今年はじめは対魔忍。対魔忍が一般化する未来は来るのか。
フェイトのようなサブカル化はするのか……まあ無理でしょうが……。
刃を持った子供たち
「おいーすっ。七瀬」
「おはよう。啓二」
一週間ぶりの登校に啓二はどこかむず痒さのようなもの感じた。
季節は朝方に寒さが目立ち始める頃。五車町へと帰還を果たした啓二と七瀬は平穏とは言いにくいが、彼らの平穏に戻った。
緩やかな時、特に何もない。だがその何も無さこそが彼らには実感できる。
何もないからこそ退屈するが、何かがありすぎるとその退屈さが恋しくなる。
平凡な欲求こそ至上の喜び。仲の善い友と過ごす時こそ貴重な時間なのだ。
嫌いな勉学も、馬鹿みたいな言い争いも。
「七瀬、紫先生の課題終わったか?」
「とっくに。写させないわよ」
「……そこを何とか」
「進捗は?」
「始まりだし、ing形で進んでおりません」
通学の道程、田舎道を二人並んで歩く。
緑色の生地のセーラー服の七瀬。俺のほうが身長が高く、必然的に見下ろす形となってしまう。
ふわりと香るラベンダーの匂い、七瀬の匂いで間違いなかった。
七瀬は寡黙だった。どこか冷たいが、そのそこにあるものはしっかりと人間味がある。
俺の心強い相棒、死線を潜り抜けた戦友。そして――
「頼むぜッ! 七瀬。五分、五分でいい。見せてくれるだけでいい」
「諦めないさい啓二。あなたは馬鹿じゃないんだから、あの程度の課題すぐに済む筈よ」
「いや、そこをなんとか……」
「何とかも何もない。絶対に見せてあげない」
「きー……」
「猿みたいな声上げてもだめよ」
馬鹿みたいに襲い掛かる事を体でアピールしながら声を上げるが、七瀬はそれを軽く流す。
クールビューティー、というが今は感情が表に出ているほうだと俺は思う。
遠慮がちな七瀬はどこか誰かの影に隠れてしまう傾向にある。慕われてはいる、誰をも唸らす実力もある。だが、どこか、馴染みきれていないような気がした。
「わかったよ。紫先生の単元って何時間目だっけ」
「残念ね。一時間目よ」
「――――」
もう五年にもなる腐れ縁。運は俺を味方し助けてくれる俺はそう信じていたが。
現実は常に非情である。
「手伝って」
半分懇願気味に俺は七瀬に助けを求めた。
「アンミツ、私と友達二人分、まりちゃん先輩の分も」
「お前と、まり姉の分で手を打ってくれ。頼むっ!」
瀬に腹は帰られない。資金の調達手段のない対魔忍学生には親の小遣いぐらいしか収入源がない。
それに俺は今親元を離れ里親に預けられている。里親に金をねだるなど。
「……わかった。それで手を打ちましょう」
「しゃあッ!! すまねえ七瀬。お前は俺の女神様だ」
「煽ても減らさないわよ」
そこには男の威厳は無かった。
威厳はないが、他愛もない友情があった。
――五車町。
関東圏にある山里。その人口は五百人にも及ばず当該都道府県の条例も満たしていない。
一見すると長閑な土地であるが、国が人口五百未満の場所を『町』と称するだけの理由があった。
対魔忍の隠れ里。
人類の中でその肉体能力のみで人外たちを屠る事の出来る戦闘集団。
ある者は影に潜み、ある者は異常な再生能力を持ち、ある者は光をも超える加速を得る。
もはやそれは人外の類。
だがそれでいい。彼らには志がある、人の意志がある――正道を歩む心があった。
毒を持って毒を制す、血の池の中で更なる血が流れ、浮かぶは怪物の躯。
其処に立つ者たちは闇の底を歩み握る刃で人魔を屠る。
決して歴史が彼らに賞賛の光を浴びせる事はない。
なぜなら彼らは、忍なのだから。
闇に潜み、歴史の光を蝕む。彼らは影、彼らは無実。
真実は無く、常にあるのは――彼らがやったかもしれない骸たち。
今もその性質は変わらない。
彼らが殺す対象が『人間』から『魔族』に変わったに過ぎない。
七瀬舞も、篠原啓二も、その対魔忍の者。
多くの『魔族』を殺めて来た正真正銘の――暗殺鬼なのだ。
しかしながら彼らも人間なのだ。人並みの生活は日本が保障していた。
そのための五車町、そのための五車学園なのだ。
将来活躍するにしろ、しないにしろ、その若人たちを対魔忍に教育し野に解き放つ教育機関。
啓二たちの母校であり、愛しの学び舎だ。
「おーす達郎。任務ご苦労」
背後より啓二は掴みかかった友人。二人とも屈託のない笑顔で話した。
「啓二。重いし熱いって」
「俺様のハグが暑苦しいってか? いいじゃねえか、短い青春でこのむさ苦しさこそが」
「嬉しくないってっ」
