この力、この世界で役立つのか?   作:zaurusu

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少し、文章を足しました。


番外編 一夏の誕生日 part5

「思ったとおり、人が多いですね。」

 

「まぁ、そうだろう。先ほどのお前の言葉通り、一般人がISに触れる機会は滅多にないからな。」

 

見渡す限り、広がるのは人人人。レゾナンスにも引けを取らない人数が集まっている。

 

特に親子連れが多いな。それも、男の子が多い。やはり、ロボットは男の子は憧れでもあるのだからしょうがないよね。

 

だけど、女性しか乗れないから、これから先、現実を知った時、一体どれだけの子が絶望することやら。

 

まぁ、数年後に例外が起こり、世界が混乱するわけだが、今は誰も思ってないだろうな。

 

しばらくすると、ステージ傍からISスーツを着た複数の女性が現れる、ISを纏った。

 

すると、観客が熱狂する。それは、もうアイドルのコンサート顔負けぐらいに。

 

「ふむ、やはり打鉄か。」

 

打鉄

 

純日本製の第2世代量産型IS。最新型であり、世界第2位のシェアをほこる。後々のIS学園に訓練機として多く配備されることになるISの一つである。

 

防御に優れているためか、装甲が鎧武者のようにごつい。そのせいか、銃よりも、刀の方が異様に似合っていた。

 

因みに、同じ第2世代型のラファール・リヴァイブはまだ登場していない。確か、かなり遅れて開発されたがために、第3世代の開発が大幅に遅れたみたいだし。

 

まぁ、それは置いといて

 

ISが空をぐるぐると回り、時にアクロバット飛行をするなどして、盛り上がっているが、千冬はというと……

 

「ふむ、展開の速さは妥当だが、本来の性能の半分も出しきれてないみたいようだな。スペック上ならあの高度まで上がるのにあんなに時間はかからないはずだ。」

 

かなり厳しい評価をつけていた。さすがは、国家代表。やはり、そう言ったところを見るか。

 

とはいえ、時間がかかったと言ってもわずか数秒程度であそこまで上がるのはすごいと思うけど……千冬いわく、機体に弄ばれてるそうです。

 

数分間飛行し終えると、次に始まるのが射撃だ。海上に浮かんだ、数個のバルーンを高速移動しながら撃ち落としていくようだ。確か、似たような競技がモンド・グロッソにもあった気がする。

 

ここで、初めてISの武器が登場するのだが、やはり、IS用なだけあって、大きさが半端じゃなかった。

 

特に、スナイパーライフルなんて、銃口がどこぞの戦車の大砲並みの大きさだった。

 

準備が整うと、順番に1人ずつ海上に向かい、競技が始まると、すぐさまバルーンを撃ち落としていき、盛り上がるのだがわけだが……

 

「まぁ、あれくらいは当然だ。何せ、止まっている的に当てただけだからな。」

 

ここでも、千冬は厳しかった。

 

でも、言いたいことはわかる。IS同士の戦いで、銃を撃つ時に止まってくれるアホなんて誰もいないからだ。

 

さらに、千冬は付け加えるかのように、「高速移動もただ、真っ直ぐ飛んでいただけだけで、あれでは格好の的だ」とも言った。

 

あの歓声の中、冷静に分析している。俺は、なかなかやるなと思っていたけど、よく考えればそうだ。

 

千冬いわく、みな、ISを過信しすぎて、頼りっぱなしな部分があるんだとか。

 

因み、後々わかった事だがISショーを行っていた女性達はみな、次期代表候補生の面々だったらしく、それを知った千冬は今後の訓練内容を考え直す必要があるとかで、国家代表の責任として直々に鍛えなおすんだとか。代表候補生……哀れだ。

 

その後は、ISに触れることになったのだが事件が起きた。

 

人数が多いため抽選になったわけだが、一部の女性達、女尊男卑主義者達が抽選に当たった人物、特に男や男の子を連れた親子からチケットを強引に奪い取っていた。

 

ISは女のためだけなもの、男が触るなんて汚らわしい!

 

と口にしていたそうだ。

 

中には、泣いてる子供がいた。それでも、御構い無しな態度に次狼は怒り、行動を起こそうとしたが千冬はそれを阻止した。

 

何を隠そう、千冬は次狼以上に怒りに満ちていたからだ。

 

「おい、そこのお前達。」

 

「なによ?」

 

いつの間にか、千冬は相手のすぐそばまで移動していた。

 

「こんな事までして……覚悟は出来てるんだろうな?」

 

「「「「ひぃ!?」」」」

 

サングラス越しの殺気に睨まれた女性達は全員、気絶。チケットは元の持ち主に戻り、泣いていた男の子は千冬さんに笑顔でありがとうといい、親もありがとうございますと何度も頭を下げていた。

 

気絶した奴らは、警備員に引渡した。何でも、警察に届け、脅迫罪の罪をつけてやるとのこと。

 

流石、千冬。よ、男前!

