対魔忍 マイ   作:我楽娯兵

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コミックマーケット92&電気外祭り 2017の【若き花嫁】七瀬 舞 B2タペストリーが届いたので乗りと勢いで書き上げました。
対魔忍編となります。


序章
純白と漆黒


「いい夜景、一杯引っ掛けたくなるな」

 

 摩天楼を俯瞰し軽口を発する青年。

 美しく煌びやかな都、魔都・東京の輝きは数多の人々を人柱として築き上げられた生命の光。

 人と魔の織り成す愚かしき絶倫絶美の果て、欲望の煌きが燦燦と輝き巨大なシステムとして構築されている。

 青年は愉しげに背に携えた刀の柄に着いた鈴を指先で転がした。

 三尺四寸(128.8cm)の反りの強い鎌倉初期に打たれた古刀。

 彼の携えた刀は世間一般で言われる剛剣――その硬さ、重さで相手を一切合切完膚無きまでに斬り捨てる刀。

 鼈甲色のマフラーがビル風にたなびき、漆黒の中に黄色のラインの入った忍装束がその姿を夜闇に溶かし込んでいた。

 

「無駄口を叩かないで」

 

 青年とは全く違う忍装束を纏う純白の少女が隣に立った。

 真っ白のスリーブレスレオタード姿で、長い長髪も色が漉し出された様に白く雪の様であった。

 青年のように武器と言う武器も持たず、全くの無防備。

 優雅に肩の装飾である長方形の紙が摩天楼の作り出す強風に靡き、きらきらと輝いた。

 その姿は青年とは対照的。漆黒と純白が双方を際立たせていた。

 

「セオリー通り、俺が先行するか」

 

「その前に偵察よ」

 

 少女が小さな鶴の折り紙を取り出し、息を吹きかける。

 淡い藍色の粒子が折鶴に命を宿し意志のままに動く。紙の翼を羽ばたかせ魔境へと飛び去る。

 

「どうだ、七瀬?」

 

「小銃を持った人間、多数。鬼が四人、他魔族多数」

 

 少女は目を閉じ、命宿る折鶴の目を通し悪党の集いを偵察した。

 彼女の武器は『紙』――紙気と名づけられた、対魔忍の忍術であり秘業であった。

 

「ちょろいな」

 

 青年は立ち上がり一つのビル、その一フロアの一室に狙いをつける。

 ランナーがスタートダッシュを決めるが如く、体勢を低くした。背中に提げる剛剣を抜き、逆手に構える。構えた剛剣「虚残剣」の刀身より赤い稲光が走り、禍々しく、そして誘惑するかのような色合いで周囲に放たれる。

 その稲光は彼の血に流れる“鵺”に刀身が反応したのだ。

 妙に悪ぶり気が抜けた少年の雰囲気が切り替わり、手に持つ凶器と同じような鋭利で研ぎ抜かれた刀となる。

 少女が青年を僅かに気遣う。

 

「啓二、気をつけて」

 

「あいさ、合点承知」

 

 

 

 

 

 悪党の親玉二人、護衛多数。

 片方は人間、もう片方は魔族(メタモルフォーゼエルフ)。ホテルの一室で行われる秘密の会合。

 エドウィン・ブラックの子飼い犬、ノマド社の膝元でせこく稼ぐマフィヤたちだ。

 

「ほんで? こんな水増ししたシロップでどのくらいの価格設定にするんだ」

 

 人間側はその数を生かした人海戦術で物品の販売に努めている。

 

「二万でいいだろう。路地裏のネズミにはいい価格だ」

 

