とある姉妹との日常   作:陽夜

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天災と学園最強の妹達との日常

 

 

 

 

 

 ある日の一室、そこには二人の少女がいた。

 

 

 

「やはりたまには本気で説教でもしなければいけないのだろうか‥‥‥そうでもしなくては、あの人は止まらない」

 

 

 

 片方の名は篠ノ之 箒。

 あのIS開発者にして天災こと篠ノ之 束を姉に持つ『苦労人』である。

 そんな彼女は今、隠す事なく怒りを露わにしており、日々積み重なる悩みの解決策を模索していた。

 例えば、学園内にも関わらず自分や兄の部屋に相当な頻度で出没したり、気づけば夜中にこっそり自分のベッドに侵入してたり、彼にベタベタしすぎではないか等ーーーまぁ、主には自分の好きな兄に肌を寄せ近寄っているのが気に入らないだけなのだが。

 

 

 そしてーー

 

 

 

「ううん、怒らない怖さっていうのが、私はあると思う。

 だから、今度連絡が来た時にでも無視してみればいいんじゃないかな‥‥ふふっ」

 

 

 

 もう片方の名は、更識 簪。

 IS学園において最強を意味する生徒会長の座、そして更識家17代目当主である更識 楯無を姉を持つ、こちらも『苦労人』である。

 様々な分野において有能である姉だが、唯一妹の事になると何かと空回りしたり、ポンコツな部分を発揮してしまうので、簪としてはため息をつきたくなるような状況が多々あるのだ。

 

 

 

「ほう、そうだな。それもいいかもしれない」

 

 

「箒のお姉さんは箒のことを溺愛してるっぽいから、口で言うより行動で懲らしめるべきだと思う。そうすれば効果は抜群」

 

 

「中々に鬼畜だな、簪よ。お前のような奴を同士に持てて私は嬉しいぞ」

 

 

「私も。姉に対する苦労で共感できる人がいて、よかった」

 

 

 

 そう言って手を取り合う二人。

 笑みを浮かべながら固く手を握り合う二人は、普通の人から見たら友情の深まった場面かもしれないが、それぞれの姉から見れば地獄かとも思うような状況である。

 

 

 この二人はいつからかこうして共に愚痴を言い合える程の友人関係になった。

 一夏曰く初対面から打ち解けるまでの早さが尋常ではなかった、とのこと。

 

 

 

「簪の姉は最近どうなのだ?まだこそこそと隠れて見ているのか?」

 

 

「いや、この前虚さんに本気で説教してあげてくださいって言ったらここ最近おとなしくなったから、効果はあったみたい。

 きっと今も私をストーカーしてた時に溜まった生徒会の書類を、必死こいて進めてるはず」

 

 

「‥‥‥まさに自業自得だな」

 

 

「私もそう思う」

 

 

 

 ちなみに、優秀な楯無であっても数日では終わらない程の書類を抱え込んでいた。

 そんな中、普段はのほほんとしている某簪の親友も駆り出され巻き添えを食らったとか。

 

 

 

「しかし、簪の姉と私の所の愚姉は相変わらず正反対だな、少し羨ましくも感じるぞ」

 

 

「そんなことないよ、どっちも絶対嫌」

 

 

 

 ‥‥‥ボロクソに言っているが、この二人は決して姉が嫌いな訳ではない。

 自身達が幼い頃はよく姉に甘え、どこに行くにも姉について行き、包み隠さず姉に大好きと言えたものなのだが、それもいつからか落ち着きを得た。

 

 

 

「仲直りできた割には、随分とドライだなお前は」

 

 

「それとこれとは別。だらしない部分の原因が私関係だから、虚さんにも申し訳ないし」

 

 

「それでも生徒会長として、更識家当主としてやっていけているのはやはり才能や努力が大きいのだろうな」

 

 

 

 唐突に姉を褒められ、少しもじもじしてしまう簪。

 

 

 

 と、ここまでいつもと変わらない会話をしていたが、簪が話題を変える。

 

 

 

「‥‥それより箒、最近○○先生とはどうなの?」

 

 

「な、なななななんだいきなり!?」

 

 

「いや、あれから進展はあったのかなって」

 

 

 

