突然だが軽く自己紹介をさせてもらう。
僕は今、IS学園という場所で教師をしている至って普通の一般人である。
苗字名前共に2文字ずつの、世に知れ渡るような特技等何もない普通の2X歳男だ。
・・・いや、一般人であったというべきか。
先ほども言った通り、僕は男である。
『IS学園唯一の男性教師』
これだけで十分異例な人間であり、先日入学してきた織斑 一夏《初の男性操縦者》と同等に知名度的な物は上がってしまった。
今やネットで検索すれば名前は出てきてしまうくらいには、だ。
そもそもこんな女子校とも言える場所に男子生徒が1人放り込まれるというだけで同情したくもなる程可哀想ではあるのだが、たった1人の男性教師というのもそれはそれで居心地が良いものではない。
まぁ、そんな話はさておき、何故僕がこんな所で教鞭をとっているかというとーーー
「あ!おかえり〜、今日は随分遅かったね、居残り実習でもしていたのかな?
キミが他の女の子に靡くことはないと思うけど、あんまりいい気はしないかなぁ〜まぁ仕事だししょうがないよね。束さんは寛容だから許してあげよう!
さあさあ、早く夜ご飯を食べようじゃないか〜
今日は束さんの手作りハンバーグだよ!」
ーーー主にこいつのせいである。
篠ノ之束。白騎士事件を境に世界を変えたと言っても過言ではないこの【天災】と、僕は幼馴染である。
いや、幼馴染というか、共犯というか。ISができる前から研究には関わっていた(束に手伝わされた)のだが、そこから既に自分は凡人としての生活を無くしていたのかもしれない。
自分は特別、頭がいいわけではなかった為、最初ISに関して初めて概要を聞いた時にはなんじゃそりゃと思ったが
『い、嫌なら別にいいよ・・・私が一人で頑張るから』
と寂しそうな目で言われてしまった為、仕方なくというわけではないが、本気で束を手伝おうと決め、知識を詰め込まれたのが僕がIS製作に関わることになった起源である。
そんな天災と知り合うきっかけは至極単純で小学生の時だったか、クラスの中でも活発な男子3人組ーーー要はいじめっ子達にちょっかいを出されている篠ノ之束を放っておけなくなって助けた。
ーーのはよかったのだが、そんなことから何故か興味を持たれ、小中高とずるずる関係を引きずり、気づけばこんなことに至る。
最初は『どうして私を助けた?このクラスでも、凡人共に異物を見るような目で見られているこの私を』と今の束では考えられないような冷たい目で言われたのを思い出す。
正直小学生の自分には束の言っている「凡人」や「異物」という言葉はわからなかったが、そんなのは関係なかった。束が、普段は冷たい目をしながらも同時に誰かに助けを求める目をしていたと思ったのを僕は忘れない。勝手な思い込みかもしれないけどね。
まぁそんなこんなで友達という関係を許してもらえたのか、学校の中でも多くの時間を共有するようになった。
自分も友達は多い方ではなかったから仲良くできる子が増えるのは嬉しかったのだが、当時の束に、別に仲良くなりたいとか思ってたわけじゃないんだよなーということをふと告げた時には
『…………あの、その、ごめんね?もう付きまとわないから、嫌いに、ならないで、ほしいな…』
と泣かれる寸前まで行き、そこから『ぼ、僕と束は友達だよ!』と伝え慰めた後には、なかなか許してくれない(拗ねた)傷心の束のご機嫌取りをするのは大変だった。
思えば昔の束は随分泣き虫な子だったと思う。
ちなみに、僕が初めての友達だったらしく、家が道場をしている束の家に遊びに行った時はそれはそれは歓迎された。
後に、織斑千冬という少女とも束を通して友達になったのだが彼女には「お前という目付役がいないとあの馬鹿は止まらん」と言われる始末。
中学、高校では、校内を駆け回り、いつも何かと問題を起こす2人のストッパーとしての役割を持っていたと自分でも思う。
あんたも大概問題児だったからね?