 

「私は女だ。」

 

アイアンクローをモロに喰らいました。

 

その後は、手頃なファミリーレストランで昼食をとることにした。意外だったのが、千冬がこう言った店に来るのは始めてなんだとか。

 

千冬曰く、ファーストフードは身体に悪いからと一夏君に止められてるみたい。なので、弁当を作ってくれるんだとか。

 

弾君にジジくさいといわれる理由がよくわかった。

 

セルフとはなんだ?メニューがないぞ? と真剣に聞いてくるものだからギャップが激しすぎて吹き出しそうになった。

 

丁寧に教えてあげた時には、顔を真っ赤にしてた。育ちがよろしいってことにしておきました。(強制的に……)

 

千冬が頼んだのは、ハンバーガーセット。他にも沢山メニューがある中、何故ハンバーガー?と思って聞いてみたら、前から食べてみたかったんだとか。

 

因みに、次狼は様々な丼ぶりが一つにまとまった、お値段3500円もする一日、15食限定の超大盛りのデラックスミックス丼である。

 

いざ、実食!という時に、まさかの自体が起きた。

 

何故か、千冬がハンバーガーを食べるのに、ナイフとフォークを使用したのだ。それもかなり器用に。

 

確かに、そういった食べ方もあるにはあるが、やっぱりここは王道で食べるべきだと思ったので、一応、教えはした。

 

千冬は半信半疑だったみたいだが、皆が、手に持って食べるのをみて、慌てて手に持ち出すと、いっきにかぶりついた。

 

「うむ、中々美味いな。」

 

初めて食べた、ハンバーガーは千冬の口にあったようだ。

 

「サンドウィッチと違って、歯ごたえがあって、すごくジューシーだな。」

 

そうでしょうね。

 

「ビールがあれば最高なんだが……」

 

売ってないことはないが、いっぱい五百円は高い。何より、千冬は一夏君から禁酒令がでてるから、残念そうだった。

 

「いただきます!」

 

次狼もデラックスミックス丼を口に運ぶ。

 

美味しい!これは、一度食べたら止まらなくなる味だ。

 

しばらくすると、雑談がはじまる。

 

とはいえ、千冬の政府に対する愚痴ばかりだったが、とある大物政治家や有名人の暴露話や裏話とか聞けてすごく面白かった。国家代表、恐るべし……

 

そして、話が進みすぎたせいか、何故か一夏君の進路相談の話になっていた。

 

千冬曰く、一夏君は中学を卒業したら近くの喫茶店で働くつもりらしい。

 

千冬としては、せめて、高校ぐらいはいってほしいらしく、もっと家族に迷惑をかけてほしいとの事。

 

だけど、あまりに強くはいえないようだ。なので、俺に相談したいんだとか。

 

確かに、一夏君は掃除や料理が得意だが、やっぱ中卒で働たらくにはこの世の中、難しいだろう。

 

それに、人生は一度しかないのだから、ぜひ一夏君には高校で新たな出会いや青春を体験してもらいたい。

 

なので、次狼は千冬の考えに賛同した。

 

次狼の話を聞いて、迷いが吹っ切れたのか、いつになるかはわからないが、一夏と二人きりで話し合いをすると千冬は言った。

 

何故かわからないが、千冬の話し合いが 言論ではなく物理な気がするのだが……

 

 

でも、最終的に決めるのは一夏君だから一夏君の言うことを尊重してあげて欲しいと千冬に念をさしておいた。

 

最悪、次狼も話し合いの場に出る事になりました。まぁ、この調子だと高校へ進学になるだろうな。

 

一夏君に心から謝っておきました。

 

食事が終わり、再び買い物を再開する事にした。無論、手を繋いでである。

 

もう、流石に慣れたはず……と言うわけでもなく、やはり千冬はどこか恥ずかしがっていたようだ。だが、先ほどよりも握る力が強くなっているのだが、次狼が気づくことはなかった。

 

後に、千冬は、相談して正解だった。とても有意義な時間だったと語る。

 

 

 

と、ここまでは良かった。

 

問題が起きたのは、この後だ。

 

次狼が喉が渇いたから飲み物買ってくると離れた時だ。

 

千冬はベンチで次狼の待っている時に、妙に視線を多く感じた。全員が何かこちらを見て、囁いている。

 

もしかして、先程の一部始終を見ていて噂してるだけかと思い気にはしなかったのだが……

 

「も、もしかして、織斑千冬さんですか?」

 

高校生ぐらいの二人組が近づいてきたかと思ったら、私に質問をしてきた。

 

似てる、本人じゃない? え、違うでしょ? など様々な声が聞こえてきた。

 

いつもなら、正直に答えるところだがあいにく、今日はプライベートだし、何よりここは人が多い。混乱は避けられないな。

 

二人には悪いが……

 

「おーい、千冬!飲み物買ってきよ!」

 

断ろうとした矢先、運が悪いことに次狼が帰ってきてしまった。しかも、かなりの声量で千冬と言ってしまった。

 

無論、それは二人にも聞こえたわけで……

 

「きゃーーーーー!千冬様!本物の千冬様よ!」

 

「私、ファンなんです!!この前のモンド・グロッソ決勝戦は感動しました!」

 

とバレてしまったわけである。

 

半信半疑だった、周りの人々も本物だと分かると騒ぎ出し、ぞろぞろと集まりました。

 

そんな中、次狼はというと

 

「ありゃ、バレちゃった?」

 

と呑気な事を言っていた。

 

千冬は誰のせいでこうなったのだと思わず叫ぼうとしたのだが……

 

「千冬、ちょっと恥ずかしいけど我慢してね。」

 

「なぁ!?」

 

いきなり、手を握って引き寄せたと思ったら、なぜか抱えられた。

 

いわゆる、お姫様抱っこというやつである。

 

「なにをしている!おろせ!!」

 

恥ずかしさに、ジタバタするが次狼は我関せず。

 

「というわけで、レッツゴー!」

 

ダーッシュ!!

 

千冬を抱えたまま、全速力でその場から走り去る。

 

「待ってください!千冬様!!」

 

当然、ファンは追いかけるわけである。

 

ここから、次狼と千冬ファンの間で数時間に及ぶ鬼ごっこが始まるのだが、後日、新聞紙や週刊誌の見出しにブリュンヒルデに恋人現る!?などと次狼にお姫様抱っこされてる写真が大々的に報道され、関係者からおめでとうと祝福されたり、仕事の同僚からも質問ぜめされたりと誤解を解くのに大変な目に合うのだが、それはまだ先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだ、続きます。

多分、次で最後かと

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