liegen -半端者等の祝祭-   作:Lune-Moca

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一話が短かったので、二話合体させてあります。


幕間 -予選突破/黒と騎士-

 

――予選突破――

 

 

「――失礼します、アーフェリオン様」

 

飾り気の無い、ただベッドの置かれた部屋。

いや、判る者がいれば置かれた物がどれも一級品の物ばかりなのがわかるだろう。

その部屋に男は入って来た。

腰には剣。その歩は剣士のそれ。

書類の束を持って、この部屋のあるじの元へと向かう。

「なんだ、大会の予選が終わったのか」

愉快そうに、彼は床から起き上がると笑った。

 

この人こそ、ノースヴェルドの王アーフェリオン。

国で、『最強』とうたわれている存在である。

ただ、色白の肌は病的で、どこか儚げだ。

先日、大会の開会式で演説をした。その後体調を崩していたのだ。

 

彼は『最強』と呼ばれるラウドを持ちながら、その代償として『病弱』。

では、弱いのか。

『病弱』でありながらも『最強』と人々は評価する。それが答えである。

 

「ランカ? 予選が終わったか。残ったのは?」

「五百と半分ほどです」

「多いな」

アーフェリオンは眉をしかめ、咎めるように男――ランカを見た。

それに、ランカは笑顔で応える。

「これから、どんどん落していきますよ」

「あまり、いじめてやるなよ」

「まさか。そのような事は行いません。ただ、誰もが楽しめるよう、少々のハプニングはあるかもしれませんが」

「優勝する者はもうわかっているのだろう? どいつだ」

「王、それを知っては面白みが在りませんよ。それに、予知者の予言も絶対ではありません」

ランカの持って来た書類をぱらぱらとめくっていたアーフェリオンの手、それが止まる。

「――騎士団からも出場しているのか」

「そうですね、騎士団の中でも実力者であるライエン殿、それにキアラ殿、新人のヴィクトール殿の三名だけですが」

「なるほど……ほう、異国の者もいるようだな」

さらにめくり始め、数名に気を止めながら微笑する。

「はい。どうも他大陸からやってきた者が予選を突破したようです」

「それは面白いな。以前、見た事があるが、珍妙な術とやらを使っていた。大会も盛り上がるだろう」

「はい」

そのうち、会話が無くなる。

ただ、紙をめくる音だけが聞こえてきた。

そして――

「以前の大会は人死が多かった。予選でも、すでに数名が亡くなったと聞く……」

「はい。いささか、残念な事ですが、この大会で死者が出ることは必然となっています」

「なるべくそれを阻止しろ」

「……こちらの事を考えていない注文ですね」

「俺は王だ」

「はいはい、分かりました。王様の言うとおりに」

ランカの不真面目な態度に怒ることもなく、アーフェリオンは笑った。

そして、急にまじめな顔をする。

「気をつけろ。この大会で、きっと奴等は動く」

「……」

「必ず、表舞台に引き摺り出せ」

「はい」

 

 

 

ランカの居なくなった部屋で、アーフェリオンは一枚の紙を握っていた。

 

「――まったく、お前は。待っていろと言ったのに」

その言葉に、いつの間にかそこに居た少女が苦笑する。

豊かなブロンドの長髪を一つにまとめて三つ編みにして、動きやすい格好をしている。

どこか悪戯者の目を思わせる黒の瞳は笑っている。

「しょうがありませんわ。なんと言っても……っと、それよりも問題はまだ行方を掴めていないということです」

「レイナの予言でも見つからない、か……」

「予言はただ未来を言うだけですから」

アーフェリオンの言葉に、王家直属の予知者レイナはそう穏やかに微笑した。

「……さて、この大会、本当にお前の予言通りに事が進むかな?」

「どうでしょう」

 

未来はその時折で変わるモノ。

一つの選択で、一つの間違いで、一つの結果で。

過去と今が綿密に連なり、影響しあい、未来ができるから。

 

だから、予言は変わる。

予言がなされた時点で、変えようとする人々がいるかぎり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――黒と騎士――

 

 

予選三日目。

それは、ロディウスがセレネとヴィクトールの前から逃亡した時まで遡る。

 

