだし、優勝もしてるから、スポンサーとかからなんか貰えないの?」
「国によって異なるみたいだが、私は、時計やらテレビ、スーツ、最新の家電製品はなんかは貰っことはあるな。変な所で、牛丸々一頭とか餃子一年分とかあったな」
「下手したら、ゴルフ選手よりすごいじゃないですか。夢ある仕事というかなんというか」
「聞くだけはそう思うだろうな」
「というと?」
「今はほとんど無いが、私がモンド・グロッソを優勝した時は、連日マスコミが自宅に張り込んでてな。一歩でも外に出ればカメラのシャッター音とフラッシュで目が開けにくい状態になったり、週刊誌や月刊誌に連日掲載されたりと、大変だったな」
「あー、それは……」
「他にも、外交問題の解決に呼ばれたりと、政治に使われることなんか多々あるんだ。まったく、そのくらい自分たちでなんとかできんのか。」
「まさに、虎の威を借る狐ですね」
「誰が、虎だ……と言いたいがまさにその通りだ」
そんな感じで、レゾナンスへ向かってます。
もう、ヒロインは千冬でいいんじゃないか?