男二人くんずほぐれつ、とまでは行かないが引っ付くのは確かにむさ苦しい。
しかしそのむさ苦しさこそ青春の一時であるのも確かなのだ。二人ともそれを理解しているからこそ無理に剥がそうともしなかった。
他の生徒とはどこか違った経験をしたからこそこういったことが尊い。
「聖修学園に潜入したって? カー、いいのういいのう。美人多かっただろうなあ」
「任務だしそんなこと……それにゆきかぜもそうだし凛子姉だって大変だったんだぞ」
「淫魔の王が出張ってきたんだろ。寝取られる手前だったんじゃね」
「笑えないよそれ。前の任務のこともあるし」
「俺だってそうだぞ。銃撃戦の中で剣一本」
対魔忍の任務に関しては基本的には部外秘であるが、こうした情報の相互交換がよくある。
身内間での機密性はアバウト。外部には口が固たくとも、内輪ではゆるゆるという事はザラ。
特にこうした学生で任務に就くものたちでは尚の事。
「啓二は今回どんな?」
「情報の収集だったけどな。末端過ぎてまともなモンも収穫なし」
「てことは任務継続?」
「いや? 切り上げの通達が来てた。だからここにいるんだろ」
「まあそうか……」
心配そうな顔をする友人。
秋山達郎。
対魔忍界隈で名を響かせる刀剣術『逸刀流』の家系の次男。
逸刀流の達人である姉、秋山凛子の残り滓などと酷い言われようだが彼にも特技がある。
まだ拙さはあるが圧倒的な諜報能力、そして臨機応変な判断能力。
俺の幼い時からの腐れ縁だった。
新設された鉄筋コンクリート造りの校舎に戸惑いを覚える。
廊下を渡る足取りは軽くまるで楽しいステップを踏んでいるようであった。
「うーん……この香り、愛しの学び舎だ」
「耳の近くで鼻を鳴らさないでよ。何だかくすぐったいよ」
俺たちのやり取りにすれ違う教室の内から僅かに黄色い声が聞えた。
腐った人たちが勝手な妄想で色めき立っていたのだ。好きに色めいておけばいい、俺たちはその程度で無駄な体力を消耗するのは嫌なのだ。
「午後の学科は忍術戦実習だったよな」
「うん、たしか。僕はパスかな」
「諜報特化は学科別なのがいいねえ。聞き耳立てるだけだ」
「諜報戦は現代では肉弾戦にも劣らないほど苛烈だよ。相手の情報がないと軍隊も動こうとしない、対魔忍も同じだよ」
高度に発達した人間社会は直接的な戦闘行為よりも、先んじて相手の情報を得る事こそ戦術的意味を持つ。
資金源もそうだが、相手の購入した兵器、規模、次に行う行動、全てを得ていなければならない。
無暗に攻撃をする連中は現代ではいない。テロリストですらない、そうした輩は殺人鬼と呼ぶ。
テロリストも一概に馬鹿にできない。奴らも人間だ、知恵をつける。
初めはそれこそ愚連隊だったろう、それが次第に知恵をつけ、金を集め、大陸より軍事行動を知っている傭兵を戦術指導顧問に雇用し、より軍隊へと近づいていく。
情報戦こそ現代の花形であり、啓二のような肉体労働者は頭脳労働者のお零れに預かっているようなもの。
世知辛い世の中だ。
「気をつけろよ達郎。ここん所、あちこちきな臭いからな」
「そうだね……野党には魔界技術を積極的に取り入れようとしている勢力もいるし、中連は実効支配のてを止めてない」
「米連もだぜ。北方でバチバチしるしなあ。ノマドはノマドで何がしてえのかわっかんねえし」
それを最後に二人の間で沈黙が流れた。
どこもかしこも何かしらの思惑が見え隠れしている。
もどかしさ、そしてそれを解決に導けない無力感にも似た虚無感。
一人の人間にできることは限界がある。多くの人間はそれを知り、代りのモノに依存するが。
俺たちのような人種はその他多数よりも実現可能なことが他よりも多いいためにその虚無感は絶大だった。
「やめるか、この手の話……」
「そうだね……」
出来ることが多いといっても所詮は学生。親の庇護に預かる脛が齧りだ。
今できると言えば麗らかで瑞々しい学生生活を満喫することだけだ、ほんの少しだけ風変わりな学生生活を。
「うっし、それじゃあ。また後でな」
「うん。実習気を付けてね」
達郎と別れまっすぐ校舎外の部活棟に向かった。
一室の扉を開ければ野郎どものむさ苦しい筋肉の酒池肉林。
異性や特殊な癖の持ち主であればヨダレものだろうが啓二はそういった事はない。むしろ辟易してやまない。自分のロッカーを開け制服を脱ぐ。
「相変わらずのツチノコだ」
「うるっせ。ジロジロ見んな」
クラスメイトの冷やかし。啓二の何がツチノコなのか。