 

「降参だ、うっとうしい騎士サマ。降参、降参。言葉の通りだ。ほら、どうぞ、捕まえろ」

呆気に取られた騎士。

微笑して、持っていた得物を全て地に落す黒のテロリスト。

無言になった二人は、相手の腹を探ろうとお互いに見つめ合う。

一人は警戒して、一人は笑って。

「どうした。憎い仇がここにいるというのに、捕まえないのか?」

鼻で笑う彼女は明らかに動かない騎士をあおっている。だから、動けない。

なにより、真意が知れない。

その笑みは、なにをしようと画策しているのか。

どうしても、裏が在るとしか見ることができない。

 

二人は動かない。

が、時は進む。

 

そして――始めに騎士が動いた。

「なら、その袖に隠している物を捨てろ」

「ほう」

なんだ、気づかれたか。

そう言いながら地面にほうりだしたのは幾つもの短剣、針、糸、その他暗器など少女が持つには物騒なモノばかり。

これでもかと隠されたそれを捨てていくセレネは、微笑している。

「幾つ持っているんだ……」

「さぁ? 持てるだけ持ってるだけだからな」

思わず呟いたヴィクトールにセレネは律義に返した。

それほど隠していた得物の数が多いのだ。

袖の下から、靴の裏から、出るわ出るわ。重くないのだろうかと思わず心配してしまうほど。

「で、この先どうするんだ?」

全て武器を出しつくしたのか、手を止めるとセレネは挑戦的に笑う。

が、ヴィクトールは動かない。

 

おかしい。あっさりしすぎている。

この女は、騎士団が守っていた砦を壊滅させたテロリストのはず。

なのに、なぜこんなにも簡単に……。

 

その不信から、動けなかった。

セレネの挑戦的な笑みもあいまって、疑心暗鬼に陥っていたのだ。

 

そもそも、彼女のラウドはなんなんだ?

報告では、斬りかかって来た相手を意識不明に陥らせるとあった。

危険に陥ると発動する能力か? いや、もっと達の悪いものかもしれない。

なら、敵と認定した者の意識を問答無用で奪う能力?

 

その時、セレネが動いた。

大きな動作では無い。本当に小さく、注意して見ていなければ分からないほど極小さな動作で。

袖に、まだ何かを隠している。

それに気づいたヴィクトールはすかさずセレネの首元に剣を突き付け直す。

「その手に持っている物はなんだ?!」

「これか? これは……」

それをセレネは何事もなく落した。

 

不意打ち。突如、あたりに煙がおこる。

真っ白な人工的に作られたそれは、セレネの持っていた物から立ち上がる。

「煙玉っ?!」

驚くヴィクトールは、すでに視界を遮られて前に居たはずのセレネを見失う。

それと共に、首元に柔らかな小さな手が押し付けられていた。

首筋に息がかかる。耳元で、小さな声が聞こえてくる。

「残念だったな」

「――っ!」

その言葉を最後に、ヴィクトールは意識を失った。

 

「ったく、面倒な騎士だ」

煙が晴れた時、立っていたのはセレネ一人。

ヴィクトールは意識を失っている。

セレネのラウドで意識を奪ったのだ。

「まったく……おかげでヴァンガードを見失ったではないか」

ぶつくさと文句を言いながら、地面に投げ捨てた武器を拾って行く。

律義なことだが、現在お金の無いセレネにとっては重要なことだ。

これだけの武器の代金は馬鹿にならない。

組織に戻ればどうにでもなるが、セレネは戻るつもりが無い。

と、セレネはたびたび手を止める。武器を手に取ろうとして、なぜか空を掴む。

嫌な汗をかきながら、その手を止めない。

……そして、ようやく全ての武器を回収すると、立ちあがって呟いた。

「さて、どうするか」

どうするもこうするもない。ロディウスを探すだけ。

倒れたヴィクトールを踏みつけながらセレネは歩きだす。

 

その足取りは、どこか危なげで……。

 

 

 