 簪も、授業を通じて唯一の男性教師は目で見ていた。

 そんな彼と箒がよく話しているのは見かけるし、あの篠ノ之博士や織斑先生とも幼馴染だと聞いた時はすごく驚いた。

 だからこそ、そんな人間関係の中で箒がしっかりとアピール出来ているのか心配をしているのだ。

 

 

 

「し、進展とはなんだ!私は別に‥‥」

「そうやって素直になれないところが、箒の悪いところだよ」

 

 

「うっ‥‥だ、だって」

 

 

「篠ノ之博士に嫉妬する気持ちはわかるけど、だったら自分だって行動を起こさなきゃ、ね?」

 

 

「で、でも‥‥‥私は生徒で、兄さんは教師だし‥‥」

 

 

 

 最早、IS学園の教師という異質な存在であるからそんなこと気にする必要はないのでは、と簪は思う。

 

 

 

「‥‥もしかしたらいつか、先生と博士が結ばれる日が来ちゃったりなんかして」

 

 

「なっ‥‥!そ、そんなの‥‥あるわけ‥‥」

 

 

 

 反論をしようとし、興奮した気持ちのまま席を立つ。

 が、それに対し簪は、

 

 

 

「わかんないよ、積極的に攻められれば男の人だってきっといつかその気になって、そのままーーー」

 

 

「そ、そんな‥‥‥」

 

 

 

 嫌な想像が広がる。

 確かに、現時点ではそういった感情は感じられないが、もし、もしも少しでも傾く日がくればそんな時にはーーー

 

 

 

 顔を真っ青にした箒は、その場に座り込んでしまう。

 

 

 

「嫌だ‥‥兄さんが‥‥取られるなんて‥‥」

 

 

「ちょっ、箒!?だ、大丈夫だから!泣かないでって!ね?」

 

 

「うう‥‥だって‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は今、とある教室の前にいる。

 放課後の教室の戸締まり、その担当で各部屋を回っているのだが、最後の教室にたどり着いたところで少し異変を感じた。

 何故かというとーーー

 

 

 

「ほら、これで涙拭いて、ね?」

 

 

「ひっく、ぐすっ、ううっ」

 

 

「ああ、もう、そろそろ泣き止んでよ箒‥‥」

 

 

 

 ーーー箒ちゃんが、泣いている。

 その光景を見た僕はすぐに教室へと入り、他へ目を向けることなく一直線で歩いて行く。

 

 

 

「‥‥ッ!せ、先生‥‥!こ、これはその‥‥」

 

 

 

 慌てる更識妹さん。

 優秀な姉を持つ彼女自身もまた日本の代表候補生であったりと優秀なのだが、そんな事は今は関係ない。

 

 

 

「に、いさん‥‥?」

 

 

 

 僕に気づく箒ちゃん。

 床に座り込んでいる彼女の元に近寄り、腰を下ろし頭の高さを合わせる。

 そして彼女をーーー

 

 

 

「あっ‥‥‥」「わぁ‥‥‥!」

 

 

 

 正面から抱きしめる。

 教師として、こういった行為が褒められた事ではないのはわかっている。

 でも、これが今ここで僕にできるこの子を慰める最善の方法だと思う。

 

 

 

「兄さん‥‥暖かい‥‥」

 

 

 

 そう言って箒ちゃんは、僕の背中に腕を回す。

 こういう所は束と似たのか、抱擁をするとすぐに落ち着いたり、泣き止んだりする。

 

 

 

 し、しかし自分からしに行くのは気恥ずかしいものだ。

 大人の女性に近づいている箒ちゃんを抱きしめるのは心臓に悪いぞ、うん。

 普段、束や箒ちゃんに引っ付かれる時はこんなこと感じない。他人からされるのと、自分からするのではわけが違うからだ。

 

 

 

「あ、あの、先生、その‥‥‥」

 

 

 

 おっと、更識さんを忘れていた。

 彼女にはどうして箒ちゃんが泣いているのかを聞く必要があるからね。

 とりあえず、もう落ち着いただろうからそろそろ離れてーーー

 

 

 

「いやっ」「あ‥‥‥///」

 

 

 

 うわっ、ちょっと箒ちゃん!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこにもいかないで、おにいちゃん‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なん‥‥‥だと。

 

 

 

「箒、すごい‥‥‥///」

 

 

 

 一体何に感心したの、更識さん!?