何がと言うか、ナニがツチノコなのだが。
自分の自己評価では啓二はいたって普通だと自負している。見てくれも悪くわないはずだ。
対魔忍という人種であるからに筋肉量も結構ある。
ただ――ナニがデカ過ぎるのは啓二としては悩みどころだ。
男性を象徴し大艦巨砲主義的に大きい事こそ正義と思われがちが、その持ち主としてしまえば程々でいいと思う。
ピッチリとしたズボンを穿けば内腿に異様な膨らみが出来るし、定置に戻せばケツから出すもの前に出したと思われても可笑しくない膨らみが出来る。
しかも啓二は学生であり、不意な勃ち上がりでも授業中に起きて見ろ。目も当てられない。
性を意識する時期であるゆえにそういう知識も欲しているからに、大きすぎれば嫌がられるということも知っているし、現に嫌がられた。殆どコンプレックスだ。
いそいそと対魔忍スーツに身を包む。
黒を基調とした対魔忍スーツ。
赤みの強い黄色の線が所どこに走り、対魔鋼と窒化ケイ素の合金で作られた金属装甲で、全体的な見た目は軽装の鎧を思わせた。
古風な鎧に見え、実際は最新技術をふんだんに盛り込んだ技術の塊。
姿勢制御の為に布地の下には形状記憶性を持った超薄型骨格を織り込み、背中の生地には厚さ0.3ミリのバッテリーとフィルムケーブル類。極薄型の基板と純原子半導体の制御機構を内蔵することで効率的に体内の対魔粒子を体外に循環させることによって、対刃性、腐食性、他もろもろの防御力を発揮する。
ある意味では対魔忍スーツは強化外骨格と言ってそう言わない。
スーツ全体に張り巡らされたフィルムケーブルに循環している対魔粒子は一種の筋肉のようなもので、米連との技術協力によって、若輩の対魔忍たちは数多の技術的恩恵に預かっている。
校長の井河アサギの世代ならいざ知らず、対魔忍の装備もより高度化し、平均化されている。
ここ数年で対魔忍の業界もいささか政治の臭いがチラついて来ている。
数年前まで古き良き忍者の仕事が、今では一軍隊の暗殺部隊めいた雰囲気を醸し出している。
それだけ世間に魔族の存在が認知され始めていることに他ならず、日本の治安もそれに即したものにシフトしている。
「うっし……」
今までは対魔忍のリクルート先は『
無論そういった所に属すモノは大抵血筋も二世代で遡れれば良いような時の浅い新参か、分家過ぎて忘却された家名の者たちが殆どだ。
日の出国に根を張る者たちを闇より闇から守護する為に、手を血に染め続けるのが俺のような血筋がはっきりと分かった者たちだ。
恐らく国名が日本から変わったところで、この土地を離れることはしないだろう。
時の政は陳腐なる平和を享受している。その日和った世界を守るのもまた一興。
ゾロゾロと新米対魔忍たちは部活棟を出て、校舎の鉄器受付の窓口に向かった。
鉄器受付、軍施設で言うなら武器庫のようなものだ。銃火器も個人によってはあるが大抵は近接的な武器を主装備にする傾向にある。
そんなものを箒やバットみたいにロッカーにはぶち込んではいられない。
身の丈を超える斧もある。六尺を超える野太刀だってある。忍術を制御する為のバスーカであったり、鞭も、大型の鎖鎌も、なんでもあり。
しかもそれらが家によっては代々受け継がれてきた家宝である場合が非常に多い。
その為に五車学園での武器武装地下の保管施設で気温湿度他諸々が緻密に管理された場で行われている。
俺の刀、『虚残剣』と呼ばれている刀も多分に漏れず家宝の一振りであり、打ち出された時を平安と数える。
受付のカードリーダーに学生証を通し、窓口より恭しく獲物が出てくる。
最新施設の目白押しの五車学園で、生身の、しかも実戦形式の忍術戦実習は滅多にない。
ホログラム等のVR・AR技術の仮想現実戦闘が専らになり始めているにも拘らず、実戦とは。
今日の講師は井河さくら。現校長で対魔忍の総隊長的立ち位置にいる井河アサギの妹。
年季が違う。啓二は頬を釣り上げ笑った。
「怪我上等、久しぶりに暴れるか」
虚残剣を背に担ぎ、意気揚々と啓二は実習地に躍り出た。
アクション対魔忍で操作可能キャラクターは三人。
アサギ、さくら、ゆきかぜ。対魔忍作品でアサギ、ユキカゼと出ているが対魔忍サクラは出ていない気がする。
新しくプレイアブル化するのは誰か、ムっちゃんか、R子か……凛子はぁの対魔忍スーツで林檎の方で引か掛るか……。
そして最後にアイナのサポート化、プリーズ‼
誤字脱字報告。感想、意見、要求などはどんどん受け付けます。