予選終了までの登場人物。+現在までに判明したラウド。



ロディウス・ヴァンガード
 主人公
  妹を取り戻すために大会に参加した。
  エスターとセレネと共にチームを組むことに。
 ラウド:未来予知
  自分と周りに関する未来を予知する。
  ただし、視れる未来は一瞬先から一日ほどのあいだ。
  危機に瀕すると勝手に発動することがある。
  時折、自身でもよく解らない効果がでる時も。
 代償:眠り。
  ただし、使いすぎると他にもいろいろな代償が現れる。

セレネ・ファラーディア
 テロリスト
  大会参加理由は不明。
  シスター姿の少女。チームメンバー。
 ラウド:強奪
  素肌を触った相手の意識を奪う。他、条件を満たすと、相手の視力や熱を奪う事が出来る。
  常時発動型の能力の為、任意での発動はできない。
  また、そのために露出を抑え、素肌を晒さないようにしている。
  ただ、力の強弱はある程度操れる。
代償:不明

エスター
 情報屋
  大会参加理由は不明。
  チームリーダー。(雑用係とも言う)
 ラウド:画像伝達
  テレパシーの一つ。
  自分の見た映像を他者に見せることが出来る。
  現在だけでなく、過去の映像も可能。
 代償:不明

ヴィクトール・フォン・エルディータ
 貴族の近衛騎士
  大会参加理由不明。なぜかロディウスのライバルに。
 ラウド:不明
  光線に似た衝撃波を放つ。かなりの攻撃力を持つ広範囲攻撃。
  代償:不明


ネームレス
 戦場の狩り手
  不明。後ろに誰かがいる模様。
 ラウド:不明
  複数の能力を操る(?)。
 代償:不明

アーフェリオン・L・ノースヴェルド
 帝王
  ノースヴェルドの王。
 ラウド:不明
  ノースヴェルドで『最強』の称号を持つ能力。
 代償:病弱

ランカ
 アーフェリオンの側近
  かなりの実力の持ち主。また、アーフェリオンにとって唯一気の許せる相手。
 ラウド:不明
 代償:不明

レイナ
 王家お抱えの予知者
  不明。
 ラウド:不明(予知系)
 代償:不明


おまけ

坊主頭の男
 予選脱落者
  ロディウスに最初にやられた名前もない人。
 ラウド:投擲
  無機物を相手に投擲する。
  当たればかなりの威力をもつ。が、向きを変えられない。
 代償:痛み

霧の女
 予選脱落者
  ネームレスによって倒された女性。
  腕輪は壊されていないが、重症だったため本戦は出場できなかった。
 ラウド:五里霧中
  霧を発生させる能力。ただし、水の入った容器が必要。
  かなりの範囲に霧を発生させることが出来る。
  自身と仲間は霧によって視界を阻まれることは無い。
  また、近くならば霧の中に人がいるか察知できる。
 代償:水分
  脱水症状が出ることも。

霧の女の協力者
 予選脱落者
  ネームレスによって倒された男性。腕輪はロディウスに壊された。
 ラウド:自身の移転
  身体の一部を移動させる。
  持っていられる物、ただしそこまで大きくない物なら一緒に移転可能。
 代償:悪夢

霧の女の協力者
 予選脱落者
  ネームレスによって倒された男。霧の女と同じ理由で本戦には出場していない。
 ラウド:移動
  いわゆるテレポート。
 代償:視覚

師匠(名前不明)
 ロディウスの師匠
 ラウド:不明
  ロディウスの未来予知と似ているがどうしても勝てない能力。(ロディウス談)
 代償:不明

リュカルナ・ヴァンガード
 ロディウスの妹
  王に連れ去られた。(?)
 ラウド:未来予知
  ロディウスの未来予知と違い、自らの先の未来から関係の無い事象まで多くの事を予知できる。
  あまりにも視すぎるために、多くの人々から危険視されている。
 代償:眠り 寿命



いつの間にかお気に入り登録や評価をしてくださった方がいたようで、ありがとうございます。
完結までまだまだですが、面白いと思っていただけたのなら本当にうれしいです。

登場人物については物語の節目などで少しずつ更新しようと思います。
お読みくださりありがとうございました。

Lune-Moca
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