個性”スティール” 作:省エネは大事
『パパ〜!ママ〜!ぼくに、ぼくに個性が!』
『やったな徹鐵!ま、母さんと俺の息子なんだ、当然だな!』
『もう父さん…それで?どんな個性なの、徹鐵?』
『ん〜良くはわかんない。…からだが鉄っぽくなるのかなぁ?』
『ガハハッ、聞いたか母さん!俺の息子は中々強い個性みたいだ!』
『そうねぇ…父さん?一つ訂正するけど、”俺の”じゃなくて、”俺達の”でしょ?』
『俺としたことがっ!うっかりしてたぜ母さん』
『もう…父さんはいつもそうなんだから。徹鐵、その個性でどんな事がしたいの?』
『そんなの!
『『勿論さ(よ)!!』』
『ありがとう!パパ、ママ!』
----母の心から笑う笑顔が好きだった。
----父の心から笑う声が好きだった。
『君の個性は”スティール”だよ。最強の盾にも、最強の矛にもなるって事さ。特筆すべきは、鉄分を多く摂取する事で、より硬くなるってとこかな』
『さいきょーのたてと、ほこって…?』
『ゲーム風に言うなら、攻撃力も防御力も高いって事だぞ徹鐵…それにしても母さん、やっぱり俺の息子は強い個性だ!』
『”俺の”じゃなくて”俺達の”って、何回言ったら分かるのよ…でも、増強型の個性じゃない分、鍛えないと、ね、徹鐵?』
『まだ良くわかんないけど…とりあえずがんばるよ!パパ、ママ!』
『おし!これから父さんが鍛えてやるぞ、徹鐵!』
----ある日、父が亡くなった。
----それは、俺が、小学校中学年の頃だった。
『ママ!これ見て!オールマイトだ!皆んなを笑顔で助けるんだ!かっこいいなぁ〜』
『えぇ…そうね』
----母は笑っていた。
----そう、”目は笑っていない”って奴だ。
----思えば、この時からだったかもしれない。
----母の、心から笑う笑顔を、見なく、なったのは。
----当然、その頃の俺が、そんな事に気づくことはなく。
『母さん、疲れてるの?少し、休んだ方が良いんじゃない?』
『大丈夫、大丈夫よ…』
『あっ、母さん、コレ!この前の算数のテスト、満点だったんだよ!』
『良かったね…徹鐵…』
『母さん、本当に大丈夫?ちょっと位休んだ方が…』
『誰のせいだ、とっ!…ごめん、徹鐵。母さん疲れてるみたいだから、少し、休むね』
----父が亡くなった事で、稼ぎが無くなり、小学校高学年の頃には、今まで貯めていたお金も、もう残り少なかったらしい。
----母の個性は、体の色を変えるくらいで、とてもヒーローとして活動出来るものではない。
----スーパーのパート店員として働き始めたものの、稼ぎが爆発的に上がる訳でもなく、母は、稼いだお金の何倍もの、疲労をその身に貯めていく。
----当然、その頃の俺がそんな事に気づくことはなく。
----中学校に入った頃には、もう悟っていた。
----母も、喋ることすら、無くなった。
『それじゃ、学校、行ってくるよ。母さん』
----家を出る時、家に入る時には、必ず声を掛ける。
----いつか、母が返事をしてくれる事を期待して。
『お前さぁ…なんでそんな不幸ヅラしてんの?』
----それは、中学のクラス委員長からの言葉。
----図星だった。
----”俺は不幸だ”って心のどこかで思ってた。
『そんな強そうな個性持ってんのに、勿体無いよ、お前』
----お前に何が分かるって言いたかった。
----けど、言えなかった。
『私なんてさぁ…手を大きくするだけだし…まぁだからこそ出来ることっていっぱいあるけど、痛いのは痛いし…羨ましいよ、お前』
----だから何だ、個性が良ければ、人生勝ち組だって言われた気がした。
----物凄く、腹が立ったのを覚えている。
『…っごめん、…そう言うつもりで言った訳じゃないんだ。私には”知”がある。だから、お前の”武”があれば、私達って最強のコンビになると思わない?』
----何を言いたいのか、分からなかった。
----アイツの志望校は雄英だった。
『物分かりの悪いヤツだな…だから、一緒に行こうよ、雄英』
----雄英なんて、行く気は無かった。
----せいぜい士傑くらいにしようと。
----でも俺は、勢いで頷いてしまった。
----するとアイツは、喜んだようで。
『…っ良かった!実は私、緊張してたんだ…植蘭から雄英受ける人、私しかいなくて、さ』
----そう、笑いながらアイツは言った。
----その笑顔は、まるで、かつての母の笑顔のようで。
----不覚にも、”可愛い”と、口にしてしまった。
『て、照れるな…格好良いとはよく言われるけど、可愛いって言われるのはね…それに、お前がそう言うこと言うタイプだと思ってなかったし…あぁもう、兎に角良かったよ』
----その時から、俺は、アイツと母さんを守れるようなヒーローになろう、と、心に決めた。
俺の名前は鉄哲徹鐵、個性”スティール”、…これから始まるんだ、俺のヒーローアカデミアが!