 魔族側はその仕入先を取り仕切っていた。

 でかいテーブルに置かれた瓶にはそれぞれ一定量の樹液シロップが入れられていた。

 それは魔界に自生している木より採取されたもので、非常に甘く嗜好品としての価値が大きくある。ただし、それはただの嗜好品ではない。異常なほどの中毒性があるのだ。

 麻薬のように脳内物質を分泌させるのではない、脳の欲求系に働きかけシロップを摂取したくなるのだ。それに加え栄養価がない上に他の食物が途轍もなく不味く感じるのだ。

 その依存性は、医学的には無性にから揚げを食べたいと感じるのと同じで薬物からものとは診断できない。巧妙に法を逃れ、罰せれない中毒物質を売りさばいている小悪党どもだ。

 

「ノマドには悪いが、このシノギは俺たちで仕切る」

 

「死も、生も、共に『彼祖虚』加護の下にか?」

 

 薄くにやけた人間に、メタモルフォーゼエルフは黄昏れつつガラス張りの壁から東京の夜景を見下ろした。

 

魔族(われわれ)を生み出した親眷は今北東の地で暗き闇の中で囚われている。我が『虐げられし魔族』が全命をとしているが、忌々しい米連と対魔忍どもの横槍が酷い」

 

「手は回している。烏合の集いだが、武装には困らないように手は尽くしている」

 

「急がせるのだ。『彼祖虚』はこのまま都市のエネルギーとして生涯を人間の手で毟られる。そうなっては成らない、『彼祖虚』こそ――チェーザレ様こそ魔界を統べれるに値するお方だ」

 

 メタモルフォーゼエルフは暗黒の虚空に手を合わせ祈る。その姿はまさに神に祈りを捧げる信者の様であった。チンピラのほうは呆れ気味にぐるりと中に目を回した。

 彼らの言う、『彼祖虚』とは一体何なのか、この様子からすれば宗教集団の一つかもしれない。

 そうであっても都市のエネルギーと化している崇拝対象などいるのだろうか。

 満月の夜空をふと見上げたとき――影が現れる。

 黒々とした影。その影の中に走る鼈甲の波。

 窓ガラスを突き破られ、一人の暗殺者が突入して見事な着地をきめる。

 口元を布で隠し、眼は炯々と光り輝く。背に担いだ長刀の鞘、それから抜き放たれた剛剣。

 日本太古から蠢く影、刃を優先する者、刃の下に心鉄がある。

 ――即ち、忍。

 

「なんだてめえッ!」

 

 叫び声と共に無数の銃口が忍者に突きつけられた。

 剛剣を腰の後ろに回し、片手で手刀を切っていう。

 

「ドーモ――対魔忍デス」

 

 瞬く間。

 忍者の姿が掻き消え部屋に、二人の人間の首が打ち上げ花火の如く舞い上がり血花が咲き乱れた。

 只人の目には捉えることなど叶わぬ速度で放たれた剣攻は、忍の手に握られた剛剣により強烈な一刀に昇華され軟な頚椎を斬り砕き胴よりその首を跳ね上げていた。

 その姿を捉えられたのはその場にいた魔族の、しかも鬼の上位種のみであった。

 驚き隠し切れない表情であった。

 それもその筈、忍の動きもまた並みの忍のものより格段に上を行っていた。

 最上の殺し屋――まさにこの動きは最強の対魔忍、井河アサギの忍法「光陣華」と瓜二つ。

 研ぎ澄まされたそれの剣は、芸術の域にまで達している。見る者すべてを魅了し、見るの者の歩みを止めさせ、遂にはその生命まで停止させるまで至る。

 

「タイマニンっ! 邪魔を……するなぁああアアッ!!」

 