 確かに箒ちゃんが小学生だった時以来の『おにいちゃん』呼びで少し脳がやられかけたけど‥‥‥ま、まだ僕は屈しないよ(震え声)

 

 

 

「ねえおにいちゃん」

 

 

 

 な、なんだい。

 

 

 

「‥‥‥姉さんと私、どっちが好き?」

 

 

 

 箒ちゃんらしからぬ甘えるような声でとんでもないことを言うね!?

 ど、どういうことかな?それは。

 

 

 

「‥‥‥‥いいから答えて」

 

 

 

 有無を言わせずですかそうですか。

 さて、束と箒ちゃんどっちが好きかという話か。

 

 

 

 実はこれと似たような話を前に千冬にされたことがある。その時は確か、彼女にするなら束か箒ちゃんかみたいな内容だったはずだ。

 最初は何を言ってるんだと思ったが、やけに真剣に聞いてくるもんだから少し時間を貰って考えてみた。

 そして、僕の出した結論はーーー

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーごめん、箒ちゃん。

 

 

 

「え‥‥‥」「なっ‥‥‥!」

 

 

 

 箒ちゃんが再び泣き出しそうな声を出し、更識さんが前から怒った顔で僕を睨みつけてくる。

 

 

 

 ち、違うんだよ!そういう意味で謝ったんじゃなくてね?

 

 

 

「‥‥じゃあ、どういうこと?」

 

 

 

 前にね、千冬に言われて今のと同じ事を考えたことがあるんだ。

 

 

 

「うん」

 

 

 

 でも、僕の中で答えは出なかったんだ。

 

 

 

「‥‥なんで?」

 

 

 

 僕にとって、二人は魅力的すぎるんだよ。

 束には束のいいところがあるし、箒ちゃんには箒ちゃんの可愛さがある。

 それをどっちかだけ選べって言われたら、酷な話だね。

 

 

 

「‥‥‥‥優柔不断です」

 

 

 

 うっ、そう言われると言い返せない‥‥。

 でも、二人をよく知ってるからこそ真剣に考えられたし、長い間一緒にいるから素敵な部分に気づけたんだ。

 

 それに、もし千冬と箒ちゃんどっち選ぶって言われたら、僕は迷わず箒ちゃんを取るよ。

 

 

 

「本当ですか?」

 

 

 

 ああ、本当さ。

 って、こんな事千冬にバレたら殺されちゃうかも‥‥‥う、寒気が。

 

 

 

「‥‥内緒にしておいてあげます、兄さんにはまだいてもらわなくては困りますから」

 

 

 

 はは、そうしてくれると助かるかな。

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

 お、やっと笑った。もう大丈夫そうだね。

 

 

 

 で、更識さん‥‥どうして箒ちゃんが泣いていたのか、説明してもらえるかな???

 

 

 

「ひぃっ!?せ、先生‥‥!」

 

 

 

 ん?どうしたの?コワクナイヨダイジョウブダヨ。

 

 

 

「う、ううう‥‥‥」

 

 

 

「何やってるんですか、もう」

 

 

 

 いたっ!?ちょ、チョップされた!?

 

 

 

「簪が怯えてます、やめてください」

 

 

 

「ほ、箒、私は大丈夫だから‥‥」

 

 

 

 はっ!僕は何を‥‥。

 ごめんね、更識さん。僕の悪い癖なんだ。

 

 

 

 と言って、頭を撫でる。

 

 

 

「あっ‥‥えへへ」「ちょ、ちょっと兄さん!?簪も、嬉しそうにするんじゃない!」

 

 

 

 やべっ、ついまた癖で‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーちなみにこの会話の後日、簪がふと呟いた「お兄ちゃんもいいかも‥‥」という発言を聞いた楯無が飛び出してきたのは、また別の話。

 




不安になって泣いちゃうメンタル弱めな箒ちゃん、可愛い。




‥‥‥お兄ちゃんって言わせたかっただけなのにどうしてこうなった(頭を抱える)
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