そんな事から、束には振り回されっぱなしであるが、別に悪い気はしていない。
元より友達であり、世紀の大発明の手伝いをしていたのだ。今更文句を言うこともないだろう。
IS学園に来たのも束や千冬に無理やり推薦されたというのもあるが、ここの生徒達にちゃんと束の夢を伝えられたらいいな、と思い教師になることを決めたのだ。理事長と面会をし1年の猶予を貰って一般教養の勉強をしたのは、まだ新しい記憶だ。
と、少しばかり懐かしさに浸りながら入り口に突っ立っていると束に呼びかけられる。
「ん?どうしたの?早くこっちにーーー『兄さん、今大丈夫ですか?』ーーーえ?」
ドアをノックする音が後ろから聞こえる。聞き覚えのある声もだ。
ここ最近よく僕のところに来る、この幼馴染の妹の声が。
「兄さん‥‥?入りますよ?‥‥‥って、なぁっ!ね、姉さん‥!また勝手に入ったんですね!!」
「そういう箒ちゃんこそ、最近随分と彼のところに勉強を聞きに来てるみたいだね〜
箒ちゃんは成績はいいはずなのに、なんで毎日来るのかなぁ?」
「ね、姉さんには関係ないでしょう!」
はぁ‥‥またこうなったか。
この子は、篠ノ之箒。束の実妹で今この学園の生徒だ。
剣道がとても上手で中学生の時は大会で優勝していた。もちろん僕はその時観客席の最前列で見てたよ?かっこよかったな箒ちゃん。
この2人、いつからか顔を合わせると言い争うようになってしまったのである。
僕としては姉妹なんだしもっと仲良くできないかと思っているのだがそう上手くはいかないのだ。
「むー、まぁいっか。
ねね!それよりそれより、最近束さんいっくんの白式作りだったりこうして晩ご飯作りに来るので頑張ってるよね!束さんの頭を撫でる権利を「はいはい、頭撫でればいいんでしょ」‥‥ふふふ、よくわかってるねぇキミは」
ーー相変わらず撫でられるのが好きなことで
束は褒められるのが好きだ。どんなに些細なことでも昔から何かをする度に僕のところへ駆け寄って来る。
運動会や体育祭の時なんかも、選抜の50m走で一位を取ったと思いきやそのままの勢いで僕のところへ走ってきて、頭を撫でるよう言われたものだ。
『細胞レベルでオーバースペック』だとは言うが、僕に褒められるだけの為にわざわざ50m走るのは如何なものか‥‥。
そろそろかな、と撫でるのを終わりにし手を降ろすと箒ちゃんが(潤んだ目+上目遣い)で僕の袖を控えめに掴み
「に、兄さん、わ、私も撫でてほしいのだ「よしよし、いくらでもしてあげよう」が………//////」
ーーー箒ちゃんも、昔から撫でられるのが好きだからなぁ
事あるごとに僕の後ろを付いてきていた箒ちゃんも最近はツンの要素が多くなってきて寂しくも感じるが、この瞬間だけは、昔と変わらない素直な箒ちゃんを見れると思うと、それもまたいいのかなと思ってしまう。なんだかんだ言って箒ちゃんに甘いのは僕自身なのだろう。
そんな箒ちゃん。
妹と兄(箒は妹として見られていることを不服に思っているが)にしては、少々くっつきすぎというかスキンシップが過激というか……まぁ箒ちゃんが小学校に入ったあたりからずっとだし、今更なのかなと納得せざるを得ない。
と、物思いにふけていると束が
「む〜〜えいっ」
「ちょ、束!?何して‥‥」
「いいから、キミは黙って抱きつかれてればいいの!」
「な、何をしているんですか!姉さん!」
うん、何故空いている腕に抱きついてくるんですかねぇ、束さんや。
箒ちゃんも、そんな怖い顔しないでください、はい。争いはよくないよ?
「むふふ、相変わらずいい筋肉してるねぇ。教師なんてやっててもちゃんと身体の質は保っていると」
「い、いいから姉さんは離れてください!早く!」
「そんなこと言うなら箒ちゃんこそ、早く彼の手から離れてくれるかなぁ?」
「い〜や、姉さんが下がってください」
「こればかりは、いくら箒ちゃんでも譲れないかなぁ」
おいおいお二人さんや、何やら目線の間に火花のようなものが見えますよ。俺を挟んで争うのはやめてくれますか?え?無理?そうですよねわかってましたよ。
「わ、私だって‥‥!」
「むっ、箒ちゃん‥‥姉の言うことが聞けないんだね‥‥!」
ーーーそんなに強く腕を絡めなくても逃げたりしないよ?僕は。
何故僕なんかを取り合うのか、謎である。
何か生け贄にでも使うのかな。
そんな今の僕の状況、男として役得であるのに間違いはないのだが、1つ問題がある。
そうーーー2人はスタイルが良い。
ただでさえ美人・美女である2人にこうして腕を取られ、身体を寄せられた際には嫌でも豊満な柔らかい感触がし、女性特有の甘い匂いがする。男としてはなかなかに危険な誘惑であり、理性の壁を削るには充分な代物である。
剣道を続けていて身体をしっかりと動かしている健康体な箒ちゃんはわかるが、一体なぜ束もなのか。こいつ程不健康な生活をしているやつはいないだろうに。
篠ノ之家の遺伝、恐るべしである。
だが、いつまでもこうしていては食事も取れないし風呂にも入れない。それに今日は束が作りにきてくれたのだ。早く食べたい気持ちでいっぱいである。
すると、僕が困った顔をしているのが伝わったのか、2人が目を合わせどことなく不満顔で離れていく。
助かった、あのままじゃ俺の弱っちい精神に悪いからね。
え?何々、そんな柔いハートを持つんじゃねえって?ーーバカ言え。この2人に腕取られてみろ。そんなこと言えなくなるぞ。
「ーーまぁいいや、とりあえず食べよっか。箒ちゃんも食べてくよね?」
「その、大丈夫なんですか?2人分しか量がないんじゃ‥」
「ふっふーん、この天才博士束さんはそんなことお見通しだったのさ!ちゃーんと3人分作ってあるよん!‥‥流石にこんな早く来るとは思わなかったけどね」
ほう、なんと。箒ちゃんが来るのを予想していたと。
流石は束といったところか。これで心配する必要がなくなった。さあ、食べようか。
「うん、いただきまーす」「いただきます」
そんなこんなで、僕の日常は過ぎていく。
色褪せることのない退屈のしない毎日だ。
ーーーちなみに、束の手作りハンバーグは絶品だったと言っておこう。まぁ知ってたけどね。
いいお嫁さんになれるよと言ったら束が顔を真っ赤にし何やらボソボソと俯きながら呟いていたり、それを聞いた箒ちゃんが顔を真っ赤にして怒り始めたのはまた、別の話。
➡︎オリ主に設定『鈍感』が追加されました!
ヒロインが篠ノ之姉妹な話を書きたかっただけです
続くかは未定で。