 魔族側の頭、魔族(メタモルフォーゼエルフ)の男は叫び声を上げた。

 その叫びに反応した僅かな生き残りである鬼達が男を守るように前に出た。

 今まで手にしていた小銃をかなぐり捨て、背に隠し持っていた折りたたみ式のグレイブを引き抜いた。

 上位の鬼複数、その手に握られたグレイブを見れば誰もが縮み上がる恐ろしい構図となる。

 だが忍は嗤った。嘲た。

 ブルブルとほんの一瞬見せた身震い。

 死地へと赴いた戦士のみが見せる闘争への喚起の動作、武者震い。

 鬼は忍へと向かい走りグレイブを横薙ぎに振る。

 軌道としては足首を刈り取るもの、鬼にとって人間の足首など小枝のようなもの。

 容易に刈り取られる――だが忍もまた人とは一線を画している。

 毒をもって毒を制す、対魔族に特化した暗殺鬼。人間と魔族の交わりの果てに生まれた人外の種。

 下段に構えた刀の背でグレイブを掬い上げる。

 天へと掲げられた刀は照明に当てられ炯々と輝いた刀身。鋭い踏み込みと共に上段よりその剣戟が繰り出された。

 脳天より股下まで一直線に切り下げる。

 斬られた鬼はその意識を瞬く間に奪い去られ、死後の体はズルリと半身が崩れ落ち、その体に詰まった汚物を外に向かい零れ落した。

 その膂力、頭蓋か背骨を真っ直ぐズレることなく両断したのだ。

 人と違う骨格を持つ鬼の強固な骨を切り裂くその力に他の鬼たちは足を止めた。

 

「シュー……」

 

 歯を剥き出した忍はその吐息、蒸気を吐く機械のように吐く。

 ギロリと向けられた視線の先の鬼たちはその視線に筋を強張らせた。

 逆手に構え、走り出す。

 そこからは頸を天に打ち上げた人間たちとさして変わりはなかった。

 忍の持つ剛剣で切り伏せられ、血を吹くオブジェクトと化していく。すべて巻き藁と変わりは無かった。

 ――――グチャリ……。

 粘着質な生物の皮膚が擦れ合う音が部屋に響く。

 鬼を切り伏せた忍が見たもの、それは奇怪に変容を遂げた何かだった。

 

「我らの、『虐げられし魔族』の邪魔をするなァア”ア”ア”ア”!!」

 

 顔は何とか原型を留めていた。その者は魔族側の頭、メタモルフォーゼエルフの男だった。

 変容した体に纏わり憑く肉片のようなもの、まるで剥き出しとなった腸のように脈動する血管がグロテスクに蠢きく。有機的な質感の割りにどこか無機質。肉的でありながら機械的。

 床に転がったアンプルは恐らくこの魔族を怪物に変容させたものだ。魔界医学の結晶、寄生型のカビ菌を修めた注射器であった。

 忍の頭に浮かんだのはクリーチャーの姿はSF映画で登場したエイリアンだった。

 体の端々から生えた触手が中を撫で上げそして猛烈な勢いとなって床に転がったアンプルを叩き割る。

 

「気色が悪いなァもう」

 

 愚痴っぽく忍は言い刀を再度構えなおす。

 風を唸らせ振り下ろされる触手を紙一重に躱しながら隙を狙う。

 

「ここだッ!」

 

 触手の隙間を縫い奔り、隙を作り勝機を生み出した。

 接敵した忍は敵の胴を逆風に切り上げた。腹を裂かれ血潮を吹き出した。

 

「グアアアアッ……アア、ハっハハハハハッシ!!」

 

 断末魔が笑い声に代わり気味の悪い声を部屋に木霊させた。

 切り裂いた創傷が一瞬のうちに治癒していく。肉が盛り上がり溢れ出ていた赤黒い血がピタリと止まる。

 

「ガアッ」

 

 恐らく知能も獣並みに落ちているのだろう。

 掛け声もすでに咆哮に近い叫びとなり、その眼も空ろとなり意志を持つ生物とは思えないものとなっていた。

 力任せの拳で忍を殴りつける。

 体を丸め防御するが、その勢いに負け体が宙を舞った。

 受身をとり刀をクリーチャーに向けるが、敵のほうが早かった。

 すでに目の前にその拳が迫っていた。この拳を食らえば顔面はおろか首の骨がその衝撃に耐えられないだろう。潰れた木の実のように、木より腐り落ちた果実のように見る影も無くなる。

 死が差し迫るが、忍は笑った。

 

 ――ガキン。

 

 金属を殴りつけたような音が響き、クリーチャーの拳が砕けた。

 

「ナ、ンダ……」

 

 そこにあったのは正方形の白い和紙。

 その場に静止した紙、微動だにせず折られもせず、整然と浮かんでいた。

 

「サンキュウ。七瀬」

 

「遊びすぎ。もっと早くカタが尽いたでしょう?」

 

 幼げな声の少女であった。

 黒色の忍の少年とは対照的、なにから何まで真反対。

 漆黒と純白。青年が武装しているのなら少女は無防備、青年が喧騒なら少女は静寂。

 その対極の少女は宙に浮かんでいた。

 

「ウぅ? ドウ、なって…ル?」

 

 少女の体には羽も何も生えていなかった。

 純白の長髪を靡かせ、まるでその姿は妖精のような雰囲気もあった。

 

「どうなってる? 私はただ忍法で浮いてるだけ」

 

「ズリイ、絶てえ楽だ」

 

「啓二、うるさい」

 

 床に降りた少女は特に武器と言う武器は持っておらず、無警戒だった。

 敵が悪意も無く、ただ破壊衝動に力任せに触手で打擲した。

 肉体に受ければ皮膚が裂け、肉が削げ落ちるであろう力だった。

 だがその触手は届く事は無く、その周囲の空間に弾かれる。

 なぜか、それは触手を弾くものがあった。

 それは――小さな紙があった。

 

「私の忍法は“紙気”。あらゆる紙に対魔粒子を吹き込み自在に操る事が出来る。攻防自在で変幻自在、あらゆる状況に対応できる万能兵装よ」

 

 エメラルドに輝く微細な粒子が吹き荒れ、それに乗せられた紙片が彼女の周辺を廻った。

 その紙は意志を持ったように振る舞う。

 突風の如く敵の脇を通り過ぎると、敵の体中から血が吹き出した。

 

「鋭利な刃物から――」

 

 体中に張り付いた紙が敵を拘束し身動きの一切を赦さず、紙の結界に封じ込める。

 

「動きを止める拘束具に――」

 

 裡に尖り、肉体に刺さった紙は赤みを帯び、煙が上がる。

 

「その敵を滅ぼす。爆弾にもなる!」

 

 銀朱の輝きと共に敵の体は燃え上がり、弾ける。

 耳を裂く炸裂(エクスプロード)。血も瞬時に乾き気化する熱量に包まれた敵はその表面を抉り飛ばされていた。攻撃手段である触手をなくし、皮膚のすべてもむき出しとなり、血を垂らしていた。

 膝を着き、血反吐を吐き瀕死に堕ちていた。

 首筋に伸びた刀。青年が首筋の上に掲げられた。

 

「真実はない。俺たちは闇に潜むさらに濃い闇。闇は闇に溶けるべし」

 

 振り下ろされた刀は魔族の首を切り飛ばした。

 少年は対魔忍、少女は対魔忍。

 人の世界に落し込まれた闇の存在。

 

 

 

 ――時は近未来。

 魑魅魍魎が跋扈する日本。

 人魔の間で太古より守られてきた「互いに不干渉」という暗黙のルール。

 人が外道に堕してからは綻びを見せはじめ、人魔結託した犯罪組織や企業が暗躍していた。

 しかし正道を歩まんとする人々も無力ではなかった。

 時の政府は人の身で「魔」に対抗できる集団。忍のものたちからなる退魔忍を組織し、悪鬼外道の鬼畜に対抗する為にそれらは産まれる。

 闇に潜むそれらは冷血に冷徹に冷静に、大義を全うする。

 心を殺し、刃を上に。

 暗闇に潜むそのもの達は――対魔忍と呼ばれた。




異種孕ませ種付けドラマCDいい具合にエッチ。
お堅い感じのキャラクターが淫乱キャラに落ちる感じがよい。
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